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遥の過去
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「やい!ノロマ遥、お前こんなのが怖いのか?」
腰に手を当て、セミの抜け殻片手にふんぞり返っているのは
幼少期の彰。
幼稚舎の制服でリボンのついた帽子、紺のサロペットに白い半袖シャツ、首元に男の子用の青いリボンを付けている。
「きゃーー!やだっ!こっちに持ってこないでよ!」
お友達とお砂遊びをしていた私は、驚きと恐怖でスコップを手放して尻もちを付く。
そんな私におぞましいセミの抜け殻を手に一歩私に近付いてくる彰は、心から楽しそうな顔をしている。
「やだ!怖いっ!」
「大丈夫だって。よく見ろよ。ただの抜け殻だぜ?」
そう言ってまた一歩近付いてくる彰から逃れようと、距離が縮まらないように後ずさる。
私が虫全般苦手なのを知ってるのに。
いや、苦手なのを知ってるからあえて近付けてくるのだ。
こんな事をしてくる彰を止めれたことなんて一度だって無い。
「いやーー!」
私はすぐにその場から逃げ出し、広い幼稚舎のグランドに出た。
振り返ると、すぐに後ろには笑いながら追いかけてくる彰。
もちろん手には、あのセミの抜け殻。
そんな光景に心の中で大きな悲鳴を上げ、泣きそうになる。
「きゃーーーっ!いやぁーーー!来ないでぇーー!」
そう叫ぶと後ろから何やら楽しそうな声が聞こえる。
彰が一体何を言っているのかまでは聞こえなかったけど、耳を澄ます余裕なんて全くない。
彰は足がめちゃくちゃ早い。
運動会でもいつもダントツの1位を取っている。
そんな彰と比べて、私は平凡かそれ以下の成績。
そんなのすぐに追いつかれるのは分かってるけど、逃げずには居られない。
「もう!彰なんて大っ嫌い!」
私は抵抗のつもりで走りながらそう叫んだ。
「遥のウソツキ!」
「ウソじゃないもん!」
「ウソだよ!だって年中の時、僕の事を好きって言ってたでしょ!?」
「あれは年中さんの時の話だもん!い、今は違うもん!」
「なんでだよ」
年少、年中と彰とずっと一緒に居た。
先生や友達にも「2人は仲がいいね」と言われて来た。
彰は年中の時までは本当に優しかった。
お互い、何度も好きだと言い合って、いつも一緒に行動していつも手を繋いで、いつか結婚しようと約束までした。
なのに⋯⋯年長さんになった頃から何故か彰は私に意地悪ばかりするようになった。
「今の彰なんか好きじゃな⋯⋯わぁっ!」
振り返りながら走っていた私は、石につまづいて豪快に転けてしまった。
砂だらけになった私は痛さで涙目になる。
「だ、大丈⋯」
そう言って、心配そうな目をして手を差し出そうとする彰を、涙ぐんだ目で睨んだ。
「彰なんか大っ嫌い!」
私が本格的に泣き出すと先生が数名こちらに走ってくる。
「勝手に転けた、お⋯⋯お前が悪いんだからな!」
訳の分からないことを言うと、私に謝りもせずにどこかへ走って行った。
腰に手を当て、セミの抜け殻片手にふんぞり返っているのは
幼少期の彰。
幼稚舎の制服でリボンのついた帽子、紺のサロペットに白い半袖シャツ、首元に男の子用の青いリボンを付けている。
「きゃーー!やだっ!こっちに持ってこないでよ!」
お友達とお砂遊びをしていた私は、驚きと恐怖でスコップを手放して尻もちを付く。
そんな私におぞましいセミの抜け殻を手に一歩私に近付いてくる彰は、心から楽しそうな顔をしている。
「やだ!怖いっ!」
「大丈夫だって。よく見ろよ。ただの抜け殻だぜ?」
そう言ってまた一歩近付いてくる彰から逃れようと、距離が縮まらないように後ずさる。
私が虫全般苦手なのを知ってるのに。
いや、苦手なのを知ってるからあえて近付けてくるのだ。
こんな事をしてくる彰を止めれたことなんて一度だって無い。
「いやーー!」
私はすぐにその場から逃げ出し、広い幼稚舎のグランドに出た。
振り返ると、すぐに後ろには笑いながら追いかけてくる彰。
もちろん手には、あのセミの抜け殻。
そんな光景に心の中で大きな悲鳴を上げ、泣きそうになる。
「きゃーーーっ!いやぁーーー!来ないでぇーー!」
そう叫ぶと後ろから何やら楽しそうな声が聞こえる。
彰が一体何を言っているのかまでは聞こえなかったけど、耳を澄ます余裕なんて全くない。
彰は足がめちゃくちゃ早い。
運動会でもいつもダントツの1位を取っている。
そんな彰と比べて、私は平凡かそれ以下の成績。
そんなのすぐに追いつかれるのは分かってるけど、逃げずには居られない。
「もう!彰なんて大っ嫌い!」
私は抵抗のつもりで走りながらそう叫んだ。
「遥のウソツキ!」
「ウソじゃないもん!」
「ウソだよ!だって年中の時、僕の事を好きって言ってたでしょ!?」
「あれは年中さんの時の話だもん!い、今は違うもん!」
「なんでだよ」
年少、年中と彰とずっと一緒に居た。
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彰は年中の時までは本当に優しかった。
お互い、何度も好きだと言い合って、いつも一緒に行動していつも手を繋いで、いつか結婚しようと約束までした。
なのに⋯⋯年長さんになった頃から何故か彰は私に意地悪ばかりするようになった。
「今の彰なんか好きじゃな⋯⋯わぁっ!」
振り返りながら走っていた私は、石につまづいて豪快に転けてしまった。
砂だらけになった私は痛さで涙目になる。
「だ、大丈⋯」
そう言って、心配そうな目をして手を差し出そうとする彰を、涙ぐんだ目で睨んだ。
「彰なんか大っ嫌い!」
私が本格的に泣き出すと先生が数名こちらに走ってくる。
「勝手に転けた、お⋯⋯お前が悪いんだからな!」
訳の分からないことを言うと、私に謝りもせずにどこかへ走って行った。
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