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デリート大作戦

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「いいないいなー。東十条さんのお持ち帰り」
「羨まし過ぎるー!せっかくこんなに気合い入れて来たのに!私も持ち帰られたかった!」
「なになに?じゃあボクが⋯⋯」
「お馬鹿!あんたなんか論外だから」
「酷いっ」

⋯⋯⋯⋯

⋯⋯



「おい遥、捕まるならちゃんと捕まれよ」
足元が覚束おぼつかないフリをしている私の肩を抱くアキラがダルそうに言う。

「うん⋯⋯」
「ったく。弱ぇから飲むなってあんなに言ったのに、こんなになるまで飲みやがって!」

予想以上に私の計画は順調に進んでいる。

名付けて⋯⋯
ババン!
『酔いつぶれたと見せかけてデリート大作戦!!』

ふふっ、あと数時間後のアキラを想像すると愉快でたまらない。
アキラ、覚えてろよ?

「よくそんなのでキャバ嬢が務まるな」
「な、んで⋯⋯キャバやってるの知ってんの?」
酔ってる時の話し方ってこんなもの?
酔いつぶれた真似するのって難しいわね。
そんな事を歩きながら

「⋯⋯⋯⋯誰かから聞いたんだよ」
「え?誰から?」
「覚えてねぇよ」
確かに何人か仲良い友達には話しているけど、ちゃんと口止めしてるのに誰が?

「お店には……アルコール抜きにする裏ワザが……あんのよ。
カシスオレンジならオレンジジュース、カルーアミルクならミルクティに出来たり、だから弱くても大丈夫なのよ……」
「ふーん、そんなのがあるんだな。あ、タクシー」

タクシーが目の前に止まると、アキラにかつがれるように乗り込まされた。

アキラは何も疑ってなさそう。
意外と私、女優になれるんじゃない?



「〇×区の方まで言ってくれ」
乗り込むとすぐにアキラがそう言った。
「え?」
驚きアキラの顔を見る。
「お前んち〇×区だろ?」

「え……あ……」
確かに〇×区だけど……なんで?
あれ?持ち帰るんじゃないの?

アキラの予想外の発言に、ほろ酔い状態で上手く反応出来ない。

「どうした?」
薄暗いタクシーの後部座席で綺麗な顔が私を覗き込む。

「親に……日付……変わってから帰らないで……って言われてて」
咄嗟とっさに思いついた言い訳を口にした。
言ってしまってから変な言い訳したなと思ったけど、もう遅い。

キャバやってる人が何を言ってるんだと思うはず。
もう計画は失敗かもしれない。

「ふぅん。じゃあうち来るか?」

ではなさそうだ。

「うん」

やっぱり計画は順調のようだ。


…………

……


ふかふかで足も伸ばせる5人がけソファに座らされると、飲み物の入った高級食器ブランドのグラスを手渡された。

「ほら水だ。飲め」
「えっ⋯⋯」
なんで!?

「酔いが覚めるまでここで休んでろ」
「あ、ありが……と」

あれ?
てっきり、すぐに寝室に連れて行かれると思ったのに。
なんで私は今リビングにいる?
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