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俺の犬になれ

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「ほんと、かわいくねぇな」

呆れたように肩をすくめて出てきたアキラを、思いっきり睨みつける。

「アキラに可愛く思われなくて結構!」
「ああ?そういう態度すんなら入れてやんねぇから」
そんな偉そうな事を見下ろし言われてイラっとする。

「ごめんなさいね!どう?これで満足!?」
そう怒り混じりに言ってズカズカと玄関の中に入ろうとすると、お腹に何かが当たった。

視線を下げると、そこには行く手を塞ぐアキラの手があった。

「何?」
睨んで見上げる。

「違うだろ?『ごめんなさい』、だろ?」
綺麗な顔の眉間にシワを入れたアキラが偉そうに、顎を突き出し言う。

そんな言葉に目を逸らしてグッと奥歯を噛んで、声を殺すように嫌々言った。
「ごめん……なさい」

そんな私の様子を見たアキラは呆れたように言う。
「いつからそんなのになったんだよ」
サッと手は避けられてやっと中に入った。

すると、ふわりとアキラの匂いが鼻をついた。



アキラの事は大っ嫌い。
でも、昔っから不思議とアキラの匂いは嫌いではない。
これが何なのかは、今でも分からない。

小さい頃から知ってるからか、懐かしい香りとかそういったものなんだろうか?
お婆ちゃんの家みたいな?けどそんなたぐいではないような⋯⋯。

もっと、心がかき乱されるような……。


「なにボーッと玄関に突っ立ってんだよ。早く入れよ」
「わっ、分かってるわよ!!」

再会してから私達はずっとこの調子。

大学で逃げ切れなかった時は毎回こんな感じで、いがみ合いのような、喧嘩腰けんかごしのような感じ。

小さい頃は全然違う。
でも内心怖いのは変わらない。

アキラは昔っからこんな調子だけど、表面上だけだけど変わったのは私。


「先行ってる」

ヒールのベルトが上手く外れなくて上手く靴が脱げずにいると、アキラは私を玄関に置いていこうとする。

「え、待ってよ!」
「一番奥の部屋で待ってる」

振り向きもせず背中越しにそう言うと、本当に私を置いて行った。

そんな状況に、一人残された広い玄関で呟いた。
「はぁ!?こっから見るだけでもドアが何個も見えるのに、一番奥ってどこよ」
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