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隠れる王
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実際、新人の王宮政務官とは会う機会はない。冷静になって考えてみると、大丈夫だなと安心した。
「陛下、この事案ですが……」
うんうん。宰相がこうやって引き継いでくれるからな。オレは身分を明かすことはできるだけ先延ばしにしたい。ウィルとして接してもらえる友人、仲間は貴重なんだ。この国への思いや考えを忌憚なく話してほしい。あの私塾に集まる者たちの意見は参考になる。
「地図を持ってきてくれるか?陛下に詳しく説明をしたい」
宰相が細かく伝えてくれようとする。地図を持って来たのは………ラッセル!!!???
おいおいおいおい!もうバレたーーーー!
ラッセルが大きな地図を抱え、こちらを見た瞬間、は!?と意表をつかれて動けなくなる。
「何をしている?さっさと置いてゆけ」
宰相が急かす。は、はいっ!とラッセルは慌てて地図を広げて用意し、焦って素早く一礼し、足早に去っていった。
オレは額に手をやった。
「ん?陛下、どうされましたか?」
「あ、いや、なんでもない。議題に入ろう」
スタスタと長い廊下を歩いていくと、柱に人影がいた。セオドアがいち早く気配を察して、スッと前に出る。
「そこにいるのは誰だ!?出てこい!」
両手を広げて出てきたのはラッセルだった。茶色の髪に、強気な鋭い赤みがかった茶色の目をしている。
「陛下にお話があって、お待ちしてました!ご無礼は重々承知しているのですが……」
「セオドア、大丈夫だ。オレもラッセルに話があった」
セオドアは不審な顔をしつつ、後ろへと下がった。
「ラッセル、久しぶりだな。王宮政務官になったんだな」
「ええーっと……陛下だと知らずご無礼をし……」
「前と同じ話し方でいい。無理に変えなくてもいいから、普通に話してくれ」
では!とラッセルはホッとしたように口火を切った。
「ウィルがエイルシア王なんて聞いていない!本物だよな?本当に王様なのか!?まさか!あのクソ生意気なリアンが後宮にはいった理由ってウィルが王だったからなのかーーっ!?いや、これは夢か!?そうだ、夢なのかもしれない!」
……うるさい。勢いが止まらず、どんどん言葉が出てくる。
「ぼーっとしたウィルはどこいったんだ!?金魚のフンみたいにリアンについていたウィルが、あの獅子王なんて嘘だろ!?同一人物か!?」
セオドアが、無礼すぎるので、斬ってもいいですか?と無表情で言う。待て待てとオレは止める。
「悪いが、同一人物だ。騙していたわけではない。隠していたけど……」
「だっ、だよな!?誰も知らなかったんだよな!?」
「そうだ。リアンも知らなかった」
「な、なんだってえええ!?じゃあ、あいつ、王様がウィルだって知らなくて後宮に入ったのか!?……へぇ……リアンはウィルのことが好きだとばかり思っていたから……そうか……ふーん……」
なにがどうなのか知らないが、一人で納得している。
「リアン様はこの国の王妃様です。あいつなどと言って、ご無礼な口を叩かないようにしてほしいものですね」
「あっ!すいません!そんなつもりなかったんです。つい懐かしさのあまりに……」
セオドアが氷点下の冷たさで言うと、慌てて謝るラッセル。
「頼みがある。他のやつらにはオレが王ということは内緒にしておいてほしい。いずれわかってしまうだろうが、なるべく普通のウィルとして会いたいんだ」
「任せろ……じゃなくて、お任せください!このラッセルと陛下との共通の秘め事なんて光栄の極み!」
あれ?ラッセルは異様にテンションが高い?こんなやつだったか?
「なんでもいいが、誰にも言うなよ」
はいっ!といい返事が廊下に響いた。
私塾から他にも王宮勤めの者は現れるだろうが、なるべく長くウィルとして私塾ではいたい。ラッセルが言わないでいてくれることを信じておこう。
絡みつくようなラッセルの視線が気になったが、オレとセオドアは振り返らず歩いて行った。
「陛下、この事案ですが……」
うんうん。宰相がこうやって引き継いでくれるからな。オレは身分を明かすことはできるだけ先延ばしにしたい。ウィルとして接してもらえる友人、仲間は貴重なんだ。この国への思いや考えを忌憚なく話してほしい。あの私塾に集まる者たちの意見は参考になる。
「地図を持ってきてくれるか?陛下に詳しく説明をしたい」
宰相が細かく伝えてくれようとする。地図を持って来たのは………ラッセル!!!???
おいおいおいおい!もうバレたーーーー!
ラッセルが大きな地図を抱え、こちらを見た瞬間、は!?と意表をつかれて動けなくなる。
「何をしている?さっさと置いてゆけ」
宰相が急かす。は、はいっ!とラッセルは慌てて地図を広げて用意し、焦って素早く一礼し、足早に去っていった。
オレは額に手をやった。
「ん?陛下、どうされましたか?」
「あ、いや、なんでもない。議題に入ろう」
スタスタと長い廊下を歩いていくと、柱に人影がいた。セオドアがいち早く気配を察して、スッと前に出る。
「そこにいるのは誰だ!?出てこい!」
両手を広げて出てきたのはラッセルだった。茶色の髪に、強気な鋭い赤みがかった茶色の目をしている。
「陛下にお話があって、お待ちしてました!ご無礼は重々承知しているのですが……」
「セオドア、大丈夫だ。オレもラッセルに話があった」
セオドアは不審な顔をしつつ、後ろへと下がった。
「ラッセル、久しぶりだな。王宮政務官になったんだな」
「ええーっと……陛下だと知らずご無礼をし……」
「前と同じ話し方でいい。無理に変えなくてもいいから、普通に話してくれ」
では!とラッセルはホッとしたように口火を切った。
「ウィルがエイルシア王なんて聞いていない!本物だよな?本当に王様なのか!?まさか!あのクソ生意気なリアンが後宮にはいった理由ってウィルが王だったからなのかーーっ!?いや、これは夢か!?そうだ、夢なのかもしれない!」
……うるさい。勢いが止まらず、どんどん言葉が出てくる。
「ぼーっとしたウィルはどこいったんだ!?金魚のフンみたいにリアンについていたウィルが、あの獅子王なんて嘘だろ!?同一人物か!?」
セオドアが、無礼すぎるので、斬ってもいいですか?と無表情で言う。待て待てとオレは止める。
「悪いが、同一人物だ。騙していたわけではない。隠していたけど……」
「だっ、だよな!?誰も知らなかったんだよな!?」
「そうだ。リアンも知らなかった」
「な、なんだってえええ!?じゃあ、あいつ、王様がウィルだって知らなくて後宮に入ったのか!?……へぇ……リアンはウィルのことが好きだとばかり思っていたから……そうか……ふーん……」
なにがどうなのか知らないが、一人で納得している。
「リアン様はこの国の王妃様です。あいつなどと言って、ご無礼な口を叩かないようにしてほしいものですね」
「あっ!すいません!そんなつもりなかったんです。つい懐かしさのあまりに……」
セオドアが氷点下の冷たさで言うと、慌てて謝るラッセル。
「頼みがある。他のやつらにはオレが王ということは内緒にしておいてほしい。いずれわかってしまうだろうが、なるべく普通のウィルとして会いたいんだ」
「任せろ……じゃなくて、お任せください!このラッセルと陛下との共通の秘め事なんて光栄の極み!」
あれ?ラッセルは異様にテンションが高い?こんなやつだったか?
「なんでもいいが、誰にも言うなよ」
はいっ!といい返事が廊下に響いた。
私塾から他にも王宮勤めの者は現れるだろうが、なるべく長くウィルとして私塾ではいたい。ラッセルが言わないでいてくれることを信じておこう。
絡みつくようなラッセルの視線が気になったが、オレとセオドアは振り返らず歩いて行った。
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