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今さら怠惰にしてろと言われても
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目覚めると、豪勢な部屋に寝かされていた。牢屋から、かなりレベルアップした部屋は、私に起こったことが夢ではなく、生きのびたことを教えてくれる。
「リアン!目が覚めた?僕が治癒魔法かけて、痛そうなところは直したけれど、どこか他に痛いところとか具合悪いところはないか!?大丈夫か!?」
ウィルの声に八ッとした。元に戻っているような……?気がした。オレから僕に呼び方が直ってるし、とりあえずホッとした。激高していたウィルはホントに怖かった。
「うん。ありがとう。ごめんね。迷惑かけてしまったわ」
この場合、なんと言えば良いかわからず、とりあえずお礼から言ってみる。
「いや、もともと僕のせいだ。後宮は危険だとわかっていたのに、遠征へそのまま行ってしまうなんて甘かったよ!リアンは何も心配せず、ゆっくり寝ていてくれ。とりあえず目が覚めたから、メイドを呼ぶよ。食事をとれるならとろう。痩せた気がするよ!立てるか!?手を貸すよ!?」
「……ウィル、落ち着いたのよね?」
私の頬に一筋の汗が流れた。ううっ……やはり元に戻っていない気がする。
ウィルは心配しすぎているのだろうか?不安そうに焦るように捲し立てている。三日ほどで、そこまで痩せるわけがないと思う。
「うん?とっても落ち着いているよ。とりあえず優先的にリアンを回復させてから、ゆっくりと裁こうと思ってるだけだよ」
にーっこり笑うウィルは怖い。今まで、怖い笑みだと思わなかったのに、今はすごーく怖い。……だめだ。まだ怒ってる。
私は、まだ本調子ではないが、頭をフル回転させ、ウィルを落ち着かせようと試みる。
「私は大丈夫よ。ひどい目にはあったけど、ウィル、どうかやりすぎないで。後宮の彼女たちは陛下にずっと会いたくて努力をしていたわ。騒ぎをおこせば陛下の気持ちを向けさせることができると思っていた気持ちもわかるのよ。陛下を慕ってのことなのよ」
「リアン、君の優しさはとても素敵だと思うけど、オレは君にしたことを許せない。王として、ちゃんと法律で裁くから心配しなくて大丈夫だ」
オレ呼びに戻り、顔つきが変わる。説得に失敗してるうううっ!?
「……ほ、法で裁くのよね?ちゃんと法にのっとって裁くのよね?」
「極刑にしたいけど、そこはちゃんと我慢してやるよ。リアンが止めなかったら、あの場で切り刻んでやろうかと思ったけどな」
やはり王のウィルだ。どちらが本物のウィルだったのだろう。少し寂しくなる。いつもボーッとして、ほんわかとした雰囲気でいた彼はどこへいったんだろう?二つの顔を持つウィルに戸惑ってしまう。
「そんな顔をするなよな」
「私の知っているウィルはどこいったの?」
私の困った顔を見て、はぁ……とウィルがため息を吐いた。そして、小さい声でごめんと言った。
「騙すつもりはなかった。私塾では身分を明かさないことが、私塾へ通う条件だと師匠に言われていた。それにオレ自身も王子や王ではない立場で、唯一居られた場所だった」
「後宮に入るときに私に教えてくれなかったのはなぜなの?」
「リアンはオレが王なら喜んで、後宮に入って、王妃になってくれたか?」
私はどうだろう?と即答できず、沈黙した……ウィルが、がっくりと肩を落とした。
「そうだろう?そもそもリアンは王妃になるつもりがないし、嫌がっていたから……。年頃の娘たちを後宮に集めたのは、いつまでも王妃候補を選ばないオレに焦って、勝手に臣下がしたんだ」
私は頭の中で整理しきれなくなってきた。しかし大事なことを一つ確認しとこう。
「あの、その、つまり……ウィルは私のことを?もしかして??」
「気づいてなかった?好きだったよ!ずっとずーっと……初めて会ったときからね」
私は自分で聞いておきながら、思わず布団にガバッと潜り込んだ。おーいとウィルが呼ぶ。引き剥がされる布団。赤面している顔を見られる。
「そんなそぶりなかったじゃないっ!?いつも呑気にボケーとして、私と茶飲み友達のようなほのぼの~とした関係じゃ……」
「リアンは恋愛に興味なかったから、その気になるまで待っていたんだ。それに王様業は多忙で疲れるから、ボケッとのんびりした時間も欲しい。でもリアン、今、顔が赤いよ?そんな顔してくれるなんて、もしかして……脈アリかな?」
「し、知らないわよっ!」
手元のクッションをエイッと投げつける。ボフッとキャッチして、フッと余裕たっぷりに笑うウィル。
私はどうしていいかわからない気持ちになっている。私が、いくら頭脳明晰、天才的と言われても………恋愛は計算外のことが多すぎる!
「まぁ、しばらくリアンはゆっくり休んでいてくれ。安心して、大好きな怠惰な生活していろ。その間に終わらせてくるからな」
ウィルの青い目が危険な色に光る。そう言って、部屋から出ていくウィル。
いや、えっと……怠惰生活は陛下公認になっちゃったの!?戸惑う私。
今さら、怠惰な生活していいよーと言われても、このドキドキする心を落ち着けるにはどうしたらいいのよっ!?
彼が出ていったドアを私は所在なさげに見つめていた。
「リアン!目が覚めた?僕が治癒魔法かけて、痛そうなところは直したけれど、どこか他に痛いところとか具合悪いところはないか!?大丈夫か!?」
ウィルの声に八ッとした。元に戻っているような……?気がした。オレから僕に呼び方が直ってるし、とりあえずホッとした。激高していたウィルはホントに怖かった。
「うん。ありがとう。ごめんね。迷惑かけてしまったわ」
この場合、なんと言えば良いかわからず、とりあえずお礼から言ってみる。
「いや、もともと僕のせいだ。後宮は危険だとわかっていたのに、遠征へそのまま行ってしまうなんて甘かったよ!リアンは何も心配せず、ゆっくり寝ていてくれ。とりあえず目が覚めたから、メイドを呼ぶよ。食事をとれるならとろう。痩せた気がするよ!立てるか!?手を貸すよ!?」
「……ウィル、落ち着いたのよね?」
私の頬に一筋の汗が流れた。ううっ……やはり元に戻っていない気がする。
ウィルは心配しすぎているのだろうか?不安そうに焦るように捲し立てている。三日ほどで、そこまで痩せるわけがないと思う。
「うん?とっても落ち着いているよ。とりあえず優先的にリアンを回復させてから、ゆっくりと裁こうと思ってるだけだよ」
にーっこり笑うウィルは怖い。今まで、怖い笑みだと思わなかったのに、今はすごーく怖い。……だめだ。まだ怒ってる。
私は、まだ本調子ではないが、頭をフル回転させ、ウィルを落ち着かせようと試みる。
「私は大丈夫よ。ひどい目にはあったけど、ウィル、どうかやりすぎないで。後宮の彼女たちは陛下にずっと会いたくて努力をしていたわ。騒ぎをおこせば陛下の気持ちを向けさせることができると思っていた気持ちもわかるのよ。陛下を慕ってのことなのよ」
「リアン、君の優しさはとても素敵だと思うけど、オレは君にしたことを許せない。王として、ちゃんと法律で裁くから心配しなくて大丈夫だ」
オレ呼びに戻り、顔つきが変わる。説得に失敗してるうううっ!?
「……ほ、法で裁くのよね?ちゃんと法にのっとって裁くのよね?」
「極刑にしたいけど、そこはちゃんと我慢してやるよ。リアンが止めなかったら、あの場で切り刻んでやろうかと思ったけどな」
やはり王のウィルだ。どちらが本物のウィルだったのだろう。少し寂しくなる。いつもボーッとして、ほんわかとした雰囲気でいた彼はどこへいったんだろう?二つの顔を持つウィルに戸惑ってしまう。
「そんな顔をするなよな」
「私の知っているウィルはどこいったの?」
私の困った顔を見て、はぁ……とウィルがため息を吐いた。そして、小さい声でごめんと言った。
「騙すつもりはなかった。私塾では身分を明かさないことが、私塾へ通う条件だと師匠に言われていた。それにオレ自身も王子や王ではない立場で、唯一居られた場所だった」
「後宮に入るときに私に教えてくれなかったのはなぜなの?」
「リアンはオレが王なら喜んで、後宮に入って、王妃になってくれたか?」
私はどうだろう?と即答できず、沈黙した……ウィルが、がっくりと肩を落とした。
「そうだろう?そもそもリアンは王妃になるつもりがないし、嫌がっていたから……。年頃の娘たちを後宮に集めたのは、いつまでも王妃候補を選ばないオレに焦って、勝手に臣下がしたんだ」
私は頭の中で整理しきれなくなってきた。しかし大事なことを一つ確認しとこう。
「あの、その、つまり……ウィルは私のことを?もしかして??」
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私は自分で聞いておきながら、思わず布団にガバッと潜り込んだ。おーいとウィルが呼ぶ。引き剥がされる布団。赤面している顔を見られる。
「そんなそぶりなかったじゃないっ!?いつも呑気にボケーとして、私と茶飲み友達のようなほのぼの~とした関係じゃ……」
「リアンは恋愛に興味なかったから、その気になるまで待っていたんだ。それに王様業は多忙で疲れるから、ボケッとのんびりした時間も欲しい。でもリアン、今、顔が赤いよ?そんな顔してくれるなんて、もしかして……脈アリかな?」
「し、知らないわよっ!」
手元のクッションをエイッと投げつける。ボフッとキャッチして、フッと余裕たっぷりに笑うウィル。
私はどうしていいかわからない気持ちになっている。私が、いくら頭脳明晰、天才的と言われても………恋愛は計算外のことが多すぎる!
「まぁ、しばらくリアンはゆっくり休んでいてくれ。安心して、大好きな怠惰な生活していろ。その間に終わらせてくるからな」
ウィルの青い目が危険な色に光る。そう言って、部屋から出ていくウィル。
いや、えっと……怠惰生活は陛下公認になっちゃったの!?戸惑う私。
今さら、怠惰な生活していいよーと言われても、このドキドキする心を落ち着けるにはどうしたらいいのよっ!?
彼が出ていったドアを私は所在なさげに見つめていた。
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