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前世は絶世の美女
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「逃げてください!セレナ様!」
「敵襲です!城まで敵はきております!」
ドンッという爆発音が起こる。いくつもあがる悲鳴。煙が充満してくる。
……ここで、死ぬの?
小国の王女として生まれた私は、その立ち姿は可憐な花のよう。歌や楽器を奏でれば鳥が共に歌う。微笑めば誰もが目を奪われ魅了されてしまうという美しいセレナ王女の噂は他国にまで知れ渡っていた。
しかし、今は美しさなど、なんの役にも立たない。体が弱く、寝込んでばかりの私は体力がなく、逃げきれず、簡単に倒れた。
「私はもう動けないわ、みんな、逃げて生きてちょうだい……今までありがとう」
メイドや護衛騎士たちが、置いていけません!と言う。私は一緒に死んではダメよと説得する。皆は涙を流しながら逃げていく。
煙と炎が爆ぜる音を聞く。目を閉じる。
最期に思い浮かんだのは、少年の姿の王だった。私の旦那様。幼く優しいあの方は泣くわ。だから死にたくないのに。涙を零させたくないのに……。
「セレナーーっ!」
思い出したら、空耳まで聞こえてきたわ。まさかこんなところまで助けに来てくれたの?
「だめだ!死ぬな!」
幼い彼とは年の差のある政治絡みの政略結婚だった。幼くして王になり、真っ直ぐで一生懸命王としての責務をこなそうとする彼に惹かれ、誰になんと言われようと私は心から愛していた。
「ガルディン………さ…ま?」
「こんなことなら、セレナを傍に置いておくべきだった!」
里帰りの許可を出してくれたのはガルディン様だった。私にいつでも顔を見てくるといいよと好きな時に、家族に会わせてくれた。自分は家族と仲が悪いから羨ましいなって……優しくてちょっと寂しい王。
倒れていた私を小さな体で、そっと抱きしめる。褐色の肌にエメラルドのように綺麗な碧の目からポロポロと泣いている涙が頬に落ちる。やっぱり泣かせてしまったわ。でも最期に会えてよかった。ちゃんと伝えたい……。
愛していると。私がいなくなっても幸せに生きてほしいと。でも不甲斐ない体は唇も指一本ですら動かないようです。
ガルディンの泣いてる涙を拭ってさしあげたいのに、それすらできないのです。こんな弱い自分は本当に嫌です。ごめんなさい。
涙が頬を伝う。限界がきて目も開けられなくなる。彼を残していく、私の心は張り裂けそうなほど悲しみで満ちていた。
どうか神様がいらっしゃるなら、次は私はか弱い絶世の美女ではなく、逞しく強い人にしてください。こんな弱い私は嫌。大切な人を救えるくらい強くなりたい。
そんな切なく儚げな恋物語のような記憶を持って転生した現在の私は王女でも貴族でもなかった。ド平民。
……どころか孤児院暮らしの貧民だった。前世とのギャップが凄すぎる。
「ニーナ!終わったのかい!?」
「あと少しです」
グズだね!と孤児院の院長が通り過ぎる時、冷たい言葉を吐き捨てていく。
私は気にせず、パンッと皺を伸ばして、シーツを乾かす。今日はお天気が良くてしっかり乾きそう。パタパタと風に揺れる白い布達。
重い薪を軽々と持ち、薪割り台に置き、斧を振りかざして、一刀で割る。アハハと笑い声がした。
「相変わらず、ニーナは馬鹿力だな!」
「女のくせに、怪力だしな」
他の孤児達がそう言ってからかう。
「もうっ!手伝ってくれてもいいのよ!?」
やーだよ!と走り去っていく。私は人並み以上の力と体力。そして風邪1つひいたことのない病気知らずの丈夫な体を持って生まれ変わった。
どうやら神様は願いを叶えてくれたらしい。こういう方向で……いや、嬉しいけど、なぜか方向性について神様と話し合いたくなる。
小さい頃から孤児院で過ごしてきた。両親の顔は知らない。魔物に食われていたと院長先生に話を聞いたことがある。
こないだ16歳になったばかりの私はタダ働きさせられ、孤児院から出ることもなく、毎日、働く。体が動く限り。
魔物が日常的に闊歩する貧しいこの国では余裕がない。毎日、小さなパンがもらえ、街に住んで、魔物から守ってもらえるだけ良いのかもしれない。1つの村が魔物によって消えた……なんて話も聞く。
前世ではなんでも持っていた。手に入らないものは、私のことを好きな人達が貢いでくれていた。ベルを鳴らせばメイドがやってきてなんだってしてくれる……それが羨ましい?
ううん。そんなこと無い。この丈夫な体とパワーに変えられるものなんてなにもない!
世間でいうと、不幸な部類なのかもしれないが、健康が一番だと知ってる私は十分幸せ。
結婚や恋?あのガルディン様を越える方に出会えるかしら?答えは否よ!一生独身でも良いわ。ガルディン様との思い出を胸に生きていきたい。愛おしい少年の王を思い出して、私は時々切なくなるのだった。
またガルディン様に会えることを夢見てる。
16歳になったのに『こじらせ夢見る乙女』の私だった。
今はとりあえず、夢を見てる場合ではない。目の前のお腹が空いた子たちの食事作りをしなくっちゃ!
小さな菜園に植えた葉をプチッと採取する。葉っぱがスクスク育って、良い出来ね。今日のスープは……今日のスープも葉っぱのスープよ!美味しいの作るわよーっ!
また葉っぱか……というみんなの声がした気がした。
「敵襲です!城まで敵はきております!」
ドンッという爆発音が起こる。いくつもあがる悲鳴。煙が充満してくる。
……ここで、死ぬの?
小国の王女として生まれた私は、その立ち姿は可憐な花のよう。歌や楽器を奏でれば鳥が共に歌う。微笑めば誰もが目を奪われ魅了されてしまうという美しいセレナ王女の噂は他国にまで知れ渡っていた。
しかし、今は美しさなど、なんの役にも立たない。体が弱く、寝込んでばかりの私は体力がなく、逃げきれず、簡単に倒れた。
「私はもう動けないわ、みんな、逃げて生きてちょうだい……今までありがとう」
メイドや護衛騎士たちが、置いていけません!と言う。私は一緒に死んではダメよと説得する。皆は涙を流しながら逃げていく。
煙と炎が爆ぜる音を聞く。目を閉じる。
最期に思い浮かんだのは、少年の姿の王だった。私の旦那様。幼く優しいあの方は泣くわ。だから死にたくないのに。涙を零させたくないのに……。
「セレナーーっ!」
思い出したら、空耳まで聞こえてきたわ。まさかこんなところまで助けに来てくれたの?
「だめだ!死ぬな!」
幼い彼とは年の差のある政治絡みの政略結婚だった。幼くして王になり、真っ直ぐで一生懸命王としての責務をこなそうとする彼に惹かれ、誰になんと言われようと私は心から愛していた。
「ガルディン………さ…ま?」
「こんなことなら、セレナを傍に置いておくべきだった!」
里帰りの許可を出してくれたのはガルディン様だった。私にいつでも顔を見てくるといいよと好きな時に、家族に会わせてくれた。自分は家族と仲が悪いから羨ましいなって……優しくてちょっと寂しい王。
倒れていた私を小さな体で、そっと抱きしめる。褐色の肌にエメラルドのように綺麗な碧の目からポロポロと泣いている涙が頬に落ちる。やっぱり泣かせてしまったわ。でも最期に会えてよかった。ちゃんと伝えたい……。
愛していると。私がいなくなっても幸せに生きてほしいと。でも不甲斐ない体は唇も指一本ですら動かないようです。
ガルディンの泣いてる涙を拭ってさしあげたいのに、それすらできないのです。こんな弱い自分は本当に嫌です。ごめんなさい。
涙が頬を伝う。限界がきて目も開けられなくなる。彼を残していく、私の心は張り裂けそうなほど悲しみで満ちていた。
どうか神様がいらっしゃるなら、次は私はか弱い絶世の美女ではなく、逞しく強い人にしてください。こんな弱い私は嫌。大切な人を救えるくらい強くなりたい。
そんな切なく儚げな恋物語のような記憶を持って転生した現在の私は王女でも貴族でもなかった。ド平民。
……どころか孤児院暮らしの貧民だった。前世とのギャップが凄すぎる。
「ニーナ!終わったのかい!?」
「あと少しです」
グズだね!と孤児院の院長が通り過ぎる時、冷たい言葉を吐き捨てていく。
私は気にせず、パンッと皺を伸ばして、シーツを乾かす。今日はお天気が良くてしっかり乾きそう。パタパタと風に揺れる白い布達。
重い薪を軽々と持ち、薪割り台に置き、斧を振りかざして、一刀で割る。アハハと笑い声がした。
「相変わらず、ニーナは馬鹿力だな!」
「女のくせに、怪力だしな」
他の孤児達がそう言ってからかう。
「もうっ!手伝ってくれてもいいのよ!?」
やーだよ!と走り去っていく。私は人並み以上の力と体力。そして風邪1つひいたことのない病気知らずの丈夫な体を持って生まれ変わった。
どうやら神様は願いを叶えてくれたらしい。こういう方向で……いや、嬉しいけど、なぜか方向性について神様と話し合いたくなる。
小さい頃から孤児院で過ごしてきた。両親の顔は知らない。魔物に食われていたと院長先生に話を聞いたことがある。
こないだ16歳になったばかりの私はタダ働きさせられ、孤児院から出ることもなく、毎日、働く。体が動く限り。
魔物が日常的に闊歩する貧しいこの国では余裕がない。毎日、小さなパンがもらえ、街に住んで、魔物から守ってもらえるだけ良いのかもしれない。1つの村が魔物によって消えた……なんて話も聞く。
前世ではなんでも持っていた。手に入らないものは、私のことを好きな人達が貢いでくれていた。ベルを鳴らせばメイドがやってきてなんだってしてくれる……それが羨ましい?
ううん。そんなこと無い。この丈夫な体とパワーに変えられるものなんてなにもない!
世間でいうと、不幸な部類なのかもしれないが、健康が一番だと知ってる私は十分幸せ。
結婚や恋?あのガルディン様を越える方に出会えるかしら?答えは否よ!一生独身でも良いわ。ガルディン様との思い出を胸に生きていきたい。愛おしい少年の王を思い出して、私は時々切なくなるのだった。
またガルディン様に会えることを夢見てる。
16歳になったのに『こじらせ夢見る乙女』の私だった。
今はとりあえず、夢を見てる場合ではない。目の前のお腹が空いた子たちの食事作りをしなくっちゃ!
小さな菜園に植えた葉をプチッと採取する。葉っぱがスクスク育って、良い出来ね。今日のスープは……今日のスープも葉っぱのスープよ!美味しいの作るわよーっ!
また葉っぱか……というみんなの声がした気がした。
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