2つのくまと恋

カエデネコ

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幼い恋の行方

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 高校生の頃、テーマパークでデートした時に、おそろいのくまのぬいぐるみのキーホルダーを買った。

『一緒にずっといよう』

 幼い恋をしていた僕らはそう約束した。

 僕は男だったし、皆に見つかって冷やかされると恥ずかしいからと、カバンの中にこっそり入れていた。

 彼女は嬉しそうに堂々とつけていた。

 でも高校を卒業と同時に僕たちは別れた。進学先が離れてしまったからだ。

 最初は遠距離恋愛も考えたけれど、関東と関西。互いに新しい生活が始まり、それどころじゃなくなるよねと話した。追いかける夢も場も違う。

 だんだん来なくなる連絡を待つことが、互いに嫌だったのかもしれない。

 二人で決めたのに、彼女は少し寂しそうで、見送りの日に駅に来てくれた時は、目が潤んでいた。そんな顔されたら決心が鈍るよと僕は言った。

 あれから10年たった。

 同窓会で、出会った彼女は、すっかり大人の女性になっていた。背がスラリとたかくてモデルのようで、肩ほどまでの髪も長くなっていた。学校の先生をしていると言っていた。

 会話の途中、ふと見た先に、彼女のカバンには、お揃いで買ったくまのぬいぐるみのキーホルダーがついていた。一瞬、僕は息が止まった。

「これって?もしかして?」

 一生懸命、出した声がかすれてしまった。動揺したのがバレただろうか?

「覚えていた?」

「覚えてるよ」

 僕はポケットから同じくまのぬいぐるみのキーホルダーを取り出した。彼女の目が丸くなった。

『なんで持ってきたの?』

 同じことを同時に尋ねた。思わず、フフッ、ハハッと笑いが出た。

「まだ約束は有効なのかな?」

 彼女は高校生のような無邪気な笑顔になる。きっと僕も今、鏡を見たら、同じように高校生に戻った幼い表情をしてるかもしれない。

「もちろんだよ」

 僕はそう彼女に答えた。

 あの頃より、古びてしまって、少し汚れたくまのぬいぐるみのキーホルダーにありがとうと小さく呟いた。
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