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思考する賢者達
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ジーニーと私とリヴィオは執務室にいた。カシュー領の決算書を見て、この夏の観光がうまく行ったなぁとニヤリと笑った男二人。
「これで領地を買った元は順調にとれそうだし、カシューの民も豊かになってきたことを実感できそうだ」
「リヴィオは内政向きだよな。意外と細いところまで組織を作り上げてる」
意外ってなんだよ?とリヴィオが言うとジーニーが褒めてるんだよとニッコリ笑った。
「セイラの体調は大丈夫なのか?顔色、ずっと悪くないか?」
ふと、ジーニーがそう言う。人のことをよく気づく気配りの人だなぁと思う。私は温かいお茶を一口飲んで、大丈夫よと笑うとホッとしたように、そうか……と茶色の瞳を優しく細めた。
リヴィオはじーっと書類の間から金色の目でみつめている……まさか?今更そんなヤキモチとかじゃないわよね?ジーニーもその視線に気づいて、苦笑する。
「えーと、温泉の方も順調だし、銭湯の数も増えた……もうウィンディム王国では温泉に入ることは習慣になってきたと言って良い。生活様式を変えた家電製品物も相変わらず売れ行きがいい」
ジーニーが数字を見ながら説明する。
「ジーニー、書類を見て、わかることを伝えるためにオレとセイラとおまえが集まりたいと言ったわけじゃねーよな?本題はなんだ?何か気になることがあるんじゃないか?」
パサッとリヴィオは紙の束を机に置いた。一瞬、私を見るジーニー……なるほど、私は気づく。喋りながら、体調の優れない私に話そうかどうしようか迷っていたようだ。
「私の体調は大丈夫よ。時期が来れば治るものだとアランも言ってたわ。私にも話してほしいわ」
ああ……と頷くジーニー。
「実は知識の塔の賢者が1つの仮定を生み出した。天空の地には何があるのか?と」
私とリヴィオは顔を見合わせた。確かに一度、神殿深部で美しい景色と戦の様子を見ただけで、その内部はわからない。
「賢者ブリジットは天空の地については知らないらしい。彼女が受け継いで来たのは転移装置の仕組みがほとんどだと……しかし彼女の一族が言っていたことがある。それが気になり、他の賢者を集結させ、三賢者で話し合ったらしい」
「気になること?あの変なバーさんが?」
ジーニーが変人たちの集いだけど、能力は本物だぞと笑う。
「天空の地は世界の始まりと終わりの場所……そんな言い方をしていたらしい」
「それは不気味ね……」
私がそう感じて呟く。
「賢者達もそう思ったらしい。もしかしたら天空の地には何かあり、軽々しく踏み入れてはならない地なのではないかと心配している」
「賢者達の見解はわりと当たるのよね」
私が不安そうに言うと、リヴィオが確かに変人たちだけど、オレたちには見えないものが見えてるものがあるなと力を認める。
「世界に影響するような何かが、あの地になければいいのだがということだった。特にブリジットが気にしている」
ルノールの民の血を引く賢者か……とリヴィオが言う。
「ミラに内部のことまで記憶が戻ってるのかしら?戻ってるなら……何か危険があるならば話してくれる気がするのだけど……」
そうだよなとリヴィオも同意した。ジーニーは肩をすくめる。
「あくまでも賢者が憂慮してるだけだからね。一応、天空の地に行くならば、頭の隅においておいてほしいと思って話したんだ」
「わかった。気をつける。忠告ありがとうと賢者達に伝えてくれ」
ああ……と頷くジーニーだった。
「久しぶりに『花葉亭』の風呂に行こうかな。リヴィオも一緒にどうかな?」
「そうだな。たまにジーニーと行くか」
二人は話が終わると、立ち上がり、タオルを片手に去っていく。なんのかんのと仲が良い二人だなぁと親友っていいなぁと私は思った。
天空の地……窓を開けて、空を見上げて見る。すでに気候は冬になっていて、冬空は青く晴れていても寒々としている。
この空の上のどこかにあるのよねと冷たい空気と共に私の中で見てみたい気持ちと畏怖の気持ちが混ざりあった。
「これで領地を買った元は順調にとれそうだし、カシューの民も豊かになってきたことを実感できそうだ」
「リヴィオは内政向きだよな。意外と細いところまで組織を作り上げてる」
意外ってなんだよ?とリヴィオが言うとジーニーが褒めてるんだよとニッコリ笑った。
「セイラの体調は大丈夫なのか?顔色、ずっと悪くないか?」
ふと、ジーニーがそう言う。人のことをよく気づく気配りの人だなぁと思う。私は温かいお茶を一口飲んで、大丈夫よと笑うとホッとしたように、そうか……と茶色の瞳を優しく細めた。
リヴィオはじーっと書類の間から金色の目でみつめている……まさか?今更そんなヤキモチとかじゃないわよね?ジーニーもその視線に気づいて、苦笑する。
「えーと、温泉の方も順調だし、銭湯の数も増えた……もうウィンディム王国では温泉に入ることは習慣になってきたと言って良い。生活様式を変えた家電製品物も相変わらず売れ行きがいい」
ジーニーが数字を見ながら説明する。
「ジーニー、書類を見て、わかることを伝えるためにオレとセイラとおまえが集まりたいと言ったわけじゃねーよな?本題はなんだ?何か気になることがあるんじゃないか?」
パサッとリヴィオは紙の束を机に置いた。一瞬、私を見るジーニー……なるほど、私は気づく。喋りながら、体調の優れない私に話そうかどうしようか迷っていたようだ。
「私の体調は大丈夫よ。時期が来れば治るものだとアランも言ってたわ。私にも話してほしいわ」
ああ……と頷くジーニー。
「実は知識の塔の賢者が1つの仮定を生み出した。天空の地には何があるのか?と」
私とリヴィオは顔を見合わせた。確かに一度、神殿深部で美しい景色と戦の様子を見ただけで、その内部はわからない。
「賢者ブリジットは天空の地については知らないらしい。彼女が受け継いで来たのは転移装置の仕組みがほとんどだと……しかし彼女の一族が言っていたことがある。それが気になり、他の賢者を集結させ、三賢者で話し合ったらしい」
「気になること?あの変なバーさんが?」
ジーニーが変人たちの集いだけど、能力は本物だぞと笑う。
「天空の地は世界の始まりと終わりの場所……そんな言い方をしていたらしい」
「それは不気味ね……」
私がそう感じて呟く。
「賢者達もそう思ったらしい。もしかしたら天空の地には何かあり、軽々しく踏み入れてはならない地なのではないかと心配している」
「賢者達の見解はわりと当たるのよね」
私が不安そうに言うと、リヴィオが確かに変人たちだけど、オレたちには見えないものが見えてるものがあるなと力を認める。
「世界に影響するような何かが、あの地になければいいのだがということだった。特にブリジットが気にしている」
ルノールの民の血を引く賢者か……とリヴィオが言う。
「ミラに内部のことまで記憶が戻ってるのかしら?戻ってるなら……何か危険があるならば話してくれる気がするのだけど……」
そうだよなとリヴィオも同意した。ジーニーは肩をすくめる。
「あくまでも賢者が憂慮してるだけだからね。一応、天空の地に行くならば、頭の隅においておいてほしいと思って話したんだ」
「わかった。気をつける。忠告ありがとうと賢者達に伝えてくれ」
ああ……と頷くジーニーだった。
「久しぶりに『花葉亭』の風呂に行こうかな。リヴィオも一緒にどうかな?」
「そうだな。たまにジーニーと行くか」
二人は話が終わると、立ち上がり、タオルを片手に去っていく。なんのかんのと仲が良い二人だなぁと親友っていいなぁと私は思った。
天空の地……窓を開けて、空を見上げて見る。すでに気候は冬になっていて、冬空は青く晴れていても寒々としている。
この空の上のどこかにあるのよねと冷たい空気と共に私の中で見てみたい気持ちと畏怖の気持ちが混ざりあった。
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