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真夏の夜の舞台劇
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『真夏の夜の舞台劇inナシュレ』何週間も前からチラシが街中に貼られていた。誰もが楽しみにしていたが、やっと今夜決行だ。
街の中では屋台やイルミネーションを飾り付けし、お祭り状態だった。足取り軽く、街の人や観光で来た人達が歩いている。リヴィオと私は舞台のある広場へきた。
「なにか作っているの?」
トトとテテがいた。2人は舞台装置を作っていた。
「我らも参加するのだ!」
「げ、劇に!?演技できるの!?」
双子ちゃんが演じている姿を見たことがない!二人は金づちとドライバーを持ち、呆れた様に私を見る。
「何言ってるのだ……舞台装置係なのだー」
「みんなを驚かせる装置を作るのだっ!」
あ、そっち……。でも二人なら、すごい装置になりそうとちょっとドキドキするわ。
「ほどほどにしとけよ」
リヴィオも無理すんなよ!安全第一だぞ!と念を押した。トトとテテはわかってるのだ!と言いつつもニヤリと笑みを浮かべていた。
舞台の劇の内容はニナがよく歌っている光の鳥の神と人の娘との恋愛の話。
ミラが見に来ていて、額に手を当てる。
「全世界に時を越えて晒されてる!?恥ずかしいんだけど!?誰よ!?広めたのは!?」
話の元の張本人がここにいる。正しくは前世の自分の恥ずかしさに悶えている。
「ち、ちがうのよ!もっと戦闘的な協力者のような関係なのよっ!」
舞台では情熱的に演じられている。直視できない……とミラが顔を覆っている。と、その時ワァ!と歓声が上がる。クライマックス!鳥役の人が空中に浮かんでいる。トトとテテの舞台装置!!
「すごい迫力だ!」
「あ!舞台がっ!上がっていく!」
ゴゴゴと音と共に舞台の中央が膨らみ、階段になる。そこから降りてくる役者さん。
「すごい!本格的な舞台装置だわ」
まるでタカラ○カのような!!私は思わず声をあげた。周りの観客もおおおー!と驚いている。
「トトとテテの才能がすげーな。舞台装置まで作れるのかよ……なんかさ、装置がすごすぎて、内容が頭に入ってこない」
リヴィオが大丈夫だ!と変な励ましをミラにかけた。確かに!これは初見では装置しか頭に残らない!
「役者さんに悪いから、二、三回観るしかないわね」
私がそう言うと、そんなじっくり観なくていいからっ!とミラが言う。
その後は屋台で好きなものを買って食べる。ナシュレの街はイルミネーションで輝き、キラキラとしていた。
屋台の良い匂いがしてくる。イカ焼き、いちご飴、焼きそば、サンドイッチ、カップスープ、カラフルな綿菓子など買って、ベンチに座る。
「はぁ……ナシュレはすごいわ」
ミラが嘆息した。リヴィオは首を傾げる。
「トーラディム王国の王都のほうがでかいだろ?」
「活気があるのよ。二人が大事にしてるのが伝わる。街の人も幸せそうだし、みんな笑顔で楽しそう。セイラとリヴィオの力はすごいわ」
そう言ってくれて嬉しいわと私は頬が緩む。ミラが子どもの可愛らしい姿でパクッと食べている。
「私も誰にも文句言われなくて、キサに釣り合う人だったら良かったのになぁ」
本音がついポロッと出てしまったのだろう。以前、彼女は陛下とはどっちの道も選べない。そんな日が来ることを私は覚悟している。そう言った。だけど、本当の気持ちは違う。
私もリヴィオもその小さな声を聞こえないふりをした。そのほうが今は……良い。彼女は子どもの姿であったが、大人びた表情で、悲しそうで切ない顔をしていた。
命をかけてまで、世界を救ったのにそれを知られることはない。そして平民の出自から王妃にもなれない。力が無くなった今、大神官長にもなれない。ルノールの民として知られる彼女はトーラディム王国から自由に離れることも叶わない。
どうかみんなが幸せな未来を歩けるようにと、ナシュレの街の人たちが私達の前を通るときにセイラ様!リヴィオ様!と楽しい笑顔で親しげに手を振って行くたびに、そう思うのだった。
街の中では屋台やイルミネーションを飾り付けし、お祭り状態だった。足取り軽く、街の人や観光で来た人達が歩いている。リヴィオと私は舞台のある広場へきた。
「なにか作っているの?」
トトとテテがいた。2人は舞台装置を作っていた。
「我らも参加するのだ!」
「げ、劇に!?演技できるの!?」
双子ちゃんが演じている姿を見たことがない!二人は金づちとドライバーを持ち、呆れた様に私を見る。
「何言ってるのだ……舞台装置係なのだー」
「みんなを驚かせる装置を作るのだっ!」
あ、そっち……。でも二人なら、すごい装置になりそうとちょっとドキドキするわ。
「ほどほどにしとけよ」
リヴィオも無理すんなよ!安全第一だぞ!と念を押した。トトとテテはわかってるのだ!と言いつつもニヤリと笑みを浮かべていた。
舞台の劇の内容はニナがよく歌っている光の鳥の神と人の娘との恋愛の話。
ミラが見に来ていて、額に手を当てる。
「全世界に時を越えて晒されてる!?恥ずかしいんだけど!?誰よ!?広めたのは!?」
話の元の張本人がここにいる。正しくは前世の自分の恥ずかしさに悶えている。
「ち、ちがうのよ!もっと戦闘的な協力者のような関係なのよっ!」
舞台では情熱的に演じられている。直視できない……とミラが顔を覆っている。と、その時ワァ!と歓声が上がる。クライマックス!鳥役の人が空中に浮かんでいる。トトとテテの舞台装置!!
「すごい迫力だ!」
「あ!舞台がっ!上がっていく!」
ゴゴゴと音と共に舞台の中央が膨らみ、階段になる。そこから降りてくる役者さん。
「すごい!本格的な舞台装置だわ」
まるでタカラ○カのような!!私は思わず声をあげた。周りの観客もおおおー!と驚いている。
「トトとテテの才能がすげーな。舞台装置まで作れるのかよ……なんかさ、装置がすごすぎて、内容が頭に入ってこない」
リヴィオが大丈夫だ!と変な励ましをミラにかけた。確かに!これは初見では装置しか頭に残らない!
「役者さんに悪いから、二、三回観るしかないわね」
私がそう言うと、そんなじっくり観なくていいからっ!とミラが言う。
その後は屋台で好きなものを買って食べる。ナシュレの街はイルミネーションで輝き、キラキラとしていた。
屋台の良い匂いがしてくる。イカ焼き、いちご飴、焼きそば、サンドイッチ、カップスープ、カラフルな綿菓子など買って、ベンチに座る。
「はぁ……ナシュレはすごいわ」
ミラが嘆息した。リヴィオは首を傾げる。
「トーラディム王国の王都のほうがでかいだろ?」
「活気があるのよ。二人が大事にしてるのが伝わる。街の人も幸せそうだし、みんな笑顔で楽しそう。セイラとリヴィオの力はすごいわ」
そう言ってくれて嬉しいわと私は頬が緩む。ミラが子どもの可愛らしい姿でパクッと食べている。
「私も誰にも文句言われなくて、キサに釣り合う人だったら良かったのになぁ」
本音がついポロッと出てしまったのだろう。以前、彼女は陛下とはどっちの道も選べない。そんな日が来ることを私は覚悟している。そう言った。だけど、本当の気持ちは違う。
私もリヴィオもその小さな声を聞こえないふりをした。そのほうが今は……良い。彼女は子どもの姿であったが、大人びた表情で、悲しそうで切ない顔をしていた。
命をかけてまで、世界を救ったのにそれを知られることはない。そして平民の出自から王妃にもなれない。力が無くなった今、大神官長にもなれない。ルノールの民として知られる彼女はトーラディム王国から自由に離れることも叶わない。
どうかみんなが幸せな未来を歩けるようにと、ナシュレの街の人たちが私達の前を通るときにセイラ様!リヴィオ様!と楽しい笑顔で親しげに手を振って行くたびに、そう思うのだった。
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