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嵐の日のお客様
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ザザンッと音を立てる波。今日は嵐が近く『海鳴亭』の窓の外の海の景色も荒々しく、暗い色をしている。
外は嵐。窓辺にずっと浮かない様子で、立ったままの青年がいた。
「いらしてから、ああやって海を眺めているんですよ」
どうしたのかしら……?
「お客様。どうされました?」
ハッと驚いた顔をした青年はやや困ったようにオドオドとし、話し出す。
「えっ……えっと……嵐がすごいな……って……夏の嵐すごいですね!」
「そうですね。夏に一度大きな嵐が来ますね。せっかくいらしたのに、天気が悪くてすみません」
「いえいえいえ!……そんなことありません。天気ばかりはどうしようもないですしね!」
私は今日はお客さんが少ないので、と喫茶コーナーに誘う。ここからでも外の様子は大きな窓ガラスから見える。
「コーヒーでよろしいですか?サービスです」
「ありがとうございます」
青年は身なりが良い。貴族だろうか?コーヒーを飲む所作も綺麗である。
「気を使わせてしまい、すいません。実は僕、『海鳴亭』がオープンした時、来たんです。それ以来なんです」
「またいらしてくれて、嬉しいです」
「貧乏貴族にはけっこう贅沢な温泉旅館なので、なかなか来れませんでした」
アハハと乾いた笑いをする青年。また視線を戻し、窓の外を気にしている。
「あーあー……やっぱりこんな嵐じゃ無理かな」
「誰か待っているのですか?そういえば……まだキャンセルされてないお客様が2名ほどいますね」
ふと気づく。しかしこの嵐じゃ来れないだろうと思い、キャンセルじゃないかな?とスタッフと話していたのだった。
その時だった。玄関から賑やかな男性二名が雨風と共にワアワア言いながら入ってきたのは。
「ひでー!なんだよ!この雨」
「だんだん強くなってきて、来れないかと思ったよなぁ!」
びしょ濡れの二人はひどい格好の割に明るく笑い合っていた。そして、こちらを見ると更に笑う。
「アハハ!なんだよ!アレックスは先に来てたのかよーっ!」
「約束の時間の何時間前から待機してたんだよー!さすが心配性の男だなっ!」
二人共!と駆け寄る青年貴族のアレックス。
「まさか来てくれると思わなかったよ、大丈夫だったかい?」
「これのどこが大丈夫に見えるんだよ!?」
賑やかな玄関ホール。びしょ濡れの二人に私はクスクス笑いつつ、タオルを差し出す。
「仲がよろしいのですね。怪我がなく、ご無事に来られて本当に良かったです。無茶なさいますね」
すいませーん!と軽く言って笑うびしょ濡れの二人。若い青年達は楽しそうな笑い声をあげている。
「僕たち、同じ学校に通ってて、卒業してから初めて会おうってなって、奮発して僕の大好きな『海鳴亭』に予約してたんですが、こんな嵐じゃ無理だって諦めてました」
「学生の時、3人でけっこう馬鹿なことしてて、いつも楽しかったよなー!」
「俺も久しぶりに会えるからさ!アレックスが待ってるから絶対に行こうぜ!って言って嵐に突撃したんだ!」
私はこの3人が再会する大切な場に『海鳴亭』を選んでくれたことが嬉しかった。
「えーと、楽しい会話の前に、温泉に入って温まるといいですよ。風邪ひいちゃいます!すぐ用意しますね!お風呂後は温かい料理をお出しできるようにしておきますから」
ありがとうございます!と3人は大浴場へとむかっていく。
「若いって良いわねー。嵐になんて負けないくらいの元気良さね」
しみじみ私が、言うと、スタッフに女将もまだ若いですよ!と笑われる。
外は嵐。暗くて激しい雨風は続いている。だけど温泉旅館の中は笑い声が絶えず、明るさで溢れている。
外は嵐。窓辺にずっと浮かない様子で、立ったままの青年がいた。
「いらしてから、ああやって海を眺めているんですよ」
どうしたのかしら……?
「お客様。どうされました?」
ハッと驚いた顔をした青年はやや困ったようにオドオドとし、話し出す。
「えっ……えっと……嵐がすごいな……って……夏の嵐すごいですね!」
「そうですね。夏に一度大きな嵐が来ますね。せっかくいらしたのに、天気が悪くてすみません」
「いえいえいえ!……そんなことありません。天気ばかりはどうしようもないですしね!」
私は今日はお客さんが少ないので、と喫茶コーナーに誘う。ここからでも外の様子は大きな窓ガラスから見える。
「コーヒーでよろしいですか?サービスです」
「ありがとうございます」
青年は身なりが良い。貴族だろうか?コーヒーを飲む所作も綺麗である。
「気を使わせてしまい、すいません。実は僕、『海鳴亭』がオープンした時、来たんです。それ以来なんです」
「またいらしてくれて、嬉しいです」
「貧乏貴族にはけっこう贅沢な温泉旅館なので、なかなか来れませんでした」
アハハと乾いた笑いをする青年。また視線を戻し、窓の外を気にしている。
「あーあー……やっぱりこんな嵐じゃ無理かな」
「誰か待っているのですか?そういえば……まだキャンセルされてないお客様が2名ほどいますね」
ふと気づく。しかしこの嵐じゃ来れないだろうと思い、キャンセルじゃないかな?とスタッフと話していたのだった。
その時だった。玄関から賑やかな男性二名が雨風と共にワアワア言いながら入ってきたのは。
「ひでー!なんだよ!この雨」
「だんだん強くなってきて、来れないかと思ったよなぁ!」
びしょ濡れの二人はひどい格好の割に明るく笑い合っていた。そして、こちらを見ると更に笑う。
「アハハ!なんだよ!アレックスは先に来てたのかよーっ!」
「約束の時間の何時間前から待機してたんだよー!さすが心配性の男だなっ!」
二人共!と駆け寄る青年貴族のアレックス。
「まさか来てくれると思わなかったよ、大丈夫だったかい?」
「これのどこが大丈夫に見えるんだよ!?」
賑やかな玄関ホール。びしょ濡れの二人に私はクスクス笑いつつ、タオルを差し出す。
「仲がよろしいのですね。怪我がなく、ご無事に来られて本当に良かったです。無茶なさいますね」
すいませーん!と軽く言って笑うびしょ濡れの二人。若い青年達は楽しそうな笑い声をあげている。
「僕たち、同じ学校に通ってて、卒業してから初めて会おうってなって、奮発して僕の大好きな『海鳴亭』に予約してたんですが、こんな嵐じゃ無理だって諦めてました」
「学生の時、3人でけっこう馬鹿なことしてて、いつも楽しかったよなー!」
「俺も久しぶりに会えるからさ!アレックスが待ってるから絶対に行こうぜ!って言って嵐に突撃したんだ!」
私はこの3人が再会する大切な場に『海鳴亭』を選んでくれたことが嬉しかった。
「えーと、楽しい会話の前に、温泉に入って温まるといいですよ。風邪ひいちゃいます!すぐ用意しますね!お風呂後は温かい料理をお出しできるようにしておきますから」
ありがとうございます!と3人は大浴場へとむかっていく。
「若いって良いわねー。嵐になんて負けないくらいの元気良さね」
しみじみ私が、言うと、スタッフに女将もまだ若いですよ!と笑われる。
外は嵐。暗くて激しい雨風は続いている。だけど温泉旅館の中は笑い声が絶えず、明るさで溢れている。
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