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自由には制限があるもの

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 彼女が滞在していると、大神官長様がひょこっと現れた。

「えええ!?大神官長様!?」

「暇なのか!?遊びに来たのか!?」

 私とリヴィオが屋敷から出て仕事へ行こうとした時だった。白いローブを身に纏い、相変わらず黙っていれば、神秘的な人で、アメジスト色の目を優しく細めてる。

「暇じゃ、ありませんよ!失礼な。ミラがここに居ませんか?」

 リヴィオが、その一言で、何かを察したように金の目を細めてる。

「探してどうする?オレの推測だが、大神官長様もミラも自由ではないだろう。もしかして処分しにきたか?」

「嫌ですね。勘の良い人と言うのは気づかなくても良いことまで気づく」

 リヴィオはピリッとした気配になり、警戒しだす。大神官長様の言いたいことに彼は気づいてきて、何をしようとしているかも察しているようだ。

「……私もミラも許可なくトーラディム王国から出れない身です。力の強いルノールの民は保護という名の檻に入るしかないのです。見たでしょう?化け物じみた力は戦にも利用できる」

 だから、私がいつでもウィンディム王国へ来てもいいですよと言ったときに大神官長様は寂しい顔をしたのだと……自分で自由に生きる場所の選択肢がなかったのだ。

「……で、逃げたり大人しく管理されたりしないルノールの民は処分するんだな?まさか愛弟子をその手で処分するのか?」

「したくはありませんが、命令には逆らえません。それがトーラディム王国の陛下……自らの命令なのです。陛下が一番辛いと思いますよ」

 そんな!?ミラを大切にしていた陛下が!?私は目を見開く。

「きまりはきまりなのですよ。ミラもわかってて、逃げました」

 それでミラは?と尋ねるので、私は困った。ただいま、彼女は『海鳴亭』のビーチで海水浴中のはず。

 こんな緊迫した雰囲気の中、すっごく言いにくい。

「隠しているんですか?」

「えーと、隠してませんけど、今、ナシュレにはいないんです。遊びにでかけてます」

「やれやれ。ミラらしいですね。まったく!自分が殺されるかもしれないのに、呑気なものですよ。まさかわたしが来ることを予想してないとか?」

 苦笑する大神官長様は物騒なことを口にした。私とリヴィオは眉をひそめる。大神官長様はいつもの表情を隠す微笑みを絶やさない。

「仕方ないんです。ルノールの民はその力ゆえ、兵器みたいなものですからね。他国に渡すくらいなら……そうやって処分されてきてます。このわたしもされないために、大神官長としてトーラディム王国にいて、監視されてるわけです」
 
「極端で随分と過激だな……」

 リヴィオの呟きに肩をすくめる大神官長様。

「ミラを迎えに行けと命令したのをわたしにしたのは陛下の優しさです。また違う追手が来る前に手を打ちます。どこですか?彼女は?とりあえず帰るように説得します」

 私とリヴィオは顔を見合わせた。真夏の気温は強い日差しと共に、グングン上がってきていた。
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