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黒猫VSバーサーカー

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 黒い戦闘服を着たリヴィオを久しぶりに見た。フリッツが審判をする。エイデンは黒龍の紋章が入った騎士団の制服を着ている。肩をぐるぐると回して準備運動をし、張り切っている。

 屋敷のそばのいつもリヴィオが鍛錬に使ってる広場に集まった。

「うわぁー……エイデンが来たのだー」

「また性懲りもなく、リヴィオに挑んでるのだ」

「誰だよ!トトとテテ呼んできたやつは?こいつらうるせーんだよ!」

 エイデンがトトとテテの存在を嫌がる。クラスメイトだと言うから、トトとテテも知っていると思い、呼んだのだが……。

「おまえの声ほどうるさくないのだ」

「その悪い口を塞いでやろうか?なのだ」

 双子ちゃんもエイデンに塩対応だった。チャキッとからくり人形が二人の横に現れる。

「トトとテテ、手を出すなよ……オレが倒す前に倒すなよ」

 リヴィオがそう言う。

 頑張って!リヴィオさまー!とメイドたちの熱い応援が聞こえる。

「ふざけんな!倒すこと前提にするな!昔の俺様だと思うなよ!このバーサーカーのエイデンを甘く見るな」

 フリッツがうんうんとエイデンの言葉に頷いた。

「確かにエイデンさんは騎士団でも剣技はトップクラスです。それに、ここではこんな馬鹿みたいな姿ですが、騎士団にいるときはとても真面目ですし、毎日、鍛錬してますよー」

「馬鹿みたいなってなんだ!?」

 フリッツの余計な一言はエイデンの耳に届いたらしい。騎士団の仕事はしっかりしてるようでなにより……クラスメイトの前だと昔の自分に戻るのはわかる気がする。私も女将の顔と普段の顔は違うもの。

「気をつけてね。怪我しないでね」

「そのセリフを学園時代のセイラに聞かせてやりたい。今のセイラの優しいセリフをな………」

「はあ!?なにそれ!?」

 私はフリッツの説明で、少し心配になり、優しく言った。しかしリヴィオはとおーーい目をし、茶化してから、真ん中へ歩いていった。

「おい。さっさと始めるぞ」

 リヴィオが剣を構える。剣は騎士団の訓練でも用いられている、刃を潰したものだ。わざわざエイデンは道具まで持参してきたのだ。最初からリヴィオと手合わせするつもりだったらしい。

「ふん!久しぶりの手合わせ!おまえのその自信を叩き斬ってやるぜええええ!」

 エイデンの威勢のいい掛け声と共に打ち合いが始まった。

 鋭く的確な剣さばきはリヴィオがやはり優勢かと思われた。余裕さえかんじられた。キンキン!と金属が鳴り響く。

 エイデンは突然、バッと後ろへ下がり間合いをとる。

 バーサーカーと言われる所以を知ることになる。

「オラオラオラオラ!」

 一気に走っていき、間合いを詰めて、相手に反撃の隙を与えないくらいに剣を振り、猛攻を見せる。

「で、出た!エイデンさんの技!!」

 フリッツが恐れおののく。力で圧倒されているのか、リヴィオが一歩ずつ後ろへ下がっていく。

 リヴィオが圧倒されるなんて……いや、勝つ!絶対にリヴィオは勝つと信じ、私はグッと拳を握る。
 
「はーっはははは!どうだあ!」

 さらに追い詰めようとエイデンは強い斬撃を繰り返す。

「……ハッ!」

 受け身だったリヴィオが強い一撃で弾く。エイデンに隙が生まれた。剣を絡め取るように下段から上段へ剣を動かした。キンッと音をたてて、エイデンの手から剣が弾き飛んだ。

 カランと地面に落ちる剣。リヴィオに喉元に剣先を当てられる。

「あああああああ!」

 ガックリと膝を折るエイデンだった。

「残念だったな。だが、学園時代よりも良かった」

 クルッと回して剣を鞘に納めるリヴィオの雰囲気には余裕がある。

「これで328戦0勝……記録更新なのだ」

「心が折れないのが不思議なのだ」

「数えんなよっ!!」

 トトとテテが呆れたように言うとエイデンは涙目で叫んだ。

 くそっ!と悪態をつくと、懐から一通の手紙を出した。リヴィオが手に取る。

「なんだ?」

「陛下より書状だ!」


 リヴィオがガスっと容赦ない蹴りを入れた。痛っー!と言うエイデンに半眼になる彼。

「やっぱり用事あるんじゃねーかよ!先に出せよ!」

 陛下の書状はトーラディム王国の報告へ来るようにとのことだった。先に出せはよかったのにまわりくどい。

「用事は済んだ!じゃあな!温泉に入ってから帰るぞ!」

 そそくさと帰っていくエイデン。またな!と挨拶したのに、トトとテテに来なくて良いのだとあしらわれていた。

 ……クラスメイトはやはり変人ばかりだと思った。
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