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貪欲な知識欲
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『知識の塔へ行くならばジーニーか黒猫を連れて行く様に』
そうジーニーの母から忠告されていたとおり、私はジーニーを伴って、知識の塔へ呼ばれたため、行くことにした。
「あの人がそう言ったのか?なぜセイラにそんなことを言ったんだろう?………いや、良いけれど。一緒に行こう。リヴィオには監視者がついてるから動きにくいだろうし、何を探っているのか王家にあまり知られたくないだろう?」
察しの良すぎるジーニーはそう言って、一緒に来てくれることを了承してくれた。
螺旋階段を登っていく。今日は賢者の私室である最上階らしい。
「エレベーターを……つけたい……わっ!」
階段の途中でさすがに疲れてきた。ジーニーもホントだよなと足を止めて休憩した。研究者達が塔からあまり出てこないのは階段の登り降りが大変なこともある気がする。
息をきらせつつも最上階へ行き、扉をノックすると開いてるよと言う声と共にジーニーが開けた。
「あれ?君もきたの?」
息子にそういう前学園長。その言葉にジーニーがムッとして目を細める。
「いたら悪いかな?」
悪くないけどねぇ……とやや歯切れの悪い様子だ。椅子を勧められて私とジーニーは座った。
「さて、頼まれていたことの報告だ。まず魔物の発生は自然発生ではないことを前提に話を進めるよ。歴史書を照らし合わせていけば、ある時代に魔物の存在が確認される。黒の時代と言われる戦争がトーラディア王国の大陸で起こる。それはその隣の大陸にも火種は飛んでいく」
パラパラと本をめくっていく。
「このウィンディム王国は黒龍の力によって隠されていた。また侵略も領土拡大の意思も当時のウィンディムの王家にはなかったようだから、国民と国土を守るために徹したようだな。しかし他の神が守護する地の戦は激しくなっていった」
私とジーニーは静かに話しを聞いていく。この時代のことは学園では話されない。なぜならウィンディム王国には関係のない話だからだろう。日本風に言うと、鎖国してたってことかな。
しかし本当に関係のない話と思っていて良かったのだろうか?
「その黒の時代はいきなり終わることになる。皮肉にも魔物の存在が戦を止めることとなった。魔物の出現で人と人が争う場合ではなくなった。様々な兵器が生み出されていたようだよ。空を飛ぶ乗り物や遠くまで破壊できる爆発物などの記述がある。そんな技術があったのに魔物の勢いを止められなかったようだ」
そんな兵器がこの世界にもあったなんて……私はギュッと手を握る。かすかに震えていることを自覚する。
「じゃあ、現在の方が魔法や魔導具は衰退してるんだな?」
そうなるねと前学園長はジーニーの問いに頷いた。
「魔物も兵器の一つとして開発されたなら、きっとどこかに停止させるための装置があるはずだ」
前学園長の言葉に私はハッとした。それを止めれば、世界は魔物に脅かされなくなる。アオの……黒龍の憂いはなくなるわけだ。
「だいたいの位置は測れる。本当にざっくりとだけどね。トーラディム王国のはるか北に位置するんじゃないかと推測できる」
「そこまで!?」
私の驚く声に前学園長は肩をすくめる。
「単純に残ってる国を地図で見ると……北にあった国は消滅しているからだよ。資料が少なくて、ここまでしか調べられなくて悪いね」
簡単に昔の地図の推移を現状の地図と比べていった結果だと言う。背すじが寒くなった。人は自ら滅びる物と知らずに魔物が発生する装置を作り上げたのか。
暗い雰囲気になる室内。私は立ち上がる。暗くなっていても仕方ない!どうやったら装置を探し当てて、魔物を止められるか考えていかなければならない。
「調べて頂いてありがとうございます。勉強になりました。研究の手を止めさせてしまい、すみませんでした」
私が深々とお辞儀すると、前学園長はいいんだよと優しい声音で言った……が、耳を疑う言葉が聞こえた。
「お礼は君の身体で貰おうかな」
『えっ?』
私とジーニーの声がハモった。
「シンバ!」
その名が呼ばれると風のように一人の男が現れて、ドンッと私を突き飛ばす。尻もちをついたところには……魔法陣!?
円形の魔法陣が描かれている。咄嗟に術の効果を読み解いて行くと捕縛のような術だ。
「セイラになにをするんだっ!!」
ジーニーが私に駆け寄ろうとした瞬間にシンバと言われた男がジーニーを蹴り飛ばした。動きが早い!!その動きの速さはリヴィオに匹敵するのではないだろうか。
衝撃で戸棚に体を叩きつけられて、ジーニーは声も上げられず、腹を抑えて耐える。
「ジーニー!?なんてことするのよ!あなたの息子でしょ!?」
前学園長は悪びれる風がまったくなく、両手を広げてみせる。
「なに、ちょっとだけ時間が欲しかっただけだ。君の身体に刻まれているんじゃないか?黒龍の紋章が……それを確認させてくれ」
「そんなものないわ!」
即時に私は答えた。
これはあまり良くない状況だわ。黒龍の守護者とバレて利用されるようなことがあれば、王家に幽閉されてしまうかもしれない。
逃げようと魔法陣の外へ出ようとした瞬間に身体に電気が走るような痛みがおこる。
「………ッア!」
動けなくなり、膝をついてしまう。
「巨大な獣の捕縛用の魔法陣だから、あまり動かないほうがいいよ。傷をつけるのは本意ではない」
シンバという男が私に近寄る。特徴のないのっぺりとした人だと冷静に見ていると手を伸ばされる。
私はその瞬間に魔法陣の解除を行い、シンバの懐に蹴りを入れた。バチッという音と共に相手の両腕で私の蹴りは弾かれ防がれる。
私はその反動を利用して、床に転がり素早く起きる。
私、戦闘術はそこまで得意じゃないのよね。魔法を使うか。口の中で小さく呪文を唱える。
「一瞬で魔法陣を消した!?」
前学園長は驚きの声をあげる。黒龍の力を使ってしまったが、この場合、仕方ないだろう。
「セイラ!どくんだ!」
ジーニーの声と共に、私は右に跳んだ。風が巻き起こり、ドンッという音と共に天井が吹っ飛ぶ。前学園長はシンバの力でぎりぎり守られたようだ。
「ジーニー、学園長ともあろうものが知識の塔を壊すつもりか?」
ユラリとジーニーが立つ。いつも穏やかな雰囲気はなくなり、怒りで満ちている。
「はあ?知識の塔なんて、くそくらえだよ!」
……あ、やばい。キレてる。いつも穏やかな人ほどキレると怖いんですよね。私は冷や汗が出た。
「ジーニー?ちょ、ちょっとおち……」
私の声など聞こえてない。ゴオッと音と共に周囲の物が炎に包まれた。それにはさすがの学園長も焦りだした。
「お、おいっ!やめろ!貴重な文献や資料があるんだそ!?消せ!今すぐ!」
慌てすぎて、安易に水魔法を使う前学園長だが、特殊な魔法の青い炎は消えない。パチパチと燃えていく。
「さっさとこの塔の人たちを避難させないと死ぬよ」
酷薄な笑みを浮かべるジーニー。手にまた魔力をこめた。シンバと前学園長は身構える。ジーニーの魔力の高さは普段見ることはあまりないが、本物だ。
「親子喧嘩はそこまでにしなさいっ!」
ピシャリと言う声と共にやってきたのは……ジーニーの母だった。
「まったく!こうなると思っていたわ。シンバ、ご苦労さま」
「えっ!?シンバは……?」
前学園長が間の抜けた声を出す。美女はフフンと得意そうに笑う。
「あーら?賢者ともあろうものが、気づかなかった?S級の諜報部員で、あなたの護衛と称して浮気防止のための監視役だったのよ!わたくしのためにずーーーっと動いてくれていたのよ!腹心だと思ってたのぉ?」
オーホホホホと高笑い。プルプル震えている前学園長。
なに?このタヌキとキツネの化かし合いみたいな状況?
ジーニーは呆れたように半眼になって両親を見たのだった。
そうジーニーの母から忠告されていたとおり、私はジーニーを伴って、知識の塔へ呼ばれたため、行くことにした。
「あの人がそう言ったのか?なぜセイラにそんなことを言ったんだろう?………いや、良いけれど。一緒に行こう。リヴィオには監視者がついてるから動きにくいだろうし、何を探っているのか王家にあまり知られたくないだろう?」
察しの良すぎるジーニーはそう言って、一緒に来てくれることを了承してくれた。
螺旋階段を登っていく。今日は賢者の私室である最上階らしい。
「エレベーターを……つけたい……わっ!」
階段の途中でさすがに疲れてきた。ジーニーもホントだよなと足を止めて休憩した。研究者達が塔からあまり出てこないのは階段の登り降りが大変なこともある気がする。
息をきらせつつも最上階へ行き、扉をノックすると開いてるよと言う声と共にジーニーが開けた。
「あれ?君もきたの?」
息子にそういう前学園長。その言葉にジーニーがムッとして目を細める。
「いたら悪いかな?」
悪くないけどねぇ……とやや歯切れの悪い様子だ。椅子を勧められて私とジーニーは座った。
「さて、頼まれていたことの報告だ。まず魔物の発生は自然発生ではないことを前提に話を進めるよ。歴史書を照らし合わせていけば、ある時代に魔物の存在が確認される。黒の時代と言われる戦争がトーラディア王国の大陸で起こる。それはその隣の大陸にも火種は飛んでいく」
パラパラと本をめくっていく。
「このウィンディム王国は黒龍の力によって隠されていた。また侵略も領土拡大の意思も当時のウィンディムの王家にはなかったようだから、国民と国土を守るために徹したようだな。しかし他の神が守護する地の戦は激しくなっていった」
私とジーニーは静かに話しを聞いていく。この時代のことは学園では話されない。なぜならウィンディム王国には関係のない話だからだろう。日本風に言うと、鎖国してたってことかな。
しかし本当に関係のない話と思っていて良かったのだろうか?
「その黒の時代はいきなり終わることになる。皮肉にも魔物の存在が戦を止めることとなった。魔物の出現で人と人が争う場合ではなくなった。様々な兵器が生み出されていたようだよ。空を飛ぶ乗り物や遠くまで破壊できる爆発物などの記述がある。そんな技術があったのに魔物の勢いを止められなかったようだ」
そんな兵器がこの世界にもあったなんて……私はギュッと手を握る。かすかに震えていることを自覚する。
「じゃあ、現在の方が魔法や魔導具は衰退してるんだな?」
そうなるねと前学園長はジーニーの問いに頷いた。
「魔物も兵器の一つとして開発されたなら、きっとどこかに停止させるための装置があるはずだ」
前学園長の言葉に私はハッとした。それを止めれば、世界は魔物に脅かされなくなる。アオの……黒龍の憂いはなくなるわけだ。
「だいたいの位置は測れる。本当にざっくりとだけどね。トーラディム王国のはるか北に位置するんじゃないかと推測できる」
「そこまで!?」
私の驚く声に前学園長は肩をすくめる。
「単純に残ってる国を地図で見ると……北にあった国は消滅しているからだよ。資料が少なくて、ここまでしか調べられなくて悪いね」
簡単に昔の地図の推移を現状の地図と比べていった結果だと言う。背すじが寒くなった。人は自ら滅びる物と知らずに魔物が発生する装置を作り上げたのか。
暗い雰囲気になる室内。私は立ち上がる。暗くなっていても仕方ない!どうやったら装置を探し当てて、魔物を止められるか考えていかなければならない。
「調べて頂いてありがとうございます。勉強になりました。研究の手を止めさせてしまい、すみませんでした」
私が深々とお辞儀すると、前学園長はいいんだよと優しい声音で言った……が、耳を疑う言葉が聞こえた。
「お礼は君の身体で貰おうかな」
『えっ?』
私とジーニーの声がハモった。
「シンバ!」
その名が呼ばれると風のように一人の男が現れて、ドンッと私を突き飛ばす。尻もちをついたところには……魔法陣!?
円形の魔法陣が描かれている。咄嗟に術の効果を読み解いて行くと捕縛のような術だ。
「セイラになにをするんだっ!!」
ジーニーが私に駆け寄ろうとした瞬間にシンバと言われた男がジーニーを蹴り飛ばした。動きが早い!!その動きの速さはリヴィオに匹敵するのではないだろうか。
衝撃で戸棚に体を叩きつけられて、ジーニーは声も上げられず、腹を抑えて耐える。
「ジーニー!?なんてことするのよ!あなたの息子でしょ!?」
前学園長は悪びれる風がまったくなく、両手を広げてみせる。
「なに、ちょっとだけ時間が欲しかっただけだ。君の身体に刻まれているんじゃないか?黒龍の紋章が……それを確認させてくれ」
「そんなものないわ!」
即時に私は答えた。
これはあまり良くない状況だわ。黒龍の守護者とバレて利用されるようなことがあれば、王家に幽閉されてしまうかもしれない。
逃げようと魔法陣の外へ出ようとした瞬間に身体に電気が走るような痛みがおこる。
「………ッア!」
動けなくなり、膝をついてしまう。
「巨大な獣の捕縛用の魔法陣だから、あまり動かないほうがいいよ。傷をつけるのは本意ではない」
シンバという男が私に近寄る。特徴のないのっぺりとした人だと冷静に見ていると手を伸ばされる。
私はその瞬間に魔法陣の解除を行い、シンバの懐に蹴りを入れた。バチッという音と共に相手の両腕で私の蹴りは弾かれ防がれる。
私はその反動を利用して、床に転がり素早く起きる。
私、戦闘術はそこまで得意じゃないのよね。魔法を使うか。口の中で小さく呪文を唱える。
「一瞬で魔法陣を消した!?」
前学園長は驚きの声をあげる。黒龍の力を使ってしまったが、この場合、仕方ないだろう。
「セイラ!どくんだ!」
ジーニーの声と共に、私は右に跳んだ。風が巻き起こり、ドンッという音と共に天井が吹っ飛ぶ。前学園長はシンバの力でぎりぎり守られたようだ。
「ジーニー、学園長ともあろうものが知識の塔を壊すつもりか?」
ユラリとジーニーが立つ。いつも穏やかな雰囲気はなくなり、怒りで満ちている。
「はあ?知識の塔なんて、くそくらえだよ!」
……あ、やばい。キレてる。いつも穏やかな人ほどキレると怖いんですよね。私は冷や汗が出た。
「ジーニー?ちょ、ちょっとおち……」
私の声など聞こえてない。ゴオッと音と共に周囲の物が炎に包まれた。それにはさすがの学園長も焦りだした。
「お、おいっ!やめろ!貴重な文献や資料があるんだそ!?消せ!今すぐ!」
慌てすぎて、安易に水魔法を使う前学園長だが、特殊な魔法の青い炎は消えない。パチパチと燃えていく。
「さっさとこの塔の人たちを避難させないと死ぬよ」
酷薄な笑みを浮かべるジーニー。手にまた魔力をこめた。シンバと前学園長は身構える。ジーニーの魔力の高さは普段見ることはあまりないが、本物だ。
「親子喧嘩はそこまでにしなさいっ!」
ピシャリと言う声と共にやってきたのは……ジーニーの母だった。
「まったく!こうなると思っていたわ。シンバ、ご苦労さま」
「えっ!?シンバは……?」
前学園長が間の抜けた声を出す。美女はフフンと得意そうに笑う。
「あーら?賢者ともあろうものが、気づかなかった?S級の諜報部員で、あなたの護衛と称して浮気防止のための監視役だったのよ!わたくしのためにずーーーっと動いてくれていたのよ!腹心だと思ってたのぉ?」
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