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レイクカフェとメロンパン
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屋敷の傍の湖の景色は本当に素晴らしい。新緑の眩しい緑色、紅葉した時の鮮やかな色、雪で真っ白な色……そして太陽の光をキラキラと反射する湖には水鳥達がやってくる。
この湖は四季によって様々な景色を魅せ、人々を惹きつける。
公園として賑わっていて、ボートを乗る人、魚釣りをする人、ジョギング、散歩、ピクニックなど楽しむ姿が見られる。
私もその一人で散歩を楽しむのが好きである。
ある日、屋台が出ていたことに気づいた。
「温かい飲み物はいかがですか~?」
私は思わず散歩していた足を止める。
コーヒー豆を挽いた香りに誘われるように近づき、看板に書かれたメニューを見る。
「ホットのカフェラテ願いします」
「いらっしゃいませ………ってセイラ様じゃないですかっ!はじめまして。アニーと言います」
明るい声、ふわふわの猫っ毛を2つにし、細いピンを何本も髪にさしている。
「はじめまして。ここで飲み物を売ってるの?」
湯気が出る温かいカップを手渡してくれる。
「あ、はい。良かったでしょうか?一応許可は頂きましたが……」
今はリヴィオに任せているので、管理はどうなってるか謎だが、良いと思うわと言い、少し甘いカフェラテを口にした。
「あたしも散歩をよくしていて、ここでお店があったら楽しいなぁって思って、試しに屋台をしてみたんです」
「皆に喜ばれるんじゃないかしら?カフェラテも美味しいし……」
私の言葉にパッと笑顔を見せた。
「ありがとうございます!」
そう言って、元気な彼女は次々、来店するお客さんに美味しいコーヒーや温かいココアを淹れていく。
しばらく眺めていると、けっこうお客さんが来る。
「あれ?セイラ様もいらしていたんですか?」
温泉スタッフの一人であるチェリが私に気づき声をかけてきた。
「ええ。散歩しに来たのよ。カミロは?」
「カミロは学校なんですよ。おかげさまで元気に行ってます」
お互いに飲み物を片手に話をする。チェリの買ったコーヒーもいい香りがする。
「ここのコーヒー美味しいですよね。思わず来てしまいます。景色を眺めながら飲むとリフレッシュできますしね」
私は空になったカップを返して、アニーに言う。
「ここでカフェをしてみない?」
「えっ!?し、したいですっ!!」
くりっとした目が驚きでさらに丸くなる。
「湖を見れるように建てて、イートイン、テイクアウト両方できるようにして……」
ブツブツ言う私にアニーが大丈夫ですか?と声をかける。
そう……私はスタ○的なまったりカフェが欲しかった!街にはカフェがあるけれど、こういった場所には意外とないのよねぇ。
「アニーはどんなカフェにしたいかしら?」
「穏やかな音楽をかけて雑誌置いて、椅子はゆったりとくつろげるソファーとかも置いて……」
ガシッと私はアニーの手をとった。
「カフェを作りましょう!」
「ハイッ!!」
こうして湖を眺めながら美味しいコーヒーを飲めるカフェは誕生したのだった。
白い息を吐きながらリヴィオと湖の周りを歩く。
「今日はしてるかな?」
「このカフェがセイラが持ちかけた案とは知らなかったな」
「ほぼアニーと建築家のベントの功績よ。散歩コースにくつろげるカフェが欲しかったのよね」
木の家が見えた。湖に面した方は景色を楽しめるようにガラスを多く使っている、
「いらっしゃいませ!」
アニーの明るい声。早朝なのにお客さんがもう数組いた。その理由は……。
フワフワと漂う焼き立ての甘い匂い。
「ちょうどいい時に来ましたね!焼き立てですよ」
じゃあ、それ2つとコーヒー2つ!と注文して出てくるのを待つ。
「リヴィオ、食べたことある?」
「いつも来たら売り切れてる」
アニーがすいませんねぇと笑う。他のお客さんも笑う。
「これが食べたいから朝早くから私たちも来てるんだよー!」
そんなに人気なんだなとリヴィオが驚く。
「セイラ様の要望なんですよ!あたしもビックリです」
ハイ。どうぞとお盆にのせて渡してくれた。二人で湖の見える席へ座る。
早朝の湖は霧が薄くかかっている。朝日がそこへ差し込み、線になって湖を照らす。
「こうやって、セイラと朝を始めるのも良いな。なんか良い一日になりそうな気がしてくる」
コーヒーを一口飲み、景色を眺めていたリヴィオがそう言う。
「いつも慌ただしいものねぇ。早起きできたら来たいわね」
「オレはいつも同じ時間だぞ」
「寒くなってきたら、布団から出にくいのよね……幸せじゃない。暖かいお布団って」
実は寝坊しているのは私の方である。リヴィオは毎日かかさず日課の鍛錬という名のトレーニングをしている。
「ハハッ。その幸せそうに寝ている顔も悪くないから、それも良いけどな」
可笑しそうに笑われる。間抜けな顔をしてないかしら……私はそれが心配になる。
焼き立てパンをちぎって、リヴィオは口にする。
「美味いなー。これ……上はクッキー生地!?内がふわふわの生地で……まさか……これは!」
「ふふふ。『メロンパン』よ!」
形と模様に課題はある。もう少し再現率高くしたいが、味はメロンパン。
「セイラは食べ物になると真剣だな。このメロンパンすげー。いや……マジで味がもうメロンパン……」
彼はマジマジと手の中のパンを眺める。予想以上の食いつきで、反応を示してくれて嬉しい。
私もコーヒーとメロンパンを幸せな気持ちで食べた。
メロンパン食べたかった理由がある。前世で高校の売店に売っていて争奪戦だったのだ。あのパン屋さんのおばちゃん懐かしいなぁ。
こうして私のささやかな(?)スタ○がほしい!メロンパンが食べたい!という野望は叶えられた。
このカフェ、話題となりアニーは『レイクカフェ』と名前をつけて繁盛している。時々、朝御飯に私とリヴィオも顔を出すようになった。
追記しておくと、あの新しい物大好きなトトとテテの二人にもメロンパンを差し入れした。
サクサク生地とフワフワパンが最高なのだーっ!と発明のため、徹夜したらしく、やけにテンション高く小躍りしていたのだった。
この湖は四季によって様々な景色を魅せ、人々を惹きつける。
公園として賑わっていて、ボートを乗る人、魚釣りをする人、ジョギング、散歩、ピクニックなど楽しむ姿が見られる。
私もその一人で散歩を楽しむのが好きである。
ある日、屋台が出ていたことに気づいた。
「温かい飲み物はいかがですか~?」
私は思わず散歩していた足を止める。
コーヒー豆を挽いた香りに誘われるように近づき、看板に書かれたメニューを見る。
「ホットのカフェラテ願いします」
「いらっしゃいませ………ってセイラ様じゃないですかっ!はじめまして。アニーと言います」
明るい声、ふわふわの猫っ毛を2つにし、細いピンを何本も髪にさしている。
「はじめまして。ここで飲み物を売ってるの?」
湯気が出る温かいカップを手渡してくれる。
「あ、はい。良かったでしょうか?一応許可は頂きましたが……」
今はリヴィオに任せているので、管理はどうなってるか謎だが、良いと思うわと言い、少し甘いカフェラテを口にした。
「あたしも散歩をよくしていて、ここでお店があったら楽しいなぁって思って、試しに屋台をしてみたんです」
「皆に喜ばれるんじゃないかしら?カフェラテも美味しいし……」
私の言葉にパッと笑顔を見せた。
「ありがとうございます!」
そう言って、元気な彼女は次々、来店するお客さんに美味しいコーヒーや温かいココアを淹れていく。
しばらく眺めていると、けっこうお客さんが来る。
「あれ?セイラ様もいらしていたんですか?」
温泉スタッフの一人であるチェリが私に気づき声をかけてきた。
「ええ。散歩しに来たのよ。カミロは?」
「カミロは学校なんですよ。おかげさまで元気に行ってます」
お互いに飲み物を片手に話をする。チェリの買ったコーヒーもいい香りがする。
「ここのコーヒー美味しいですよね。思わず来てしまいます。景色を眺めながら飲むとリフレッシュできますしね」
私は空になったカップを返して、アニーに言う。
「ここでカフェをしてみない?」
「えっ!?し、したいですっ!!」
くりっとした目が驚きでさらに丸くなる。
「湖を見れるように建てて、イートイン、テイクアウト両方できるようにして……」
ブツブツ言う私にアニーが大丈夫ですか?と声をかける。
そう……私はスタ○的なまったりカフェが欲しかった!街にはカフェがあるけれど、こういった場所には意外とないのよねぇ。
「アニーはどんなカフェにしたいかしら?」
「穏やかな音楽をかけて雑誌置いて、椅子はゆったりとくつろげるソファーとかも置いて……」
ガシッと私はアニーの手をとった。
「カフェを作りましょう!」
「ハイッ!!」
こうして湖を眺めながら美味しいコーヒーを飲めるカフェは誕生したのだった。
白い息を吐きながらリヴィオと湖の周りを歩く。
「今日はしてるかな?」
「このカフェがセイラが持ちかけた案とは知らなかったな」
「ほぼアニーと建築家のベントの功績よ。散歩コースにくつろげるカフェが欲しかったのよね」
木の家が見えた。湖に面した方は景色を楽しめるようにガラスを多く使っている、
「いらっしゃいませ!」
アニーの明るい声。早朝なのにお客さんがもう数組いた。その理由は……。
フワフワと漂う焼き立ての甘い匂い。
「ちょうどいい時に来ましたね!焼き立てですよ」
じゃあ、それ2つとコーヒー2つ!と注文して出てくるのを待つ。
「リヴィオ、食べたことある?」
「いつも来たら売り切れてる」
アニーがすいませんねぇと笑う。他のお客さんも笑う。
「これが食べたいから朝早くから私たちも来てるんだよー!」
そんなに人気なんだなとリヴィオが驚く。
「セイラ様の要望なんですよ!あたしもビックリです」
ハイ。どうぞとお盆にのせて渡してくれた。二人で湖の見える席へ座る。
早朝の湖は霧が薄くかかっている。朝日がそこへ差し込み、線になって湖を照らす。
「こうやって、セイラと朝を始めるのも良いな。なんか良い一日になりそうな気がしてくる」
コーヒーを一口飲み、景色を眺めていたリヴィオがそう言う。
「いつも慌ただしいものねぇ。早起きできたら来たいわね」
「オレはいつも同じ時間だぞ」
「寒くなってきたら、布団から出にくいのよね……幸せじゃない。暖かいお布団って」
実は寝坊しているのは私の方である。リヴィオは毎日かかさず日課の鍛錬という名のトレーニングをしている。
「ハハッ。その幸せそうに寝ている顔も悪くないから、それも良いけどな」
可笑しそうに笑われる。間抜けな顔をしてないかしら……私はそれが心配になる。
焼き立てパンをちぎって、リヴィオは口にする。
「美味いなー。これ……上はクッキー生地!?内がふわふわの生地で……まさか……これは!」
「ふふふ。『メロンパン』よ!」
形と模様に課題はある。もう少し再現率高くしたいが、味はメロンパン。
「セイラは食べ物になると真剣だな。このメロンパンすげー。いや……マジで味がもうメロンパン……」
彼はマジマジと手の中のパンを眺める。予想以上の食いつきで、反応を示してくれて嬉しい。
私もコーヒーとメロンパンを幸せな気持ちで食べた。
メロンパン食べたかった理由がある。前世で高校の売店に売っていて争奪戦だったのだ。あのパン屋さんのおばちゃん懐かしいなぁ。
こうして私のささやかな(?)スタ○がほしい!メロンパンが食べたい!という野望は叶えられた。
このカフェ、話題となりアニーは『レイクカフェ』と名前をつけて繁盛している。時々、朝御飯に私とリヴィオも顔を出すようになった。
追記しておくと、あの新しい物大好きなトトとテテの二人にもメロンパンを差し入れした。
サクサク生地とフワフワパンが最高なのだーっ!と発明のため、徹夜したらしく、やけにテンション高く小躍りしていたのだった。
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