愛し子の愛し子の異世界生活

いちこ

文字の大きさ
上 下
106 / 106
育て直し

しおりを挟む

 お庭に出て、ジュードに抱っこされながら歩く。

 念話で話しながらなので、傍から見れば二人共静かだ。

『ジュード。おれ一緒に帰ったらダメ?』

 見上げながら聞く。

「あっ、おはなー。」

などと赤ちゃんらしさも忘れない。

『そうだなあ。もう大丈夫そうなら、一緒に帰っても良いかもしれないな。』

 赤ちゃん用の靴は布製で、外に歩くには適していないから、ずっと抱っこされていた。おれは意識を取り戻してから、ずっと気になっていたことをジュードに聞いた。

『ロビンたちは?みんな元気?』

 ジュードは木陰に座るとおれを膝に乗せた。
 そして、あのマクリク国の騒動から、もう二ヶ月以上経っていると教えてくれた。

 国際的にもマクリク国の行動は問題になって、ギルドが手を引いた事、他の国からも総スカンをくらっているらしい。

 あの王族なら仕方ないか?

 最初は自分たちの国力で鎖国してでも、やっていこうとしてたらしいんだけど、夜会での騒動が知れ渡って、邪神を太陽神と崇めていた、そのせいで神にも見放された国だと、国を捨てて出て行く国民がたくさん出たって。
 タメリアの国境を超えて難民がやってきて、小さな村も出来てると聞いた。

 王様と王太子に第五王子は王妃と共に追放され、離島の城に入れられたって。

 今国を立て直そうとしているのは、第二妃の子ながら魔術に優れた第四王子に、側室の子である第二、第三王子の三人だ。
 直系にいびられていたのを国民たちも知っており、なんなら王制を止めようと模索中らしい。

 王系の血にかけた罰だけど、直系以外は効果を軽くしてる。

 エリクサーは効かないけど、中級ポーションくらいは効果があるようにしたから、死にはしないとおもうんだけど。

 まあ人が生活してる限り、色んな事が起きて、大変だろうけど頑張ってほしい。
 落ち着いたら援助しようかな。

 膝の上からジュードの顔を見上げる。
 そっとお尻の下に腕を入れてふわっと抱き上げられる。
 すぐ目の前にジュードの瞳がある。なんか、じっくり見るのは久しぶりな気がする。

 両手をそっと頬に当てる。ジュードは黙ってされるがままにしている。
 視線だけは真っ直ぐおれを見ている。

 おれはにこっと笑う。ジュードも目元に少しシワが入って、表情が柔らかくなる。
 他の人にはあんまり分からないみたいだけど、おれにはこれがジュードの笑顔だって分かる。

「ここだとちゅうもできないね。」

 おれはふと思ったことを言っただけなんだけど、ジュードも思ってたみたいで、ぎゅうっと抱きしめてくれる。

「じゃあ帰るか。」

 ジュードはそう言うと、おれを縦抱きにして、屋内へと戻っていった。

 リビングに入ると、一言

「慎翔が帰ると言っているので、今日連れて帰る。」

 もちろん大ブーイングである。

「えええ。なんで。サミュエルと一緒にここで暮らしましょうよ。」

 エリザベスに泣きそうな顔で言われると弱いけど、流石にこのまま幼児のフリしているのも、つらすぎる。

「や。かえゆ。じゅーとかえゆ。」

 ジュードの首にぎゅっと掴まって、そう言うと、みんなしょんぼりしながら引き下がった。

「確かに昨日の様子では、ジュードが帰ったら大泣きしそうね。残念だけど仕方ないわ。」

 ベリタ母さんはため息をつきながらそう言うと、

「日中、俺が仕事に出た時には、ここでお世話になりたい。安心して預ける事のできる場所があるのは、とても助かる。」

 ジュードがそうお願いする。

「まあ、それがいいわ。私達もまこちゃんに会えるし。待ってるわね。」

 こうしておれは久しぶりに丘の上の我が家に帰ることになったのだった。





 


しおりを挟む
感想 42

この作品の感想を投稿する

みんなの感想(42件)

たすく
2024.11.06 たすく

まこちゃん、お帰りなさい🙌ジュード、良かったね🙌🙌🙌さあさあ、またお話が進みますね。楽しみにしていますー

解除
はるるん
2024.11.05 はるるん

やっと一緒に居られるのね💕︎
良かった
(*´³`*) ㄘゅしか出来なそうだけど
ジュード色々お世話頑張って

いちこ
2024.11.05 いちこ

いつも感想ありがとうございます。
前回のにお返ししてなくてすいません。

二人は一緒が一番いいよね。っていう事で、幼児期でしか摂取できないものをジュードには摂取してもらいたいと思います🤭

解除
はるるん
2024.11.02 はるるん

こんばんは😊
更新ありがとうございます
日々成長の慎翔 幼児語可愛い
ジュードLove念話でさらに💞

そして投票🗳頑張って下さいね

解除

あなたにおすすめの小説

サンタクロースが寝ている間にやってくる、本当の理由

フルーツパフェ
大衆娯楽
 クリスマスイブの聖夜、子供達が寝静まった頃。  トナカイに牽かせたそりと共に、サンタクロースは町中の子供達の家を訪れる。  いかなる家庭の子供も平等に、そしてプレゼントを無償で渡すこの老人はしかしなぜ、子供達が寝静まった頃に現れるのだろうか。  考えてみれば、サンタクロースが何者かを説明できる大人はどれだけいるだろう。  赤い服に白髭、トナカイのそり――知っていることと言えば、せいぜいその程度の外見的特徴だろう。  言い換えればそれに当てはまる存在は全て、サンタクロースということになる。  たとえ、その心の奥底に邪心を孕んでいたとしても。

幽閉王子は最強皇子に包まれる

皇洵璃音
BL
魔法使いであるせいで幼少期に幽閉された第三王子のアレクセイ。それから年数が経過し、ある日祖国は滅ぼされてしまう。毛布に包まっていたら、敵の帝国第二皇子のレイナードにより連行されてしまう。処刑場にて皇帝から二つの選択肢を提示されたのだが、二つ目の内容は「レイナードの花嫁になること」だった。初めて人から求められたこともあり、花嫁になることを承諾する。素直で元気いっぱいなド直球第二皇子×愛されることに慣れていない治癒魔法使いの第三王子の恋愛物語。 表紙担当者:白す(しらす)様に描いて頂きました。

【完結】兄の事を皆が期待していたので僕は離れます

まりぃべる
ファンタジー
一つ年上の兄は、国の為にと言われて意気揚々と村を離れた。お伽話にある、奇跡の聖人だと幼き頃より誰からも言われていた為、それは必然だと。 貧しい村で育った弟は、小さな頃より家の事を兄の分までせねばならず、兄は素晴らしい人物で対して自分は凡人であると思い込まされ、自分は必要ないのだからと弟は村を離れる事にした。 そんな弟が、自分を必要としてくれる人に会い、幸せを掴むお話。 ☆まりぃべるの世界観です。緩い設定で、現実世界とは違う部分も多々ありますがそこをあえて楽しんでいただけると幸いです。 ☆現実世界にも同じような名前、地名、言葉などがありますが、関係ありません。

性悪なお嬢様に命令されて泣く泣く恋敵を殺りにいったらヤられました

まりも13
BL
フワフワとした酩酊状態が薄れ、僕は気がつくとパンパンパン、ズチュッと卑猥な音をたてて激しく誰かと交わっていた。 性悪なお嬢様の命令で恋敵を泣く泣く殺りに行ったら逆にヤラれちゃった、ちょっとアホな子の話です。 (ムーンライトノベルにも掲載しています)

塾の先生を舐めてはいけません(性的な意味で)

ベータヴィレッジ 現実沈殿村落
BL
個別指導塾で講師のアルバイトを始めたが、妙にスキンシップ多めで懐いてくる生徒がいた。 そしてやがてその生徒の行為はエスカレートし、ついに一線を超えてくる――。

美貌の騎士候補生は、愛する人を快楽漬けにして飼い慣らす〜僕から逃げないで愛させて〜

飛鷹
BL
騎士養成学校に在席しているパスティには秘密がある。 でも、それを誰かに言うつもりはなく、目的を達成したら静かに自国に戻るつもりだった。 しかし美貌の騎士候補生に捕まり、快楽漬けにされ、甘く喘がされてしまう。 秘密を抱えたまま、パスティは幸せになれるのか。 美貌の騎士候補生のカーディアスは何を考えてパスティに付きまとうのか……。 秘密を抱えた二人が幸せになるまでのお話。

とある文官のひとりごと

きりか
BL
貧乏な弱小子爵家出身のノア・マキシム。 アシュリー王国の花形騎士団の文官として、日々頑張っているが、学生の頃からやたらと絡んでくるイケメン部隊長であるアベル・エメを大の苦手というか、天敵認定をしていた。しかし、ある日、父の借金が判明して…。 基本コメディで、少しだけシリアス? エチシーンところか、チュッどまりで申し訳ございません(土下座) ムーンライト様でも公開しております。

処理中です...
本作については削除予定があるため、新規のレンタルはできません。

このユーザをミュートしますか?

※ミュートすると該当ユーザの「小説・投稿漫画・感想・コメント」が非表示になります。ミュートしたことは相手にはわかりません。またいつでもミュート解除できます。
※一部ミュート対象外の箇所がございます。ミュートの対象範囲についての詳細はヘルプにてご確認ください。
※ミュートしてもお気に入りやしおりは解除されません。既にお気に入りやしおりを使用している場合はすべて解除してからミュートを行うようにしてください。