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新しい世界
78 プレゼント * ジュード
しおりを挟む「慎翔?」
扉をゆっくりと開く。
部屋は明かりが灯っておらず、大きな窓からの月明かりで、青白く照らされている。
「慎翔?」
もう一度呼ぶ。
ベッドの上には誰かが居るのが分かる。
後ろを向いて、シーツをすっぽりと被っている。
だが、ここで違和感を覚える。シルエットは慎翔よりも大きい。ということは、誰か知らない奴が、勝手にベッドに入っているのか?
「誰だ?」
シーツの中の身体がピクリと跳ねた。
「慎翔か?」
そう聞きながら、腰から下げた剣に手をかける。
カチッと鞘からブレードが外れる音がする。
すると、シーツがバサバサと波打った。
「まっ、待って、待って。」
少しだけ低い、それでも俺より高い声。慎翔とはだいぶ違う。シーツが落ちて、顔が見えた。
時々キラキラと光る薄茶色の髪に、金が混じる琥珀色の瞳。耳には翡翠のイヤーカフ。
俺の知っている慎翔の色を纏い、よく似た顔をした青年が顔を出した。
「…慎翔か?」
顔を見て、纏う空気は正に慎翔。間違えようは無い。
シーツをパサリと落としてベッドから降りてくる。
!!!!!
慎翔は俺の胸くらいまでの目線だったのが、背が伸びて肩くらいになっている。髪の毛も伸びて、襟足より長くなっている。
身体の細さは変わらないが、着ている服が俺のシャツだ。
前に慎翔が着てた時は大きすぎて、膝くらいまであって、ワンピースの様だった。
しかし今はかろうじて太ももだ。目の前の慎翔と思われる彼も、恥ずかしそうに裾を引っ張っている。
あまりの艶かしさに鼻血が出そうだ。
「あの、声がさ、思ったより違うくてさ。えっと、びっくりしちゃって。」
少し俯きがちにぽそりぽそりと話す。そして顔を上げて、
「ジュード。お誕生日おめでとう。」
俺は際どい彼シャツ姿の彼に、目が釘付けで、固まっていたら、祝いの言葉を紡がれる。
「慎翔?なのか?」
いつもよりも落ち着いた、はにかんだ笑顔で
「誕生日のプレゼント。何にしようか悩んでて、色々と考えたんだけど、ジュードにはずっと我慢してもらってたから…。おれが大人になったら喜んでくれるかなって…思って…。」
そう言いながら、恥ずかしそうに横を向く。
それは何だ?慎翔は自分をプレゼントだと言ったのか?
大人になった自分を贈り物にってどういうことだ?
驚いて理解できずにいると、
「あのね。この間の勉強会が特別授業だったんだ。そこで、勉強したんだけど、ジュードもずっと我慢してたのかな?って思って。」
俺は、扉のそばから二、三歩近づくと、慎翔は「うわっ。」と驚いて、後ずさり尻もちをついた。
「!!!!!」
慎翔はただでさえ、俺のシャツを際どく着ていたのだが、尻もちをついた慎翔の下半身は
何も履いてない!!!!大事な部分が丸見えだ!!!
「慎翔!なんで何も履いてないんだ!」
思わず驚いて叫んでしまい、急いでシーツを投げたら、下半身を隠しながら
「いやー、あの、燈翔と心琴に頼んで、あの部屋で成長させてもらったんだけど、おれのズボンってピッタリしたのだったでしょ?起きたら全部キツくて、ここでジュードの服を借りてたんだけど、流石に下着は、ねえ?」
ねえっと聞かれても。
俺はきっと今かなり赤い顔をしていると思う。こんなに焦ることはそうそう無いだろう。
「ごめんね。勝手に服借りちゃって。」
「いや、そこじゃなくて、そんなあられも無い姿で居られると、俺が困るんだ。」
そう顔をそらすと
「はははっ。だってそのつもりだから。その気になってもらわないと困るよ。」
といつものように明るく言う。胸元のギルドタグを出して
「ねえ。ジュード!見て見て。おれの歳。」
そこには二十歳の文字があった。
そうか、慎翔は二十歳になったらこんなふうになるんだな。
「ね。おれ、大人になったよ。」
と、少年のような笑顔でこちらを見る。そこには全く色気を感じないのに、口からはそういう事をすると言う。
俺はすっかり毒気を抜かれ、苦笑いがもれた。
「慎翔。もっと近くで見たい。」
笑いながら手を伸ばす。
慎翔はまだちょっと照れながら、俺の願いに応えて左手を出す。
俺は慎翔の左手を捕まえると引き寄せる。
「あっ。」
俺の腕の中に納まる大きさは変わらない。前よりも頭の位置は高いし、回した腕が、成長ぶりを教えてくれる。
肩口で見上げる顔を見る。にこにこと笑う慎翔の首筋に唇を寄せて、チュッと口付ける。
「あっ。」
首に手を当ててキスしたところを隠す。顔が真っ赤だ。
「本当に、してもいいのか?そんなに真っ赤なのに。無理しなくてもいいぞ。」
慎翔はブンブンと頭を振る。
「ち、違うよ。ちょっと慣れてないから、分かんないだけで。ほら、これもちゃんと準備したよ。」
と、手の中から出てきたのは、青の浄化棒。そして白の避妊具だ。
頭を殴られたような衝撃に言葉を失う。
特別授業って、閨の授業か。
「授業に実技はあったのか?」
浄化棒を受け取りながら、聞いてみる。
出来るなら、俺が手取り足取り教えたかった。
がっくりとうなだれながら聞くと、
「ううん。リオンがジュードに教えて貰えって。」
それを聞いて、ホッとする。
「本当に良いのか?」
両手で慎翔の頬を包み込みながら聞いてみる。
「…うん。」
頬を染め、潤んだ目をしながら慎翔が頷く。
そのまま顔を近づけて、口付ける。チュッ、チュッと何度も啄むように、キスをする。
「んっ。んっ。はぁ。」
息が苦しくなったのか、小さく口が開く。昨日キスした時はこんな風にならなかったのに。
「鼻で息をして。」
「はっ、ごめっ。緊張しちゃって、息するの、あっ。」
教えながら、再び唇を重ねる。薄く開いた唇の間に舌を差し込む。
「んっ。あっ。…はぁっ。…ふあ。」
ピチャピチャと二人の間で水音が響く。合間に慎翔の小さな声が漏れる。
俺は満足するまでキスを続けた。
その間に背中に回した手を、すすっと下におろすと、腕を上げたことで、シャツが上がり、お尻が半分出ている。
しっとりとした肌触りを確認するように、慎翔の臀部を優しく撫でる。
「ん。あ、ふっん。」
真っ赤な顔をして、俺からのキスを受けながら、尻を揉まれて漏れる声は、聞いたことのない色を含んでいて、俺は酷く興奮した。
「慎翔。いいか?プレゼント、もらうぞ。」
唇を離して、目を見ながら聞くと、うっとりと目を細めながら
「うん。おれをあげる。ジュードと一つになりたい。」
ぎゅっと抱きしめながら、もう止まれないと思った。
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