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新しい世界
70 誕生日を祝いたい
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慎翔と別行動を始めたジュードはジェレミアの部屋を訪れた。慎翔がいない時に来たかったのだ。
ジェレミアは顧問という立場だが、何かしらの仕事をしているらしく、執務室がある。
コンコン
「はい。」
「失礼します。ジュードです。お邪魔してもよろしいですか?」
そのまま返事を待つ。
「うん。どうぞ。」
中からいつもの騎士が扉を開いた。
「忙しいところ、ありがとうございます。」
あまり偉い人に話す言葉遣いなどは知らない。とりあえず会ってもらえて良かった。
中に通されると、ソファにはベリタ婦人が座っていた。
「こんにちは。ジュード。マコちゃんは?」
ぺこりと頭を下げる
「慎翔は今はトーマス店長のところに行ってます。」
偶然かは分からないが、ベリタ婦人にも話したかったので、二人一緒なら都合が良い。
「それで、何か用があって来たんだよね?」
ジェレミアに聞かれた。俺は頷くと、今日の訪問の理由を告げる。
「あの、お願いがありまして。もうすぐ慎翔の誕生日なんです。なのでここで…。」
ガタッとベリタ婦人が立ち上がった。
「誕生会!しなきゃ。いつ?何月何日?」
思った以上に乗り気だった。
ベリタ婦人の迫力に少し気押された姿を見て、ジェレミアにくすりと笑われる。
気を取り直して、聞かれたことを答える。
「慎翔の誕生日は二月一日です。ですが、その日は二人で出掛けます。その三日後の週末に、泊まりがけでこちらにお邪魔させていただけませんか?」
ジェレミアの元にベリタ婦人が駆け寄る。
「すてき!あなた、良いわよね?パーティーを開きましょう!
皆呼んで、あっ、でも知らない方を呼ぶのはいやかしら。ならお知り合いの方たちを集めたら、マコちゃんも安心よね。」
ジェレミアはニコニコしながら
「いいんじゃないかい?確か君も誕生がその辺りだったよね?」
俺はジェレミアの言葉に驚いた。
が、まあ少し考えれば、メラーニ家に出入りする人間は徹底的に調べられると言うから、孤児院での記録も確認済みなんだろう。
「内容はお任せします。ただ、慎翔は初めて元気な状態で誕生日を迎えるそうです。あまり派手にしてしまうと戸惑うと思うので、夫人の案が良いのではないかと思います。」
ベリタのキラキラした視線を受けながら、腕組みをしたジェレミアは、
「それじゃあうちの家族と、ギルドの知り合いとサキさん、ガロさんあたりまでかな?」
「そうね。この間みたいに立食パーティーにしましょう。プレゼントを渡して。
何が好きかしら。みんなからいっぱい埋もれるくらいのプレゼントを渡してビックリさせたいわ。」
満面の笑みを浮かべて、手を合わせ、くるくると回りながら次々と意見を出すベリタ夫人。
ベリタ婦人は慎翔にはサプライズにして驚かせたいと言ったが、そもそも誕生会の話は慎翔から聞いたのだ。
その事を話すと誕生会を開くことは話して、内容は内緒にしましょうという事になった。
招待状はベリタ婦人が準備すると言うので、お願いした。
「楽しみね。マコちゃんの記憶に残る、素敵な会にしましょうね。」
これでメラーニ家の誕生日パーティーは大丈夫だろう。
「色々とありがとうございます。お世話になります。よろしくお願いします。」
俺は丁寧にお辞儀をし、二人にお礼を述べた。俺ではこのようなパーティーなど開けそうもないからな。慎翔の為にこの人たちに頭を下げるのは苦にならない。
慎翔の楽しそうな笑顔を思い浮かべるだけで、こちらも笑顔になるんだからな。
*************************
ところ変わって、慎翔はリオンとカミル、カレルと四人で特別授業の話を終え、かっこいい剣の振り方とか魔法の使い方など、中二男子のような会話を楽しんでいた。
「あっ、そうだ。ちょっと聞きたいんだけど。」
「ん?なになに?」
わいわいと楽しく話していて、ふと思い出した。
「もうすぐさ、ジュードの誕生日なんだけど、誕生日にプレゼント贈る習慣ってあるよね?」
もし無くても、贈るつもりではあるけど、一応聞いてみる。
「もちろんあるよ。僕もあげてるよ。ロリはまだまだ小さなレディだからね、リボンとかかな。成人のお祝いの時に指輪を贈るつもりだよ。」
リオンさんがそう教えてくれる。あげる相手がロリ限定なの愛を感じて面白い。
「僕達も贈り合いするよ。この間の時は、カレルに木の模造刀を送ったの。」
カミルが言うと
「そうそう。僕は魔道具のペンをカミルに贈ったよ。」
他にも本だったり、お菓子だったり色んな物を贈るらしい。
おれはずっとどうしようかって悩んでたんだけど、ジュードって物欲あんまりなくて、何贈れば喜ぶのか全然分かんない。
それを相談するために男子しかいないタイミングに聞いてみることにしたのだ。
「ジュードさんはA級の冒険者でしょ?大抵のもの持ってそう。」
カレルが言うと、横でカミルも頷いている。
「逆にいつも使っている物を贈るのはどうだい?」
リオンさんに言われる。
「一応候補としては、バンダナとか、布ベルトとかにしようかなって。」
自分の中で考えてる物を言う。
「いいんじゃない?きっと喜ばれるよ!僕達も何か考えようかな。」
たくさんの人に祝ってもらうのって、どういうふうなんだろう。
おれは少しも想像できなかった。
実はこの質問は、オーレンさんにもしたんだけど、
「そりゃ自分にリボン巻いて、プレゼントはわ、た、し。ってやるんだよ。惚れてる奴ならイチコロだよ。」
なんて肩を組まれてニヤニヤしながら言われた。
びっくりしてたら、その日のうちに特別授業で、もっと具体的な話になって、もっとびっくりすることになったのだ。
だから三人にも聞いたんだけど、流石にオーレンさんみたいな下世話な事は言わなかった。そういう文化だったらどうしようかと思った。
バンダナもいいな。
けど、自分の中でこれをプレゼントにしようと思っているものが、他にもあって、それをどういう風に渡せるか、なんて誕生日まで思いを巡らせるのだった。
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