愛し子の愛し子の異世界生活

いちこ

文字の大きさ
上 下
73 / 106
新しい世界

70 誕生日を祝いたい

しおりを挟む

 途中で視点が変わります。

******************************

 慎翔と別行動を始めたジュードはジェレミアの部屋を訪れた。慎翔がいない時に来たかったのだ。

 ジェレミアは顧問という立場だが、何かしらの仕事をしているらしく、執務室がある。

 コンコン

「はい。」

「失礼します。ジュードです。お邪魔してもよろしいですか?」

 そのまま返事を待つ。

「うん。どうぞ。」

 中からいつもの騎士が扉を開いた。

「忙しいところ、ありがとうございます。」

 あまり偉い人に話す言葉遣いなどは知らない。とりあえず会ってもらえて良かった。

 中に通されると、ソファにはベリタ婦人が座っていた。

「こんにちは。ジュード。マコちゃんは?」

 ぺこりと頭を下げる

「慎翔は今はトーマス店長のところに行ってます。」

 偶然かは分からないが、ベリタ婦人にも話したかったので、二人一緒なら都合が良い。

「それで、何か用があって来たんだよね?」

 ジェレミアに聞かれた。俺は頷くと、今日の訪問の理由を告げる。

「あの、お願いがありまして。もうすぐ慎翔の誕生日なんです。なのでここで…。」

 ガタッとベリタ婦人が立ち上がった。

「誕生会!しなきゃ。いつ?何月何日?」

 思った以上に乗り気だった。
 ベリタ婦人の迫力に少し気押された姿を見て、ジェレミアにくすりと笑われる。
 気を取り直して、聞かれたことを答える。

「慎翔の誕生日は二月一日です。ですが、その日は二人で出掛けます。その三日後の週末に、泊まりがけでこちらにお邪魔させていただけませんか?」

 ジェレミアの元にベリタ婦人が駆け寄る。

「すてき!あなた、良いわよね?パーティーを開きましょう!
皆呼んで、あっ、でも知らない方を呼ぶのはいやかしら。ならお知り合いの方たちを集めたら、マコちゃんも安心よね。」

 ジェレミアはニコニコしながら

「いいんじゃないかい?確か君も誕生がその辺りだったよね?」

 俺はジェレミアの言葉に驚いた。
 が、まあ少し考えれば、メラーニ家に出入りする人間は徹底的に調べられると言うから、孤児院での記録も確認済みなんだろう。

「内容はお任せします。ただ、慎翔は初めて元気な状態で誕生日を迎えるそうです。あまり派手にしてしまうと戸惑うと思うので、夫人の案が良いのではないかと思います。」

 ベリタのキラキラした視線を受けながら、腕組みをしたジェレミアは、

「それじゃあうちの家族と、ギルドの知り合いとサキさん、ガロさんあたりまでかな?」

「そうね。この間みたいに立食パーティーにしましょう。プレゼントを渡して。
何が好きかしら。みんなからいっぱい埋もれるくらいのプレゼントを渡してビックリさせたいわ。」

 満面の笑みを浮かべて、手を合わせ、くるくると回りながら次々と意見を出すベリタ夫人。

 ベリタ婦人は慎翔にはサプライズにして驚かせたいと言ったが、そもそも誕生会の話は慎翔から聞いたのだ。
 その事を話すと誕生会を開くことは話して、内容は内緒にしましょうという事になった。

 招待状はベリタ婦人が準備すると言うので、お願いした。

「楽しみね。マコちゃんの記憶に残る、素敵な会にしましょうね。」

 これでメラーニ家の誕生日パーティーは大丈夫だろう。

「色々とありがとうございます。お世話になります。よろしくお願いします。」

 俺は丁寧にお辞儀をし、二人にお礼を述べた。俺ではこのようなパーティーなど開けそうもないからな。慎翔の為にこの人たちに頭を下げるのは苦にならない。
 慎翔の楽しそうな笑顔を思い浮かべるだけで、こちらも笑顔になるんだからな。


*************************

 ところ変わって、慎翔はリオンとカミル、カレルと四人で特別授業の話を終え、かっこいい剣の振り方とか魔法の使い方など、中二男子のような会話を楽しんでいた。

「あっ、そうだ。ちょっと聞きたいんだけど。」

「ん?なになに?」

 わいわいと楽しく話していて、ふと思い出した。

「もうすぐさ、ジュードの誕生日なんだけど、誕生日にプレゼント贈る習慣ってあるよね?」

 もし無くても、贈るつもりではあるけど、一応聞いてみる。

「もちろんあるよ。僕もあげてるよ。ロリはまだまだ小さなレディだからね、リボンとかかな。成人のお祝いの時に指輪を贈るつもりだよ。」

 リオンさんがそう教えてくれる。あげる相手がロリ限定なの愛を感じて面白い。

「僕達も贈り合いするよ。この間の時は、カレルに木の模造刀を送ったの。」

 カミルが言うと

「そうそう。僕は魔道具のペンをカミルに贈ったよ。」

 他にも本だったり、お菓子だったり色んな物を贈るらしい。

 おれはずっとどうしようかって悩んでたんだけど、ジュードって物欲あんまりなくて、何贈れば喜ぶのか全然分かんない。
それを相談するために男子しかいないタイミングに聞いてみることにしたのだ。

「ジュードさんはA級の冒険者でしょ?大抵のもの持ってそう。」

 カレルが言うと、横でカミルも頷いている。

「逆にいつも使っている物を贈るのはどうだい?」

リオンさんに言われる。

「一応候補としては、バンダナとか、布ベルトとかにしようかなって。」

 自分の中で考えてる物を言う。

「いいんじゃない?きっと喜ばれるよ!僕達も何か考えようかな。」

 たくさんの人に祝ってもらうのって、どういうふうなんだろう。
 おれは少しも想像できなかった。

 実はこの質問は、オーレンさんにもしたんだけど、

「そりゃ自分にリボン巻いて、プレゼントはわ、た、し。ってやるんだよ。惚れてる奴ならイチコロだよ。」

 なんて肩を組まれてニヤニヤしながら言われた。
 びっくりしてたら、その日のうちに特別授業で、もっと具体的な話になって、もっとびっくりすることになったのだ。

 だから三人にも聞いたんだけど、流石にオーレンさんみたいな下世話な事は言わなかった。そういう文化だったらどうしようかと思った。

 バンダナもいいな。

 けど、自分の中でこれをプレゼントにしようと思っているものが、他にもあって、それをどういう風に渡せるか、なんて誕生日まで思いを巡らせるのだった。
 
  

 




 
しおりを挟む
感想 42

あなたにおすすめの小説

サンタクロースが寝ている間にやってくる、本当の理由

フルーツパフェ
大衆娯楽
 クリスマスイブの聖夜、子供達が寝静まった頃。  トナカイに牽かせたそりと共に、サンタクロースは町中の子供達の家を訪れる。  いかなる家庭の子供も平等に、そしてプレゼントを無償で渡すこの老人はしかしなぜ、子供達が寝静まった頃に現れるのだろうか。  考えてみれば、サンタクロースが何者かを説明できる大人はどれだけいるだろう。  赤い服に白髭、トナカイのそり――知っていることと言えば、せいぜいその程度の外見的特徴だろう。  言い換えればそれに当てはまる存在は全て、サンタクロースということになる。  たとえ、その心の奥底に邪心を孕んでいたとしても。

幽閉王子は最強皇子に包まれる

皇洵璃音
BL
魔法使いであるせいで幼少期に幽閉された第三王子のアレクセイ。それから年数が経過し、ある日祖国は滅ぼされてしまう。毛布に包まっていたら、敵の帝国第二皇子のレイナードにより連行されてしまう。処刑場にて皇帝から二つの選択肢を提示されたのだが、二つ目の内容は「レイナードの花嫁になること」だった。初めて人から求められたこともあり、花嫁になることを承諾する。素直で元気いっぱいなド直球第二皇子×愛されることに慣れていない治癒魔法使いの第三王子の恋愛物語。 表紙担当者:白す(しらす)様に描いて頂きました。

【完結】兄の事を皆が期待していたので僕は離れます

まりぃべる
ファンタジー
一つ年上の兄は、国の為にと言われて意気揚々と村を離れた。お伽話にある、奇跡の聖人だと幼き頃より誰からも言われていた為、それは必然だと。 貧しい村で育った弟は、小さな頃より家の事を兄の分までせねばならず、兄は素晴らしい人物で対して自分は凡人であると思い込まされ、自分は必要ないのだからと弟は村を離れる事にした。 そんな弟が、自分を必要としてくれる人に会い、幸せを掴むお話。 ☆まりぃべるの世界観です。緩い設定で、現実世界とは違う部分も多々ありますがそこをあえて楽しんでいただけると幸いです。 ☆現実世界にも同じような名前、地名、言葉などがありますが、関係ありません。

性悪なお嬢様に命令されて泣く泣く恋敵を殺りにいったらヤられました

まりも13
BL
フワフワとした酩酊状態が薄れ、僕は気がつくとパンパンパン、ズチュッと卑猥な音をたてて激しく誰かと交わっていた。 性悪なお嬢様の命令で恋敵を泣く泣く殺りに行ったら逆にヤラれちゃった、ちょっとアホな子の話です。 (ムーンライトノベルにも掲載しています)

美貌の騎士候補生は、愛する人を快楽漬けにして飼い慣らす〜僕から逃げないで愛させて〜

飛鷹
BL
騎士養成学校に在席しているパスティには秘密がある。 でも、それを誰かに言うつもりはなく、目的を達成したら静かに自国に戻るつもりだった。 しかし美貌の騎士候補生に捕まり、快楽漬けにされ、甘く喘がされてしまう。 秘密を抱えたまま、パスティは幸せになれるのか。 美貌の騎士候補生のカーディアスは何を考えてパスティに付きまとうのか……。 秘密を抱えた二人が幸せになるまでのお話。

とある文官のひとりごと

きりか
BL
貧乏な弱小子爵家出身のノア・マキシム。 アシュリー王国の花形騎士団の文官として、日々頑張っているが、学生の頃からやたらと絡んでくるイケメン部隊長であるアベル・エメを大の苦手というか、天敵認定をしていた。しかし、ある日、父の借金が判明して…。 基本コメディで、少しだけシリアス? エチシーンところか、チュッどまりで申し訳ございません(土下座) ムーンライト様でも公開しております。

弟が生まれて両親に売られたけど、売られた先で溺愛されました

にがり
BL
貴族の家に生まれたが、弟が生まれたことによって両親に売られた少年が、自分を溺愛している人と出会う話です

処理中です...