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新しい世界
66 雪の日 メラーニ家
しおりを挟むトーマスさんとのアイデアの話が終わったおれは、店長室から本館へ渡り廊下を抜けて行った。
本館に入ったところで、いつもいるメイドさんに会った。
何人もいるので、再びみかんを配ってまわる。
色んな所で掃除したり、洗濯物を運んでいたり、忙しそうにしている。
子供たちの面倒を見てくれる、メグさんもいた。
「こんにちはー。メグさん。」
メグさんは、ベリタ母さん付きのメアリーさんと同い年のメイドさんだ。
教育係も兼任しているから、厳しい時もあるけど、いつも凛とした佇まいで、仕事もバリバリこなすから、みんな尊敬してる。
メアリーさんとメグさんは、カッコイイお姉さんって感じ。
「こんにちは。マコト様。カミル様、カレル様とお勉強ですか?」
「うん。なんか特別授業?って言ってたけど。あっ、これお土産。みんなで食べてもらおうと思って。」
「あ、おみかんですね。シェフが喜びます。」
「あっ、じゃあ厨房に持ってって下さい。」
おれは箱いっぱいのみかんをメグさんのウエストポーチ型マジックバッグに入れた。
「厨房で出すときは、重いから誰かに手伝ってもらって下さいね。」
「ありがとうございます。ありがたく頂戴いたしますね。」
と、話していたら、奥の部屋の扉がバーンっと開いた。
廊下に飛び出して来たのは、ピンクの塊になっているエリザベスと、緑の塊になってるロリだ。
「マコ様ーーー。」
二人は廊下をすごい勢いで走ってきた。
そしておれの後ろにメグさんが居るのを見て、急ブレーキで止まる。
二人でワタワタと慌てた後に、ドレスの裾をつまむと、綺麗なカーテシーを見せた。
「ご機嫌麗しゅう。マコト様。」
「こんにちは。ロリ。エリザベス。」
おれは二人に声をかける。後ろは怖くて振り向けない。
ゴゴゴッって云う効果音が聞こえそうなくらい、後ろに立つメグさんが怒っている。
二人は頭を下げ固まったまま。
「ロリ様。エリザベス様。廊下をそのように走る淑女はおりません。私達でも余程の事のない限り、早歩きまででございます。」
「はい。ごめんなさい。メグ。」
そーっと後ろを振り向くと、さっきみかん渡した時と同じ笑顔のメグさんがいる。
いや、目が怖い。目が笑ってない。教育係って怖い。
「いや、出迎えてくれたんだよね?ありがとう。二人共。」
頭を上げた二人は泣きそうな顔してる。
「そうなんですの。雪のお庭で遊びませんか?ってお伺いしたくて。マコ様のお許しがあれば構いませんよってお母様がおっしゃったの。」
ロリが一生懸命言い募る。エリザベスも横でうんうん頷いている。
「ですが、それが廊下を走っても良い理由にはなりません。今度お見かけしたら、頭の上に本を乗せ、挨拶する練習を追加いたしますね。」
ピャっと飛び上がった二人は
「ごめんなさい。メグ。」
と、もう一度謝った。
おれもなんでか一緒になって頭を下げてた。そんくらい、オーラ出てたから。
「まあ、マコト様まで頭を下げるのはおやめください。ロリ様もエリザベス様もお転婆でらっしゃいますから、このようにお話するのは日常茶飯事でございますよ。」
クスクスと笑いながら話すメグさんを見て、もう怒られないと思ったのか、
「そうそう。いつも怒られちゃうの。」
と、二人でクスクス無邪気に笑っている。
「よくお分かりできるいらっしゃいます。さ、お二人はお昼からゆっくりお勉強いたしましょうね。マコト様も授業がございますから。」
ニッコリとメグさんが言うと、えー。と二人共嫌そうな顔をしてた。
二人の格好はよく見れば、外に行くつもりだったのだろう。
ロリは緑のポンチョコートに、エリザベスはピンクの同じコートを着ている。
それはおれの着てきたコートと同じデザインだった。
「じゃあベリタ母さんに挨拶してから、外に行こうか?」
そうして、三人連れ立ってベリタ母さんに挨拶をしてたら、外に出る気満々のパンツスタイルにジャンバーを着たシーラと、寒さに弱いとモコモコに着込んだカミルとカレルたちが、お母さんの部屋にやってきた。
みんなで手袋をして、広大なメラーニ家のいくつかある庭の芝生広場に出た。
真っ白に雪が積もっている。
子どもたちの雪遊びに混じって、おれも遊んだ。
ジュードとやった雪合戦はみんなおお喜びで、あっちこっちから雪玉が飛んできて、きゃあきゃあと大騒ぎだった。
あとみんなでその雪玉を転がして雪だるまも作った。
これはおれが見たことだけはあったから、作ってみたかった物。
目の代わりに大きなボタン。鼻に人参。頭のてっぺんにバケツをかぶせて、下の段の大きな雪玉に棒を左右に挿して手袋をつけたら、雪だるまの完成だ。
この世界にはなかったらしく、みんなで面白がって、家族の数だけ雪だるまを作った。
雪遊びは本当に想像以上に楽しかった。
クタクタになるまであそんで、お昼に温かいシチューを食べた。
気がつけばみんなでベリタ母さんの部屋の暖炉で暖まりながら、横になって昼寝をしていた。
おれもふかふかの絨毯の上で、ゴロゴロしているうちに気付けば、ぐっすり寝てしまっていた。
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