愛し子の愛し子の異世界生活

いちこ

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新しい世界

45 お食事会

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 ジュードとくっついてたら、コンコンとノックの音がした。

「失礼いたします。夕食のご案内に参りました。」

 メイドさんに案内されて、大きな部屋に案内される。

 ちょっと緊張しながら扉を開けた。

 中に入ると、大きなテーブルに大皿の料理がいくつも並べられている。

 それ以外に部屋の中央にはテーブルと椅子は無く、中にいた人はみんな立っていた。

「ようこそメラーニ家へ。歓迎するよ。堅苦しいのもなんだから、立食パーティーにしたんだ。家族だけだから、遠慮しないで楽しんで。」

 ジェレミアさんがにこやかに言う。
 ジェレミアさんにベリタさん。あとは子どもたちがみんな揃っていて、ニコニコとこちらを見ている。
 他にも何人か知らない人がいた。

 へえー、これが立食パーティーかー。
 たぶん口開けたまんま呆然としてたと思う。
 耳元でジュードが

「慣れてないマコトに気を使わせたくなかったんだな。」

 と小さい声で言った。
 そっか、マナーも何も分かんないおれの事を気にしてくれたんだ。そう思うと嬉しくなって、ニコニコぽかぽかした。

「とりあえず乾杯しようか。」

 部屋にいるみんなに飲み物が配られる。

「じゃあ、みんなに紹介するね。
うちで後見することになった中瀬 慎翔君だ。うちが全面的にバックアップしていきたいと思ってる。
 基本はこちらのA級冒険者のジュードと活動しながら、何かあればうちを頼ってほしい。」

 そうにこやかに言われて、みんなの拍手に包まれる。
 隣に立つジュードはスッと軽く頭を下げた。

 ベリタさんはもちろん、エリザベスは飛び上がって喜んでいる。

 みんなの歓迎を受けて、おれは嬉しいのか恥ずかしいのか、なんかいろんな感情がごちゃごちゃして、何より初めての経験に固まってしまう。

 ふっと優しく背中を押された。見ると、ジュードが優しく微笑みながらこっちを見てる。

「あいさつできるか?」

 小さい声で聞いてくれる。
 あっ、そうか挨拶しなきゃいけないのかってそこで初めて頭が回った。ジュードに飲み物のグラスを持ってもらい、しっかりと前を向いた。

「あっ、えっと、あの、中瀬慎翔です。えっと、色々とご迷惑お掛けするかもですが、よろしくお願いします。」

 ガバッと音が聞こえそうなくらいの勢いでお辞儀をする。

 するとパチパチパチパチ温かい拍手に包まれた。

 頭を上げると、みんな嬉しそうにニコニコしてた。おれも嬉しくなってニコニコしてしまう。

 ジュードがグラスを渡してくれた。そして頭を優しく撫でてポンポンしてくれた。

「じゃあ乾杯しようか。」

と、ジェレミアさんが乾杯の音頭を取ろうとしたら

「お兄ちゃんにかんぱーい!」

と、エリザベスとロリが大きな声で言った。一瞬あっけにとられたが、みんな笑いながら「乾杯。」と、それに続いたので、そこから立食パーティーが始まった。

 みんな思い思いに好きな料理を取って食べていく。
 座って食べるスペースも脇に準備されていて、立ったまま食べるのが難しい子どもたちは、座って食べていた。
 もちろんカミルはじめ、エリザベスまでの子どもたちだ。

 慎翔は焼いた肉や魚、煮付けたものや炒めたもの、様々な料理を少しずつ取って食べていた。色々な色のソースをかけて食べるのは初めてだ。

「ジュード!すごい美味しい!いろんな味する!うわあ、なにこれー!」

 初めて食べるものばっかりで、色んな味にびっくりする。

 だいたいジュードは料理苦手だから、基本肉か魚を焼く、そしてスープ。味付けもシンプルに塩だ。だからソースをかけて食べるのにびっくりだ。
 おれはジュードが作ってくれると、何食べても美味しいから、良いんだけど。

 この世界にはまだまだ色んな料理があるって事が、ここに並んだ料理だけでも理解できた。

 やっぱり料理は覚えよう。そう慎翔は密かに決めたのだった。

 おれは一口ずつ色んなメニューを食べたけど、胃が小さいのか、もうかなり満腹だった。
 ジュードが甲斐甲斐しく世話してくれるから、おれは差し出されるものをもらうだけだ。
 一つ一つにこっそり鑑定魔法をかけている。ジュードは分かってるから、黙って色々なのを持ってきてくれる。
 今はりんごジュースを持ってきてくれた。お腹いっぱいなので、ちびちび飲んでいた。

 そこへジェレミアさんに連れられて、ベリタさんと他に三人やってきた。

「食事は楽しんでもらえたかな?」

「!はい!どれも初めて食べるものばかりで、とても美味しかったです!」

 ニコニコと話すと、後ろの三人は何とも言えない顔をしている。ジェレミアさんとベリタさんはニコニコしている。

「そうかい。喜んでもらえて良かった。」

「マコトはずっと病気で食事も取れなかったから、食べれるものが増えて良かったな。」

 と、ジュードが頭を撫でながら言う。
あっ、初めて食べたとか言ったから、変な顔されたのか!

 ジュードが上手く言ってくれて良かった。
 ジェレミアさんは気にした様子もなく、三人を前に押し出した。

「そうそう紹介するね。ここにいる三人は首都シントのお店の店長と、ここマサのお店の店長、彼はシントの副店長と護衛騎士を兼ねてるんだよ。」

 マサの店長さんは赤茶の髪を軽く結んで流している。
 シントの店長と紹介されたのはアッシュグレーのストレートヘアのスラリとした美人女性。副店長兼護衛の男の人は赤茶の髪を短く刈り上げた、しっかりした体つきの人だ。
 マサの店長はトーマス。シントの副店長はダニエル。二人は本当の兄弟だそうだ。
 シントの店長はナタリーさん。
 三人共元々は孤児で、頭脳と商才を買われて、メラーニ家に養子に来たんだって。
 年齢もジュードのちょっと年上?って感じ。ジェレミアさんとベリタさんの子どもにしては大きすぎるし、兄弟みたい。

 多分才能だけじゃなくて性格も、めちゃくちゃ良さそう。三人共笑顔でこっちをみてる。

 首都シント?ここってマサだよね? 

 首都って遠いんじゃないかと思って聞いたら、転移陣があるから、割とすぐ来れるらしい。結構いろんな商会やギルドなんかに置いてあって魔力を込めた石を使うと教えてくれた。
 人や物を運ぶのに便利だけど、送れる質量に限りがあるから、とても貴重でよっぽど緊急でないと、使えないっていうのが一般常識って教えてくれた。

 ちなみにメラーニ商会の人は魔力が高い人が多いので結構頻繁に使えるらしい。
 これもメラーニ家が世界一と呼ばれる理由の一つと教えてもらった。
 わざわざこの立食パーティーのためだけに来てくれたそうで、一人ひとりと握手してあいさつした。

「マコちゃん、可愛いでしょう。このローブも素敵なのよー。デザイン買い取らせてもらいなさいねー。」

 ベリタさんにべた褒めにされる。
 キラキラの笑顔を向けられて、目が合うと、更に破顔する。ベリタさんに重なってぼんやりと誰かの顔が見えた。
 毎日病院に来て、「マコちゃん、元気ですかー?今日もママ来たよー。」って笑顔を絶やさなかった母さんの顔に、おれには見えた。だから、ベリタさんに触れられるとあんなにぽかぽかしたのか。と納得した。

 ベリタさんの話を聞いて、ナタリーさんが失礼します。って、おれのローブの裾を手にとって、肌触りや縫い目なんかをブツブツ言いながら確認してる。

 おれはウエストポーチから出すフリをして、別デザインのローブを出した。白い大きなボタンを付けた濃い目の青のローブだ。

「!!!こちらも確認させていただいてよろしいんですか?」

 すっかり眼の色が変わったナタリーさんがローブに夢中になっててしまった。
 いつの間にか、応接セットが運び込まれ、さっきよりも小さめのテーブルに果物やお菓子が並べられていて、子どもたちがあれこれ選んでいた。

「立ちっぱなしも疲れたろう?ゆっくり座って話そうか?」

と、優しくソファを勧められた。
 
 






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