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新しい世界
42 驚きの事実 ジュード
しおりを挟むやっと俺の腕の中にマコトが帰ってきた。
金にも見える茶色のふわふわした髪の毛の感触を感じながら、優しく撫でる。
気持ちよさそうな顔をして見上げてくる。
何でこんな事になっているのか、色んな事が起こりすぎて、 はっきり言えば混乱した。
何故かメラーニ家の人間に好かれているし、後見人になってもらったのは助かる。
………まあマコトが無事なら正直何でもいいと思っていた。
見上げている顔を見ると、抑えが効かなくて顔中にキスする。
「ひゃっ。」
くすぐたかったのか変な声を出す。
それが面白かったのか、マコトはクスクスと笑い出した。
泣いたり笑ったり、今日のマコトは忙しい。
でも泣き顔はあまり見たいものじゃない。やっぱりこうやって、こちらを見て笑っている顔が良い。
ああ、めちゃくちゃ可愛い。
もう元気になったから寝間着でいるのもねって、自分の荷物から服を出して着替えだした。
ただでさえ白くて細かった身体は、二日寝込んだことでさらに生っ白くなっている。顔色は少しマシになったか。
特にお腹はぺったんこになってる。俺はマジックバックからお菓子を取り出した。
「マコト。口開けて。」
「?あーん。」
そう言うと素直に口を開く。
茶色の塊を口の中に入れてやる。
「?!なにこれ?甘いけど苦い?口の中で溶けちゃったよ!」
「うまいか?」
「うん。美味しい。これ何ていうの?」
余程美味しかったのか、目をキラキラさせて…、いや、興奮し過ぎて物理的にキラキラしてる。
「落ち着け、マコト。これはチョコレートっていうお菓子だ。」
「へえ。これがチョコかー。」
右手に一つ乗せてやる。
手をあげて掌に乗せ、光にすかすみたいに、チョコを見ている。
「あっ、溶けてきた。」
手の熱で溶け出したチョコを慌てて口に入れる。
手のひらはチョコでベタベタになっている。
俺はその右手を掴むと、ペロリと手のひらを舐める。
「!!!!」
「ん。うまいな。甘すぎないのが良い。」
マコトは真っ赤になって固まってしまう。
「ジ、ジュード、色気出しすぎ~。」
と赤い顔をしながら掴まれた腕をブンブンしている。
恥ずかしいらしいが、成人までもうわずかのはず。本当に楽しみだ。
と、じゃれ合いながら、マコトの着替えが終わった。
ソファに二人で座って、一息つく。
するとマコトが何気なく言った。
「でもさー、なんで急に迷子になっちゃったのかな?」
「そうだな。何かに隠されたみたいな不思議な感覚だった。」
そう。人智を超えた力が働いたとしか思えないのだが。マコトも何か感じていたらしい。
「そうなんだよね。なんかおかしかった。きっとどこに飛ぼうと思っても、ここに来てたような気がする。」
隣に座るマコトの腰を抱き寄せる。マコトも俺の身体にギュッと抱きついてきた。
「あーーー。やっと来れたーー。」
突然ノックもなしに扉が開いて、大きな声がする。
俺もマコトもビクッと飛び上がった。
扉から普通に入ってくる二人は、この世界の服じゃない格好をしている。
扉の向こう側が廊下じゃなく、真っ白くなっているので、どこか違う空間から来たのだと分かる。
「燈翔。心琴。」
マコトは嬉しそうにしているが、俺はあの時の突き放した態度が納得できていない。
隣に座ったまま、二人が入ってくるのを黙って見ていると、ヒノトがバツが悪そうな感じに言ってきた。
「ジュードさんもごめんね。連絡取れなくて。」
思うところはあるが、この過保護な二人が関わってこなかったのには、なにか訳があるのだろうとは思う。
だが、若干腹を立てているのも本当で。
大人気なく黙ったままになってしまう。
「ジュード。怒ってる?」
マコトが聞いてくる。
「ごめんなさい。大事なところで連絡取れないし、助けにも来ないし、お兄ちゃんの事ほったらかしてると思われても仕方ないわよね。」
ミコトも謝ってくる。
ふうっとため息を吐いて、二人に向き直る。
「もう構わない。何か理由があったんだろう。今回のようなことが起きた時のために、出来る事を考えるよ。」
そう言うと、二人は顔を見合わせ
「いや、多分なかなかこんな事起きないと思うわよ。」
「そうそう。今回は大神ウラノス様が関わってたから、僕達みたいな下っ端では、手も足も出なかったんだし。」
ミコトとヒノトが本当に困った顔で言う。
「なんで神が出てくるんだ?」
「だからウラノス様に来るなって止められてて、さっきやっと入れるようになったのよ。」
「ここは世界で一番厳重に護られているところだからね。」
二人の話がよく分からなくて、今度はマコトと二人で顔を見合わせた。
「ここが大神と何か関係があるの?」
マコトが聞くとヒノトとミコトはしーしーっと人差し指を立て口に当てる。
「ウラノス様。だよ。」
「そう呼べってお達しがあったのよ。」
大神、大神って呼ばれるのはあんまりだったらしい。
マコトも慌てて
「うん。う、ウラノス様だね。分かった。」
と了承の返事をする。俺もうなずいた。
「で、この場所とウラノス様の関係はなんなんだ?」
俺が聞くと、二人はすんなりと教えてくれる。
「ベリタさんはお母さんだよ。」
ん?メラー二婦人が?誰のお母さんだって?
「お兄ちゃんのお母さんよ。」
「!!!!」
マコトも驚いて固まっている。
「え?え?ベリタさんが母さん?おれの?」
ビックリしているマコトに二人がきちんと説明する。
「だから、お母さんである中瀬真実は地球で無事に寿命を迎えたの。大神ウラノス様は愛し子の彼女を神界に導いて、母さんは女神になった。」
「そこで自分の息子が別の世界で育て直されていることを知ったんだ。母さんの心残りである兄ちゃんが、生きてる世界に自分も行きたいってウラノス様に頼んだわけ。」
「それでこの世界でベリタになった。時間軸なんてウラノス様にかかればどうとでもなるから関係ないのよね。」
「とりあえず、愛し子のワガママには答えずにはいられないウラノス様だけど、害をなされるのは許せないから、ここに何重もの厳重な結界を施して、ベリタさんを大事に守っているわけ。」
マコトは呆然と話を聞いている。
「確かに色味は全く同じだな。彼女は自分のことを知っているのか?」
俺が聞くと、ヒノトは首を振る。
「今は前世の記憶はないよ。母さんは純粋にベリタとしてこの世界で家族仲良く生活してる。身寄りのない有能な子供を養子にして、困っている人の後見人になって、誰かのために尽くしたいって。本質や性格はまんま母さんなんだけどね。」
「そうそう。マコちゃんってずっと呼んでたし。」
「確かに…。病院に来た母さんは、マコちゃんって、いつも明るくて…。」
マコトはだんだんと実感が湧いてきたのか、噛みしめるように呟きながら、ほんのりと頬を赤く染めながら嬉しそうに笑う。
「そっかー。母さんだったんだ。だからあんなに暖かかったのか。」
「暖かったのか?」
俺が聞くと
「すっごいポカポカでさ。気分悪かったのに楽になった。すごくない?」
マコトは満面の笑顔だ。
それに対して俺は渋い顔になってしまう。
「マコトが行方不明になったのもウラノス様のお導きって事だったのか?」
「うーん。まあ、ジュードさんには悪いけど、そういうこと。」
「ジュードさんがお兄ちゃんを離さないから、無理矢理みたいになっちゃったのよね。」
「ウラノス様的にはちょっとくらいいいでしょ?って感じで。僕達にも邪魔しないでね。って言われちゃうとさ、手も出せなくて。ジュードさんには悪いと思ってるよ。本当。」
「まあそういうわけで、メラーニ家全体まるっと信用できるわ。目一杯頼って大丈夫。安心してね。」
そんな風に言われたら、怒るに怒れない。
ふっとため息が出る。
マコトがすっと俺の顔に手を伸ばしてきて、親指で目の下を撫でた。この二日寝ていないので、流石に隈ができているのかもしれない。
「迷惑かけてごめんね。」
下から見上げられて、可愛く言われた。
本当に天使だ。許す。
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