愛し子の愛し子の異世界生活

いちこ

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新しい世界

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 ギルドの奥の部屋に案内されて、ジュードと一緒に中に入ると、ディネさんが居た。

 ソファに座るように勧められて、座る。ジュードは隣で立ってる。低いテーブルの上には大きな水晶玉が置いてあった。

 ソファに座るとすぐにウルスさんがやってきた。

 なんか疲れてる。大丈夫?

「おう。揃ってるな。
ディネ。さっさと始めちまえ。」

「構わないんですか?怒られるのはこちらですよ。」

「構うもんか。来たら連絡するとは言ったが、来るまでに帰っちまえばいいんだ。会わす約束はしてねえ。」

 ディネさんはため息を一つついて、こっちを見た。

「じゃあ、マコト。この玉に手を置いて魔力を流してください。」

 おれは一度ジュードの顔を見る。おれの不安に気付いてくれたジュードは、優しく微笑むとおれの頭をぽんぽんと撫でてくれた。
 ジュードのぽんぽんは、すごく安心する。
 ジュードにニッコリとすると、前に向き直り、「はいっ。よろしくお願いします。」と、ピッと背筋を伸ばし手を差し出した。

 水晶玉に魔力を通すと、玉の中がキラキラと光り出して、その光が渦を巻いて玉の中をぐるぐるして、中心に吸い込まれた。

 玉の上に文字が映しだされた。


 名前 ナカセ マコト
 年齢    15
 レベル   なし
 種族   人間
 称号 大神の愛し子の愛し子



「…まあ大体想像通りだな、レベルが無え奴は初めてだが。」

「適当に数字入れときますか?」

「そうだな。40って入れとけ。」

 なんかギルドの上役の中でぽんぽん話が進んでいく。

「あとは魔法の属性を見たり、スキルの情報を見ることも出来ますが、調べますか?」

 ディネさんに聞かれた。

「いや、身分証が欲しいだけだから、今回は遠慮する。」

 さっとジュードが答えたら、二人共なんか難しい顔してた。
 きっと調べたかったんだろうと思うけど。
 魔法もスキルも人外らしいから、内緒にしたほうが良いんじゃないか?って、昨日ジュードと相談したんだよね。
 ここでの生活に慣れてきたら、またその時にって。
 
 ディネさんがローテーブルの上にカードと楕円形のタグを置いた。

「ギルドの身分証はカードかタグに出来ます。どちらにしますか?」

 そういえばジュードはカードを見せてたっけ。じゃあおれもカードでお揃いにしたいんだけど。

「マコトはタグにして首から下げたほうがいいんじゃないか。」

「えー。ジュードみたいなカードの方がカッコ良さそう。」

「なくさないためにも首からさげたほうがいい。」

 ギルドカードやタグは本人の魔力にしか反応しないから、落としても悪用されないんだって。
 おれの場合、迷子札の意味合いもありそう。

見せる情報も決められるから、おれは名前とレベルと年齢が見れるようにしてもらった。

 結局押し切られてタグを作った。これにランクが書き込まれる。

 ギルドの階級があって、スタートはFなんだけど、これは12歳で登録した子供向けの階級で、みんなで見守りましょうみたいな意味があるって。
 ちなみにおれは色々加味して、D級スタートになるんだって。

「え?Dって高くない?」

 実力に似合わないランクは困るから、ウルスさん達に聞いてみる。

「ジュードはA級だからな。バランスだ。魔力とスキルも加味したら十分Dでいけるはずだ。」

「でも、魔法はあんまり種類使えないんですけど。」

「ああ、それは昨日ジュードにも聞いたから、覚えてないだけで、知りさえすれば使えるなんて、すごいのよ。適当に覚えてもいけないから、ちゃんと基礎から私が教えてあげるわ。」

「ありがとうございます。嬉しいです。」

 キラッキラのエルフのディネさんから教えてもらえるのすごい嬉しい。ジュードもディネさんならって許してくれた。

 そんな話をしている間に、ギルドタグが出来た。
 おれの魔力を通して完成だ。

 するとジュードが細い銀のネックレスに通して、おれの首にかけてくれた。

「ありがと。ジュード。」

 これでジュードと冒険者活動が出来る。ある程度、慣れたらモンスター退治とかも出来るって言ってたし。

 自分の意志で何処にでも行けるし、何でも出来るなんて。過去では想像も出来なかったな。
 なんとも言葉にし難い、ムズムズした飛び上がりたいような気持ちになって、それがそのまま顔に出てたみたい。
 たぶんニヤニヤしてたのか、ジュードにフッと笑われた。

 恥ずかしい。赤くなっちゃったよ。

「ところで愛し子の愛し子ってどういうことだ?」

 ふいにウルスさんが聞いた。そういえばジュードは愛し子としか言ってなかったっけ?

「えっとおれのお母さんが、大神の愛し子で、そこに別の神様の加護ももらって愛し子になったから、愛し子の愛し子?」

 説明しにくいけど、こういうことだよね?

「なるほどな。」

 ギルマスと副ギルマスも納得してくれたらしい。おれが規格外なのはわかってるつもりだ。

 ふと、おれ以外の三人がピクリと何かに反応した。しばらくすると足音が聞こえてきた。

 扉が活き良いよく開いた。
 丈の長い上着をなびかせて、バーンって入ってきたおじさんは、すごいイケおじだった。

 驚いてジュードにしがみついていたおれに気がつくと、膝を折り、おれの前にひざまずいた。

「これは失礼いたしました。私はマサの神殿の神官長をしております。アーノルドと申します。」

 ものすごく丁寧に挨拶されるから、焦っちゃうけど

「あ、初めまして。中瀬慎翔です。」

「愛し子様にお会いできるとは、光栄の極みにございます。ぜひ、神殿にも足をお運びいただきたい。」

 なんで愛し子って知ってるんだろう?返事に困ってジュードを見ると、ジュードはウルスさんを睨んでた。

「違うぞ。俺は何も言ってない。神殿に神託が降りたんだ。」

 ウルスさんが慌てて答える。

 二人で顔を見合わせた。

 大神さんもおれのこと心配してお告げしてくれたらしい。該当するのがおれって事なのは、ウルスさんも分かってるから、神官長さんが来る前に帰らせたかったんだ。面倒だって顔に書いてる。

 するとジュードにぐいっと身体を持ち上げられた。向かい合わせのタテ抱っこだ。左腕におしりを載せて、右腕はおれの腰から背中にギュッと巻き付いて、絶対に離さないって感じだ。
 おれも身を屈めてジュードの首にぎゅっとくっつく。

「えっと、また今度行きます。」

 簡潔にそれだけを言う。

「わかりました。突然で驚かせて申し訳ありません。別に何かしようと言う訳ではないのです。神殿を味方につけておけば、何かと都合はいい。使えるものは何でも使えば良いのです。神殿もギルドもね。」

 イケおじが走って乱れたオールバックの銀髪を撫で付けて、もう一度膝を付き頭垂れながらそう言う。そして顔を上げ、ニヤリと笑った。悪い笑顔だけど、おれに害意があるわけではないみたい。

「マコトの世話は神から俺が頼まれたんだ。他の誰の手も煩わせるツモリは無い。」

 おれのことをぎゅーぎゅーしながらジュードが宣言してる。
 えへへ。嬉しい。
 ニコニコしながらジュードの顔を見る。
 ほっぺにチュッとしてくれた。

 ギルマス達は呆れた顔してて、神官長さんは目も口もポカーンってしてた。






 





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