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新しい世界
24 お出かけ
しおりを挟むいや、今日盛りだくさんすぎでしょ?
おれのキャパ超えちゃうよ。
えっと、ウルスさんとディネさんが来て、燈翔と心琴が来て、倒れたり狩りに森に行ったり…。
そしてあのジュードの熱烈な告白。
『可愛らしい。いじらしい。目を離せない。気になる。笑顔がいい。いつも明るい。恋しい。愛おしい。離したくない。ずっと閉じ込めときたい。マコトの事を愛している。』
いくらおれがバカだとしても流石にこれだけ熱烈に言われたら、めっちゃ好かれてるのは分かる。
愛しているって…。
その上甘々なキスをチュッ、チュッとされて…。
そこまで考えたところで、顔がボンッと火を吹くみたいに熱くなった。きっと真っ赤だ。
「大丈夫か?のぼせたか?」
目の前には恐ろしく整った裸体がある。シックスどころかエイトパックに割れた腹筋。背筋に上腕二頭筋もムキムキじゃなくてしなやかについてる。おしりの筋肉もやべー。全部きゅってしてる。太もももそうだけど、邪魔な肉が全然付いてない。彫刻みたいに整ってる。
って、なんで裸体を眺めてるかっていうと、一緒にお風呂入ってるから。
前に脱衣所で寝ちゃって、それからはずっと一緒。心配なんだって。
「ううん。大丈夫。のぼせてないよ。」
洗い場で身体を洗うジュードを見ていたら、赤い顔を見て心配されてしまった。ジュードの身体に見惚れてたせいとは言えないけど。
濡れた前髪をかき上げるの、色気すごい。長い髪をくるんって紐で縛るのお団子みたいになってて可愛い。
おれなんか立っても目線の高さがジュードの胸なんだよね。どんだけ小さいのかと思うし。まだまだ子供の身体。息子もおこちゃまだし。病気だったせいか、ガリガリなんだよね。お腹とかぺったんこ。腕も足もひょろひょろしてる。ある意味無駄な肉はついてないんだけど。
今からいっぱい食べてしっかりした身体を作ろう。
晩御飯に食べた、バサンの肉はすごく美味しかった。採ってきた草の中に香草があったから、それと塩でシンプルに焼いて食べた。もも肉に胸肉、部位によって硬さも味も違うんだって。今回はもも肉だったらしいけど、次も楽しみ。
これから料理も勉強したいな。それには色んな物食べないと、味が分からないもんね。
ちなみにジュードはあまり料理は得意じゃないみたい。普段は焼くか、スープにするくらいって言ってた。だからおれが頑張ろうかと思ったんだ。
お風呂から上がるとジュードが火と風の魔法をうまく使って、髪の毛を乾かしてくれる。
おれも今練習中。ジュードの長いストレートの髪に風を当てるけど細かい魔法はまだまだだなー。でもジュードのさらさらで綺麗な黒髪を焦がす訳にはいかないから、すごい集中してやってる。
燈翔はドライヤーだねーって笑ってた。それ、おれ使った事ないけど。
一日盛りだくさんで疲れたし、明日は街に行くから、早めに寝ることにした。
翌日、家から歩いて1時間くらいかけて街まで来た。
途中風魔法で宙に浮いて、俯瞰して見たり、マップを完成させながら行った。
街はぐるりと高い塀が囲っている。南側は海で港になってて、街の中央に大きな建物が見える。それが役所だって。そのすぐそばにギルドもあるって。港の南面以外の北東西に一個ずつ門がある。
ジュードの家は街の西の丘の上にあるから、西門から街に入るのが近い。正門にあたるのは北門だって教えてくれた。
身分証のないおれは、ジュードの同行者として特別許可証もらってるんだって。そういう面倒な手続きは北門でしか出来ないから、今北門に来たところ。
門番が徒歩の列と馬車の列の2つに分かれて一人ひとり確認してる。
ジュードの番が来た。
「おはようございます。久しぶりですね。どこか旅に出てたんですか?」
愛想のいいお兄さんだ。ジュードはここでずっと冒険者として暮らしてるから、顔はまあまあ知られていると教えてくれた。
「ああ、ちょっとダンジョンに篭っていたんだ。」
そう言いながらジュードがギルドカードを見せる。それを確認しながら隣に立つおれをチラリと見る。
おれは黙って立っている。いつものように認識阻害のローブにフードを被り、口元を覆う布もフードにつけて、目しか見えてない。
怪しさ満点のおれに門番が何か言うよりも先に、ジュードが何か紙を見せた。
「今は荷物扱いだ。ギルマスの許可ももらっている。」
その紙を確認すると、もう一度ちらりとおれを見て、小さな石版を差し出してきた。
「ここに手をかざしてもらえますか?」
たぶん子どもだと思われているんだろう、門番さんは優しい口調でおれにそう言った。
ちらりとジュードを見て、頷くので、素直に手をかざす。
石版がふわっと青に光った。
「確認しました。どうぞ。」
「?」
「これは犯罪者を見分ける石版だ。赤く光ると逮捕か追放だ。」
黄色は別室で取り調べされるんだって。
昨日ウルスさんが許可証を置いていったらしい。荷物扱いなのかよ。って思わなくも無いけど、街に入れないほうが困るから、細かいことは気にしない。
大体認識阻害のローブでほとんど分かんないはずだし。それこそ荷物と一緒だよね。何よりスムーズに街に入れて、ほっと胸をなでおろした。
ジュードさんに連れられて、街を歩く。しばらく歩くと、大きな建物がいくつも建っている地域に来た。
さっき街の外から見ていたここが、街の中央部で役所とか主要な施設がある。そこにギルドもあるのだ。
大きな街のギルドなので、建物も大きかった。四階建ての洋館っぽい。正面に大きな観音開の扉がある。重そう。
なんでも食堂と酒場に宿泊施設も兼ねてるんだって。
それに見た目以上に中は広くなってるって教えてくれた。魔法で広げてるって。そういえば自分のテントも一緒だったわ。魔法はすごいね。
二人でギルドの前に立つ。おれはポカーンと見上げていた。
「緊張してるのか?」
「うーん。ちょっとだけ?」
ジュードがおれの心配をしてくれる。
「なら手をつなごうか?」
「いやいや、恥ずかしいから。」
ブンブンと手を振って答える。けど、緊張してるのは確かで。自分で自分の手をギュッて握って不安そうにしているのは、ジュードには分かっているんだろう。優しい。
断ったけど、やっぱりちょっと迷ってからジュードの服の裾をきゅっと握った。見上げながら、
「……やっぱりちょっとだけ持っとく。」
見下ろすジュードが「グッ、天使。」とか言って笑ってるけど、これだけで安心するんだから不思議だ。
周りにいた人達が、ジュードの優しい笑顔に度肝を抜かれて目を見開いてたけど、おれにはこれが通常運転だから、全然気がついて無かった。
「じゃあ入るぞ。」
ジュードと大きな扉を開いて中に入る。入るとそこは四階まで吹き抜けの大きな部屋になってて、天井が高い。
正面に受付カウンターがある。
左手には掲示板があって、まばらに紙が貼ってある。依頼が貼り出されるところだ。朝イチだと壁一面に貼られるらしい。
朝の混む時間は避けたって言ってたけど、それでも人は多い。
右手は壁もなく、そのまま食堂兼酒場になっていて、机と椅子がたくさん置いてある。そこで座っていた冒険者の人たちがこっちを見てた。
「ジュードだ。」
「久しぶりじゃないか?」
「誰か連れてないか?」
ぼそぼそと話す声が聞こえてくる。
ジュードはそんな声を全部無視して、受付の人に声をかけて、奥へと進んだ。
ウルスさんから話がいってるらしい。すぐに二階にある個室に案内された。
そこにはいつも通り綺麗で落ち着いたディネさんがいた。
「おはよう。ジュード。マコト。」
「おはようございます。」
おれはフードをおろして、あいさつをする。
応接室らしく、ソファセットに座るようにすすめられた。
机には水晶玉みたいなのが置いてある。
座ったらすぐに扉が開いて、ウルスさんが入ってきた。
あれ?昨日よりげっそりしてない?
ウルスさんは見るからに疲れてるみたいだった。
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