愛し子の愛し子の異世界生活

いちこ

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新しい世界

15 出来ること

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 それからお昼を食べた。
 おれが寝てたのは、ほんの一時間に満たない時間だったらしい。
 溶いた卵を焼いて、ふわふわしたパンに乗せて食べた。
 ジュードさんはソレに焼いた肉も付けていたけど、おれはまだそこまでの固形は怖いので、今はたまごパンとスープを食べた。
 今のところ美味しくないと思ったのは、朝のコーヒーだけだ。それも砂糖と牛乳入れたら美味しかった。

 お昼を食べたら、魔法を使ってみる事にした。


 どの属性が使えるかジュードさんと一つずつ試していく。

 魔力を循環させて、手のひらから火を出したり、水を出したり、風を出したり、石を出したり。

 庭に出て、少し大きめに魔法使えるかとか、色々教えてもらった。

 ジュードさんは火と風と闇属性が得意なんだって。
水属性は特に苦手だって言ってた。

 おれは多分全部使える。魔法の種類を知らないだけだ。

「これは…。俺以外に魔法の先生つけた方がいいかもな。その方が色んな魔法使えていいだろ?」

 ジュードさんがそう提案するから、お願いすることになった。ただ、それはまだ当分先の話らしい。

ジュードさんはおれの取扱説明書を広げて、スキルとかを確認している。

「この創造っていうのはどんなのだ?」

 そう聞かれたので、マジックボックスから靴と鞄を出す。

「これおれが作ったの。頭で理解出来てるものはたぶん、何でも作れると思うけど。」

「何でもって…。」

 服とかは作れるけど、剣とか鎧とかは良くわからないから今は作れない。一度でも触ったものなら作れるみたい。

「あー。大きいのも作れるかも。一番大きいの出しても良い?」

 あっと思い出したおれはジュードさんに聞いてみる。

「それは気になるな。何を作ったんだ?」

「ほら、外に出たら野営とかするでしょ?そん時のテントを作ったんだ!自信作。いくよー。」

 そう言いながら、マジックバックからドンとテントを出す。

 このテントはおれがダンジョンの中で作ったテントだ。
 おれはダンジョンの中では眠ってたらしいけど、何故か作ったものは残ってるんだ。
ただ色が全部白なんだけど。
 外に出る前に燈翔から色の付け方教わったから、今はあの部屋で作った色んな物に色を付けているところだ。

 ちなみにこのテントはまだ手付かずだったので全部真っ白だ。
シンプルな三角のテントは2m四方くらいのぱっと見はそんなに大きくない物だ。高さも2m無いくらい。

「なんと言うか、真っ白だな。」

 ジュードさんがなんとも言えない顔をしている。

「あのジュードさん。こういうテントって何色?今から色つけようかと思うんだけど。」
 
「そうだなあ。そんなにすぐ変えれるのか?」

 そう聞かれて、おれはとりあえず分かりやすいようにオレンジ色に変えてみる。やり方は簡単。テントに手を置いて変われって思うだけ。

 上手く出来たみたい。

「どう?」

「オレンジは派手かもしれないな。クリーム系とかカーキの方が目立たないんじゃないか?」

「でも認識阻害もかけてるから、色は自己満足なんだけどー。」

「いやいや、テントは見えた方がいいだろう。実際に冒険に行ったらこれに軽く結界かけてますよって感じで見せてる冒険者は多いぞ。わざわざ目立つ必要はないが、だからってあんまり奇抜なのは避けた方がいいな。隠蔽や認識阻害の魔法はその時々で使えばいいんじゃないか?」

「なるほど。」

 ジュードさんの話だと空間魔法自体は多くはないけど、そこまで珍しいものでも無いんだって。だから空間拡張テントもあるらしい。普通のテントかどうかなんかは、見ただけでは解らないんだって。
 ならこのテントも普通かと思い、中に案内する。とりあえず外側はサンドカラーにしといた。

 表の分厚い生地の下側にはメッシュ地の布で入り口を塞いでいる。これは虫が入らないようにするための網戸だ。本当は結界魔法でそういうのも防げるんだって。知らないから元の世界のキャンプのテントを参考にしたんだ。
 その重ねあわせた布の入り口を開いてジュードさんが中を見る。

「シンプルでスッキリしているな。」

 ジュードさんに退いてもらって靴を脱いで先に中に入る。入り口は一人しか通れないからね。ジュードさんも入ってきた。

 中も真っ白だから、ぽんぽんと床や置いてあった寝袋をクリーム色に変えていく。 

「上手く作ってるじゃないか。二人でも十分足を伸ばして横になれるな。」

 とテントの中を見回しながら言う。
 そういう風に作ったからそりゃそうなんだけど、残念。見せたいのはこれじゃないのだ。

 おれはテントの奥に進むとすぐに一番奥の三角部分にたどり着く。そこでジュードさんを手招くと、近付いて来てくれた。
 ジュードさんの手を取る。見えるようになれって心の中でお願いしたら、ジュードさんの目が見開かれた。

「認識阻害をここにもかけてるんだな。この扉を開ければいいのか?」

 さすが理解が早い。
 おれはニコニコしながらうんうん頷いて

「早く。早く。」

 とジュードさんを急かした。

 扉を開くと、ジュードさんが固まった。

「こ、これは…すごいな。」

 入ると玄関があって、円形の大きな部屋がある。その壁にいくつか扉がある、おれはジュードさんを引っ張って1つづつ台所に洗面所にトイレにと紹介していく。
 ジュードさんも段々慣れてきたのか、すごいな。と言いながら、おれの話を聞いてくれた。

 部屋は真っ白なままなので最初の円形の大きな部屋に色を付けていく。この部屋にふかふかのラグがひいてある。壁は白のままでラグを薄い緑色にする。沢山のクッションが置いてある。ソファとか知らなかったし、あの白い部屋の中もラグとクッションしか無かったから、同じように作ったんだよね。

「このクッションは何色がいい?」

「青かな」

 こんな風にジュードさんと色んな物に色を付けていった。

「なんかどんどん命が宿っていってる感じがする。色って大事なんだ。」

「素晴らしいテントになったな。この世界に慣れたら冒険に行こう。このテントも持って。」

 ジュードさんにそう言われて、頭を撫でられると、ふにゃりと笑ってしまう。

 ジュードさんと冒険!行きたい!

 そう言われるだけでこれからの未来に向けての希望ができて、なんか嬉しくなった。


 



 



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