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第六場
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待ちに待っていない勝負当日。
本日の授業も全て終了し、心の底から帰りたい。
決戦は体育館のステージで行われるそうで、彼女たちは最後の準備に取り掛かっている。俺は、その準備が終わるまで、体育館裏で隠れて煙草を吸うという不良少年のような事をしていた。
学校でも禁煙化が進む昨今、このような姿が目撃されれば、ただでは済まないだろう。
「小田島先生」
「ぬわっ!」
金久保先生に見つかってしまった。
「あ、先生、これはですね……あの、そう、藤木先生っす……! 藤木先生がここならバレないからって教えてくれた穴場でして、私はその悪魔の声に唆されただけなんです!」
藤木先生すいません。俺と道連れになって下さい。先生と共にこの場で煙草を吸いながら、どの女子生徒の発育が良いかを議論したことは決して忘れません。
「別に、火の後始末だけきちんとしていただければ私は目を瞑りますよ……私も若い頃は喫煙をしていたので、気持ちは分かります」
「あ……そうなんですか」
「藤木先生にもそう伝えておいてちょうだい」
「は、はい」
藤木先生に怒られそう。なにチクってんだよと。教師になってもやっていることは学生と大差ないな。
「それより、準備が整ったので、中へどうぞ」
煙草の吸殻を携帯灰皿に押し込み、金久保先生に促されるまま正面入り口から体育館の中へ。
時刻は6時過ぎ。部活動もすっかり終わり、体育館内はもぬけの殻だ。流石に、バスケ部やバレー部がボールをダンダン打ち付けている中では観劇なんか出来る筈も無い。
部活動が終わり次第、体育館を貸し切れるように金久保先生が根回しをしたようだ。どうせやるなら、とびっきりの環境で、という思いがあったのだろう。
ステージに近づき見上げると、俺は絶句する。
「なんじゃこりゃ……」
挙句、優作の台詞が思わず口から飛び出た。
体育館のステージ。そのグレードがたかだか高等学校のそれでは無い、立派なプロセニアム・ステージ(額縁舞台)だ。間口も奥行きも広く、天井からは美術・照明用のバトンが舞台に対して平行に数多く吊られ、サスペンションライトにボーダーライトまでしっかりある。
袖幕奥には、バトンや幕の上げ下げを行う綱本があり、幕に隠れてS・S(ステージサイドスポット)と大型スピーカーが視界に映った。舞台奥には大黒幕が下がり、更にその奥にホリゾント幕が存在しているだろう事が、アッパーホリゾントとロアーホリゾントが目に映ったことで確信する。
ステージの反対側のロータリーにある小窓の付いたブース。あの中は音響卓や調光卓のある調整室となっているのだろう。
ただの学校にしてはあり得ない程の、それこそ市民ホール顔負けの設備が備わっていた。
「どう? 驚いたかしら、地方巡業の劇団さんがたまにここでお芝居をしてくれるのだけど、いつもここの設備を見て驚くの」
「そら、そうですよ……」
始業式の時はステージ下で名前を紹介される程度だったので、ここまできちんと舞台を確認したのは今日が初めてだった。純粋にすごいと思う。
「どう? 楽しみになってきたかしら?」
「全然。設備は充実してますけど、誰も扱えないでしょう? 大方、先生がこれを俺に見せたいが為にわざわざ体育館を用意したんでしょう?」
「バレたか」
バレバレだっつの。実際の舞台を見せて俺に揺さぶりを掛けようとしたのだろう。スポーツ選手だって、実際の試合会場やコース場を目にして体を滾《たぎ》らせるように、役者だって舞台を目にして心をうずうずさせる。しかし、俺には無駄な事よ。
ちょっとだけ滾ったけど。
用意された観客席。といってもただの折り畳み椅子に座り、足を開いて腕を組む。
久しぶりの観劇だ。見てやるよ。たっぷりと堪能してやろう。
「金久保先生ー! こっちも準備できたんでお願いしまーす!」
「はーい!」
姿を現さず、袖の奥から澤野が声を飛ばす。
「それじゃあ、逍遥先生。ゆっくりとお楽しみくださいませ」
金久保先生がウインクをしながらそう言い残すと、調整室へ上って行った。
先生が照明や音響を操作するのだろうか。素人には難しいけどな。
蛍光灯の明かりが消え、体育館の中は完全なる暗闇となる。緞帳が降り、舞台上を一切伺えなくなった。
なんだろう。久しぶりだ。開演前のこの独特な緊張感。
いやいや。気をしっかり持て。どうせ大した芝居は出来やしない。
「それではただいまより、三島薫、八千草春子、澤野響乃の三人によります、『春の薫り。響く恋。』を上演します」
澤野からのアナウンスが入り、再び静寂が訪れた。
『春の薫り。響く恋。』て……タイトル安直過ぎるだろ。三人の名前から一文字取っただけじゃねえか。
俺が呆れていると、緞帳は上がり、舞台上に照明が灯り、もの悲しげな音楽が流れる。
あ、芝居が始まった。当たり前にもそう思った。
舞台上には三人が板付きの状態で膝を付いてしゃがんでいた。三人とも、制服の上から黒いローブのような物を羽織っている。恐らくは安物の布を買って、自分たちで仕立てたのだろう。
そして、一斉に顔を上げ、息を大きく吸い込み、台詞を語り始めた。
魔女達 「綺麗は汚い、汚いは綺麗」
魔女1 「これは、世にも悲しき恋の物語」
魔女2 「涙なしには語れない事の顛末を、その全てを語ろう」
魔女3 「物語は、二人の男女が出会う所から動き出す」
魔女1 「敵対する隣国の王子と姫。憎むべき敵の中に、真実の愛を見つけ出した」
魔女2 「しかし、二人の恋路を国王が許すはずは無い」
魔女3 「人生はいつだって無情。芝居のように困難が降りそそぐ」
魔女達 「綺麗は汚い、汚いは綺麗」
魔女1 「父親というものはいつだって、自分の子を思い、己が持ちうる全ての愛を注ぎ込む」
魔女2 「子はいつだって、父親の言う事を聞き、洗練潔白に父を想い生きる」
魔女3 「親にとって子は全てであり、子にとって親は世界なのさ」
魔女達 「綺麗は汚い、汚いは綺麗」
なる程。『マクベス』に登場する3人の魔女か。
言葉遊びでマクベスを悲劇の運命へ誘った魔女をモチーフに、この芝居における語り部にしたわけだ。
試みとしては面白いし、効果的。冒頭から面妖な魔女が登場する事で観客に世界観を分からせ、期待値を高めさせる。しかし、特別珍しいことでも無い。
意気揚々と語る彼女達の顔には化粧が施されており、それも舞台を意識したもので濃いものとなっていた。
目元に貼られた、星や月の形をしたラメシールがキラキラと輝き、見ている物を幻想的な世界に案内する。
見た目だけの事で云えば、まあ、それっぽい。
しかし、台詞を語る三人の表情は硬く、緊張が見て取れた。
澤野は相変わらず台詞を読むのが下手くそだし、三島も頑張ってはいるが自信が無さげ。そんなんじゃあ、俺を魅了する事なんざ到底出来やしない。
魔女のシーンが終わり、場面が変わった。音楽は消えたが、照明は変わらず白い地明かりのまま。それもその筈で、照明の知識も無いのに、暗転明転を繰り返しても効果は無く、寧ろ客の集中力を削いでしまう。
しかし、それでは場面が切り替わった事を伝え辛いのだが、魔女に扮していた八千草はくるりとその場で一回転し、羽織っていたローブを脱ぐ。それを三島が拾い、澤野と共に舞台上から退場する。
そうする事で場面が変わった事、人物が変わったことを表現した。
これならば、分かりやすい。
しかもそれだけでは無く、玩具の王冠を被り、王族の身分へと変貌する。
姫 「ああ、私の体は一体どうなってしまったのかしら。きっと、そう。侍女たちが話していた、これが噂の恋というものなのだわ。とすれば、私は恋に落ちてしまった。だって、彼の事が頭から離れない。あの綺麗な黒髪に、蒼い瞳、色艶やかな唇、甘い声、引き締まったお体……。
こんなのおかしいわ。だって、物語の中ではこうやって恋を語るのは男の役目なのだもの。それを私ったら、はしたなく声を大にして語っている。ダメダメ、ええダメですとも。私は、彼の事なんか愛していないわ__
でたらめね。こうして否定している間にも、私の頭の中は彼でいっぱい。今彼は何をしているのだろう。何を考えて、誰と居るのだろう……女かしら。いけないわ。私は嫉妬なんかしない。おしとやかなお姫様なんだもの。
でも、そう考えただけで、私の胸は張り裂けそう。
ああ、あの人に会いたい。あの人の傍に居たい。いいえ、ほんの遠くから眺めるだけで良いの。それだけで私は、この世に生まれてきて良かったと思える」
つらつらと語る八千草に、少し面食らった。
先日教室で見かけた時より、台詞回しが上手くなっている。二人に比べると、声の響きが良く、スッと耳に入る。
身振り手振り大きく、コロコロと変わる表情。それにこれだけの長台詞を、あの八千草が良く覚えたものだ。
モノローグ(一人台詞)というものは、長ければ長いほど、役者の腕が試される。
国王 「姫よ。喜べ。嬉しい知らせだ。ついに我が国は隣国へ戦争を仕掛ける事になった。今まではケチ臭いイザコザばかりだったが、今度こそは正真正銘の戦争だ。かの国を我が占領地とし、あの忌々しき隣国国王を葬り去ってやる。奴の親も、子も一人残らずあの世に送ってやる。彼奴の血を根絶やしにしてやるのだ。
どうした、可愛い我が娘よ。顔が真っ青だぞ。隣国国王の前にお前が血を流してしまったのか?」
王妃 「姫。どうしてお父上の前でそのような顔をするの。喜ばしい事じゃない」
姫 「ああ、ダメ、ダメなのです」
国王 「一体何がダメだというのだ」
姫 「私は、もうあの人たちを憎めません。愛しているのです」
国王 「何? どういうことだ?」
姫 「愛しているのです。王子を!」
王妃 「姫、口を慎みなさい! 嘘でもそんな事を言ってはいけません」
姫 「嘘ではありません。愛しているのです。他の誰でも無い、王子を!」
国王 「ええい、なんと愚かな娘だ!」
王妃 「陛下、お静まり下さい。冗談です、きっと冗談ですわ」
国王 「冗談で涙など流すか! この知れ者が!」
姫 「お父様、お許しください!」
国王役である澤野の棒読みは全くもって酷いものだ。彼女自身、一生懸命にやっているのは伝わるのだが、一定の水準を超えた演技を見せて貰えないと、真剣に見られない。どうしてもそこが気になってしまう。
……俺は今、真剣に芝居を観ようとしていたというのか?
落ち着け。話自体ありふれたストーリーだし、真面目に見る価値なんてないさ。
物語は進み、姫が敵対する国の王子と恋仲である事に激怒した国王は、姫を牢屋に幽閉し、王子を諦めさせようと試みる。
姫 「あの人だわ! あの人が窓の外で語り掛けている。励ましてくれている。この私の為に!」
しかし姫の恋は誰にも止められず、王子は監視の目を欺いて姫の閉じ込められた牢屋に近づいて彼女を励ます。そして二人は、想いのままに愛を語り合った。
姫 「女の身でありながら、あなたに恋を語る私をどうか大目にみて。どうか、いつまでも私の傍にいて下さい。そうすれば、私もあなたのお傍に永遠と寄り添いますわ。あなたの従順な妻として。お願い、私から離れないで。ここはとても冷たいの。でも、あなたが近くに居て下さると、とても、暖かい」
この時王子は登場しない。そうする事で、王子の人物像をこちらで好きなように想像できる。
その後、遂には国王にバレてしまい、王は怒りを更に激しく燃やし、王子を捕らえて磔にし、隣国との戦争を開始した。
姫 「ああ……私の体は何て小さいのかしら、これだけの苦難を受け止める事も出来ない。あの人との愛を誓ったのに、その誓いを裏切るというの? 私はなんて愚かなの……? 神様、こんな愚かな私をお許し下さい。でも、例え神様が許したところで、あの人はきっと許してはくれない……」
王子が捕らえられたことに責任を感じた姫は思い悩み、自分を卑下し、嘆きに嘆く。
ついには外の世界へ飛び出す事を諦め、自ら牢屋の中に閉じこもり、王子と交わした愛の約束すら忘れ去ろうとしてしまう。
そこへ、魔女の一人が姿を現した。
魔女 「姫さん。どうしてそんなに辛そうなんだい?」
姫 「大切な人を裏切ってしまった。許されない事をしてしまったわ」
魔女 「そりゃいかんな。裏切りはいけない」
姫 「ええ。だから私は罪人として牢屋の中で一生を過ごすの。魔女さん、私を一人にして」
魔女 「そう言いなさんな。お前さんをここから出してやろう」
姫 「聞いていなかったの? 私はここに居たいの」
魔女 「王子がその後どうなったのか知りたくないのかい?」
姫 「あの人に会わせてくれるの?」
魔女 「ああ。会わせてやろう」
姫は魔女に誘われる形で牢屋から出て、王子の姿を確認する。
そして、絶望のどん底に叩き落とされるのだった。
王子はもうこの世におらず、墓の中に眠っている。地獄の住人と化してしまっていた。
姫 「ああ、ああ……なんていう事なの。彼が一体何をしたというの? あの人は誰よりも誠実だった。誰よりも聡明で、争い事を嫌っていたというのに。美しくて、逞しくて、こんな私を愛してくれたのに、彼は私から離れてしまった。いいえ違うわ! 私が殺したのよ。私が彼を殺したんだわ!」
ついに姫は膝を折り、洪水のように涙を流す。
最愛の人との別れ。
もう、彼女は立ち上がる事は出来ない。
魔女 「人一人死んだくらいで何だというんだい? 命あるものいつかは滅びるのさ」
姫 「なんて人でなしなの! 魔女に人の気持ちなんて分からないわ!」
魔女 「人の気持ちが分からないのはあんたさ、姫さん。人は命があるからこそ、未来を残せる。さあ、受け取るんだよ」
魔女は何処からか一凛の薔薇の花を取り出し、姫に手渡す。
姫 「これは?」
魔女 「王子からさ。あんたに渡すようにって。それともう一つ、頼まれごとだ」
そして魔女は姫の額に人差し指を付けて、言った。
魔女 「王子はあんたを心の底から愛していた。その事から目を背けたのはあんただよ。でも王子は、もっと大切な、未来ってやつをあんたの中に残したのさ。お前さんにはそれを育む責任がある。目を見開いてよぉく見な。この世界を」
姫はふらふらと立ち上がり。世界を見渡す。
この世界というものは残酷で、数々の試練を人に突き付ける。
でもそれは誰に対しても同じで、それでも人は、前に進む。進まなければならない。
それが成長と呼べるものであり、その先に未来があり、人は死に、そして新たな命が生まれる。
世界の真理の一端に触れた姫は、どこか自嘲気味に笑みを零して、言った。
姫 「人生は舞台のようなものね……」
そして、もう一度大きく息を吸い込み、グッと目を見開いた。
「生きるべきか、死ぬべきかそれが問題だわ!」
八千草が叫んだ瞬間、ズガンと鈍器に思い切り殴られたような衝撃が走り、全身が総毛だった。
姫としての台詞でありながら、自分自身の言葉でもあるかのように、力強く、己の中で想像力を最大限に可動させながら、言葉の嵐を呼び起こす。
「このままおめおめと無様に生き続けて一体何になるというの! それよりも過去の自分を殺して、新しい自分としてこれからの未来を歩むもう! でもその未来には数々の困難が待ち受けているわ!」
力強く、でも怯えを孕んだ目で、彼女は自身に訴えかける。
彼女のイメージが俺の中に激流のように流れ込み、彼女の心を通してその全てを感じた。
見える。聞こえる。彼女と同じものが。
風の音に、草木の臭い、冷たい地面の感触。降りしきる雨。崩れる王宮と、倒れる人々。
酷い、酷い世界だ。勇んで進んだその先に、希望が転がっているかも怪しい、無慈悲な世界。
でも彼女は、懸命に怯えを振り払う。
「それでも私は前に進むの! あの人は私を愛してくれた。あの人に恥じないように、これからを私は生きたい!」
自分が愛したものの為、自分を愛したものの為。そして、二人が残す命の為に。
彼女の目からは涙が零れ、口から嗚咽が漏れる。
真っ直ぐに、何処までも真っ直ぐに、自分の心に刻み付けるように、そして、ここに居ない王子に誓うように。
それと、どっかの誰かに向かい語る。
「未来がどうあるかなんて、それは自分で作り上げていくものだわ! うじうじとした私とはもうさよなら。新たな旅立ちに、今日私は生まれ変わるの!」
今までの泣き虫な姫様はもういない。
顔を上げ、瞳を輝かせ、頬を緩める。
そして、溌溂な笑顔を浮かべて、最後の台詞を紡ぎ出す。
「私の世界は、私が作るわ!」
音楽。
彼女の旅立ちを祝福するような明るい音。
八千草はいつまでも前を向き、その表情に迷いは無い。
緞帳が降り、舞台は暗転する。
「以上をもちまして、『春に薫る。響く恋。』の上演を終了いたします」
本日の授業も全て終了し、心の底から帰りたい。
決戦は体育館のステージで行われるそうで、彼女たちは最後の準備に取り掛かっている。俺は、その準備が終わるまで、体育館裏で隠れて煙草を吸うという不良少年のような事をしていた。
学校でも禁煙化が進む昨今、このような姿が目撃されれば、ただでは済まないだろう。
「小田島先生」
「ぬわっ!」
金久保先生に見つかってしまった。
「あ、先生、これはですね……あの、そう、藤木先生っす……! 藤木先生がここならバレないからって教えてくれた穴場でして、私はその悪魔の声に唆されただけなんです!」
藤木先生すいません。俺と道連れになって下さい。先生と共にこの場で煙草を吸いながら、どの女子生徒の発育が良いかを議論したことは決して忘れません。
「別に、火の後始末だけきちんとしていただければ私は目を瞑りますよ……私も若い頃は喫煙をしていたので、気持ちは分かります」
「あ……そうなんですか」
「藤木先生にもそう伝えておいてちょうだい」
「は、はい」
藤木先生に怒られそう。なにチクってんだよと。教師になってもやっていることは学生と大差ないな。
「それより、準備が整ったので、中へどうぞ」
煙草の吸殻を携帯灰皿に押し込み、金久保先生に促されるまま正面入り口から体育館の中へ。
時刻は6時過ぎ。部活動もすっかり終わり、体育館内はもぬけの殻だ。流石に、バスケ部やバレー部がボールをダンダン打ち付けている中では観劇なんか出来る筈も無い。
部活動が終わり次第、体育館を貸し切れるように金久保先生が根回しをしたようだ。どうせやるなら、とびっきりの環境で、という思いがあったのだろう。
ステージに近づき見上げると、俺は絶句する。
「なんじゃこりゃ……」
挙句、優作の台詞が思わず口から飛び出た。
体育館のステージ。そのグレードがたかだか高等学校のそれでは無い、立派なプロセニアム・ステージ(額縁舞台)だ。間口も奥行きも広く、天井からは美術・照明用のバトンが舞台に対して平行に数多く吊られ、サスペンションライトにボーダーライトまでしっかりある。
袖幕奥には、バトンや幕の上げ下げを行う綱本があり、幕に隠れてS・S(ステージサイドスポット)と大型スピーカーが視界に映った。舞台奥には大黒幕が下がり、更にその奥にホリゾント幕が存在しているだろう事が、アッパーホリゾントとロアーホリゾントが目に映ったことで確信する。
ステージの反対側のロータリーにある小窓の付いたブース。あの中は音響卓や調光卓のある調整室となっているのだろう。
ただの学校にしてはあり得ない程の、それこそ市民ホール顔負けの設備が備わっていた。
「どう? 驚いたかしら、地方巡業の劇団さんがたまにここでお芝居をしてくれるのだけど、いつもここの設備を見て驚くの」
「そら、そうですよ……」
始業式の時はステージ下で名前を紹介される程度だったので、ここまできちんと舞台を確認したのは今日が初めてだった。純粋にすごいと思う。
「どう? 楽しみになってきたかしら?」
「全然。設備は充実してますけど、誰も扱えないでしょう? 大方、先生がこれを俺に見せたいが為にわざわざ体育館を用意したんでしょう?」
「バレたか」
バレバレだっつの。実際の舞台を見せて俺に揺さぶりを掛けようとしたのだろう。スポーツ選手だって、実際の試合会場やコース場を目にして体を滾《たぎ》らせるように、役者だって舞台を目にして心をうずうずさせる。しかし、俺には無駄な事よ。
ちょっとだけ滾ったけど。
用意された観客席。といってもただの折り畳み椅子に座り、足を開いて腕を組む。
久しぶりの観劇だ。見てやるよ。たっぷりと堪能してやろう。
「金久保先生ー! こっちも準備できたんでお願いしまーす!」
「はーい!」
姿を現さず、袖の奥から澤野が声を飛ばす。
「それじゃあ、逍遥先生。ゆっくりとお楽しみくださいませ」
金久保先生がウインクをしながらそう言い残すと、調整室へ上って行った。
先生が照明や音響を操作するのだろうか。素人には難しいけどな。
蛍光灯の明かりが消え、体育館の中は完全なる暗闇となる。緞帳が降り、舞台上を一切伺えなくなった。
なんだろう。久しぶりだ。開演前のこの独特な緊張感。
いやいや。気をしっかり持て。どうせ大した芝居は出来やしない。
「それではただいまより、三島薫、八千草春子、澤野響乃の三人によります、『春の薫り。響く恋。』を上演します」
澤野からのアナウンスが入り、再び静寂が訪れた。
『春の薫り。響く恋。』て……タイトル安直過ぎるだろ。三人の名前から一文字取っただけじゃねえか。
俺が呆れていると、緞帳は上がり、舞台上に照明が灯り、もの悲しげな音楽が流れる。
あ、芝居が始まった。当たり前にもそう思った。
舞台上には三人が板付きの状態で膝を付いてしゃがんでいた。三人とも、制服の上から黒いローブのような物を羽織っている。恐らくは安物の布を買って、自分たちで仕立てたのだろう。
そして、一斉に顔を上げ、息を大きく吸い込み、台詞を語り始めた。
魔女達 「綺麗は汚い、汚いは綺麗」
魔女1 「これは、世にも悲しき恋の物語」
魔女2 「涙なしには語れない事の顛末を、その全てを語ろう」
魔女3 「物語は、二人の男女が出会う所から動き出す」
魔女1 「敵対する隣国の王子と姫。憎むべき敵の中に、真実の愛を見つけ出した」
魔女2 「しかし、二人の恋路を国王が許すはずは無い」
魔女3 「人生はいつだって無情。芝居のように困難が降りそそぐ」
魔女達 「綺麗は汚い、汚いは綺麗」
魔女1 「父親というものはいつだって、自分の子を思い、己が持ちうる全ての愛を注ぎ込む」
魔女2 「子はいつだって、父親の言う事を聞き、洗練潔白に父を想い生きる」
魔女3 「親にとって子は全てであり、子にとって親は世界なのさ」
魔女達 「綺麗は汚い、汚いは綺麗」
なる程。『マクベス』に登場する3人の魔女か。
言葉遊びでマクベスを悲劇の運命へ誘った魔女をモチーフに、この芝居における語り部にしたわけだ。
試みとしては面白いし、効果的。冒頭から面妖な魔女が登場する事で観客に世界観を分からせ、期待値を高めさせる。しかし、特別珍しいことでも無い。
意気揚々と語る彼女達の顔には化粧が施されており、それも舞台を意識したもので濃いものとなっていた。
目元に貼られた、星や月の形をしたラメシールがキラキラと輝き、見ている物を幻想的な世界に案内する。
見た目だけの事で云えば、まあ、それっぽい。
しかし、台詞を語る三人の表情は硬く、緊張が見て取れた。
澤野は相変わらず台詞を読むのが下手くそだし、三島も頑張ってはいるが自信が無さげ。そんなんじゃあ、俺を魅了する事なんざ到底出来やしない。
魔女のシーンが終わり、場面が変わった。音楽は消えたが、照明は変わらず白い地明かりのまま。それもその筈で、照明の知識も無いのに、暗転明転を繰り返しても効果は無く、寧ろ客の集中力を削いでしまう。
しかし、それでは場面が切り替わった事を伝え辛いのだが、魔女に扮していた八千草はくるりとその場で一回転し、羽織っていたローブを脱ぐ。それを三島が拾い、澤野と共に舞台上から退場する。
そうする事で場面が変わった事、人物が変わったことを表現した。
これならば、分かりやすい。
しかもそれだけでは無く、玩具の王冠を被り、王族の身分へと変貌する。
姫 「ああ、私の体は一体どうなってしまったのかしら。きっと、そう。侍女たちが話していた、これが噂の恋というものなのだわ。とすれば、私は恋に落ちてしまった。だって、彼の事が頭から離れない。あの綺麗な黒髪に、蒼い瞳、色艶やかな唇、甘い声、引き締まったお体……。
こんなのおかしいわ。だって、物語の中ではこうやって恋を語るのは男の役目なのだもの。それを私ったら、はしたなく声を大にして語っている。ダメダメ、ええダメですとも。私は、彼の事なんか愛していないわ__
でたらめね。こうして否定している間にも、私の頭の中は彼でいっぱい。今彼は何をしているのだろう。何を考えて、誰と居るのだろう……女かしら。いけないわ。私は嫉妬なんかしない。おしとやかなお姫様なんだもの。
でも、そう考えただけで、私の胸は張り裂けそう。
ああ、あの人に会いたい。あの人の傍に居たい。いいえ、ほんの遠くから眺めるだけで良いの。それだけで私は、この世に生まれてきて良かったと思える」
つらつらと語る八千草に、少し面食らった。
先日教室で見かけた時より、台詞回しが上手くなっている。二人に比べると、声の響きが良く、スッと耳に入る。
身振り手振り大きく、コロコロと変わる表情。それにこれだけの長台詞を、あの八千草が良く覚えたものだ。
モノローグ(一人台詞)というものは、長ければ長いほど、役者の腕が試される。
国王 「姫よ。喜べ。嬉しい知らせだ。ついに我が国は隣国へ戦争を仕掛ける事になった。今まではケチ臭いイザコザばかりだったが、今度こそは正真正銘の戦争だ。かの国を我が占領地とし、あの忌々しき隣国国王を葬り去ってやる。奴の親も、子も一人残らずあの世に送ってやる。彼奴の血を根絶やしにしてやるのだ。
どうした、可愛い我が娘よ。顔が真っ青だぞ。隣国国王の前にお前が血を流してしまったのか?」
王妃 「姫。どうしてお父上の前でそのような顔をするの。喜ばしい事じゃない」
姫 「ああ、ダメ、ダメなのです」
国王 「一体何がダメだというのだ」
姫 「私は、もうあの人たちを憎めません。愛しているのです」
国王 「何? どういうことだ?」
姫 「愛しているのです。王子を!」
王妃 「姫、口を慎みなさい! 嘘でもそんな事を言ってはいけません」
姫 「嘘ではありません。愛しているのです。他の誰でも無い、王子を!」
国王 「ええい、なんと愚かな娘だ!」
王妃 「陛下、お静まり下さい。冗談です、きっと冗談ですわ」
国王 「冗談で涙など流すか! この知れ者が!」
姫 「お父様、お許しください!」
国王役である澤野の棒読みは全くもって酷いものだ。彼女自身、一生懸命にやっているのは伝わるのだが、一定の水準を超えた演技を見せて貰えないと、真剣に見られない。どうしてもそこが気になってしまう。
……俺は今、真剣に芝居を観ようとしていたというのか?
落ち着け。話自体ありふれたストーリーだし、真面目に見る価値なんてないさ。
物語は進み、姫が敵対する国の王子と恋仲である事に激怒した国王は、姫を牢屋に幽閉し、王子を諦めさせようと試みる。
姫 「あの人だわ! あの人が窓の外で語り掛けている。励ましてくれている。この私の為に!」
しかし姫の恋は誰にも止められず、王子は監視の目を欺いて姫の閉じ込められた牢屋に近づいて彼女を励ます。そして二人は、想いのままに愛を語り合った。
姫 「女の身でありながら、あなたに恋を語る私をどうか大目にみて。どうか、いつまでも私の傍にいて下さい。そうすれば、私もあなたのお傍に永遠と寄り添いますわ。あなたの従順な妻として。お願い、私から離れないで。ここはとても冷たいの。でも、あなたが近くに居て下さると、とても、暖かい」
この時王子は登場しない。そうする事で、王子の人物像をこちらで好きなように想像できる。
その後、遂には国王にバレてしまい、王は怒りを更に激しく燃やし、王子を捕らえて磔にし、隣国との戦争を開始した。
姫 「ああ……私の体は何て小さいのかしら、これだけの苦難を受け止める事も出来ない。あの人との愛を誓ったのに、その誓いを裏切るというの? 私はなんて愚かなの……? 神様、こんな愚かな私をお許し下さい。でも、例え神様が許したところで、あの人はきっと許してはくれない……」
王子が捕らえられたことに責任を感じた姫は思い悩み、自分を卑下し、嘆きに嘆く。
ついには外の世界へ飛び出す事を諦め、自ら牢屋の中に閉じこもり、王子と交わした愛の約束すら忘れ去ろうとしてしまう。
そこへ、魔女の一人が姿を現した。
魔女 「姫さん。どうしてそんなに辛そうなんだい?」
姫 「大切な人を裏切ってしまった。許されない事をしてしまったわ」
魔女 「そりゃいかんな。裏切りはいけない」
姫 「ええ。だから私は罪人として牢屋の中で一生を過ごすの。魔女さん、私を一人にして」
魔女 「そう言いなさんな。お前さんをここから出してやろう」
姫 「聞いていなかったの? 私はここに居たいの」
魔女 「王子がその後どうなったのか知りたくないのかい?」
姫 「あの人に会わせてくれるの?」
魔女 「ああ。会わせてやろう」
姫は魔女に誘われる形で牢屋から出て、王子の姿を確認する。
そして、絶望のどん底に叩き落とされるのだった。
王子はもうこの世におらず、墓の中に眠っている。地獄の住人と化してしまっていた。
姫 「ああ、ああ……なんていう事なの。彼が一体何をしたというの? あの人は誰よりも誠実だった。誰よりも聡明で、争い事を嫌っていたというのに。美しくて、逞しくて、こんな私を愛してくれたのに、彼は私から離れてしまった。いいえ違うわ! 私が殺したのよ。私が彼を殺したんだわ!」
ついに姫は膝を折り、洪水のように涙を流す。
最愛の人との別れ。
もう、彼女は立ち上がる事は出来ない。
魔女 「人一人死んだくらいで何だというんだい? 命あるものいつかは滅びるのさ」
姫 「なんて人でなしなの! 魔女に人の気持ちなんて分からないわ!」
魔女 「人の気持ちが分からないのはあんたさ、姫さん。人は命があるからこそ、未来を残せる。さあ、受け取るんだよ」
魔女は何処からか一凛の薔薇の花を取り出し、姫に手渡す。
姫 「これは?」
魔女 「王子からさ。あんたに渡すようにって。それともう一つ、頼まれごとだ」
そして魔女は姫の額に人差し指を付けて、言った。
魔女 「王子はあんたを心の底から愛していた。その事から目を背けたのはあんただよ。でも王子は、もっと大切な、未来ってやつをあんたの中に残したのさ。お前さんにはそれを育む責任がある。目を見開いてよぉく見な。この世界を」
姫はふらふらと立ち上がり。世界を見渡す。
この世界というものは残酷で、数々の試練を人に突き付ける。
でもそれは誰に対しても同じで、それでも人は、前に進む。進まなければならない。
それが成長と呼べるものであり、その先に未来があり、人は死に、そして新たな命が生まれる。
世界の真理の一端に触れた姫は、どこか自嘲気味に笑みを零して、言った。
姫 「人生は舞台のようなものね……」
そして、もう一度大きく息を吸い込み、グッと目を見開いた。
「生きるべきか、死ぬべきかそれが問題だわ!」
八千草が叫んだ瞬間、ズガンと鈍器に思い切り殴られたような衝撃が走り、全身が総毛だった。
姫としての台詞でありながら、自分自身の言葉でもあるかのように、力強く、己の中で想像力を最大限に可動させながら、言葉の嵐を呼び起こす。
「このままおめおめと無様に生き続けて一体何になるというの! それよりも過去の自分を殺して、新しい自分としてこれからの未来を歩むもう! でもその未来には数々の困難が待ち受けているわ!」
力強く、でも怯えを孕んだ目で、彼女は自身に訴えかける。
彼女のイメージが俺の中に激流のように流れ込み、彼女の心を通してその全てを感じた。
見える。聞こえる。彼女と同じものが。
風の音に、草木の臭い、冷たい地面の感触。降りしきる雨。崩れる王宮と、倒れる人々。
酷い、酷い世界だ。勇んで進んだその先に、希望が転がっているかも怪しい、無慈悲な世界。
でも彼女は、懸命に怯えを振り払う。
「それでも私は前に進むの! あの人は私を愛してくれた。あの人に恥じないように、これからを私は生きたい!」
自分が愛したものの為、自分を愛したものの為。そして、二人が残す命の為に。
彼女の目からは涙が零れ、口から嗚咽が漏れる。
真っ直ぐに、何処までも真っ直ぐに、自分の心に刻み付けるように、そして、ここに居ない王子に誓うように。
それと、どっかの誰かに向かい語る。
「未来がどうあるかなんて、それは自分で作り上げていくものだわ! うじうじとした私とはもうさよなら。新たな旅立ちに、今日私は生まれ変わるの!」
今までの泣き虫な姫様はもういない。
顔を上げ、瞳を輝かせ、頬を緩める。
そして、溌溂な笑顔を浮かべて、最後の台詞を紡ぎ出す。
「私の世界は、私が作るわ!」
音楽。
彼女の旅立ちを祝福するような明るい音。
八千草はいつまでも前を向き、その表情に迷いは無い。
緞帳が降り、舞台は暗転する。
「以上をもちまして、『春に薫る。響く恋。』の上演を終了いたします」
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