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初めての話 - 1
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「さて」
ダーヴィドから開放され、射精せずに達したヨナタンは倒れるようにベッドにうつ伏せに横たわった。相手はそんな彼を見下ろしてからベッドに座ると、腰から尻を撫で、自身を柔く握りながら意地悪に質問する。
「まだこっちがあるんじゃないのか?」
「あっ……! やだぁっ……!さわらないで……ぇ」
まだ出せていないためか子供のように嫌がるヨナタンに、分かった、と承諾するとあっさりと手を離した。
「え……?」
その不可解な行動に困惑する相手。
「もう少しこちらとしても話をしたいからな」
「ダーヴィド、さん?」
板についてきた敬称に、ダーヴィドが微笑む。近くにあった黒い煙草を取り出すと、彼はライターで火を着けて吸い始めた。
「ヨナ、これからどうしたい?」
「どうしたい、って」
彼は右手の親指と人差し指を立ててジェスチャーをした。白い煙は、独特の甘い匂いがする。
「俺側の選択肢は2つある。君を愛人の一人にする為に睦言を囁くか、君を部下にさせる為にマフィアを動かすか。……それ以外は無いと考えてくれ」
部下、そんな関係じゃあ足りない。愛人という言葉が快楽に溺れた今のヨナタンにはあまりにも魅力的に響いた。ダーヴィドは灰皿に煙草を置き、今度は左手で2を指すジェスチャーをした。
「そして君の選択肢も2つ。俺を振り切って自由になるか。俺に縛られるか。」
そんなの、自由に決まっている。ヨナタンは思った。だが自由の向こう側を保証できる身体ではないことも嫌なほど分かっていた。自分には結局、この男が必要なのだと。しかしながら、もう一方を取りたいか。彼の部下になることは、理不尽な世界に束縛されることを意味する。
「……どうすればいいか、何が正しいのか、オレには分からない、けど、」
ヨナタンは苦しんでいた。――しかしそれは選択肢を迫られていたからではなく、
「今は、何もかも忘れて気持ちよくなりたい、です」
開花した自分の淫靡な本性に酔っていたからだ。くすんだ空気の中で、ヒトとは違う、横に平たい瞳孔が大きくなり、ブルー・グリーンの瞳が潤む。
「ったく、番狂わせだな君は」
「でも、予想はしていた、でしょう?こんなにも……オレを陥落させてから、難しい話を持ち込むんですから」
相手の言い回しに白旗を掲げたダーヴィドはやれやれとリアクションを取った。そして上着を脱ぎヨナタンの上に跨るように膝をつくと、ネクタイを緩める。
「今まで口説いてきたどの子よりも惚れそうだ」
その様子を振り向き伺いながら、熱に浮かされた様に笑うヨナタン。
「お世辞ですか?」
「俺もそのつもりだったんだけどね」
「なら、オレの勝ちですね」
"せめて自分勝手な男に一泡吹かせたい"という彼の野望が、あっさり叶ってしまったからだ。
「……嗚呼、甘く見ていたよ。」
ワイシャツの釦を外していく相手の胸元から青いタトゥーが覗いている。彼は嗤う。
「オレもですよ、ダーヴィドさん」
彼の奥底に、質の悪い執着心が芽生えていたことに。
ダーヴィドから開放され、射精せずに達したヨナタンは倒れるようにベッドにうつ伏せに横たわった。相手はそんな彼を見下ろしてからベッドに座ると、腰から尻を撫で、自身を柔く握りながら意地悪に質問する。
「まだこっちがあるんじゃないのか?」
「あっ……! やだぁっ……!さわらないで……ぇ」
まだ出せていないためか子供のように嫌がるヨナタンに、分かった、と承諾するとあっさりと手を離した。
「え……?」
その不可解な行動に困惑する相手。
「もう少しこちらとしても話をしたいからな」
「ダーヴィド、さん?」
板についてきた敬称に、ダーヴィドが微笑む。近くにあった黒い煙草を取り出すと、彼はライターで火を着けて吸い始めた。
「ヨナ、これからどうしたい?」
「どうしたい、って」
彼は右手の親指と人差し指を立ててジェスチャーをした。白い煙は、独特の甘い匂いがする。
「俺側の選択肢は2つある。君を愛人の一人にする為に睦言を囁くか、君を部下にさせる為にマフィアを動かすか。……それ以外は無いと考えてくれ」
部下、そんな関係じゃあ足りない。愛人という言葉が快楽に溺れた今のヨナタンにはあまりにも魅力的に響いた。ダーヴィドは灰皿に煙草を置き、今度は左手で2を指すジェスチャーをした。
「そして君の選択肢も2つ。俺を振り切って自由になるか。俺に縛られるか。」
そんなの、自由に決まっている。ヨナタンは思った。だが自由の向こう側を保証できる身体ではないことも嫌なほど分かっていた。自分には結局、この男が必要なのだと。しかしながら、もう一方を取りたいか。彼の部下になることは、理不尽な世界に束縛されることを意味する。
「……どうすればいいか、何が正しいのか、オレには分からない、けど、」
ヨナタンは苦しんでいた。――しかしそれは選択肢を迫られていたからではなく、
「今は、何もかも忘れて気持ちよくなりたい、です」
開花した自分の淫靡な本性に酔っていたからだ。くすんだ空気の中で、ヒトとは違う、横に平たい瞳孔が大きくなり、ブルー・グリーンの瞳が潤む。
「ったく、番狂わせだな君は」
「でも、予想はしていた、でしょう?こんなにも……オレを陥落させてから、難しい話を持ち込むんですから」
相手の言い回しに白旗を掲げたダーヴィドはやれやれとリアクションを取った。そして上着を脱ぎヨナタンの上に跨るように膝をつくと、ネクタイを緩める。
「今まで口説いてきたどの子よりも惚れそうだ」
その様子を振り向き伺いながら、熱に浮かされた様に笑うヨナタン。
「お世辞ですか?」
「俺もそのつもりだったんだけどね」
「なら、オレの勝ちですね」
"せめて自分勝手な男に一泡吹かせたい"という彼の野望が、あっさり叶ってしまったからだ。
「……嗚呼、甘く見ていたよ。」
ワイシャツの釦を外していく相手の胸元から青いタトゥーが覗いている。彼は嗤う。
「オレもですよ、ダーヴィドさん」
彼の奥底に、質の悪い執着心が芽生えていたことに。
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