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英雄への産声
第27話 エファリカ・シャフタル
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大湖蛇の討伐を終えた小さな剣は、多少のごたごたはあったものの、その日の内にベルートホルンへと帰還した。
クリッサの護衛騎士隊長からは街までの護衛を依頼されたが、ディアナはそれを一蹴。
マルコも申し訳なさそうに、それに賛成した。
理由はクリッサの失礼な物言いが一つ。
それに加えて、人懐っこいロウがクリッサをあからさまに嫌がっているのが原因だった。
あの一瞬で随分と嫌われたものである。
「ロ゛ウ゛ち゛ゃ゛ん゛!い゛つ゛か゛マ゛マ゛が゛む゛が゛え゛に゛い゛ぐ゛が゛ら゛ね゛ぇ゛」
などと言って数分前の非礼をまるで忘れた様に、別れ際で喚き散らした姿を見たら、ロウが嫌がるのも自然の摂理としか思えない。
クロムを含めた掃除屋達は素材が多過ぎるのと街まで近い事もあって、クリッサ達に同行した。
たった半日の距離で何も起こらないだろうという判断と、護衛対象を命の危険に晒した騎士が念の為護衛を増やしたいと思う気持ちに理解を示したからだ。
ついでに領主に今回起こった事を過不足なく伝えるのと、高い護衛料をせしめる目的もあった。
実際に領主と顔を合わせたクリッサはロウがディアナから虐待を受けていると領主に虚言を吐き、保護を理由に奪おうとしていたので、クロムの判断は正しかった。
領主と顔見知りのクロムはクリッサの虚言を正して正確な情報を…ロウが神狼である事は隠して…伝えて、優秀なメイドと共にクリッサが小さな剣に吐いた言葉を一言一句伝えた。
街で唯一のBランク冒険者への暴言に、領主が頭を抱えたのは言うまでもない。
大湖蛇の討伐から2日後。
小さな剣が宿泊している宿に冒険者ギルドからの使いの者が現れた。
また何かあったのかと思い、呼び出しに応じた小さな剣。
「また強い魔物が出たのかしらね?」
「この間の件で領主様から何かあるのかもしれないよ」
「ミルナ甘いの食べたーい。お菓子買ってー」
「アンアンアーン!」
数日前は人がどうして食べ物に火を通すのかと問うたミルナが菓子にハマっている事実は置いておいて。
ついでにロウがミルナの意見に賛同して機嫌良さげに鳴いているのも置いておいて。
マルコとディアナは何の呼び出しかと予想しながら冒険者ギルドへとやってきた。
受付にはいつもの様にエレーヌがいたので、ディアナが話掛ける。
「呼び出されたから来たんだけど、また魔物が出たの?それとも領主が何か言ってきた?」
「いえ、どちらでもなくてですね…実はディアナさんと話がしたいという方がいらっしゃってまして。お二人を執務室へとお通しする様に言われています」
「誰かしら?父さんか母さん?」
「あはは。ご両親が来るには、ベルートホルンは少し遠いんじゃないかな?」
このタイミングで会いたいと言う者などディアナには領主ぐらいしか思い当たらないのだが、エレーヌは領主ではないと言う。
領主の話を出したのを否定して、実は領主の娘クリッサだった。なんて流れも考え辛いので、クリッサとも別なのだろう。
誰だろうと首を傾げながら、マルコを抱えて階段を上ったディアナが執務室へと入る。
すると、そこにいたのは見ず知らずの女だった。
綺麗な淡い金色の髪を後ろで纏めたその女は、ギルドマスターであるドミニクの向かいに座って紅茶が入ったカップを傾けながらディアナに視線を送った。
深い緑柱石の瞳に作り物の様に整った顔立ち。異様に透明感のある白い肌。
そして、何よりも特徴的なのがツンと尖った耳。
外見の特徴を見るに、その女がエルフである事は疑いようもない。
革の軽鎧と白いマントの隙間から見える腕は細いが、脇に置かれた細剣が見えるので、恐らくは剣士なのだろう。
「来たか。お前らは向かい合わせで座るのは嫌がるだろうから、こっちに座ってくれ」
ドミニクは気を使ってディアナとマルコを横並びで座らせる為に自分の横を勧めた。
しかし、ディアナは少々不満気である。
「狭いから嫌。ギルマスがそっちに移動すれば良いじゃん」
「あはは。僕は小さいんだし、3人掛けソファーだから大丈夫だよ」
「あー!分かったよ!俺が移動する!」
ドミニクが向かいのソファーに移動して、ディアナとマルコが隣り合ってソファーに腰を下ろす。
ロウはソファーの後ろからよじ登って、二人の間から顔を出した。
そんなロウへ興味深そうに視線を送ったエルフの女。
エレーヌやクリッサの様に欲望剥き出しではなく、単に好奇心が刺激されている感じだろうか。
「コホン。早速だが、まずは紹介をしても?」
ドミニクが話を始めようとすると、女はロウから視線を外した。
「失礼。進めてくれ」
女はドミニクに話をするよう促して、今度はディアナに視線を送った。
「それじゃあ、始めさせて貰う。まずはこの二人が冒険者パーティー小さな剣のディアナとマルコ。後ろの従魔がロウだ」
まずは小さな剣を女に紹介したドミニク。
ミルナについては、まだグランドマスターとの話が纏まっていないのでスルーしたのだろう。
「続いてこちらが…」
女はドミニクが紹介をしようとしたのを手で制した。
「自分で名乗ろう。私はエファリカ・シャフタルという。見ての通りエルフだ」
女がエファリカと名乗ると、マルコはその名に心当たりがあったらしく口を開いた。
「不老の英雄…でしょうか?」
マルコがヘントから聞いた、現在最も英雄に近いと言われているAランク冒険者の名前がエファリカだった。
「ふっ…私を知っているか。私は別に英雄などではない。ただ人より長く生きているだけだ」
不老の英雄エファリカ・シャフタル。エルフには途轍もなく長い名前がある為、本名は不明。
千年近くも前から現在と同じ姿で生き続けていると言われていて、数々の英雄と共に戦ったとされるエファリカは、歴史上の英雄達の戦いを見届けてきた歴史の生き証人だ。
冒険者ランクはAだが、Sランクへの昇格には魔物の大行進の指揮個体の討伐や竜の討伐など実績が必要だ。
エファリカはそれ故にAランクへ留まっているだけであり、その実力はSランクに届いていると言われている。
ここ100年程は目立った活躍も聞かなかったエファリカ・シャフタルがディアナを尋ねて来たという事は、それだけの理由があっての事なのだろう。
(ディアナに英雄の資質を見出して誘いに来たとかかな?だとしたら嬉しいな。そこに僕がいないのは、とても寂しくて仕方が無いけれど)
そんな風に考えたマルコだったが、エファリカの話はマルコの予想とは違った。
「エレーヌ、席を外してくれ」
「はい?わかりました」
ドミニクが態々エレーヌに席を外させたのは、ギルド職員であっても聞かせられない内密な話があるという証明である。
エレーヌが執務室を出て数秒。
エファリカは一瞬だけマルコに視線を送ってドミニクに問う。
「そっちの少年は良いのか?」
マルコはこの場にいて話を聞いても良いのか?マルコも部外者ではないのか?そんな問い掛けである。
「マルコは一緒に話を聞くべきだと考えている」
「ふむ?ギルドマスターが言うのならば良いだろう」
ドミニクの狙いについては理解出来なかったが、ドミニクが必要だと断言した事で、エファリカはマルコを含めて話を進める事にした。
エファリカは懐から青い台座に小さな水晶が載っている道具を取り出して机の上に置いた。
「今から話す内容は、あまり部外者には聞かせられない内容でね。これは盗聴防止の魔法道具だ」
エレーヌを退席させて、更に盗聴防止までする念の入れよう。
マルコはこれから相当に重大な話があると確信して耳を傾ける。
「単刀直入に言おう。近い将来…恐らくは30日もしない内に、魔族がヴォルカ大森林を超えてバラッドラ砦に攻め込んでくるという情報を得た。率いるのは闇従魔士。これは確定ではないが、奴らは竜種を味方につけるつもりでいるらしい。闇従魔士の操る魔物の軍勢と竜種…恐らくは風竜から砦を守る防衛戦だ」
エファリカから語られた内容は衝撃的だった。
魔族が率いる魔物の軍勢。しかも率いるのは闇従魔士。
人類にも従魔士という魔物を従える職業の者は存在するが、闇従魔士はそれとは比べ物にならない程に桁外れの存在だ。
人族の従魔士は、多くが1体のみの魔物を従える。
多い者では10体や20体の魔物を従える者も存在するが、3桁に達する者は歴史上にも存在しない。
しかし、魔族の闇従魔士は3桁どころか4桁の魔物を従えて人の住む領域に攻め込んだという話が残っている程に圧倒的な存在だ。
それだけ魔族と魔物とは親和性が高く、それ故に多くの魔物を従える事が可能なのだろうと言われている。
数が多いぶん驚異的な強さの魔物は少ないとしても、討伐推奨ランクDやEの魔物が大挙して襲い掛かってきたら、それは十分以上の脅威となる。
どんな実力者でも物量で攻め込まれれば、やがて体力が尽きて圧し潰される。
数は正義とはよく言ったものなのである。
それに加えて、竜種も魔族側に付くとなれば、これは最早脅威以外の何物でもない。
竜種は基本的に人類側にも魔族側にも属していない存在だ。
しかし、多くの竜種は好奇心に溢れ、特に若い個体だと血気盛んに暴れられる場所を求めている。
数百年に一度、竜が飛来して街を幾つか滅ぼしたという話は幾つも伝わっていて、竜種とはそれだけ気紛れで動きが読めない存在だ。
そんな竜種に暴れられる場を与えてやると魔族側が持ちかけたとしたら。
本当に魔族と組んで攻めてくる可能性は十分に考えられる。
エファリカは言葉を続ける。
「そこで私は今、共に戦う仲間を探している。Bランク冒険者のディアナ。君の力を貸して欲しい」
エファリカは長い時を生き、数々の英雄と共に名を残した伝説的な存在である。
冒険者を志す者の多くはエファリカの名前を知っていて、彼女に憧れる者だって多い。
そんなエファリカから力を貸して欲しいと言われて、その手を取らない者などいない。
故にディアナはエファリカに、こう返事をした。
「マルコが一緒じゃないなら嫌。不老の英雄はあたしも知ってるけれど、さっきからマルコを無視してるのは気に入らない」
流石はディアナ。何よりもマルコが最優先のブレない女である。
クリッサの護衛騎士隊長からは街までの護衛を依頼されたが、ディアナはそれを一蹴。
マルコも申し訳なさそうに、それに賛成した。
理由はクリッサの失礼な物言いが一つ。
それに加えて、人懐っこいロウがクリッサをあからさまに嫌がっているのが原因だった。
あの一瞬で随分と嫌われたものである。
「ロ゛ウ゛ち゛ゃ゛ん゛!い゛つ゛か゛マ゛マ゛が゛む゛が゛え゛に゛い゛ぐ゛が゛ら゛ね゛ぇ゛」
などと言って数分前の非礼をまるで忘れた様に、別れ際で喚き散らした姿を見たら、ロウが嫌がるのも自然の摂理としか思えない。
クロムを含めた掃除屋達は素材が多過ぎるのと街まで近い事もあって、クリッサ達に同行した。
たった半日の距離で何も起こらないだろうという判断と、護衛対象を命の危険に晒した騎士が念の為護衛を増やしたいと思う気持ちに理解を示したからだ。
ついでに領主に今回起こった事を過不足なく伝えるのと、高い護衛料をせしめる目的もあった。
実際に領主と顔を合わせたクリッサはロウがディアナから虐待を受けていると領主に虚言を吐き、保護を理由に奪おうとしていたので、クロムの判断は正しかった。
領主と顔見知りのクロムはクリッサの虚言を正して正確な情報を…ロウが神狼である事は隠して…伝えて、優秀なメイドと共にクリッサが小さな剣に吐いた言葉を一言一句伝えた。
街で唯一のBランク冒険者への暴言に、領主が頭を抱えたのは言うまでもない。
大湖蛇の討伐から2日後。
小さな剣が宿泊している宿に冒険者ギルドからの使いの者が現れた。
また何かあったのかと思い、呼び出しに応じた小さな剣。
「また強い魔物が出たのかしらね?」
「この間の件で領主様から何かあるのかもしれないよ」
「ミルナ甘いの食べたーい。お菓子買ってー」
「アンアンアーン!」
数日前は人がどうして食べ物に火を通すのかと問うたミルナが菓子にハマっている事実は置いておいて。
ついでにロウがミルナの意見に賛同して機嫌良さげに鳴いているのも置いておいて。
マルコとディアナは何の呼び出しかと予想しながら冒険者ギルドへとやってきた。
受付にはいつもの様にエレーヌがいたので、ディアナが話掛ける。
「呼び出されたから来たんだけど、また魔物が出たの?それとも領主が何か言ってきた?」
「いえ、どちらでもなくてですね…実はディアナさんと話がしたいという方がいらっしゃってまして。お二人を執務室へとお通しする様に言われています」
「誰かしら?父さんか母さん?」
「あはは。ご両親が来るには、ベルートホルンは少し遠いんじゃないかな?」
このタイミングで会いたいと言う者などディアナには領主ぐらいしか思い当たらないのだが、エレーヌは領主ではないと言う。
領主の話を出したのを否定して、実は領主の娘クリッサだった。なんて流れも考え辛いので、クリッサとも別なのだろう。
誰だろうと首を傾げながら、マルコを抱えて階段を上ったディアナが執務室へと入る。
すると、そこにいたのは見ず知らずの女だった。
綺麗な淡い金色の髪を後ろで纏めたその女は、ギルドマスターであるドミニクの向かいに座って紅茶が入ったカップを傾けながらディアナに視線を送った。
深い緑柱石の瞳に作り物の様に整った顔立ち。異様に透明感のある白い肌。
そして、何よりも特徴的なのがツンと尖った耳。
外見の特徴を見るに、その女がエルフである事は疑いようもない。
革の軽鎧と白いマントの隙間から見える腕は細いが、脇に置かれた細剣が見えるので、恐らくは剣士なのだろう。
「来たか。お前らは向かい合わせで座るのは嫌がるだろうから、こっちに座ってくれ」
ドミニクは気を使ってディアナとマルコを横並びで座らせる為に自分の横を勧めた。
しかし、ディアナは少々不満気である。
「狭いから嫌。ギルマスがそっちに移動すれば良いじゃん」
「あはは。僕は小さいんだし、3人掛けソファーだから大丈夫だよ」
「あー!分かったよ!俺が移動する!」
ドミニクが向かいのソファーに移動して、ディアナとマルコが隣り合ってソファーに腰を下ろす。
ロウはソファーの後ろからよじ登って、二人の間から顔を出した。
そんなロウへ興味深そうに視線を送ったエルフの女。
エレーヌやクリッサの様に欲望剥き出しではなく、単に好奇心が刺激されている感じだろうか。
「コホン。早速だが、まずは紹介をしても?」
ドミニクが話を始めようとすると、女はロウから視線を外した。
「失礼。進めてくれ」
女はドミニクに話をするよう促して、今度はディアナに視線を送った。
「それじゃあ、始めさせて貰う。まずはこの二人が冒険者パーティー小さな剣のディアナとマルコ。後ろの従魔がロウだ」
まずは小さな剣を女に紹介したドミニク。
ミルナについては、まだグランドマスターとの話が纏まっていないのでスルーしたのだろう。
「続いてこちらが…」
女はドミニクが紹介をしようとしたのを手で制した。
「自分で名乗ろう。私はエファリカ・シャフタルという。見ての通りエルフだ」
女がエファリカと名乗ると、マルコはその名に心当たりがあったらしく口を開いた。
「不老の英雄…でしょうか?」
マルコがヘントから聞いた、現在最も英雄に近いと言われているAランク冒険者の名前がエファリカだった。
「ふっ…私を知っているか。私は別に英雄などではない。ただ人より長く生きているだけだ」
不老の英雄エファリカ・シャフタル。エルフには途轍もなく長い名前がある為、本名は不明。
千年近くも前から現在と同じ姿で生き続けていると言われていて、数々の英雄と共に戦ったとされるエファリカは、歴史上の英雄達の戦いを見届けてきた歴史の生き証人だ。
冒険者ランクはAだが、Sランクへの昇格には魔物の大行進の指揮個体の討伐や竜の討伐など実績が必要だ。
エファリカはそれ故にAランクへ留まっているだけであり、その実力はSランクに届いていると言われている。
ここ100年程は目立った活躍も聞かなかったエファリカ・シャフタルがディアナを尋ねて来たという事は、それだけの理由があっての事なのだろう。
(ディアナに英雄の資質を見出して誘いに来たとかかな?だとしたら嬉しいな。そこに僕がいないのは、とても寂しくて仕方が無いけれど)
そんな風に考えたマルコだったが、エファリカの話はマルコの予想とは違った。
「エレーヌ、席を外してくれ」
「はい?わかりました」
ドミニクが態々エレーヌに席を外させたのは、ギルド職員であっても聞かせられない内密な話があるという証明である。
エレーヌが執務室を出て数秒。
エファリカは一瞬だけマルコに視線を送ってドミニクに問う。
「そっちの少年は良いのか?」
マルコはこの場にいて話を聞いても良いのか?マルコも部外者ではないのか?そんな問い掛けである。
「マルコは一緒に話を聞くべきだと考えている」
「ふむ?ギルドマスターが言うのならば良いだろう」
ドミニクの狙いについては理解出来なかったが、ドミニクが必要だと断言した事で、エファリカはマルコを含めて話を進める事にした。
エファリカは懐から青い台座に小さな水晶が載っている道具を取り出して机の上に置いた。
「今から話す内容は、あまり部外者には聞かせられない内容でね。これは盗聴防止の魔法道具だ」
エレーヌを退席させて、更に盗聴防止までする念の入れよう。
マルコはこれから相当に重大な話があると確信して耳を傾ける。
「単刀直入に言おう。近い将来…恐らくは30日もしない内に、魔族がヴォルカ大森林を超えてバラッドラ砦に攻め込んでくるという情報を得た。率いるのは闇従魔士。これは確定ではないが、奴らは竜種を味方につけるつもりでいるらしい。闇従魔士の操る魔物の軍勢と竜種…恐らくは風竜から砦を守る防衛戦だ」
エファリカから語られた内容は衝撃的だった。
魔族が率いる魔物の軍勢。しかも率いるのは闇従魔士。
人類にも従魔士という魔物を従える職業の者は存在するが、闇従魔士はそれとは比べ物にならない程に桁外れの存在だ。
人族の従魔士は、多くが1体のみの魔物を従える。
多い者では10体や20体の魔物を従える者も存在するが、3桁に達する者は歴史上にも存在しない。
しかし、魔族の闇従魔士は3桁どころか4桁の魔物を従えて人の住む領域に攻め込んだという話が残っている程に圧倒的な存在だ。
それだけ魔族と魔物とは親和性が高く、それ故に多くの魔物を従える事が可能なのだろうと言われている。
数が多いぶん驚異的な強さの魔物は少ないとしても、討伐推奨ランクDやEの魔物が大挙して襲い掛かってきたら、それは十分以上の脅威となる。
どんな実力者でも物量で攻め込まれれば、やがて体力が尽きて圧し潰される。
数は正義とはよく言ったものなのである。
それに加えて、竜種も魔族側に付くとなれば、これは最早脅威以外の何物でもない。
竜種は基本的に人類側にも魔族側にも属していない存在だ。
しかし、多くの竜種は好奇心に溢れ、特に若い個体だと血気盛んに暴れられる場所を求めている。
数百年に一度、竜が飛来して街を幾つか滅ぼしたという話は幾つも伝わっていて、竜種とはそれだけ気紛れで動きが読めない存在だ。
そんな竜種に暴れられる場を与えてやると魔族側が持ちかけたとしたら。
本当に魔族と組んで攻めてくる可能性は十分に考えられる。
エファリカは言葉を続ける。
「そこで私は今、共に戦う仲間を探している。Bランク冒険者のディアナ。君の力を貸して欲しい」
エファリカは長い時を生き、数々の英雄と共に名を残した伝説的な存在である。
冒険者を志す者の多くはエファリカの名前を知っていて、彼女に憧れる者だって多い。
そんなエファリカから力を貸して欲しいと言われて、その手を取らない者などいない。
故にディアナはエファリカに、こう返事をした。
「マルコが一緒じゃないなら嫌。不老の英雄はあたしも知ってるけれど、さっきからマルコを無視してるのは気に入らない」
流石はディアナ。何よりもマルコが最優先のブレない女である。
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