27 / 32
英雄への産声
第26話 ??会議
しおりを挟む
これは、とある城での話。
やけに空気が淀んだ場所にあるその城は、まるで黒い靄を纏っている様にすら見える。
空は分厚い雲に覆われていて、雨が降っていないのに、雲には稲光が走っている。
そんな城の一室。
中央に置かれた円卓には10本の蝋燭が等間隔に立てられていて、それぞれの前には人間とは明らかに違った外見をした者達が座っていた。
上座に座っているのは羊の様な角が生えた黒髪の男。僅かに輝くルビーの瞳で均整の取れた美しい顔立ちをしているが、口が耳の辺りまで裂けていて不気味な印象が強い。
下座に座るのは小柄な女。白髪で浅黒い肌。左側だけ渦を巻いた角が生えているが、10人の中では最も人に近い見た目をしている。
しかし、真っ黒な眼球と黄色い瞳を見れば、やはり明らかな人間とは思えない。
他は年老いた驢馬の様な者や牛の様な見た目の者、灰色の肌の鬼など、見た目はそれぞれ様々だ。
彼ら彼女らは所謂魔族と呼ばれる存在。
過去の歴史的に見ても人類とは常に敵対関係にあり、歴史上でも度々争いを巻き起こす存在である。
10人の魔族が座る円卓では食事が行われていた。
並べられた料理は魔物の眼球や血の滴る生肉などグロテスクな見た目の物ばかりだ。
そんな料理にマナーなど知らぬと齧り付く者、不快そうな顔を浮かべて手を付けない者と様々な反応を見せながら、十数分後に全員の食事が終わると上座の隣に座る驢馬の様な者が口を開いた。
「食事も終わった所で、これより会議を始めます。早速ですが、例の件に関する進捗から報告をお願いします。ジャグズさんから」
「かしこまりました。現在、ヴォルカ大魔林に近い人の生息域で魔覚石を使った魔物の強化実験を行っております。今の所は人間どもに大きな打撃を与える事は出来ていませんが、強化の精度は上がってきております。しかし実戦投入出来る段階まではまだ掛かりますね」
ヴォルカ大魔林とは人類が住まう最北の国、アルガンシア王国に隣接した森である。
人類にはヴォルカ大森林と呼ばれているこの森は、多くの魔物が生息する広大な森として知られている。
ヴォルカ大森林の向こう側には魔族の住まう地があり、今会議が行われているのは魔族の王が住まう城。
つまりは上座に座っている黒づくめの異形が魔王である、
ジャグズと呼ばれた魔族の発言を受けて魔王が満足気に頷き、ジャグズは安堵の表情を浮かべた。
会議は続く。
「次にファフラさん。戦力の増強はどうなっていますか?」
「ンフフ。順調も順調よ。例の魔物との交渉も大詰めですからね。近い内に全ての準備が整うでしょう」
ファフラと呼ばれた魔族は怪しく笑いながら答えた。
ファフラの言葉を聞いて、魔王がまた満足気に頷いた。
魔族は何かの計画を立てているらしく、会議は続く。
そして3時間後、会議の終わりにそれまで黙っていた魔王が口を開いた。
「42日だ。42日間で準備を整えろ。我らは憎き人類を滅ぼし魔族が世界を手中に収める計画を実行に移す。その足がかりとして、まずはバラッドラ砦を落とすぞ。長い歴史においてどんな魔王でも手に入れられなかった世界を手に入れる。我ら魔族が世界の覇者となるのだ」
「「「「「おお!」」」」」
人類と魔族がぶつかる日は近い。
やけに空気が淀んだ場所にあるその城は、まるで黒い靄を纏っている様にすら見える。
空は分厚い雲に覆われていて、雨が降っていないのに、雲には稲光が走っている。
そんな城の一室。
中央に置かれた円卓には10本の蝋燭が等間隔に立てられていて、それぞれの前には人間とは明らかに違った外見をした者達が座っていた。
上座に座っているのは羊の様な角が生えた黒髪の男。僅かに輝くルビーの瞳で均整の取れた美しい顔立ちをしているが、口が耳の辺りまで裂けていて不気味な印象が強い。
下座に座るのは小柄な女。白髪で浅黒い肌。左側だけ渦を巻いた角が生えているが、10人の中では最も人に近い見た目をしている。
しかし、真っ黒な眼球と黄色い瞳を見れば、やはり明らかな人間とは思えない。
他は年老いた驢馬の様な者や牛の様な見た目の者、灰色の肌の鬼など、見た目はそれぞれ様々だ。
彼ら彼女らは所謂魔族と呼ばれる存在。
過去の歴史的に見ても人類とは常に敵対関係にあり、歴史上でも度々争いを巻き起こす存在である。
10人の魔族が座る円卓では食事が行われていた。
並べられた料理は魔物の眼球や血の滴る生肉などグロテスクな見た目の物ばかりだ。
そんな料理にマナーなど知らぬと齧り付く者、不快そうな顔を浮かべて手を付けない者と様々な反応を見せながら、十数分後に全員の食事が終わると上座の隣に座る驢馬の様な者が口を開いた。
「食事も終わった所で、これより会議を始めます。早速ですが、例の件に関する進捗から報告をお願いします。ジャグズさんから」
「かしこまりました。現在、ヴォルカ大魔林に近い人の生息域で魔覚石を使った魔物の強化実験を行っております。今の所は人間どもに大きな打撃を与える事は出来ていませんが、強化の精度は上がってきております。しかし実戦投入出来る段階まではまだ掛かりますね」
ヴォルカ大魔林とは人類が住まう最北の国、アルガンシア王国に隣接した森である。
人類にはヴォルカ大森林と呼ばれているこの森は、多くの魔物が生息する広大な森として知られている。
ヴォルカ大森林の向こう側には魔族の住まう地があり、今会議が行われているのは魔族の王が住まう城。
つまりは上座に座っている黒づくめの異形が魔王である、
ジャグズと呼ばれた魔族の発言を受けて魔王が満足気に頷き、ジャグズは安堵の表情を浮かべた。
会議は続く。
「次にファフラさん。戦力の増強はどうなっていますか?」
「ンフフ。順調も順調よ。例の魔物との交渉も大詰めですからね。近い内に全ての準備が整うでしょう」
ファフラと呼ばれた魔族は怪しく笑いながら答えた。
ファフラの言葉を聞いて、魔王がまた満足気に頷いた。
魔族は何かの計画を立てているらしく、会議は続く。
そして3時間後、会議の終わりにそれまで黙っていた魔王が口を開いた。
「42日だ。42日間で準備を整えろ。我らは憎き人類を滅ぼし魔族が世界を手中に収める計画を実行に移す。その足がかりとして、まずはバラッドラ砦を落とすぞ。長い歴史においてどんな魔王でも手に入れられなかった世界を手に入れる。我ら魔族が世界の覇者となるのだ」
「「「「「おお!」」」」」
人類と魔族がぶつかる日は近い。
10
お気に入りに追加
69
あなたにおすすめの小説
無限の精霊コンダクター
アキナヌカ
ファンタジー
リードは兄たちから虐げられていた、それはリードが無能だったからだ。ここでいう無能とは精霊との契約が出来ない者のことをいった、リードは無能でもいいと思って十五歳になったら貴族の家を出て行くつもりだった。だがそれよりも早くリードを良く思っていないウィスタム家の人間たちは、彼を深い山の中の穴の中に突き落として捨てた。捨てられたリードにはそのおかげで前世を思い出し、また彼には信じられないことが起こっていくのだった。
幸福の魔法使い〜ただの転生者が史上最高の魔法使いになるまで〜
霊鬼
ファンタジー
生まれつき魔力が見えるという特異体質を持つ現代日本の会社員、草薙真はある日死んでしまう。しかし何故か目を覚ませば自分が幼い子供に戻っていて……?
生まれ直した彼の目的は、ずっと憧れていた魔法を極めること。様々な地へ訪れ、様々な人と会い、平凡な彼はやがて英雄へと成り上がっていく。
これは、ただの転生者が、やがて史上最高の魔法使いになるまでの物語である。
(小説家になろう様、カクヨム様にも掲載をしています。)
恵麗奈お嬢様のあやかし退治
刻芦葉
キャラ文芸
一般的な生活を送る美憂と、世界でも有名な鳳凰院グループのお嬢様である恵麗奈。
普通なら交わることのなかった二人は、人ならざる者から人を守る『退魔衆』で、命を預け合うパートナーとなった。
二人にある共通点は一つだけ。その身に大きな呪いを受けていること。
黒を煮詰めたような闇に呪われた美憂と、真夜中に浮かぶ太陽に呪われた恵麗奈は、命がけで妖怪との戦いを繰り広げていく。
第6回キャラ文芸大賞に参加してます。よろしくお願いします。
特殊部隊の俺が転生すると、目の前で絶世の美人母娘が犯されそうで助けたら、とんでもないヤンデレ貴族だった
なるとし
ファンタジー
鷹取晴翔(たかとりはると)は陸上自衛隊のとある特殊部隊に所属している。だが、ある日、訓練の途中、不慮の事故に遭い、異世界に転生することとなる。
特殊部隊で使っていた武器や防具などを召喚できる特殊能力を謎の存在から授かり、目を開けたら、絶世の美女とも呼ばれる母娘が男たちによって犯されそうになっていた。
武装状態の鷹取晴翔は、持ち前の優秀な身体能力と武器を使い、その母娘と敷地にいる使用人たちを救う。
だけど、その母と娘二人は、
とおおおおんでもないヤンデレだった……
第3回次世代ファンタジーカップに出すために一部を修正して投稿したものです。
剣に願いを、両手に花を
転生新語
ファンタジー
ヒロイン(女子高生)が異世界に転生、もしくは転移。ぼろぼろの服を着て森を彷徨(さまよ)っていた所、エルフ?の集落に保護される(耳は尖ってない)。ヒロインは記憶喪失で、髪の色からクロと呼ばれるようになる。集落は女性しか居なくて、ヒロインは集落の長(エルフみたいだから、『エルさん』とヒロインは呼んでいる)に恋をする。しかし長であるエルさんは、他の集落に攫(さら)われそうになっていて……
剣道少女が自らの剣で、愛する人を守る話です。「カクヨム」と「小説家になろう」にも投稿を開始しました。
カクヨム→https://kakuyomu.jp/works/16817330650166900304
小説家になろう→https://ncode.syosetu.com/n5688hy/
転生したら貴族の息子の友人A(庶民)になりました。
襲
ファンタジー
〈あらすじ〉
信号無視で突っ込んできたトラックに轢かれそうになった子どもを助けて代わりに轢かれた俺。
目が覚めると、そこは異世界!?
あぁ、よくあるやつか。
食堂兼居酒屋を営む両親の元に転生した俺は、庶民なのに、領主の息子、つまりは貴族の坊ちゃんと関わることに……
面倒ごとは御免なんだが。
魔力量“だけ”チートな主人公が、店を手伝いながら、学校で学びながら、冒険もしながら、領主の息子をからかいつつ(オイ)、のんびり(できたらいいな)ライフを満喫するお話。
誤字脱字の訂正、感想、などなど、お待ちしております。
やんわり決まってるけど、大体行き当たりばったりです。
システムバグで輪廻の輪から外れましたが、便利グッズ詰め合わせ付きで他の星に転生しました。
大国 鹿児
ファンタジー
輪廻転生のシステムのバグで輪廻の輪から外れちゃった!
でも神様から便利なチートグッズ(笑)の詰め合わせをもらって、
他の星に転生しました!特に使命も無いなら自由気ままに生きてみよう!
主人公はチート無双するのか!? それともハーレムか!?
はたまた、壮大なファンタジーが始まるのか!?
いえ、実は単なる趣味全開の主人公です。
色々な秘密がだんだん明らかになりますので、ゆっくりとお楽しみください。
*** 作品について ***
この作品は、真面目なチート物ではありません。
コメディーやギャグ要素やネタの多い作品となっております
重厚な世界観や派手な戦闘描写、ざまあ展開などをお求めの方は、
この作品をスルーして下さい。
*カクヨム様,小説家になろう様でも、別PNで先行して投稿しております。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる