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第95話 幸せ
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今日は、久しぶりに台所に立っている。
まだまだ残暑の厳しい季節だが、あやかし達がいる我が家には、暑さなんて関係の無い話だ。
ここのところ、週に一度は永空が家に訪れて、食料やら日用品やらを置いていく。
昨日なんかは嫁も一緒に連れて来て、料理を作っていった。
身重の嫁に山登りさせるってのは、どうかと思うんだがな。
「それにしても、あいつはどんだけ暇なんだ?」
『そう言ってやるな。自分で言っていたが、親孝行がしたいのだろう』
「俺なんか、血の繋がりのある父親じゃないんだけどなぁ」
『血の繋がりは無くとも、お主らは親子よ。
見た目は違っても、普段のお主らを見ていて親子ではないなどと言う者はいないであろう』
「そうなのかねぇ」
あいつの事は実の息子だと思って育ててきたが、俺が最後の時を迎えた時に、実の親が死んだみたいに悲しんで欲しくないってのはある。
面白れぇ近所のおっさんが死んだぐらいに思ってくれたら、俺としては嬉しいんだがな。
『それは無理だろうな』
「そりゃそうだな」
死んだ後にあいつがどう思うかまで考えてたら、生き辛くて仕方がねぇ。
あとで手紙に笑えって書いて、残しておくとするか。
それは良いとして、今は料理だな。
永空が昨日、簡単に作れるだろって言ってカレールーを買ってきてくれたんだ。
因みに俺の世話をしてくれてると、あいつが思い込んでいる雪女は、料理が壊滅的な設定になっているので、その辺も考えてのチョイスだろう。
カレーなんてのは、カレールーさえ入れちまえば大体旨い最強のお手軽料理だ。
キュウリだろうが大根だろうがトマトだろうが、何を入れたって大体旨い。
ってな訳で、肉が無いんで代わりに水きりした木綿豆腐を鍋に入れて炒める。
焦げ目が付くぐらいまで炒めたら、ザクザク切った野菜を入れて炒め、水を加えて囲炉裏の火で煮る。
沸騰したら灰汁を取って、すりおろしたリンゴを加える。
このリンゴは、うちで採れたやつだ。
後はカレールーを加えて煮込み、とろみがついたら完成だ。
「旨いけど、それなりだな」
『そうか?十分に旨いと思うがな。
しかし、カレーは米が欲しくなるな』
「米は面倒臭いから餅で我慢しろ」
『仕方がないな』
今年の年明けぐらいからか。
我が家の主食は餅になっちまったな。
囲炉裏の火が絶える事が無いので、焼くだけで食える餅は最高にお手軽なんだよ。
カレーを三口だけ食ったら、もうカレーには満足したので、うちで採れた梨を食って横になる。
食ってすぐ寝たら牛になるとか、逆流性食道炎になるとかは、最早気にしない。
カレーは化け狐と五人姉妹が、旨そうに食べてくれたので満足だ。
何だか普通の生活をしてるって感じがして、ほっこりした。
夜に目を覚ましたら外が騒がしかったので縁側に出ると、河童達がキュウリを刀に見立てて大立ち回りを披露していた。
そこら中に浮かんだ人魂と鬼火に照らされていて、案外と雰囲気だけはある。
そこだけ見れば時代劇のワンシーンみたいだな。
火の玉だけ見ている分には。
河童達の大立ち回りは小学生のチャンバラごっこ以下だったが、楽しそうな事をやっていると、あやかし達が集まって、わちゃわちゃとした自由過ぎる遊びが始まった。
走ったり踊ったり飛んだり跳ねたり。
中でも大活躍しているのは、髪型をコーンロウにしている座敷童の三子で、レスリングの片足タックルで河童達をバッタバッタと倒していった。
なかなかにカオスな状況を微笑ましく見ていると、五子が俺の手を引っ張ってあやかし達の輪の中に入れた。
これは何か芸でも披露するべきだろうかと考えていると、皿が乾いた河童達がバタバタ倒れたので、全員で池の中に放り込んだ。
やっぱり、あやかしってのはどこまでも面白い存在だと、思わず笑ってしまった。
あやかし達のお陰で、俺は楽しい日々を過ごせていなと、心からの幸せを噛み締める。
まだまだ残暑の厳しい季節だが、あやかし達がいる我が家には、暑さなんて関係の無い話だ。
ここのところ、週に一度は永空が家に訪れて、食料やら日用品やらを置いていく。
昨日なんかは嫁も一緒に連れて来て、料理を作っていった。
身重の嫁に山登りさせるってのは、どうかと思うんだがな。
「それにしても、あいつはどんだけ暇なんだ?」
『そう言ってやるな。自分で言っていたが、親孝行がしたいのだろう』
「俺なんか、血の繋がりのある父親じゃないんだけどなぁ」
『血の繋がりは無くとも、お主らは親子よ。
見た目は違っても、普段のお主らを見ていて親子ではないなどと言う者はいないであろう』
「そうなのかねぇ」
あいつの事は実の息子だと思って育ててきたが、俺が最後の時を迎えた時に、実の親が死んだみたいに悲しんで欲しくないってのはある。
面白れぇ近所のおっさんが死んだぐらいに思ってくれたら、俺としては嬉しいんだがな。
『それは無理だろうな』
「そりゃそうだな」
死んだ後にあいつがどう思うかまで考えてたら、生き辛くて仕方がねぇ。
あとで手紙に笑えって書いて、残しておくとするか。
それは良いとして、今は料理だな。
永空が昨日、簡単に作れるだろって言ってカレールーを買ってきてくれたんだ。
因みに俺の世話をしてくれてると、あいつが思い込んでいる雪女は、料理が壊滅的な設定になっているので、その辺も考えてのチョイスだろう。
カレーなんてのは、カレールーさえ入れちまえば大体旨い最強のお手軽料理だ。
キュウリだろうが大根だろうがトマトだろうが、何を入れたって大体旨い。
ってな訳で、肉が無いんで代わりに水きりした木綿豆腐を鍋に入れて炒める。
焦げ目が付くぐらいまで炒めたら、ザクザク切った野菜を入れて炒め、水を加えて囲炉裏の火で煮る。
沸騰したら灰汁を取って、すりおろしたリンゴを加える。
このリンゴは、うちで採れたやつだ。
後はカレールーを加えて煮込み、とろみがついたら完成だ。
「旨いけど、それなりだな」
『そうか?十分に旨いと思うがな。
しかし、カレーは米が欲しくなるな』
「米は面倒臭いから餅で我慢しろ」
『仕方がないな』
今年の年明けぐらいからか。
我が家の主食は餅になっちまったな。
囲炉裏の火が絶える事が無いので、焼くだけで食える餅は最高にお手軽なんだよ。
カレーを三口だけ食ったら、もうカレーには満足したので、うちで採れた梨を食って横になる。
食ってすぐ寝たら牛になるとか、逆流性食道炎になるとかは、最早気にしない。
カレーは化け狐と五人姉妹が、旨そうに食べてくれたので満足だ。
何だか普通の生活をしてるって感じがして、ほっこりした。
夜に目を覚ましたら外が騒がしかったので縁側に出ると、河童達がキュウリを刀に見立てて大立ち回りを披露していた。
そこら中に浮かんだ人魂と鬼火に照らされていて、案外と雰囲気だけはある。
そこだけ見れば時代劇のワンシーンみたいだな。
火の玉だけ見ている分には。
河童達の大立ち回りは小学生のチャンバラごっこ以下だったが、楽しそうな事をやっていると、あやかし達が集まって、わちゃわちゃとした自由過ぎる遊びが始まった。
走ったり踊ったり飛んだり跳ねたり。
中でも大活躍しているのは、髪型をコーンロウにしている座敷童の三子で、レスリングの片足タックルで河童達をバッタバッタと倒していった。
なかなかにカオスな状況を微笑ましく見ていると、五子が俺の手を引っ張ってあやかし達の輪の中に入れた。
これは何か芸でも披露するべきだろうかと考えていると、皿が乾いた河童達がバタバタ倒れたので、全員で池の中に放り込んだ。
やっぱり、あやかしってのはどこまでも面白い存在だと、思わず笑ってしまった。
あやかし達のお陰で、俺は楽しい日々を過ごせていなと、心からの幸せを噛み締める。
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