39 / 108
第38話 爺の茶請け
しおりを挟む
今日は久々に下山する。
いや、麓まで荷物を取りに行くのも下山と言うならば、ちょくちょく下山はしているのだが。
昨日の夜から酒は飲んでいないので、目覚めは爽快。
アル中では無いから酒を抜いたところで手の震えも無い。
爺には昨日の内に連絡をしておいた。
あの男、毎日俺のベンツを乗り回してるらしいから、車を使う場合は前日予約が必要になる。
俺の車なんだけどな。
そういう訳だから、冬の間に何度も荷物を取りに行ったのに、爺には殆んど会えていない。
別にそれほど会いたいとも思っていないが。
「それじゃあ、帰りは夜か明日になるかわからんが留守番を頼む」
見送りに来たあやかし達に声を掛けたら、化け狐の背中に乗る。
「お前に乗るのも随分快適になったよな」
『ほう、今日は速度制限を掛けないのが望みか』
「止めて?死にそうになるから」
化け狐が普通に走ると、世界最恐のジェットコースターなんて目じゃないぐらいのアトラクションになってしまう。
振り落とされて事故死、なんて事にはなりたくないので、是非とも電動スクーターぐらいの速度でお願いしたい。
最近まで雪が積もっていたから、山の植物はまだまだ冬の装いだ。
新緑なんてものからは程遠い木々を横目にグングンと斜面を下り、麓に着いたら化け狐から降りる。
俺が所有している敷地の内と外で景色が全く違うが、悪戯に雑草が増えるよりかは全然良いな。
雑草だけ食ってくれるあやかしとかいないだろうか?
いたら滅茶苦茶便利なのに。
「爺。来たぞ」
「おう、永海さん久しぶりだな!
見ない間に痩せたんでないかい?」
「そんな筈は無いだろう。
近頃は小屋に籠ってブートキャンプ三昧だったんだぞ」
「そんな筈はねぇべ!
ブートキャンプやってたら、こんぐらいの筋肉が付くだろうよ!」
「ほう、どれどれ」
爺が腕まくりして力コブを作ったんで、触ってみて。
「プヨプヨじゃねぇか!
標準的な爺さんの腕じゃねぇか!」
「はっはっは!俺も全然運動してねぇんだ!
けど毎日飯だけは馬鹿みたいに食ってるから元気なもんよ!
永海さんはもう少し食った方がいいぞ!」
爺は豪快に笑ってから、茶でも飲んでけと俺を家に招き入れた。
爺の家の居間には仏壇がある。
何年か前にカミさん亡くなってるんで、大サービスで経をあげてやる。
これで茶請けぐらいはサービスしてくれるだろう。
「永海さん!ベンツってすげぇな!
ホステスのお姉ちゃんからのウケが違うぜ!」
茶請けにBODIVAのチョコレートが出て来る辺り、相当ブイブイ言わせてんなこの爺。
まあ場末のスナックとかキャバクラを狙えば、ベンツに乗ってるだけでも多少のステータスにはなるんだろうが。
『おい!我にもBODIVAを寄越せ!』
こいつはこいつで目ざといな。
どうしてあやかしがBODIVAを認識してるんだよって話だがな。
俺がお姉ちゃん達から貰ったのを食ってたから仕方ないんだよな。
「爺、甘いもん苦手だったよな?
余ってるBODIVA引き取るから全部くれ」
本命がどうだとか言って少しばかり渋ったが、ベンツを貸してやってる代わりに寄越せと言ったらニ十箱も出てきたので、全て回収。
泣いたふりをする爺に背を向けて、俺達は爺の家を後にした。
いや、麓まで荷物を取りに行くのも下山と言うならば、ちょくちょく下山はしているのだが。
昨日の夜から酒は飲んでいないので、目覚めは爽快。
アル中では無いから酒を抜いたところで手の震えも無い。
爺には昨日の内に連絡をしておいた。
あの男、毎日俺のベンツを乗り回してるらしいから、車を使う場合は前日予約が必要になる。
俺の車なんだけどな。
そういう訳だから、冬の間に何度も荷物を取りに行ったのに、爺には殆んど会えていない。
別にそれほど会いたいとも思っていないが。
「それじゃあ、帰りは夜か明日になるかわからんが留守番を頼む」
見送りに来たあやかし達に声を掛けたら、化け狐の背中に乗る。
「お前に乗るのも随分快適になったよな」
『ほう、今日は速度制限を掛けないのが望みか』
「止めて?死にそうになるから」
化け狐が普通に走ると、世界最恐のジェットコースターなんて目じゃないぐらいのアトラクションになってしまう。
振り落とされて事故死、なんて事にはなりたくないので、是非とも電動スクーターぐらいの速度でお願いしたい。
最近まで雪が積もっていたから、山の植物はまだまだ冬の装いだ。
新緑なんてものからは程遠い木々を横目にグングンと斜面を下り、麓に着いたら化け狐から降りる。
俺が所有している敷地の内と外で景色が全く違うが、悪戯に雑草が増えるよりかは全然良いな。
雑草だけ食ってくれるあやかしとかいないだろうか?
いたら滅茶苦茶便利なのに。
「爺。来たぞ」
「おう、永海さん久しぶりだな!
見ない間に痩せたんでないかい?」
「そんな筈は無いだろう。
近頃は小屋に籠ってブートキャンプ三昧だったんだぞ」
「そんな筈はねぇべ!
ブートキャンプやってたら、こんぐらいの筋肉が付くだろうよ!」
「ほう、どれどれ」
爺が腕まくりして力コブを作ったんで、触ってみて。
「プヨプヨじゃねぇか!
標準的な爺さんの腕じゃねぇか!」
「はっはっは!俺も全然運動してねぇんだ!
けど毎日飯だけは馬鹿みたいに食ってるから元気なもんよ!
永海さんはもう少し食った方がいいぞ!」
爺は豪快に笑ってから、茶でも飲んでけと俺を家に招き入れた。
爺の家の居間には仏壇がある。
何年か前にカミさん亡くなってるんで、大サービスで経をあげてやる。
これで茶請けぐらいはサービスしてくれるだろう。
「永海さん!ベンツってすげぇな!
ホステスのお姉ちゃんからのウケが違うぜ!」
茶請けにBODIVAのチョコレートが出て来る辺り、相当ブイブイ言わせてんなこの爺。
まあ場末のスナックとかキャバクラを狙えば、ベンツに乗ってるだけでも多少のステータスにはなるんだろうが。
『おい!我にもBODIVAを寄越せ!』
こいつはこいつで目ざといな。
どうしてあやかしがBODIVAを認識してるんだよって話だがな。
俺がお姉ちゃん達から貰ったのを食ってたから仕方ないんだよな。
「爺、甘いもん苦手だったよな?
余ってるBODIVA引き取るから全部くれ」
本命がどうだとか言って少しばかり渋ったが、ベンツを貸してやってる代わりに寄越せと言ったらニ十箱も出てきたので、全て回収。
泣いたふりをする爺に背を向けて、俺達は爺の家を後にした。
0
お気に入りに追加
334
あなたにおすすめの小説

悪役令嬢カテリーナでございます。
くみたろう
恋愛
………………まあ、私、悪役令嬢だわ……
気付いたのはワインを頭からかけられた時だった。
どうやら私、ゲームの中の悪役令嬢に生まれ変わったらしい。
40歳未婚の喪女だった私は今や立派な公爵令嬢。ただ、痩せすぎて骨ばっている体がチャームポイントなだけ。
ぶつかるだけでアタックをかます強靭な骨の持ち主、それが私。
40歳喪女を舐めてくれては困りますよ? 私は没落などしませんからね。
どうやら夫に疎まれているようなので、私はいなくなることにします
文野多咲
恋愛
秘めやかな空気が、寝台を囲う帳の内側に立ち込めていた。
夫であるゲルハルトがエレーヌを見下ろしている。
エレーヌの髪は乱れ、目はうるみ、体の奥は甘い熱で満ちている。エレーヌもまた、想いを込めて夫を見つめた。
「ゲルハルトさま、愛しています」
ゲルハルトはエレーヌをさも大切そうに撫でる。その手つきとは裏腹に、ぞっとするようなことを囁いてきた。
「エレーヌ、俺はあなたが憎い」
エレーヌは凍り付いた。
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
断る――――前にもそう言ったはずだ
鈴宮(すずみや)
恋愛
「寝室を分けませんか?」
結婚して三年。王太子エルネストと妃モニカの間にはまだ子供が居ない。
周囲からは『そろそろ側妃を』という声が上がっているものの、彼はモニカと寝室を分けることを拒んでいる。
けれど、エルネストはいつだって、モニカにだけ冷たかった。
他の人々に向けられる優しい言葉、笑顔が彼女に向けられることない。
(わたくし以外の女性が妃ならば、エルネスト様はもっと幸せだろうに……)
そんな時、侍女のコゼットが『エルネストから想いを寄せられている』ことをモニカに打ち明ける。
ようやく側妃を娶る気になったのか――――エルネストがコゼットと過ごせるよう、私室で休むことにしたモニカ。
そんな彼女の元に、護衛騎士であるヴィクトルがやってきて――――?

結婚30年、契約満了したので離婚しませんか?
おもちのかたまり
恋愛
恋愛・小説 11位になりました!
皆様ありがとうございます。
「私、旦那様とお付き合いも甘いやり取りもしたことが無いから…ごめんなさい、ちょっと他人事なのかも。もちろん、貴方達の事は心から愛しているし、命より大事よ。」
眉根を下げて笑う母様に、一発じゃあ足りないなこれは。と確信した。幸い僕も姉さん達も祝福持ちだ。父様のような力極振りではないけれど、三対一なら勝ち目はある。
「じゃあ母様は、父様が嫌で離婚するわけではないんですか?」
ケーキを幸せそうに頬張っている母様は、僕の言葉にきょとん。と目を見開いて。…もしかすると、母様にとって父様は、関心を向ける程の相手ではないのかもしれない。嫌な予感に、今日一番の寒気がする。
◇◇◇◇◇◇◇◇◇
20年前に攻略対象だった父親と、悪役令嬢の取り巻きだった母親の現在のお話。
ハッピーエンド・バットエンド・メリーバットエンド・女性軽視・女性蔑視
上記に当てはまりますので、苦手な方、ご不快に感じる方はお気を付けください。
王子を身籠りました
青の雀
恋愛
婚約者である王太子から、毒を盛って殺そうとした冤罪をかけられ収監されるが、その時すでに王太子の子供を身籠っていたセレンティー。
王太子に黙って、出産するも子供の容姿が王家特有の金髪金眼だった。
再び、王太子が毒を盛られ、死にかけた時、我が子と対面するが…というお話。
十三回目の人生でようやく自分が悪役令嬢ポジと気づいたので、もう殿下の邪魔はしませんから構わないで下さい!
翠玉 結
恋愛
公爵令嬢である私、エリーザは挙式前夜の式典で命を落とした。
「貴様とは、婚約破棄する」と残酷な事を突きつける婚約者、王太子殿下クラウド様の手によって。
そしてそれが一度ではなく、何度も繰り返していることに気が付いたのは〖十三回目〗の人生。
死んだ理由…それは、毎回悪役令嬢というポジションで立ち振る舞い、殿下の恋路を邪魔していたいたからだった。
どう頑張ろうと、殿下からの愛を受け取ることなく死ぬ。
その結末をが分かっているならもう二度と同じ過ちは繰り返さない!
そして死なない!!
そう思って殿下と関わらないようにしていたのに、
何故か前の記憶とは違って、まさかのご執心で溺愛ルートまっしぐらで?!
「殿下!私、死にたくありません!」
✼••┈┈┈┈••✼••┈┈┈┈••✼
※他サイトより転載した作品です。

婚約者は、今月もお茶会に来ないらしい。
白雪なこ
恋愛
婚約時に両家で決めた、毎月1回の婚約者同士の交流を深める為のお茶会。だけど、私の婚約者は「彼が認めるお茶会日和」にしかやってこない。そして、数ヶ月に一度、参加したかと思えば、無言。短時間で帰り、手紙を置いていく。そんな彼を……許せる?
*6/21続編公開。「幼馴染の王女殿下は私の元婚約者に激おこだったらしい。次期女王を舐めんなよ!ですって。」
*外部サイトにも掲載しています。(1日だけですが総合日間1位)
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる