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第23話 冬に暴れそうな奴
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早朝に起き出した馬鹿息子は、そろそろ帰ると言って鞄から出した物を壁際に並べ始めた。
組み立て式の仏壇に仏像、おりん、木魚、前香炉、灯立て、花立て、仏飯器、茶湯器、線香差し。
線香と蠟燭も、一冬は余裕で持つであろう量を用意してある。
これはあれだな。
これ以上ないってぐらいの有難迷惑だな。
真面目にいらないから、さっさとそれ持って帰ってくれない?
「余計な物を持って来ないでもっと有益な物を持って来いよ」
「親父、あんた紛うことなき生臭坊主なんだから、お勤めぐらいしておかないと極楽浄土に行けないぜ?」
「行く気ねぇけど?」
馬鹿息子は、そんな俺の言葉を冗談言うなと鼻で笑って帰っていった。
荷物を全部置いていったので、帰りの鞄は随分とコンパクトだ。
その鞄に仏壇と仏具一式入るよな?
『お前が育てたとは思えん出来た息子ではないか』
「血は繋がってないが、俺の人となりを受け継いでるからな。
一人親の親子ってのは似るもんなんだろ」
仮に馬鹿息子が出来た息子であるならば、それは偏に俺の功績と言って良い。
もしも俺がろくでもない親であったならば、それを反面教師にして良い人格が形成されたとも考えられるが。
俺は品行方正で模範的な坊主だからな。
反面教師にしたら怠惰でどうしようもない人格に育ってしまった事だろう。
『自己紹介か?』
「品行方正で模範的だろ?」
『怠惰でどうしようもないの部分だ』
全く失礼な事を言うあやかしだぜ。
確かに山暮らしを始めてからは、少しばかり怠惰な生活をしているかもしれないな。
ちょうど良い季節だし、冬の保存食として干し芋でも作ってみるか。
まあちょっと今日は出来そうにないのだが。
「私の!季節が!やってくるぞ!」
うん、今日は何と言うか、結構寒いんだよな。
氷点下まではいかないんだが、冬が来るなと実感するぐらいには寒い。
寒くなったからなんだろうな。
我が家に来てからは部屋に籠って一歩も外に出なかった奴が、初めて家を出て両腕を上げてガッツポーズしてるんだよ。
薄い水色の長髪に真っ白の肌で髪と同じ色の着物を着てる、切れ長の目をした和風美人がだ。
何か見た目とテンションが合ってなくて軽く引くんだよな。
『そう言ってやるな。あれはまともに外を出歩けるのが冬しかないのだ』
「一部屋占領して部屋ごと凍り付かせてる奴だもんな。
雪女ってそんなに暑がりなのか?今も震々背負ってるけどよ」
俺がそんな事を呟くと、雪女は俺の目の前に来て慎ましやかな胸を張り。
「私は特別に暑がりだ!」
何と言うか、正直に言わせて貰えば、存在が既に暑苦しい。
「早速なのだが、この辺一帯に大雪を降らせても良いか!?」
「止めい!唐突にスタッドレスタイヤが必要な天候にするのは、迷惑が過ぎるわ!」
こいつちょっと自由過ぎやしないか?
一応実行する前に確認をしてくれるなら、まだマシではあるが。
「そんなぁ」
そして膝から崩れ落ちた雪女。
何だこれは。
残念美人っていうのはこういう奴の事を言うのかと初めてリアルに実感している。
「畑の野菜を冬の野菜に切り替えたら、山にだけ降らせて良いから」
「本当か!?」
俺の言葉に顔を上げて満面の笑みを見せた雪女。
「だから収穫を手伝ってくれるか?
早く収穫が終われば、それだけ早く雪を降らせられるぞ」
「わかった!頑張ってあれらの野菜を根絶やしにするぞ!」
根絶やしにされたら困るんだけどな。
『お主は本当に女に甘いな』
「体よく働いてくれる人材を手に入れただけなんだが?」
雪女は河童達に野菜を収穫させて残った根や茎を凍らせて粉々にする方法であっという間に畑を空にした。
見事な手際に俺も化け狐も思わず感心をして屋敷に戻る。
空になった畑を見て河童達は人知れず泣いた。
組み立て式の仏壇に仏像、おりん、木魚、前香炉、灯立て、花立て、仏飯器、茶湯器、線香差し。
線香と蠟燭も、一冬は余裕で持つであろう量を用意してある。
これはあれだな。
これ以上ないってぐらいの有難迷惑だな。
真面目にいらないから、さっさとそれ持って帰ってくれない?
「余計な物を持って来ないでもっと有益な物を持って来いよ」
「親父、あんた紛うことなき生臭坊主なんだから、お勤めぐらいしておかないと極楽浄土に行けないぜ?」
「行く気ねぇけど?」
馬鹿息子は、そんな俺の言葉を冗談言うなと鼻で笑って帰っていった。
荷物を全部置いていったので、帰りの鞄は随分とコンパクトだ。
その鞄に仏壇と仏具一式入るよな?
『お前が育てたとは思えん出来た息子ではないか』
「血は繋がってないが、俺の人となりを受け継いでるからな。
一人親の親子ってのは似るもんなんだろ」
仮に馬鹿息子が出来た息子であるならば、それは偏に俺の功績と言って良い。
もしも俺がろくでもない親であったならば、それを反面教師にして良い人格が形成されたとも考えられるが。
俺は品行方正で模範的な坊主だからな。
反面教師にしたら怠惰でどうしようもない人格に育ってしまった事だろう。
『自己紹介か?』
「品行方正で模範的だろ?」
『怠惰でどうしようもないの部分だ』
全く失礼な事を言うあやかしだぜ。
確かに山暮らしを始めてからは、少しばかり怠惰な生活をしているかもしれないな。
ちょうど良い季節だし、冬の保存食として干し芋でも作ってみるか。
まあちょっと今日は出来そうにないのだが。
「私の!季節が!やってくるぞ!」
うん、今日は何と言うか、結構寒いんだよな。
氷点下まではいかないんだが、冬が来るなと実感するぐらいには寒い。
寒くなったからなんだろうな。
我が家に来てからは部屋に籠って一歩も外に出なかった奴が、初めて家を出て両腕を上げてガッツポーズしてるんだよ。
薄い水色の長髪に真っ白の肌で髪と同じ色の着物を着てる、切れ長の目をした和風美人がだ。
何か見た目とテンションが合ってなくて軽く引くんだよな。
『そう言ってやるな。あれはまともに外を出歩けるのが冬しかないのだ』
「一部屋占領して部屋ごと凍り付かせてる奴だもんな。
雪女ってそんなに暑がりなのか?今も震々背負ってるけどよ」
俺がそんな事を呟くと、雪女は俺の目の前に来て慎ましやかな胸を張り。
「私は特別に暑がりだ!」
何と言うか、正直に言わせて貰えば、存在が既に暑苦しい。
「早速なのだが、この辺一帯に大雪を降らせても良いか!?」
「止めい!唐突にスタッドレスタイヤが必要な天候にするのは、迷惑が過ぎるわ!」
こいつちょっと自由過ぎやしないか?
一応実行する前に確認をしてくれるなら、まだマシではあるが。
「そんなぁ」
そして膝から崩れ落ちた雪女。
何だこれは。
残念美人っていうのはこういう奴の事を言うのかと初めてリアルに実感している。
「畑の野菜を冬の野菜に切り替えたら、山にだけ降らせて良いから」
「本当か!?」
俺の言葉に顔を上げて満面の笑みを見せた雪女。
「だから収穫を手伝ってくれるか?
早く収穫が終われば、それだけ早く雪を降らせられるぞ」
「わかった!頑張ってあれらの野菜を根絶やしにするぞ!」
根絶やしにされたら困るんだけどな。
『お主は本当に女に甘いな』
「体よく働いてくれる人材を手に入れただけなんだが?」
雪女は河童達に野菜を収穫させて残った根や茎を凍らせて粉々にする方法であっという間に畑を空にした。
見事な手際に俺も化け狐も思わず感心をして屋敷に戻る。
空になった畑を見て河童達は人知れず泣いた。
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