上 下
10 / 108

第9話 揺らし甲斐のある家

しおりを挟む
 小屋があるのは、山の頂上付近。
 来たばかりの時は、周囲を木々に囲まれていたのだが、あやかしが気を利かせて小屋をリフォームする為の材木を用意してくれたので、中々の広さが拓けてしまった。
 スローライフと言えば自給自足のイメージがあるので、家庭菜園でも始めようと思うんだが、まずは小屋から家と呼べる住処にレベルアップさせたい。

「しかし、この歳でソロ改築は骨が折れるぜ。
 何なら死んでしまうかもしれない。主に腰が」

『確かにな。だったら土建屋に頼めば良かろう。檀家にでもおるだろう』

「いるにはいるがなぁ。スローライフって言ったら、住みやすい家に自力でリフォームするだろう。
 ああいうのって憧れちゃうんだよな」

 自分好みに、自分の好きに、自力で住処を作り上げるなんてロマンしか感じない。

「そういう訳だから家鳴が揺らし甲斐のある家にリフォームすれば良いと思うんだよ」

『他力ではないか!』

 化け狐から良いツッコミを頂いたが。
 俺にとっての住みやすい家にリフォームするよりも、よっぽど良いと思うんだけどな。

 正直言って、俺はあまり住処に拘りはない。
 狭っ苦しいのとボロいのは嫌だが、それなりに広くて、それなりに綺麗ならば、どんな家だって構わない。

『それは我も同様だな』

 化け狐も酒が飲めれば気にしないって感じだよな。

「座敷童も、別にこの小屋が良くて集まった訳じゃないんだろう?」

 全開にした窓からうんうんと頷いているから、どんな家でも問題はなさそうだ。

「だったら一番拘りがありそうな奴に任せるのが一番だろう。
 馬鹿息子がよく勘違いして地震だなんだって騒いでたが、ついて来てるんだろう?」

 小屋がぐらりと揺れたと思ったら膝ぐらいまでの小さい鬼が6人も姿を現した。
 だから数が多いんだって。
 今は多い方が好都合だけれども。

 こいつらは時々寺を叩いてたあやかしで、あまり近寄ったりはしないから、化け狐からも目溢しをされてた奴らだな。

「この小屋をベースに、お前らが今までで一番揺らし甲斐のあった家を再現してくれるか?
 耐震強度は低くても、座敷童がいるから幸せパワーで何とかなるだろう。だから強度はあんまり気にしなくて良い」

『何だ幸せパワーとは。お主、座敷童を過大評価していないか?』

「一軒に四人いんだぞ?三人家族の家だったら、家族よりも座敷童のが多いんだぞ?
 滅茶苦茶幸せパワー高そうじゃねぇのよ」

『だから幸せパワーとは何だ。その幸せパワーとやらに対する過剰な信頼は何処から生まれるのだ』

 何処からと言われたら、座敷童がうんうん頷いているからに尽きるが。
 とにかく俺は座敷童と、既に気合いが入りまくって、腕立てをして筋肉のパンプアップを図っている家鳴を信じたいのだ。

「それに、例え家が崩れても、お前が助けてくれるんだろう?」

『む、それはそうだが』

 こうして俺は、家鳴に小屋のリフォームを依頼した。
 翌朝目を覚ましたら、狭苦しい小屋から、ちょっとした武家屋敷の家屋みたいな家に変わっていた。
しおりを挟む
感想 9

あなたにおすすめの小説

元おっさんの俺、公爵家嫡男に転生~普通にしてるだけなのに、次々と問題が降りかかってくる~

おとら@ 書籍発売中
ファンタジー
アルカディア王国の公爵家嫡男であるアレク(十六歳)はある日突然、前触れもなく前世の記憶を蘇らせる。 どうやら、それまでの自分はグータラ生活を送っていて、ろくでもない評判のようだ。 そんな中、アラフォー社畜だった前世の記憶が蘇り混乱しつつも、今の生活に慣れようとするが……。 その行動は以前とは違く見え、色々と勘違いをされる羽目に。 その結果、様々な女性に迫られることになる。 元婚約者にしてツンデレ王女、専属メイドのお調子者エルフ、決闘を仕掛けてくるクーデレ竜人姫、世話をすることなったドジっ子犬耳娘など……。 「ハーレムは嫌だァァァァ! どうしてこうなった!?」 今日も、そんな彼の悲鳴が響き渡る。

男子高校生だった俺は異世界で幼児になり 訳あり筋肉ムキムキ集団に保護されました。

カヨワイさつき
ファンタジー
高校3年生の神野千明(かみの ちあき)。 今年のメインイベントは受験、 あとはたのしみにしている北海道への修学旅行。 だがそんな彼は飛行機が苦手だった。 電車バスはもちろん、ひどい乗り物酔いをするのだった。今回も飛行機で乗り物酔いをおこしトイレにこもっていたら、いつのまにか気を失った?そして、ちがう場所にいた?! あれ?身の危険?!でも、夢の中だよな? 急死に一生?と思ったら、筋肉ムキムキのワイルドなイケメンに拾われたチアキ。 さらに、何かがおかしいと思ったら3歳児になっていた?! 変なレアスキルや神具、 八百万(やおよろず)の神の加護。 レアチート盛りだくさん?! 半ばあたりシリアス 後半ざまぁ。 訳あり幼児と訳あり集団たちとの物語。 〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜 北海道、アイヌ語、かっこ良さげな名前 お腹がすいた時に食べたい食べ物など 思いついた名前とかをもじり、 なんとか、名前決めてます。     *** お名前使用してもいいよ💕っていう 心優しい方、教えて下さい🥺 悪役には使わないようにします、たぶん。 ちょっとオネェだったり、 アレ…だったりする程度です😁 すでに、使用オッケーしてくださった心優しい 皆様ありがとうございます😘 読んでくださる方や応援してくださる全てに めっちゃ感謝を込めて💕 ありがとうございます💞

貧民街の元娼婦に育てられた孤児は前世の記憶が蘇り底辺から成り上がり世界の救世主になる。

黒ハット
ファンタジー
【完結しました】捨て子だった主人公は、元貴族の側室で騙せれて娼婦だった女性に拾われて最下層階級の貧民街で育てられるが、13歳の時に崖から川に突き落とされて意識が無くなり。気が付くと前世の日本で物理学の研究生だった記憶が蘇り、周りの人たちの善意で底辺から抜け出し成り上がって世界の救世主と呼ばれる様になる。 この作品は小説書き始めた初期の作品で内容と書き方をリメイクして再投稿を始めました。感想、応援よろしくお願いいたします。

【完結】転生7年!ぼっち脱出して王宮ライフ満喫してたら王国の動乱に巻き込まれた少女戦記 〜愛でたいアイカは救国の姫になる

三矢さくら
ファンタジー
【完結しました】異世界からの召喚に応じて6歳児に転生したアイカは、護ってくれる結界に逆に閉じ込められた結果、山奥でサバイバル生活を始める。 こんなはずじゃなかった! 異世界の山奥で過ごすこと7年。ようやく結界が解けて、山を下りたアイカは王都ヴィアナで【天衣無縫の無頼姫】の異名をとる第3王女リティアと出会う。 珍しい物好きの王女に気に入られたアイカは、なんと侍女に取り立てられて王宮に! やっと始まった異世界生活は、美男美女ぞろいの王宮生活! 右を見ても左を見ても「愛でたい」美人に美少女! 美男子に美少年ばかり! アイカとリティア、まだまだ幼い侍女と王女が数奇な運命をたどる異世界王宮ファンタジー戦記。

完結・オメガバース・虐げられオメガ側妃が敵国に売られたら激甘ボイスのイケメン王から溺愛されました

美咲アリス
BL
虐げられオメガ側妃のシャルルは敵国への貢ぎ物にされた。敵国のアルベルト王は『人間を食べる』という恐ろしい噂があるアルファだ。けれども実際に会ったアルベルト王はものすごいイケメン。しかも「今日からそなたは国宝だ」とシャルルに激甘ボイスで囁いてくる。「もしかして僕は国宝級の『食材』ということ?」シャルルは恐怖に怯えるが、もちろんそれは大きな勘違いで⋯⋯? 虐げられオメガと敵国のイケメン王、ふたりのキュン&ハッピーな異世界恋愛オメガバースです!

ボクが追放されたら飢餓に陥るけど良いですか?

音爽(ネソウ)
ファンタジー
美味しい果実より食えない石ころが欲しいなんて、人間て変わってますね。 役に立たないから出ていけ? わかりました、緑の加護はゴッソリ持っていきます! さようなら! 5月4日、ファンタジー1位!HOTランキング1位獲得!!ありがとうございました!

【完結】伴侶がいるので、溺愛ご遠慮いたします

  *  
BL
3歳のノィユが、カビの生えてないご飯を求めて結ばれることになったのは、北の最果ての領主のおじいちゃん……え、おじいちゃん……!? しあわせの絶頂にいるのを知らない王子たちが吃驚して憐れんで溺愛してくれそうなのですが、結構です! めちゃくちゃかっこよくて可愛い伴侶がいますので! 本編完結しました! リクエストの更新が終わったら、舞踏会編をはじめる予定ですー!

解呪の魔法しか使えないからとSランクパーティーから追放された俺は、呪いをかけられていた美少女ドラゴンを拾って最強へと至る

早見羽流
ファンタジー
「ロイ・クノール。お前はもう用無しだ」 解呪の魔法しか使えない初心者冒険者の俺は、呪いの宝箱を解呪した途端にSランクパーティーから追放され、ダンジョンの最深部へと蹴り落とされてしまう。 そこで出会ったのは封印された邪龍。解呪の能力を使って邪龍の封印を解くと、なんとそいつは美少女の姿になり、契約を結んで欲しいと頼んできた。 彼女は元は世界を守護する守護龍で、英雄や女神の陰謀によって邪龍に堕とされ封印されていたという。契約を結んだ俺は彼女を救うため、守護龍を封印し世界を牛耳っている女神や英雄の血を引く王家に立ち向かうことを誓ったのだった。 (1話2500字程度、1章まで完結保証です)

処理中です...