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第10話 Fコードです!②
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翌日。
「むずい…Fは無理。音鳴らない…」
「1日で弱音吐いてるのは草なんだ」
昼休み。いつものように前後の机をくっつけて友人の彩葉とお喋り中。
昨日は家に帰ってからもFの練習に勤しんだんだけど、中々上達は出来なかった。
「多分、私にはFの才能が無いんだ。ギターの才能は申し分ないけど、Fの才能だけは絶望的に無いんだよ…」
「ギターからFだけを切り離しちゃってるじゃん。Fが鳴らないってことはギターの才能が無いんだよ」
「励ましてよ親友ー。力強く励ましてよー。いつも素敵な笑顔を見せてくれる筋肉芸人みたくポジティブに励ましてよー」
「あの人のポジティブを陰キャに模倣出来る訳ないだろ。根っからの陰キャ舐めんな」
想像したら嗚咽が漏れるレベルで似合ってないな。
確かに彩葉がどれだけ体を鍛えても、あの盛り上がった上腕二頭筋の頂きには立てない気がする。
「何か変な想像してない?」
「してない」
さ、FだFだ。
Fの難易度を爆上げしている原因は、人差し指のバレーコードと小指を使うところだと思う。
6本の弦を全部押さえるバレーコードは言わずもがなだけど、普段あんまり使う機会のない小指が器用に動いてくれないのが厄介なんだよ。
「小指って小指繋ぎ専用の指だもんね?」
「唐突に何を言っているのか理解出来ないけど、その認識が正しくないことだけは理解出来るな」
え?小指繋ぎ以外に小指の使い道なんてあったの?あの間を通られたら突き指確定じゃないの?って危うさしかないカップル繋ぎの変異種。
FコードはVERY HARDどころか難易度HELLってぐらい難しい。
それでも昨日御園先輩が愛の調整をしてくれた石ナンデスはかなり弾き易くなってて、ポコポコ言いながらも、うっすら音は鳴ってるんだけどね。
左手めっちゃ痛いけど、どうにかしてFを超えなきゃ軽音楽部の人達に追い付けない。
私は3日でFをマスターして、御園先輩に「よく頑張ったね」って頭をなでなでしてもらうのだ!
そんな約束してないし、完全に私の妄想でしかないけれども!
さらに翌日。
ジャーン
「おお、鳴るようになったじゃん」
「ふふん。遂にFの才能が開花したみたいよ」
私は昨日完徹したおかげで、どうにかFの音をポコポコ言わせずに鳴らせるようになった。
左手の指は弦で擦れて痛いし、普段使わない筋肉使って筋肉痛的な痛みもあるけれど。
私の左手、満身創痍だよ…。このままいったら“左手だけきんにさん”になっちゃうかもしれない…。
「よし、それじゃあウチが言うコードを弾いてくれよ」
「え?別に良いけど、普通に弾けちゃうから面白くないよ?」
最難関のF士山を超えた私は、同じバレーコードを使うBだってB瑛岳ぐらい簡単に押さえられる。いや、美瑛岳も結構標高は高いんだけどさ。
まあ、Fが押さえられる今の私は、はっきり言って死角は存在しない無敵モードに入っているのだ。
だからニヤニヤしてる彩葉の思い通りには、きっとならないんだけどな。
「C」
ジャーン
「G」
ジャーン
「F」
ポコポコポコポコポコポコ
「あっはっは!ひとつも鳴らないのは爆笑せざるを得ない!」
「唐突なFはズルいよ!そんなの、何の準備もしないで富士山登れって言ってるのと同じだからね!?」
「そんな大袈裟な話じゃないだろ!あー、お腹痛い。抱腹絶倒とは正にこのことか…」
「くっそー!覚えてなさい!私は唐突なFなんかに屈しない!」
さらに翌日。
「見よ!この音を!C、D、からの必殺のF」
ジャーン
「おおぉ!他のコードを鳴らしたあとでも一瞬で押さえられるようになってる!」
「ふふん。私の成長速度を舐めないでほしいね」
昨日もずっと練習してたからね。
今までゲームとかをやってた時間が、全部ギターの練習に変わってる。
まだ何日もやってないけど、結構良い感じじゃない?って確信に近い自信がついてきた。
「なるほどなぁ。なかなかやるみたいだな。B」
ジャーン
「おー」
「ふっふっふ。ランダム攻撃を仕掛けてくるボスを使って、どんなに急なタイミングでも鳴らせるように練習したのだよ!」
「莉子、努力の方向性間違えてないか?」
この攻撃はC、この攻撃はF、みたいに攻撃にコードを当てはめて、彩葉の意地悪攻撃に対応出来るように頑張ったのだ。
「F」
ジャーン
「E」
ジャーン
「Cm」
「!?」
ポコポコポコポコポコポコ
「あっはっは!ポコポコくっそ笑える!」
「練習してないコードは反則だから!そんなの時間切れの即死攻撃だから!回避しようがないから!」
F士山を登ったら、向こう側にまた新しい山が現れた。
私が御園先輩みたいに格好良くギターを弾けるようになるのは、まだまだ先みたいだよ…。
「むずい…Fは無理。音鳴らない…」
「1日で弱音吐いてるのは草なんだ」
昼休み。いつものように前後の机をくっつけて友人の彩葉とお喋り中。
昨日は家に帰ってからもFの練習に勤しんだんだけど、中々上達は出来なかった。
「多分、私にはFの才能が無いんだ。ギターの才能は申し分ないけど、Fの才能だけは絶望的に無いんだよ…」
「ギターからFだけを切り離しちゃってるじゃん。Fが鳴らないってことはギターの才能が無いんだよ」
「励ましてよ親友ー。力強く励ましてよー。いつも素敵な笑顔を見せてくれる筋肉芸人みたくポジティブに励ましてよー」
「あの人のポジティブを陰キャに模倣出来る訳ないだろ。根っからの陰キャ舐めんな」
想像したら嗚咽が漏れるレベルで似合ってないな。
確かに彩葉がどれだけ体を鍛えても、あの盛り上がった上腕二頭筋の頂きには立てない気がする。
「何か変な想像してない?」
「してない」
さ、FだFだ。
Fの難易度を爆上げしている原因は、人差し指のバレーコードと小指を使うところだと思う。
6本の弦を全部押さえるバレーコードは言わずもがなだけど、普段あんまり使う機会のない小指が器用に動いてくれないのが厄介なんだよ。
「小指って小指繋ぎ専用の指だもんね?」
「唐突に何を言っているのか理解出来ないけど、その認識が正しくないことだけは理解出来るな」
え?小指繋ぎ以外に小指の使い道なんてあったの?あの間を通られたら突き指確定じゃないの?って危うさしかないカップル繋ぎの変異種。
FコードはVERY HARDどころか難易度HELLってぐらい難しい。
それでも昨日御園先輩が愛の調整をしてくれた石ナンデスはかなり弾き易くなってて、ポコポコ言いながらも、うっすら音は鳴ってるんだけどね。
左手めっちゃ痛いけど、どうにかしてFを超えなきゃ軽音楽部の人達に追い付けない。
私は3日でFをマスターして、御園先輩に「よく頑張ったね」って頭をなでなでしてもらうのだ!
そんな約束してないし、完全に私の妄想でしかないけれども!
さらに翌日。
ジャーン
「おお、鳴るようになったじゃん」
「ふふん。遂にFの才能が開花したみたいよ」
私は昨日完徹したおかげで、どうにかFの音をポコポコ言わせずに鳴らせるようになった。
左手の指は弦で擦れて痛いし、普段使わない筋肉使って筋肉痛的な痛みもあるけれど。
私の左手、満身創痍だよ…。このままいったら“左手だけきんにさん”になっちゃうかもしれない…。
「よし、それじゃあウチが言うコードを弾いてくれよ」
「え?別に良いけど、普通に弾けちゃうから面白くないよ?」
最難関のF士山を超えた私は、同じバレーコードを使うBだってB瑛岳ぐらい簡単に押さえられる。いや、美瑛岳も結構標高は高いんだけどさ。
まあ、Fが押さえられる今の私は、はっきり言って死角は存在しない無敵モードに入っているのだ。
だからニヤニヤしてる彩葉の思い通りには、きっとならないんだけどな。
「C」
ジャーン
「G」
ジャーン
「F」
ポコポコポコポコポコポコ
「あっはっは!ひとつも鳴らないのは爆笑せざるを得ない!」
「唐突なFはズルいよ!そんなの、何の準備もしないで富士山登れって言ってるのと同じだからね!?」
「そんな大袈裟な話じゃないだろ!あー、お腹痛い。抱腹絶倒とは正にこのことか…」
「くっそー!覚えてなさい!私は唐突なFなんかに屈しない!」
さらに翌日。
「見よ!この音を!C、D、からの必殺のF」
ジャーン
「おおぉ!他のコードを鳴らしたあとでも一瞬で押さえられるようになってる!」
「ふふん。私の成長速度を舐めないでほしいね」
昨日もずっと練習してたからね。
今までゲームとかをやってた時間が、全部ギターの練習に変わってる。
まだ何日もやってないけど、結構良い感じじゃない?って確信に近い自信がついてきた。
「なるほどなぁ。なかなかやるみたいだな。B」
ジャーン
「おー」
「ふっふっふ。ランダム攻撃を仕掛けてくるボスを使って、どんなに急なタイミングでも鳴らせるように練習したのだよ!」
「莉子、努力の方向性間違えてないか?」
この攻撃はC、この攻撃はF、みたいに攻撃にコードを当てはめて、彩葉の意地悪攻撃に対応出来るように頑張ったのだ。
「F」
ジャーン
「E」
ジャーン
「Cm」
「!?」
ポコポコポコポコポコポコ
「あっはっは!ポコポコくっそ笑える!」
「練習してないコードは反則だから!そんなの時間切れの即死攻撃だから!回避しようがないから!」
F士山を登ったら、向こう側にまた新しい山が現れた。
私が御園先輩みたいに格好良くギターを弾けるようになるのは、まだまだ先みたいだよ…。
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