眼鏡ちゃん、バンドやる。

眠ゐ犬

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第10話 Fコードです!①

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 自己紹介から程なくして、御園先輩はアルバイトがあると言って帰ってしまった。
 やっぱり格好良い大人な先輩はアルバイトしてるんだね。

 私も同じところで働きたい…と思ったけれど、両親の許可が出るかなぁ。
 シフトを全部被せるのは難しいだろうし、私の推し活…ソノ活(御園先輩活動)に支障をきたしそうだから保留かな。
 ミソ活にしないのは名古屋のソウルフードみたくなっちゃうからだよ!
 御園先輩と濃厚な赤味噌のタレがかかったとんかつは似ても似つかない存在だからね!

 さて、御園先輩が帰ってしまった部室の中、私は当初の予定通り端っこで小さくなっている。
 当初の予定と違って体育座りじゃなくて石ナンデスをお供にしてギターの練習してるんだけどね。
 御園先輩のかほりはしませんでした…ギターってあんまり匂いは吸着しないんだね…。

 正直に言えば、もう御園先輩はいないし私も帰ろうかなって思ったんだけど、これから毎日放課後は部室に入り浸るつもりだから存在感を消して端っこ練習よ。
 時々田宮部長が気を使って声を掛けてくれるけどね。
 ギターを始めて2日目にしては上手だって褒めてくれた。
 ふふん、やはり私の才能は隠しきれないみたいだね。

 人の演奏を見るのも勉強になるかなってアンプに繋いでギターを弾いてる先輩や同学年をチラ見してたんだけど、そこで私に大きな衝撃が走った。

 なん…だと…?私以外の全員がFの頂きを超えている!?

 私以外でギターを弾いている人、全員がFの使い手…エフリストだった。
 新入部員の同学年も5人全員弾けてるんだけど…これじゃあ、まるで私だけがド素人みたいじゃないか…。
 あ、私ド素人だったわ。

「ふおぉ!負けてたまるか!私だって1週間で…いや、3日でFの山…ギター界の富士山を超えてみせる!」

 めっちゃ大声で言ってるように見せ掛けて、めっちゃ小声です…。
 アンプってすんごい大きな音が出るから、ちょっとぐらい大きい声を出しても気付かれないと思うけどね。
 ドラムもズタズタ、ベースもブンブン鳴ってるし。

 とにかく、今の私はアンプに繋がずに部室の隅っこで椅子に座って練習してるのがお似合いだ。
 だから、早くF士山を登りきって2㎜でもアンプに近付けるように頑張るぞ!

 この日から、密かに私の猛特訓がスタートした。
 私の練習方法は、とにもかくにも反復練習。ゲームでもそうだけど、大事なのは基礎だからね。
 基礎を疎かにすれば、どんなテクニカルなことをやったって粗が出てくる。
 それで私は何度も痛い目を見た…エピソードは特にないんだけど、それっぽいこと言った方がわかってる感が出るでしょ?

 そして私は鳥になった。
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