眼鏡ちゃん、バンドやる。

張形珍宝

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ギターの腕を披露しました!②

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「どう?このギター格好良いでしょう」

「莉子には三味線の方が似合いそうだよね。その変なロゴは芋っぽさを表してて似合ってると思うけど」

「石だよ、石!芋じゃなくて石!漢字の石みたいだから石ナンデスって呼ばれてるの!」

「ふーん、興味無い」

「酷っ!少しは興味を持ってよ親友ぅ!」

 そんなやりとりをしながらピックを用意して、何にも押さえずにジャーンと鳴らした。
 何も押さえないのは開放弦って言うらしいよ。
 彩葉は特に反応無し。まあ、こんなのは誰だって弾けるから驚かないよね。

「聴くが良い!これがCだ!」

 ジャーン

「おー」

 私の必殺技、Cコードが決まった。これには流石の彩葉も感心せざるを得なかったみたいだね。

「D」

 ジャーン

「E、G、A」

 ジャーンジャーンジャーン

「ふふん。どうだ参ったか」

 コードは普通に押さえられてるし、普通に鳴ってる。
 我ながらたったの1日完徹しただけでここまで弾けるようになるなんて、自分の才能が恐ろしいよ。
 左手の指がめっちゃ痛いけど。親指と人差し指の間の筋肉もめっちゃ痛いけど。弦に触れる度に強烈な刺激が指を痛めつけるけど。弦がドSだけど。

「Fは?」

「え?」

「Fは?」

「え?何?電波が良くないみたい」

「目の前にいるのにそんな筈があるかい!エーフーはー?」

 くっ…この女、逃がしてはくれないか。
 仕方がない。私の昨晩の努力の成果を見せ付けてやろう!

「いくよ。これがFだ!」

 そう気合いを入れてFのコードを押さえた私は、勢いをつけて弦を鳴らした。

 ポコポコポコポコポコポコ

「……ブフォ。一つも鳴ってないのは笑うしかないんだが!」

「やる夫みたいに笑うなぁ!」

 一夜漬けの練習じゃあ、Fコードの習得は不可能だったよ…。
 Fは人差し指で一番左側…1フレットの弦を全部押さるバレーコードってのをしなくちゃいけなくて、これが難しいのなんのって。
 しかもそのバレーコードした上に、中指で2フレットの3弦、薬指で3フレットの5弦、小指で3フレットの4弦を押さえなきゃいけない超難関。

 同じバレーコードを使うBコードも厳しいんだけど、こっちは調子が良いと3本ぐらいは鳴るんだよね。
 最後の方は指が痛すぎて無理だったけどさ…。

「どうしてFの難易度がVERY HARDなことを知っている!」

「それぐらい知ってるよ。ギター初心者がFで躓くって有名な話じゃん」

「そうなんだよ…。Fの音が出ないんだよ…。私には絶望的にFの才能が無いのかもしれない…」

「ギターの才能じゃなくてFの才能って言う辺りポジティブだよな。Fの才能ってなんだよ。局地的過ぎるだろ」

 CもDもEもGもA押さえられるんだから、ギターの才能はあるでしょ。
 確かに今の私にはFの才能の片鱗は見えない。
 しかし、私はただ負けっぱなしでいる女じゃあないんだ!
 そう力強く意気込んで、私は秘密兵器を取り出した。

「見よ!これがFの才能だ!」

 ジャーン

 完璧なFを披露した私。決まった。

「ズルしてんじゃん!道具使って押さえてるじゃん!」

 そう、カポと言う名のマジックアイテムを使って1フレットを全て押さえてしまえば、初心者にだってFは怖くないんだよ!
 但し他のコードが難題になるから、リスクに対してのリターンが小さ過ぎるのが玉に瑕だったりするんだよね。これ。
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