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11.おっさんの本気

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 パーパーラパッパーラパーパーラパッパーラパー

「1番…ライト…加藤君…」

 ガキィィン

「ギィィィヤァァァオォォス!」

 今日も今日とて遊びに来たクソデカ蜥蜴に鋼の剣で攻撃したら普通にぶっ刺さった。
 流石は攻撃に貫通属性を付与してくれる貫通の腕輪だぜ!

 貫通ってゲームとかだと良く見るけど、現実世界にあったらとんでもねぇ代物だと思うんだよな。
 だってどんなに硬い物だって貫通してダメージを与えるって事は、宇宙船に果物ナイフで穴開けられるって事だぜ?恐ろし過ぎじゃね?
 下手したらおままごと用の包丁でもいけるんだろ?幼児がおままごとで机を真っ二つにしてたらヤバ過ぎだろ…。
 こんな物、世に出てはいけない代物だぜ?だから俺が有効に使ってあげるとしよう。

「さて、本日はスペシャルゲストにお越し頂いております。この方です」

「駄犬っす!俺の雄姿を見ろって煩いから見に来たっす!」

 俺の雄姿を見ろなんて一言も言ってないんだが、駄犬を迷宮入口通路前に配置してみた。
 迷宮の魔物である駄犬は迷宮からは出られないので通路に入る事も出来ない。
 入口→通路→迷宮で、通路は外の入口と迷宮を繋ぐパイプみたいな扱いなんだろう。外でもあり迷宮でもある、みたいな。
 それにしてもクソデカ蜥蜴はの喚き声は煩いな。

「駄犬。俺は今、物凄く面白い川柳を思い付いたんだが、発表して良いか?」

「川柳って何かわかんないっすけど良いっすよ!」

「ここで一首。デカ蜥蜴 刺さった剣が 角みたい」

「キャンキャンキャンキャンキャン!」

 どうやら、俺は異世界全土を爆笑の渦に巻き込む奇跡的な面白川柳を思い付いてしまったらしい。
 俺の川柳は異世界でも通用するんだ!

「てんでつまんないっす!少しも面白くないっす!」

「そっちの笑い!?」

「でも川柳の何たるかは理解したっす!次はあたしがやるっす!」

「おいおい、日本人の心である川柳を異世界の魔物である駄犬が読むと?良いだろう。俺はこっちでクソデカ蜥蜴を討伐しとくから考えてみろ」

 鋼の剣はもう抜けそうにないから、次はこれでいくか。

「はい、鋼の槍ブスー」

「ギィィィヤオォス!」

「はっ、思い付いたっす!」

 クソデカ蜥蜴に槍をぶっ刺した瞬間、駄犬が声を上げたので振り返ると手を上げていた。
 自信満々って表情だな。駄犬が俺よりも上手い川柳を読んだらどうしよう。そんなプレッシャーでこめかみから汗が流れる。
 嘘だ。実際プレッシャーを感じた瞬間に汗なんか流れたら、それはもう漫画だ。
 俺は漫画でもアニメでも小説でもなくリアルに生きている人間なので、プレッシャーを感じた瞬間に汗なんて流れない。
 そんな汗腺がぶっ壊れてる奴は、漫画やアニメや小説に出てくる奴らだ。
 俺は漫画でもアニメでも小説でもなくリアルに生きている人間なので、プレッシャーを感じた瞬間に汗なんて流れない。
 以下ループ。

「はい、駄犬君」

「あたしの川柳に痺れるっす」

「どこかで聞いたような台詞だけど、まぁ良い。言ってみろ」

「デカ蜥蜴」

「ほう、上の句を合わせてきたか。川柳の最初の五文字を上の句って言うのが正しいのか知らんけど。続けてくれ」

「刺さった槍が」

「中の句まで被せてきただと!?まさかお前…力の差を見せ付ける為に下の句の五文字で俺に勝負を仕掛けるつもりか!舐めるなよ?これでも俺はサラリーマン川柳に毎年応募していた自営業を父に持つ生粋のサラブレッド。川柳素人の駄犬なんぞに負ける俺ではないわ!下の句の五文字!篤と言ってみろ!」

「角みたい」

「それ俺の面白いやつぅ!剣を槍に変えただけで殆んど俺の面白いやつぅ!初回スベっておいて初回より二回目、二回目より三回目って擦って面白くしていくやつぅ!俺の面白いやつ取るなや!」

「今宵は…満月の…夜っす…」

「演出で逃げるな面白泥棒!」

 冷静に考えてみたら全然面白くなかったので、今回は特別に駄犬を許してあげよう。
 寧ろ救って貰ったまであるからな。感謝してやっても良い。

「ファルシオンでスパー。投げナイフでトスー。弓矢でもトスー」

「ギィィィヤォォォォォ!」

 さっきから手持ちの武器で一方的に攻撃してるんだけれども、こいつ何で逃げないんだろうな?
 強者のプライドかな?そういうプライド的なアレかな?アレなのかな?
 顔面黒ひげ危機一髪(樽)みたいになってるのになぁ。

「ここまでやっといてなんだけれども、あんまり苦しませるも趣味じゃないからな。そろそろ殺るか。ウインドショット」

 このクソデカ蜥蜴は恐らく土属性だと思われる。理由は色が茶系だから。
 その考え通り、初級風属性の本で風属性の衝撃波を撃つと嫌がって僅かばかり後ろに下がった。
 人一人が通れるだけ入口が開けば十分だ。

 魔法鞄から宝箱産の刀を出して、右手で柄を握る。

 チャキ

「我が一太刀に切れぬ物無し!我が一閃を食らうが良い!亜亜亜高校流抜刀術。刀を抜いて軽く振っただけなのに魔物の首が落ちちゃうなんて…俺、もしかして何かやっちゃいました?斬!」

 キィン

 クソデカ蜥蜴の首目掛けて刀を一振りすると、その太い首に切れ目が入り、僅かな時間の後でずるりと落ちた頭が地面に転がった。
 これが俺の必殺技。 亜亜亜高校流抜刀術。刀を抜いて軽く振っただけなのに魔物の首が落ちちゃうなんて…俺、もしかして何かやっちゃいました?斬だ。

「高校の時、異世界抜刀術部に入っといて良かったぜ。まさか、あの時の経験が役に立つとはな」

 異世界抜刀術部は高校時代の友人が悪ノリして作った部活で、部長(友人)が部室で煙草を吸っていたのがバレて3日で廃部になった部活である。
 俺は異世界ファンタジー好きで将来の夢が異世界チーレムだった眼鏡君の指導の下3日間もの長い修業期間を経てこの必殺技を会得した。
 その成果がこれである。

「さて、さっさとバラシて迷宮に吸収させるか」

 このクソデカ蜥蜴、なにぶんサイズがデカすぎて細かくバラさないと通路を通らないんだよな。

「入口のサイズとかって変えられたりしないのか?俺のご都合主義!仕事しろ!」

『迷宮の入口は世界中に存在する最大の生物に合わせて広げられます。入口のサイズを変更しますか?』

「はい、ご都合展開来たわ!サイズを変更。ついでに入口をクソデカ蜥蜴の死体の下。地面に移動しよう。そうすれば落とし穴みたいになって勝手に落ちてくだろう」

 迷宮の入口は目視出来る範囲だったら、どこにでも移動出来るからな。
 俺ごと落ち掛けたけれども、無事にクソデカ蜥蜴だけが迷宮に落ちていった。
 デカい奴らに入って来られると面倒臭そうだから入口の大きさを元に戻して、ついでに場所も戻しておこう。

「ぐえっ!」

「あ…」

 そう言えば入口には駄犬を配置してたんだった。
 いつの間にか元の獣人形態に戻ってたんだな。
 変身前の状態でクソデカ蜥蜴のフライングボディプレスをマトモに食らったか。

 駄犬よ。安らかに眠れ。
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