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6.人間が最低限の生活を送るのに必要な物を4つ教えよう。それは金だ。と一つしか教えてくれなかった近所のおじさんは今も元気にしているだろうか?

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「ディーフェンス!ディーフェンス!ディーフェンス!」

 異世界に転移してから5日になる。
 そんな真面目で堅実な眼鏡のバスケ部員みたいな声を出して、一体何をしているのかって?

「何もやっていない!俺は何もやっていないんだ!」

 マジで何もやってないんだぜ?驚いただろう?

 この5日間、俺は迷宮から一歩も出ていない訳だが、迷宮生活は順調だ。
 一歩も出ていないというか、一歩も出られないが正確なんだけどな。

「あのクソデカ蜥蜴!また来やがったな!」

 毎日毎日毎日毎日、迷宮に来ては入口にぶちかましを見舞って行くのだ奴は。
 暇なのかな!?自宅警備員ならぬ縄張警備蜥蜴なのかな!?

「ま、毎日煽り要因が来てくれるのは精神的に助かるし、別に外に出なくたってやっていけてるから良いんだけどさ。強がりで言ってるんじゃないんだからね!」

 いや、実際強がりじゃなく普通にどうにかなってるんだよ。

 まず俺は初日にデイリーミッションでゲットしたDPを使ってスライムを復活させまくってレベルを上げた。
 因みにデイリーミッションの内容はこんな感じな。

 魔物を配置しよう:100DP
 宝箱を設置しよう:100DP
 罠を設置しよう:100DP
 装飾を設置しよう:100DP
 デイリーミッションを全て達成しよう:120DP

「手抜きかな!?全部100DPなのは手抜きかな!?全達成報酬分を微妙に変えてちゃんと考えてます感出すのも手抜きを誤魔化してるみたいで印象良くないけれども!」

 なんてツッコミを入れたのを覚えている。
 
 兎にも角にも達成報酬のDPを全て受け取って、スライムを復活させては倒し復活させては倒しを繰り返してレベルが5まで上がった。
 スライムは配置に100DPを消費するので、復活に消費するDPは30。
 520DPで17回もスライムを復活させられる計算である。
 俺は剣を振り下ろし続けた。正に鬼気迫る勢いで、正月番組で時々見かける餅つきおじさんと同じく鬼気迫る勢いで剣を振り下ろし続けた。
 あの時の俺が翌々日に筋肉痛で命を落とすのは火を見るよりも明らかだった。

 翌々日は腕が上がらなかった…。

 レベルを5まで上げた俺は、水瓶岩から溢れる水で水分補給をして。
 煮沸消毒しなくてお腹下さないかなとかプレッシャーを感じながら水分補給をして。
 あれ?でも冷静に考えたら煮沸消毒が必要なのって動物の糞とか細菌が原因であって、この水に煮沸必須な要素無くね?そのまま飲んで良い水なんじゃね?と水分補給をして。
 はたと気付いたんだ。異世界に来てから何も食べていない事に。

「腹が減ったからスモールラビットを狩ってみようのコーナー!」

 スモールラビットは迷宮創造のレベルが5に上がった時に追加されたFランクの常設魔物で、配置に必要なDPは300だった。
 デイリーミッションのDPは既に使い切ってしまっていたから無い。
 しかし外部生物扱いの俺は迷宮にいると滞在報酬分のDPが入手出来て、これが3分に1ずつ獲得出来る。

「ゲームじゃん!」

 それは置いておいて。
 滞在報酬で稼げるのは24時間で480DP。
 デイリーミッションの報酬と合わせると1日に獲得出来るDPは1000DPだった。

 …。

「手抜きなんて言ってすいませんでした!俺の脳味噌が至らなかっただけでした!よく考えられてました!」

 誰に言っているのかは自分でも理解不能だが、誰かに対して全力で謝罪したのを覚えている。
 んな細かい事はいいとしてだ。

 めっちゃ待った。
 残ってたDPが20とかそんなもんだったから、只々待った。
 腹が減ってたけどめっちゃ待った。
 めっちゃ待って、漸く300DP貯まった所でスモールラビットを配置。

 ボッコボコのボコにした。
 だって俺が視線で指定するんだから、出現する場所もタイミングもわかってるんだもん。
 スライムより少しぐらい強くても何もさせなければ怖くない。

 腹が減ってたんだもん。
 生まれて初めてスライム以外の生き物を殺すのか…なんて感傷に浸るよりも空腹を満たす方が先なんだわ!
 食べるの大事!生きるの大事!命の恵み、ありがとう!

 スモールラビットは魔石とスモールラビットの胸肉をドロップしてくれた。
 待望の食料に俺は思わず涙を流…す事無く、さっさと剣に刺して火吹き壁で焼いた。
 あの罠、設置してある場所から1メートル四方の床を踏んでると延々火を吹いててくれるんだよな。
 足を放すと復活待機時間が5分あるんだけど、床を踏見続けてれば延々と火を吹いてくれる。

「一生息が続くダ〇シムじゃん!」

 ヨ〇フレイムに似た火の上がり方を見ても、あの例えは我ながら秀逸だったと言わざるを得ない。

 途中で何度も足が攣りながら、じっくりと焼き上げたスモールラビットの剣刺し肉は、肉の味がした…。

 翌日から、俺は生活環境を整える為にDPを使う事にした。
 デイリーミッションは新規での配置・設置だけではなく、再配置・再設置でも達成が可能だった。
 それで手に入れたDPで、まずは食料を確保する為にスモールラビットを追加で2体配置。
 定時復活の時間を昼12時に設定して、復活した魔物は一旦回収。
 食事の時間に再配置して肉をゲットするド卑怯黄金ムーブを確立した。
 量が足りないと思えばDPを90消費して復活させ、肉を追加した。

 しかしここで問題が発生する。

「毎日肉しか口にしなければ、体臭が原始人になってしまう…」

 原始人がどんな体臭だったかはわからないが。
 原始人も野菜は食べていたかもしれないが。

 ともかく俺は乙女の危機(おっさん)を感じて、野菜の確保を考えていく事になった。
 迷宮の外で雑草を採取すれば簡単に解決出来る問題なのだが、残念ながら外にはクソデカ蜥蜴がいる。
 どうにかして迷宮内で野菜をゲットする手段はないのか!

 テーテテケテテー♪

『おめでとうございます。迷宮レベルが9に上がりました。新しい装飾が追加されました』

「これは…ご都合の鐘の音か!」

 別に鐘なんてどこにも鳴っていなかったんだが、俺は急いで追加された装飾を確認して、発見してしまったんだ。

 低級薬草(群生)の文字を。
 クッソ不味い草なのに890DPもした…。

「薬草に掛けたんだろうが、893DPにしなかったのはコンプライアンスを気にしたのかな!?」

 もしくは8930とか8910とか89100とかな。
 ありそー!そのうち中級薬草とか上級薬草とかでやりそー!

 こうして俺は人間が生きる為に必須となる火・水・肉・草の4種の神器を手に入れた。
 こんな感じで、異世界でも最低限の人間らしい生活をして過ごしているのである。
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