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2.どうせ追い掛けられるなら海辺で綺麗な女の子に追い掛けられたいと思うのは、おっさんだけじゃないはず
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「周囲に敵影無し!食べられそうな物も無し!水場も無し!割と詰んでませんか!?この状況!」
転移した場所から周囲1㎞ぐらいを探索してみたが、ご立派な木と雑草みたいな草以外には何も無かった。
これはワンチャンス虫みてぇに樹液チューチューコースか!?
なんて、やってやれない事は無いって考えてる俺は、案外逞しいのかもしれない。
そんな事を考えていると、すぐに状況に変化が訪れた。
ズシーン ズシーン
「ん?何の音だ?」
巨大な何かが地面を踏むような重たいサウンド。
その圧倒的に恐怖を煽るサウンドにバキバキと木を薙ぎ倒すリズムが混ざり合い、程好いスパイスを加えている。
好くはないけど。全然好くはないんだけれども。
「まさか狙いは俺じゃないよな?いやいや、まさかよ。俺なんか大して食いでも無いし、食っても旨くないぜ」
現実逃避みたいなもんで、そう呟いてから息を殺す。
バレなきゃやり過ごせるんだから、バレなきゃ良いんだ。
足音がどんどんこっちに向かって来てる気はするけれども。
ちょっとした地震みたいに地面が揺れてるけれども。
目に見える範囲の木が薙ぎ倒されて、震源地とガッツリ目が合った気はするけれども。
めっちゃ目は合ってしまっているけれども。
這っているのに見上げるでかさの蜥蜴と完全に目は合ってしまっているけれども。
砂漠の砂の色した超巨大コモドドラゴンなんだけれども。
「ガッツリ俺狙いじゃねぇか!逃げろー!」
そいつに背を向けて全力で走る。
四十のおっさんだって、全力で走れば100mを18秒フラットで走れるんだぜ。
「そんな脚力で逃げ切れる訳がねぇぇ!」
最近まで引き籠りであり、アルバイトという名の社会復帰を果たしたばかりの運動不足なおっさんに全力疾走は厳しい。
クソデカ蜥蜴も木を薙ぎ倒しながらだから、ほんのり進行を阻害されているんだが、俺より速いのは明白である。
これは最早詰みの状態。しかし俺は諦めない。
「異世界来て3秒で死んで堪るかぁ!出でよチートスキル!頼む出てくれ!ステータスオープン!本当に出たぁぁぁああ!Lv1、HP、MP、そんなのは後回しだ!それよりもスキルは…」
スキル:迷宮創造
スキル:迷宮創造…
スキル:迷宮創造……
「確実且つ明確に戦闘スキルじゃねぇぇ!けど何か点滅してるから押すしかねぇぇ!覚醒しろ!俺のスキル!」
目の前に出現したゲームみたいなステータス画面。
そのスキル欄にある迷宮創造の文字をタップすると、脳内に直接響くように女性の声が聞こえた。
『スキル:迷宮創造を開放しますか?』
「するする!開放する!」
『スキル:迷宮創造を開放しました。続いて迷宮の入口を設置します。設置位置を設定して下さい』
「そこ!すぐ目の前で!」
『名無しの創造者の視線から設置位置を確認しました。続いて、迷宮に入場しましょう』
「クソデカ蜥蜴に食われなければな!?」
そこまで音声を聞くと、目の前に突如洞窟が出現した。
一縷の望みは此処しかないので、はち切れそうな足に力を入れて!既に腱とか切れちゃってるんじゃね?アキレス的なやつとか切れちゃってるんじゃね?って足に力を入れて!どうにか洞窟へとダイブした。
昔懐かしい〇☓クイズのやつみたいな感じだ。間違えると泥のプールに落ちるあれだ。
「ぐへぇ!」
あまりにも自分の肉体的スペックを超える頑張りを見せたのだろう。
俺は車に轢かれたヒキガエルの如く、地面に全身を打ち付けた。
もしくは暴れて喋れるプリントTシャツことど根〇ガエルのピ〇ン吉か。
あれはアマガエルだけれども。
振り返れば奴がいる。
しかし俺を狙って追い掛けていたクソデカ蜥蜴は、迷宮の入口に頭すら入れてない。
「はは…ははは!勝ったぞ!ここまで来れるもんなら来てみやがれ!」
俺の言葉を理解してはいないのだろうが煽れるだけ煽ってみると、蜥蜴は怒り狂って迷宮の入口に何度も頭突きを見舞った。
しかし迷宮は壊れるどころか揺れすらも感じない。
「はっはっはっはっは!馬鹿めぇ!迷宮ってのは内側から攻略するもんなんだよ!異世界ファンタジー小説読んでないのか雑魚がぁ!外から破壊出来るなら迷宮とは言わねぇんだよぉ!」
あ、クソデカ蜥蜴めっちゃ怒った。
相撲言えば横綱級のぶちかましを何発も見舞っているんだが、それでも迷宮は壊れない。
これはもう煽れるだけ煽って、さっきの恨みを晴らしてやろう。
「ギャァオォォォス!」
矮小なる者に煽られてるのが余程悔しかったのかクソデカボイスで喚いているが、俺からの答えはこうだ。
「ギャオス?苗字は内藤さんかな?」
「ギャァオォォォス!」
絶対通じてないけどめっちゃ煽れたぜ!
お前は最早煽られるだけのただのクソデカ蜥蜴。
狩る者と狩られる者で言うならば、お前は煽られる者だ!
狩れも狩られもしないからなぁ!
『ようこそ名無しの創造者さん。まずは名前を設定して下さい』
空気を読まずに音声が流れたけれども、今やるべき事はそれじゃない。
ステータス画面もチュートリアルの表示に切り替わったけれど、今やるべきはそれじゃない。
俺はとにかくクソデカ蜥蜴を煽り倒したいのだ。
「いや、今は蜥蜴を煽るので忙しいから後でね」
『ようこそ名無しの創造者さん。まずは名前を設定して下さい』
「いや、だから」
『ようこそ名無しの創造者さん。まずは名前を設定して下さい』
「あ、これ設定しないと一生止まらないやつだわ」
多分迷宮創造のシステム的な何かによって、俺の煽りタイムは一旦中断されたのであった。
転移した場所から周囲1㎞ぐらいを探索してみたが、ご立派な木と雑草みたいな草以外には何も無かった。
これはワンチャンス虫みてぇに樹液チューチューコースか!?
なんて、やってやれない事は無いって考えてる俺は、案外逞しいのかもしれない。
そんな事を考えていると、すぐに状況に変化が訪れた。
ズシーン ズシーン
「ん?何の音だ?」
巨大な何かが地面を踏むような重たいサウンド。
その圧倒的に恐怖を煽るサウンドにバキバキと木を薙ぎ倒すリズムが混ざり合い、程好いスパイスを加えている。
好くはないけど。全然好くはないんだけれども。
「まさか狙いは俺じゃないよな?いやいや、まさかよ。俺なんか大して食いでも無いし、食っても旨くないぜ」
現実逃避みたいなもんで、そう呟いてから息を殺す。
バレなきゃやり過ごせるんだから、バレなきゃ良いんだ。
足音がどんどんこっちに向かって来てる気はするけれども。
ちょっとした地震みたいに地面が揺れてるけれども。
目に見える範囲の木が薙ぎ倒されて、震源地とガッツリ目が合った気はするけれども。
めっちゃ目は合ってしまっているけれども。
這っているのに見上げるでかさの蜥蜴と完全に目は合ってしまっているけれども。
砂漠の砂の色した超巨大コモドドラゴンなんだけれども。
「ガッツリ俺狙いじゃねぇか!逃げろー!」
そいつに背を向けて全力で走る。
四十のおっさんだって、全力で走れば100mを18秒フラットで走れるんだぜ。
「そんな脚力で逃げ切れる訳がねぇぇ!」
最近まで引き籠りであり、アルバイトという名の社会復帰を果たしたばかりの運動不足なおっさんに全力疾走は厳しい。
クソデカ蜥蜴も木を薙ぎ倒しながらだから、ほんのり進行を阻害されているんだが、俺より速いのは明白である。
これは最早詰みの状態。しかし俺は諦めない。
「異世界来て3秒で死んで堪るかぁ!出でよチートスキル!頼む出てくれ!ステータスオープン!本当に出たぁぁぁああ!Lv1、HP、MP、そんなのは後回しだ!それよりもスキルは…」
スキル:迷宮創造
スキル:迷宮創造…
スキル:迷宮創造……
「確実且つ明確に戦闘スキルじゃねぇぇ!けど何か点滅してるから押すしかねぇぇ!覚醒しろ!俺のスキル!」
目の前に出現したゲームみたいなステータス画面。
そのスキル欄にある迷宮創造の文字をタップすると、脳内に直接響くように女性の声が聞こえた。
『スキル:迷宮創造を開放しますか?』
「するする!開放する!」
『スキル:迷宮創造を開放しました。続いて迷宮の入口を設置します。設置位置を設定して下さい』
「そこ!すぐ目の前で!」
『名無しの創造者の視線から設置位置を確認しました。続いて、迷宮に入場しましょう』
「クソデカ蜥蜴に食われなければな!?」
そこまで音声を聞くと、目の前に突如洞窟が出現した。
一縷の望みは此処しかないので、はち切れそうな足に力を入れて!既に腱とか切れちゃってるんじゃね?アキレス的なやつとか切れちゃってるんじゃね?って足に力を入れて!どうにか洞窟へとダイブした。
昔懐かしい〇☓クイズのやつみたいな感じだ。間違えると泥のプールに落ちるあれだ。
「ぐへぇ!」
あまりにも自分の肉体的スペックを超える頑張りを見せたのだろう。
俺は車に轢かれたヒキガエルの如く、地面に全身を打ち付けた。
もしくは暴れて喋れるプリントTシャツことど根〇ガエルのピ〇ン吉か。
あれはアマガエルだけれども。
振り返れば奴がいる。
しかし俺を狙って追い掛けていたクソデカ蜥蜴は、迷宮の入口に頭すら入れてない。
「はは…ははは!勝ったぞ!ここまで来れるもんなら来てみやがれ!」
俺の言葉を理解してはいないのだろうが煽れるだけ煽ってみると、蜥蜴は怒り狂って迷宮の入口に何度も頭突きを見舞った。
しかし迷宮は壊れるどころか揺れすらも感じない。
「はっはっはっはっは!馬鹿めぇ!迷宮ってのは内側から攻略するもんなんだよ!異世界ファンタジー小説読んでないのか雑魚がぁ!外から破壊出来るなら迷宮とは言わねぇんだよぉ!」
あ、クソデカ蜥蜴めっちゃ怒った。
相撲言えば横綱級のぶちかましを何発も見舞っているんだが、それでも迷宮は壊れない。
これはもう煽れるだけ煽って、さっきの恨みを晴らしてやろう。
「ギャァオォォォス!」
矮小なる者に煽られてるのが余程悔しかったのかクソデカボイスで喚いているが、俺からの答えはこうだ。
「ギャオス?苗字は内藤さんかな?」
「ギャァオォォォス!」
絶対通じてないけどめっちゃ煽れたぜ!
お前は最早煽られるだけのただのクソデカ蜥蜴。
狩る者と狩られる者で言うならば、お前は煽られる者だ!
狩れも狩られもしないからなぁ!
『ようこそ名無しの創造者さん。まずは名前を設定して下さい』
空気を読まずに音声が流れたけれども、今やるべき事はそれじゃない。
ステータス画面もチュートリアルの表示に切り替わったけれど、今やるべきはそれじゃない。
俺はとにかくクソデカ蜥蜴を煽り倒したいのだ。
「いや、今は蜥蜴を煽るので忙しいから後でね」
『ようこそ名無しの創造者さん。まずは名前を設定して下さい』
「いや、だから」
『ようこそ名無しの創造者さん。まずは名前を設定して下さい』
「あ、これ設定しないと一生止まらないやつだわ」
多分迷宮創造のシステム的な何かによって、俺の煽りタイムは一旦中断されたのであった。
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