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亀頭伊織という男②
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「参考になるかはわからないけど話をすると、日本オナニー最前線はいおちんが言い出しっぺでバンドを組んだのね。だから最初からいおちんにモチベーションがあったんだよ。
何がいおちんを駆り立てたのかは不明なんだけど。ただ、その気にさせれば誘いには乗ると思う。あれで音楽は好きだからね。女の子の方が好きかもしれないけれど」
客観的に見て3対7で女の子の方が優勢だろうか。
「うん、その気にさせればバンドは組めるだろうから、頑張れって思う。
けれど、いおちんと組むのは覚悟が必要だよ?あの男、本当に言うこと聞かないんだから。
ライブを見たことがあるならわかると思うけれど、昔っっっからあんな感じなのよ。
メンバーでも呆れて嫌気がさすくらい。暴走に次ぐ暴走。予定通りに進んだことなんて1度だってないんだから!」
バンドとして活動していた頃を思い出し、呆れと怒りを交互に繰り返すようにしてマオが語る。
1度たりとも予定通り進まなかったというのは事実だ。
日本オナニー最前線のライブは、最初から最後まで予定していたセットリストを熟せたことが1度もない。
MCが伸びて曲を削る。MCが短すぎて曲を増やす。予定とは全く違う曲名を口にする。
そんな異常事態を常に乗り越えることで、VOLCANYOSの3人は現場でアドリブ力が鍛えられたのだ。
今のVOLCANYOSの実力は、伊織が育てたと言っても過言ではないかもしれない。
伊織に対する不満をつらつらと並べるマオの話が一段落ついたところで、稔琉は一つ気になっていたことを質問する。
「バンドが解散した理由はそれですか?伊織の身勝手さについていけなくなったとか?」
普通に考えればそういうことだろう。
演奏中だけ見たら日本オナニー最前線は相当に良いバンドだった。
実力者が揃う楽器隊に伊織という強烈なインパクトを残すヴォーカル。
売れ線かと問われれば、そうではないと答えるだろうが、続けていれば輝かしい未来が待っていたのではないかと期待出来るだけのものを見せていたのだ。
稔琉はそう考えたが、マオの返事は意外なものだった。
「それは違う。それは強く否定させて貰う。オナ前は間違いなく円満解散よ。
いおちんは一緒にいてムカつくことも多いし、言いたい文句も一つや二つじゃないけど。
そもそもあの男、どうして私には全く興味なさそうのよ!…ごめんなさい。今のは忘れて」
顔を赤くして両手を握り、グッと力を込めたマオだったが、すぐに冷静さを取り戻して忘れて欲しいと告げた。
「えっとね。やりたい音楽と向いてる音楽って別だと思うのよ。これはヴォルケの3人共通意見。
私達は今、やりたい音楽と向いてる音楽の中間辺りの音楽をやってるの。だからさ、リョウもダンも凄かったでしょ?」
「確かに凄かったっす」
「うん、ありがとう。私達はオナ前の延長線上で新しい音楽を始めた。
けどね、いおちんは違うんだよ。いおちんはゴリゴリのロックとは違うんだ。
稔琉君はいおちんがオナ前以外で歌ってるのを聴いたことある?」
稔琉は伊織が弾き語りをやっているのも今日知ったぐらいで、一緒にカラオケに行ったこともない。
なので横に首を振って返事の代わりとした。
「だったら路上ライブを見に行ってみなよ。ぶっ飛ぶから。
里菜ちゃんは見たことあるでしょ?ぶっ飛ぶよね?」
マオの言葉に反応して、里菜がブンブンと首を縦に振った。
弾き語りをする伊織の姿など想像は出来ないが、どうやら相当に評価が高いらしいと稔琉は察した。
「あの変な方向に全速前進していくいおちんを操縦出来る人がいたら良いのにね。
私達には無理だって長い付き合いの中で思い知らされたんだよ。だからオナ前は解散したの。
私達はいおちんが好きだし、ファンだからさ。厳しくなれないんだよね。そんなところかな」
そこまで言って立ち上がったマオは、ライブハウスの方向に歩き出した。
そして擦れ違いざま、稔琉の肩に手を置いた。
「期待してるよ。私達には出来なかったけど、いおちんを王様にしてあげて」
そう言われて、稔琉は子供の頃に親が読んでくれた絵本の裸の王様を思い出した。
何がいおちんを駆り立てたのかは不明なんだけど。ただ、その気にさせれば誘いには乗ると思う。あれで音楽は好きだからね。女の子の方が好きかもしれないけれど」
客観的に見て3対7で女の子の方が優勢だろうか。
「うん、その気にさせればバンドは組めるだろうから、頑張れって思う。
けれど、いおちんと組むのは覚悟が必要だよ?あの男、本当に言うこと聞かないんだから。
ライブを見たことがあるならわかると思うけれど、昔っっっからあんな感じなのよ。
メンバーでも呆れて嫌気がさすくらい。暴走に次ぐ暴走。予定通りに進んだことなんて1度だってないんだから!」
バンドとして活動していた頃を思い出し、呆れと怒りを交互に繰り返すようにしてマオが語る。
1度たりとも予定通り進まなかったというのは事実だ。
日本オナニー最前線のライブは、最初から最後まで予定していたセットリストを熟せたことが1度もない。
MCが伸びて曲を削る。MCが短すぎて曲を増やす。予定とは全く違う曲名を口にする。
そんな異常事態を常に乗り越えることで、VOLCANYOSの3人は現場でアドリブ力が鍛えられたのだ。
今のVOLCANYOSの実力は、伊織が育てたと言っても過言ではないかもしれない。
伊織に対する不満をつらつらと並べるマオの話が一段落ついたところで、稔琉は一つ気になっていたことを質問する。
「バンドが解散した理由はそれですか?伊織の身勝手さについていけなくなったとか?」
普通に考えればそういうことだろう。
演奏中だけ見たら日本オナニー最前線は相当に良いバンドだった。
実力者が揃う楽器隊に伊織という強烈なインパクトを残すヴォーカル。
売れ線かと問われれば、そうではないと答えるだろうが、続けていれば輝かしい未来が待っていたのではないかと期待出来るだけのものを見せていたのだ。
稔琉はそう考えたが、マオの返事は意外なものだった。
「それは違う。それは強く否定させて貰う。オナ前は間違いなく円満解散よ。
いおちんは一緒にいてムカつくことも多いし、言いたい文句も一つや二つじゃないけど。
そもそもあの男、どうして私には全く興味なさそうのよ!…ごめんなさい。今のは忘れて」
顔を赤くして両手を握り、グッと力を込めたマオだったが、すぐに冷静さを取り戻して忘れて欲しいと告げた。
「えっとね。やりたい音楽と向いてる音楽って別だと思うのよ。これはヴォルケの3人共通意見。
私達は今、やりたい音楽と向いてる音楽の中間辺りの音楽をやってるの。だからさ、リョウもダンも凄かったでしょ?」
「確かに凄かったっす」
「うん、ありがとう。私達はオナ前の延長線上で新しい音楽を始めた。
けどね、いおちんは違うんだよ。いおちんはゴリゴリのロックとは違うんだ。
稔琉君はいおちんがオナ前以外で歌ってるのを聴いたことある?」
稔琉は伊織が弾き語りをやっているのも今日知ったぐらいで、一緒にカラオケに行ったこともない。
なので横に首を振って返事の代わりとした。
「だったら路上ライブを見に行ってみなよ。ぶっ飛ぶから。
里菜ちゃんは見たことあるでしょ?ぶっ飛ぶよね?」
マオの言葉に反応して、里菜がブンブンと首を縦に振った。
弾き語りをする伊織の姿など想像は出来ないが、どうやら相当に評価が高いらしいと稔琉は察した。
「あの変な方向に全速前進していくいおちんを操縦出来る人がいたら良いのにね。
私達には無理だって長い付き合いの中で思い知らされたんだよ。だからオナ前は解散したの。
私達はいおちんが好きだし、ファンだからさ。厳しくなれないんだよね。そんなところかな」
そこまで言って立ち上がったマオは、ライブハウスの方向に歩き出した。
そして擦れ違いざま、稔琉の肩に手を置いた。
「期待してるよ。私達には出来なかったけど、いおちんを王様にしてあげて」
そう言われて、稔琉は子供の頃に親が読んでくれた絵本の裸の王様を思い出した。
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