92 / 110
ラブホテル in エライマン
獣人の事を知りたいわん
しおりを挟む
「私にも撫でさせて欲しいわん!何でもするわん!」
何故かモカが異様なハイテンションで防弾ガラスとカウンターに涎をダラダラ垂らしながら発情し始めた。
ヒショとスミスと一緒にかまくらでその様子を見ていたアイトは死ぬほど爆笑してモカをかまくらに呼び出した。
ワンポは一足先にかまくらに到着してヒショの膝の上に寝転がって腹を撫でられている。
モルト?名前は曖昧だが蒼剣の誓いの地味担当も一緒である。
そしてアイトはどうしてそんなに発情しているのかとモカに問う。
すると。
「そんなに雄大で勇ましいイヌ科は見た事ないわん。全イヌ科の希望だわん」
外の世界にイヌ科って概念存在したのか。
モカはワンポが如何にイヌ科の希望であるかを熱く語り。
「正にイヌ科の頂点、キング・オブ・イヌ科だわん」
そう言って話を締めくくった。
外の世界にキング・オブ・○○って言葉あるんかい。
アイトはモカの熱い思いを受け取り。
「面白そうだからうちで働くなら撫でる事を許可する!」
交換条件があまりにもストロング・グラビティなのだが。
全然割に合っていないのだが。
「絶対働くわん!何でもするわん!」
え?その程度の条件で良いの?ぐらいに軽く、しかし重厚な熱意を見せたモカは無事?ラブホテルの仲間に加わったのであった。
その男に何でもするとか言っちゃうのは危険だぞ。
「わっはっは!犬獣人の体毛ってマジで犬じゃん!リアルわんちゃんじゃん!」
何でもするとか言っちゃったので自己紹介だけ済ませて早速アイトに犬耳を撫でられているモカ。
ヒショには犬尻尾を撫でられている。
本来獣人は他人に耳や尻尾を触られるのを嫌がる。
これが全身もふもふ系の殆んど獣系獣人であればまた話は違うのだが、人族に近い姿をしている獣人にとって耳や尻尾は家族や大切な者にだけ触るのを許す部位である。
例えば親友やいかがわしい関係の親友や恋人の事だ。
それだけ近しい相手にしか触れる事を許さない部位なのだが。
「凄い毛並みだわん。この艶のある毛で生肉3個食べられるわん」
熱心にワンポをもふるモカには耳や尻尾を触られる程度、全く気にならなかった。
先っちょをヒショに握られている状態で尻尾を振るので、尻尾が大縄跳びみたいになっている。
小人達の運動会でも開催されているのだろうか?
と言うか生肉3個だとサイズ感が伝わらないので別の例えにして欲しかった。
耳と尻尾を触っているアイトとヒショを羨ましそうな目で見ているのはモルトである。
平静を装ってはいるが口の両端から涎を垂らしているので全然装えていない。
かなり気色悪い状態である。
そしてモルトは少しずつ少しずつにじり寄り。
「俺にもー!撫でさせて下さーい!」
自分にも撫でさせて欲しいと成人男性の主張をした。
平時ならば難しいかもしれないが、今のワンポに夢中な状況ならば誰が撫でていようがバレる事はないだろう。
だってあんなにもワンポを撫でるのに夢中なのだから。
全神経を手に集中しているのだから、どんな言葉も耳には通らないし犬耳や尻尾の感覚など無いに等しいに決まっている。
目を見開いて、はぁはぁと息を切らして。
犯罪臭しかしない見た目で黙って成り行きを見守っているスミスから盛大に引かれているのに気付いていながら。
モルトは剥き出しの欲望を晒して大縄跳び的な動きをしているモカの尻尾に手を伸ばし。
「お前はキモいから駄目だわん」
温度が5度下がったと錯覚する程の冷たい声で断られた衝撃でかまくらの外まで体がふっ飛び。
ボフッっとうつ伏せで雪面に沈んだのであった。
ここが真なる雪原であったならば凍死確定演出である。
そんなモルトは放っておいて。
「獣人について詳しく話して貰おうか」
アイトは今、転生してから初めて出会った獣人という種族に対して興味ちんちん、、、興味津々だった。
ハーフエルフのエマは最早日常に溶け込み過ぎているし、ドワーフの血が入っているラブリスはあんまりドワーフ感が無い。
だって髭とか生えてない。
だからこそ純然たる異世界ビックリ人種である犬獣人のモカには是非とも洗いざらい喋って貰って獣人に対する理解を深めたい。
その為ならば多少の犠牲もやむを得ないので。
「モルト君は今後1ヶ月モカの半径10m以内に入る事を禁ずる」
「えぇぇぇぇぇえええ!?」
ガバっと起き上がって大袈裟なリアクション芸を披露したモルト。
アイトは多少の犠牲であっても自分で被るくらいなら他人に被せるタイプのダンジョンマスターである。
ダンジョンマスターとは理不尽の権化なのだ。
「ふむ。つまり獣人はこのサカリーバって国で種族ごとの部族が集落を形成してるのか」
「そうだわん。年に1回各集落の族長が集まってガチバトルしてその年の王が決まるわん。今の王は犬人族の族長で18年連続24回目の王座に座っているわん。犬人族はあまり決まり事を作らないからゆるゆるのガバガバで暮らしやすい国になってるわん。けど最近は族長の力が衰えて来てて今年は誰が王座に就くか読めないわん。もしもオカピ人族の族長が覇権を握ったら肉だけじゃなくて草も食べろって決まりが出来るかもしれないわん」
「オカピ獣人は草なんだが!わっはっは!」
「笑い事じゃないわん。あいつら自分達が草ばっかり食ってるからって他人にまで強要するのは許せないわん。草を食うなんて肉食系獣人には耐えられないわん」
オカピ獣人とかいうパワーワードに爆笑するアイトに対し。
切実な様子で訴えるモカ。
肉食系獣人にとって草を食べるのは弱者の証。
腹を満たせるだけの肉が獲れない者が草を食べて飢えを凌ぐと言って馬鹿にされるのだ。
だから王の命令とは言え草を食べる事を強要されたならサカリーバを出て行く部族も現れるだろう。
そうなればサカリーバは草食系獣人達の国になってしまう。
そんな事は肉食系獣人の一人として許せる筈が無いのだ。
だからモカは考えた。
サカリーバの覇権をオカピ人族に渡さない最善の策を。
「ワンポ様に王としてサカリーバに君臨して頂ければ万事解決だわん」
その切実なる願いに対してアイトの返事は。
「却下」
そもそもワンポはダンジョンモンスターなのでラブホテルから出られないのである。
「それじゃあモカのシフトは昼の3時から夜の11時までな。昼3時以降は客数も落ち着くから、主な仕事は日暮れ頃からの宿泊客の対応と電話対応になる。寝泊りする部屋はワンポの犬小屋の横にログハウス立てとくから。食事はラブホテルの料理メニューを注文するかマシマシオーク亭の肉塊な。酒は1日3本まで。以上の条件で問題がなければ明日から働いて貰うから」
「わかったわん。お世話になるわん」
こうしてモカが受付スタッフとして加わり。
遂に休息宿ラブホテルがオープンしてから続いていたエマの無休12時間労働に終止符が打たれた。
今まで超ブラックラブホテルとして就労時間をガン無視してきた休息宿ラブホテルは新たなるフェーズを迎える。
筈である。
何故かモカが異様なハイテンションで防弾ガラスとカウンターに涎をダラダラ垂らしながら発情し始めた。
ヒショとスミスと一緒にかまくらでその様子を見ていたアイトは死ぬほど爆笑してモカをかまくらに呼び出した。
ワンポは一足先にかまくらに到着してヒショの膝の上に寝転がって腹を撫でられている。
モルト?名前は曖昧だが蒼剣の誓いの地味担当も一緒である。
そしてアイトはどうしてそんなに発情しているのかとモカに問う。
すると。
「そんなに雄大で勇ましいイヌ科は見た事ないわん。全イヌ科の希望だわん」
外の世界にイヌ科って概念存在したのか。
モカはワンポが如何にイヌ科の希望であるかを熱く語り。
「正にイヌ科の頂点、キング・オブ・イヌ科だわん」
そう言って話を締めくくった。
外の世界にキング・オブ・○○って言葉あるんかい。
アイトはモカの熱い思いを受け取り。
「面白そうだからうちで働くなら撫でる事を許可する!」
交換条件があまりにもストロング・グラビティなのだが。
全然割に合っていないのだが。
「絶対働くわん!何でもするわん!」
え?その程度の条件で良いの?ぐらいに軽く、しかし重厚な熱意を見せたモカは無事?ラブホテルの仲間に加わったのであった。
その男に何でもするとか言っちゃうのは危険だぞ。
「わっはっは!犬獣人の体毛ってマジで犬じゃん!リアルわんちゃんじゃん!」
何でもするとか言っちゃったので自己紹介だけ済ませて早速アイトに犬耳を撫でられているモカ。
ヒショには犬尻尾を撫でられている。
本来獣人は他人に耳や尻尾を触られるのを嫌がる。
これが全身もふもふ系の殆んど獣系獣人であればまた話は違うのだが、人族に近い姿をしている獣人にとって耳や尻尾は家族や大切な者にだけ触るのを許す部位である。
例えば親友やいかがわしい関係の親友や恋人の事だ。
それだけ近しい相手にしか触れる事を許さない部位なのだが。
「凄い毛並みだわん。この艶のある毛で生肉3個食べられるわん」
熱心にワンポをもふるモカには耳や尻尾を触られる程度、全く気にならなかった。
先っちょをヒショに握られている状態で尻尾を振るので、尻尾が大縄跳びみたいになっている。
小人達の運動会でも開催されているのだろうか?
と言うか生肉3個だとサイズ感が伝わらないので別の例えにして欲しかった。
耳と尻尾を触っているアイトとヒショを羨ましそうな目で見ているのはモルトである。
平静を装ってはいるが口の両端から涎を垂らしているので全然装えていない。
かなり気色悪い状態である。
そしてモルトは少しずつ少しずつにじり寄り。
「俺にもー!撫でさせて下さーい!」
自分にも撫でさせて欲しいと成人男性の主張をした。
平時ならば難しいかもしれないが、今のワンポに夢中な状況ならば誰が撫でていようがバレる事はないだろう。
だってあんなにもワンポを撫でるのに夢中なのだから。
全神経を手に集中しているのだから、どんな言葉も耳には通らないし犬耳や尻尾の感覚など無いに等しいに決まっている。
目を見開いて、はぁはぁと息を切らして。
犯罪臭しかしない見た目で黙って成り行きを見守っているスミスから盛大に引かれているのに気付いていながら。
モルトは剥き出しの欲望を晒して大縄跳び的な動きをしているモカの尻尾に手を伸ばし。
「お前はキモいから駄目だわん」
温度が5度下がったと錯覚する程の冷たい声で断られた衝撃でかまくらの外まで体がふっ飛び。
ボフッっとうつ伏せで雪面に沈んだのであった。
ここが真なる雪原であったならば凍死確定演出である。
そんなモルトは放っておいて。
「獣人について詳しく話して貰おうか」
アイトは今、転生してから初めて出会った獣人という種族に対して興味ちんちん、、、興味津々だった。
ハーフエルフのエマは最早日常に溶け込み過ぎているし、ドワーフの血が入っているラブリスはあんまりドワーフ感が無い。
だって髭とか生えてない。
だからこそ純然たる異世界ビックリ人種である犬獣人のモカには是非とも洗いざらい喋って貰って獣人に対する理解を深めたい。
その為ならば多少の犠牲もやむを得ないので。
「モルト君は今後1ヶ月モカの半径10m以内に入る事を禁ずる」
「えぇぇぇぇぇえええ!?」
ガバっと起き上がって大袈裟なリアクション芸を披露したモルト。
アイトは多少の犠牲であっても自分で被るくらいなら他人に被せるタイプのダンジョンマスターである。
ダンジョンマスターとは理不尽の権化なのだ。
「ふむ。つまり獣人はこのサカリーバって国で種族ごとの部族が集落を形成してるのか」
「そうだわん。年に1回各集落の族長が集まってガチバトルしてその年の王が決まるわん。今の王は犬人族の族長で18年連続24回目の王座に座っているわん。犬人族はあまり決まり事を作らないからゆるゆるのガバガバで暮らしやすい国になってるわん。けど最近は族長の力が衰えて来てて今年は誰が王座に就くか読めないわん。もしもオカピ人族の族長が覇権を握ったら肉だけじゃなくて草も食べろって決まりが出来るかもしれないわん」
「オカピ獣人は草なんだが!わっはっは!」
「笑い事じゃないわん。あいつら自分達が草ばっかり食ってるからって他人にまで強要するのは許せないわん。草を食うなんて肉食系獣人には耐えられないわん」
オカピ獣人とかいうパワーワードに爆笑するアイトに対し。
切実な様子で訴えるモカ。
肉食系獣人にとって草を食べるのは弱者の証。
腹を満たせるだけの肉が獲れない者が草を食べて飢えを凌ぐと言って馬鹿にされるのだ。
だから王の命令とは言え草を食べる事を強要されたならサカリーバを出て行く部族も現れるだろう。
そうなればサカリーバは草食系獣人達の国になってしまう。
そんな事は肉食系獣人の一人として許せる筈が無いのだ。
だからモカは考えた。
サカリーバの覇権をオカピ人族に渡さない最善の策を。
「ワンポ様に王としてサカリーバに君臨して頂ければ万事解決だわん」
その切実なる願いに対してアイトの返事は。
「却下」
そもそもワンポはダンジョンモンスターなのでラブホテルから出られないのである。
「それじゃあモカのシフトは昼の3時から夜の11時までな。昼3時以降は客数も落ち着くから、主な仕事は日暮れ頃からの宿泊客の対応と電話対応になる。寝泊りする部屋はワンポの犬小屋の横にログハウス立てとくから。食事はラブホテルの料理メニューを注文するかマシマシオーク亭の肉塊な。酒は1日3本まで。以上の条件で問題がなければ明日から働いて貰うから」
「わかったわん。お世話になるわん」
こうしてモカが受付スタッフとして加わり。
遂に休息宿ラブホテルがオープンしてから続いていたエマの無休12時間労働に終止符が打たれた。
今まで超ブラックラブホテルとして就労時間をガン無視してきた休息宿ラブホテルは新たなるフェーズを迎える。
筈である。
0
お気に入りに追加
542
あなたにおすすめの小説

異世界転生ファミリー
くろねこ教授
ファンタジー
辺境のとある家族。その一家には秘密があった?!
辺境の村に住む何の変哲もないマーティン一家。
アリス・マーティンは美人で料理が旨い主婦。
アーサーは元腕利きの冒険者、村の自警団のリーダー格で頼れる男。
長男のナイトはクールで賢い美少年。
ソフィアは産まれて一年の赤ん坊。
何の不思議もない家族と思われたが……
彼等には実は他人に知られる訳にはいかない秘密があったのだ。

異世界召喚でクラスの勇者達よりも強い俺は無能として追放処刑されたので自由に旅をします
Dakurai
ファンタジー
クラスで授業していた不動無限は突如と教室が光に包み込まれ気がつくと異世界に召喚されてしまった。神による儀式でとある神によってのスキルを得たがスキルが強すぎてスキル無しと勘違いされ更にはクラスメイトと王女による思惑で追放処刑に会ってしまうしかし最強スキルと聖獣のカワウソによって難を逃れと思ったらクラスの女子中野蒼花がついてきた。
相棒のカワウソとクラスの中野蒼花そして異世界の仲間と共にこの世界を自由に旅をします。
現在、第三章フェレスト王国エルフ編

神様のミスで女に転生したようです
結城はる
ファンタジー
34歳独身の秋本修弥はごく普通の中小企業に勤めるサラリーマンであった。
いつも通り起床し朝食を食べ、会社へ通勤中だったがマンションの上から人が落下してきて下敷きとなってしまった……。
目が覚めると、目の前には絶世の美女が立っていた。
美女の話を聞くと、どうやら目の前にいる美女は神様であり私は死んでしまったということらしい
死んだことにより私の魂は地球とは別の世界に迷い込んだみたいなので、こっちの世界に転生させてくれるそうだ。
気がついたら、洞窟の中にいて転生されたことを確認する。
ん……、なんか違和感がある。股を触ってみるとあるべきものがない。
え……。
神様、私女になってるんですけどーーーー!!!
小説家になろうでも掲載しています。
URLはこちら→「https://ncode.syosetu.com/n7001ht/」


日本列島、時震により転移す!
黄昏人
ファンタジー
2023年(現在)、日本列島が後に時震と呼ばれる現象により、500年以上の時を超え1492年(過去)の世界に転移した。移転したのは本州、四国、九州とその周辺の島々であり、現在の日本は過去の時代に飛ばされ、過去の日本は現在の世界に飛ばされた。飛ばされた現在の日本はその文明を支え、国民を食わせるためには早急に莫大な資源と食料が必要である。過去の日本は現在の世界を意識できないが、取り残された北海道と沖縄は国富の大部分を失い、戦国日本を抱え途方にくれる。人々は、政府は何を思いどうふるまうのか。


のほほん異世界暮らし
みなと劉
ファンタジー
異世界に転生するなんて、夢の中の話だと思っていた。
それが、目を覚ましたら見知らぬ森の中、しかも手元にはなぜかしっかりとした地図と、ちょっとした冒険に必要な道具が揃っていたのだ。

これダメなクラス召喚だわ!物を掌握するチートスキルで自由気ままな異世界旅
聖斗煉
ファンタジー
クラス全体で異世界に呼び出された高校生の主人公が魔王軍と戦うように懇願される。しかし、主人公にはしょっぱい能力しか与えられなかった。ところがである。実は能力は騙されて弱いものと思い込まされていた。ダンジョンに閉じ込められて死にかけたときに、本当は物を掌握するスキルだったことを知るーー。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる