異世界ダンジョン【ラブホテル】~ダンジョンマスターに転生したので異世界でラブホテル経営してみる。破茶滅茶転生者のちょっとエッチなスローライフ

張形珍宝

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ラブホテル in エライマン

ケモ耳がエライマンにやって来た!②

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「ふぉぉ!マジでいるじゃん!犬獣人じゃん!」

 ルイスからエライマンの冒険者ギルドに獣人が現れたとの情報を得た翌日。
 モルトは早朝から街の門が開くのを待ち。
 門が開いたら即座に街に入って冒険者ギルドへとダッシュし。
 そのまま冒険者ギルドが開くまで入口の前で待ってギルドが開くと同時に中に入った。
 
 年始かな?
 冒険者ギルドで福袋でも売り出されるのかな?
 それとも大人気ゲームの発売日なのかな?

 いや、違う。
 モルトはエライマンを訪れたという獣人の女冒険者とお知り合いになる為に。
 寝坊する恐れがあると完徹して。
 いつもの人×獣の特殊な映像ではなく獣人が登場するアニメや映画で気分を高めて。
 万全の態勢で冒険者ギルドへと乗り込んだのであった。

 獣人は案外煽てられたり持て囃されるのが苦手である。
 だから獣人と接する時には平常心を心掛けて。
 絶対にその時が来るまで下心を見せてはならない。
 その時が来たならば下心以外の気持ちが入り込む隙間は無いが。
 脳を含めた全身が下心に支配されてしまうが。
 特に体の一部分は強く下心に支配されてしまうが。
 その時が来るまでは絶対に下心を見せてはならないのだ。

 そして久々に獣人と会う事が出来る期待感と胸の高鳴りをどうにかCランク冒険者の強靭な精神力で抑え込んで。
 鼻が随分と膨らんでいるし口元がニヨついてはいるものの、どうにか抑え込んで。

 その時を迎えたら「ふぉぉ!マジでいるじゃん!犬獣人じゃん!」である。

 獣人は身体能力が良いのは勿論だが、聴覚も非常に良い。
 なので今の「ふぉぉ!マジでいるじゃん!犬獣人じゃん!」は確実にモカの耳に届いている。
 明らかに渋い顔をしている事からも間違いない。
 それだけでなく、犬獣人は嗅覚も鋭いので何だかそちらの方からツンとした匂いがして臭い。
 どうやらモルトは初手マイナスからのスタートを余儀なくされた模様である。

「何かヤバい奴がいるわん。さっさと依頼を見付けて街から出るわん」

 冒険者が街から街へと移動する時はちょうど良い護衛依頼を受けて依頼を熟しながら移動するのが基本である。
 これは移動の間にも金を稼ぎたい精神の強い冒険者の習性の様なものだ。

 エライマンの冒険者ギルドで依頼を出すのは人族だろうが、商人の護衛なんかを選べば変な目を向けられる事もあまり無い。
 チラ見ぐらいはあるとしても、その程度だ。
 商人は信用が大事なのであからさまに態度に出したりはしない。
 興味があるからといって獣部をもふもふしたりすれば冒険者の、延いては冒険者ギルドの不興を買う。
 故に冒険者ギルドとの関係悪化を避けたい商人の護衛依頼は獣人にとっても安全と言える。
 多くはないがソロで受けられる依頼だと尚良い。

 モカは掲示板に張り出されている依頼に一通り目を通して。

「はぁぁぁ。ちょうど良い依頼が無いわん。常設依頼でも熟しながら隣町まで行くのが得策かもしれないわん」

 大きな溜息を吐いて冒険者ギルドから出ようとする。
 しかし背後からの殺気を感じて一歩前に飛んでから振り返り、腰に佩いた日本のナイフを抜いて胸の前に構えた。
 掲示板に目を通していて油断をしていた自覚はあるものの。
 獣人である自分が気配すら感じずに背後を取られたのだから相手は相当な実力者である。

 そう考えてすぐさま戦闘態勢に入った訳なのだが。
 目の前にいる男はニヘラと気持ちの悪い笑みを浮かべて明らかに高級そうな干し肉を差し出していた。
 モカは男に対して最大レベルの警戒を示し。

 滅茶苦茶警戒をしながら高級干し肉を食んだのであった。


「モルト君がワンポとのお戯れを休んで女引っ掛けに行ったらしいけど上手く行ってるかな?」

「どうでしょうねぇ。あいつ以前にも獣人に言い寄って脱兎の如く逃げられてるんで。あ、その子は兎獣人だったんですけどね」

「わっはっは!スミス君も中々面白い事を言うじゃないか!ヤマオカくーん!窯焼きピッツァ1枚持って来て!」

 昨晩ワンポとのお戯れを休みたいと連絡してきたモルトが、まだラブホテルの入口が開いていない早朝から出掛けたのを見て。
 あからさまに面白が起こりそうな予感を感じ取ったアイトはスミスを呼び出して酒を飲みながら大いに語らっていた。

 因みに場所は何故かかまくらである。
 大雪が吹き荒れていて明らかに寒そうなのだが、温度は余裕の22度だ。
 これだけの雪が降っていて22度はダンジョン以外で実現するのは有り得ないだろう。
 ヒショは熱燗を飲んでいるのだが、これも雪を見ながら飲むなら熱燗だろうとヤマオカに作らせただけであって寒いからではない。
 単なる気分である。

「しかしソープランドには獣人が少ないとはたまげたなあ」

「ランドソープですけどね?ソープランドだと素敵なビデオに時々登場する言葉になっちゃいますから。まさかランドソープを真ん中で分けて左右を入れ替えただけであんなに素敵な言葉になるだなんて俺もたまげましたけど」

 どうやらスミスもたまげていたらしいが、それは置いておいて。
 アイトはラブホテルの営業を開始してからそう言えば獣人って見掛けた事がないなと思ってはいた。
 思ってはいたのだが、まさかランドソープ王国自体が獣人から敬遠されているとまでは考えが至らなかった。

「まさかケモ耳好きが多過ぎて注目を集め過ぎるから寄り付かないだけだったとは」

「物珍しいのが好きなんですよ。だからラブホテルも一瞬で受け入れられましたし。他の国だったらこうはいかないですよ。普通は警戒しますもん」

 スミスの言う事が正しいのだとしたら、アイトがランドソープ王国に生まれたダンジョンに転生したのは運が良かったのだろう。
 しかし、そんな挑発的な言葉をアイトに言ってはいけない。

「わっはっは!だったら次は他国を攻め堕としてやろうか!ラブホテルの沼に!しっかりと調教して堕としてやるぞ!」

 何だかアイトがヤル気に満ち満ちた所で。
 かまくらにはこれだろうと用意した小型のブラウン管テレビモニターに蒼剣の地味担当モルトが映り込んだのであった。


「、、、」

「、、、」

 エライマンの街からラブホテルに戻ったモルト。
 その横にはモルトを滅茶苦茶警戒しながら高級干し肉を食むモカ。
 二人の間に会話は無い。

 何なんだろうかこのシュールな画は。

 モルトはエライマンの冒険者ギルドから幾つもの高級干し肉を使ってモカをラブホテルまで誘き寄せた。
 もふもふ愛に溢れ、獣人も大好物のモルトは知っているのだ。
 獣人は高級肉のジャーキーがあれば釣れると。

 獣人は例に漏れず肉好きだ。
 しかもそれが噛み応えのある干し肉となると好きの度合いが3倍になる。
 モルトの独自調査によるとちょうど3倍になる。
 何処で調査をしたのかはわからない。
 多分国外の大人の店か何かだろう。

 とにもかくにも犬獣人をラブホテルに誘導する事には成功した。
 後はどうにかしてラブホテルの魅力を伝え、エライマンから離れられない様に仕向けたい。
 別に個人的にまぐわりたいとか、そんな下心丸出しな気持ちをモルトは持っていない。
 ただ擦れ違った時に偶然手と尻尾が触れ合ったとか。
 そういうラッキースケベが欲しいだけだ。

 程度の差こそあれ全然下心丸出しだった。

 肉ならマシマシオーク亭か?
 マシマシオーク亭の肉塊ステーキだったら肉好きの獣人にとっても食べ応えは充分だろう。
 焼き方をベリーウェルダンにすれば歯応えも充分にある筈だ。
 しかし肉塊だけで獣人からすれば住み辛い国でお馴染みのランドソープ王国に留まってくれるだろうか。

 考えろ。
 考えろ。
 考えろ。

 ラブホテルまで連れて来たものの決定打を用意していなかったモルトはジャーキーが残り一つになった事に激しく焦っていた。
 どうする、何かないのか!

 モルトの焦りが伝わったのか、これが最後と察してモカががっかりした表情を浮かべたその時。

「うぉふ!」

 エマに撫でて貰う為にフロントにやって来たワンポがカウンターに前足を乗せて客の前に姿を晒した。

 ノールックでワンポの頭を撫でるエマ。
 気持ち良さそうに目を細めるワンポ。
 何故か顔を真っ赤にしてくしゃっと笑ったモカ。

 モカはカウンターの防弾ガラスに頬を押し付けてワンポを見やり。

「私にも撫でさせて欲しいわん!何でもするわん!」

 何故だかモカは仲間になった。
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