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ラブホテル in エライマン
これはどこにでもある平凡な恋の話③
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「ここでテレビモニターをオォォン!男の娘というジャンルを認識させ、メンズサイズのドレスを召喚して二人は兜を合、、、」
ダンジョン最上階層マスタールームから何やらカップルのアシストをしている様子のアイト。
そりゃ百合があるんだからBLだってあるだろう。
外の世界の男を男の娘に仕立て上げようとしているのが非常に良い趣味をしていると言わざるを得ないが。
「ふぅ。無事カップル成立してよかったぜ」
「完璧な仕事ぶりでした。流石はマスターです」
ホッとした様子で額の汗を拭うアイトと何時もの調子でヨイショするヒショ。
アイトは客室を覗きながらテレビモニターを起動させたりレイさんに指示を出したりしただけなので、汗を掻く様な事は一つもしていないのだが。
アシストしていた客室でまぐわいが始まったのでフロントの映像を全画面に戻す。
すると丁度入口から親子ほども歳の離れた二人組が入って来た。
アイトは二人組をじっくりと観察して。
「これは特にアシストの必要はなさそうだな」
すぐさま興味を無くして農園の様子を見に行った。
アイトとヒショはここの所、キャベツとキュウリで作る酒の進捗状況が気になって仕方が無いのだ。
何故すぐに出来そうな葡萄から始めさせないのかは本人達にしかわからない。
実は普通にワインも仕込まれていたりはするのだが。
「部屋は何処にしようか?」
「んと、スティーブさんの好きな所でイイよ」
食事の後、数日振りに再会してラブホテルを訪れたシャロンとスティーブ。
シャロンは柄にもなく緊張している様子で、今日はずっと下を向いている。
それでもスティーブと手を繋いで、手を引かれていたので人にぶつかったりはしないのだが。
手を繋いでいるからかとても心臓が煩い。
スティーブが部屋を決めてボタンを押し。
シャロンは嬉しくもあり、ほんの少しだけ恐くも思いながらラブホテルの客室へと転移した。
「緊張しているだろう。少しお酒を飲もうか」
スティーブが選んだのはラブホテルのランクC客室だ。
部屋全体が照度の低い電球色のムーディーで落ち着いたこの部屋は。
黒の大理石を使ったカウンターにワインレッドのハイスツールが6脚並び。
カウンターの中には棚に入った酒瓶が並べられているバー風の客室である。
様々な酒瓶が並ぶ棚は上下から温かな印象の照明で照らされていて非常にお洒落な雰囲気だ。
シャロンはあまりにも洒落ている自分の知らない世界に面食らうと共に。
手慣れた様子でハイスツールまでエスコートしてカウンターの中に入ったスティーブを頼もしく思った。
「僕が今からシャロンにぴったりのお酒を作ろう」
スティーブは棚から酒瓶の一つを取ってカウンターに置かれた銀のシェイカーのボディに氷を入れ。
酒瓶を傾けて酒を注ぐとストレーナーを被せて前後に振る。
シャロンに見せ付ける様に暫くシェイカーを振ってからストレーナーを外してカクテルグラスに酒を注いで。
シャロンの前にグラスを持っていった。
「どうぞ。僕の作ったシャロンというお酒だよ」
とても渋い声でそう告げたスティーブに。
シャロンは蕩けそうになりながらグラスを傾けた。
自分の知らない世界を知っているスティーブが。
あまりにも大人で格好良い。
「美味しい」
いつも飲んでいるワインなんかとは比べ物にならないくらいに美味しい酒。
夏の市場に並ぶ柑橘の様な爽やかな香りと味わい。
スティーブには自分がこんな風に見えているのかと思ってシャロンは満面の笑みを作った。
元からラブホテルで普通に注文出来るカクテルの一つだとも知らずに。
この部屋はあくまでもバー“風”のお洒落な雰囲気を楽しむ部屋であり。
酒瓶の殆んどはダミーだしシェイカーは適当に作ったなんちゃってだ。
本来のシェイカーにはあるトップと言うパーツが欠けているのがその証拠であり。
どうせ遊んで酒をこぼす奴が現れるだろうと思ってボディとストレーナーのみの形にしたのだ。
これなら被せて振るだけだから馬鹿でも理解出来るだろうし、ちょっと格好付けるだけだったら丁度良いだろうと。
実際ちょっとどころじゃなくシャロンの目にはハートが浮かぶくらい愛おし気にスティーブを見ている。
完全に作った奴の狙い通りである。
因みに氷は無料だが、酒は飲んだ分だけ清算時に別料金を支払う必要があるので注意が必要だ。
話は逸れたがシャロンがシャロン(正式名称スクリュードライバー)を飲み終えると二人は見つめ合い。
じれったくなるくらいに少しずつ顔が近付いて。
互いの唇が重なり合った。
シャロンにとっては生まれて初めてのキス。
子供の頃に悪ノリした父親にされたのと、一度やってみたかったからと言って近所の女の子の唇を無理矢理奪ったのはノーカウントとして。
二人が目を瞑って互いの唇の感触と舌を味わったのであった。
そして長い長いキスが終わり。
「一緒にお風呂に入ろうか」
「うん。全部スティーブに任せるから」
シャロンはスティーブに全てを委ねて。
優しいスティーブと体を重ね合わせ。
身も心もスティーブと一つになった。
シャロンにとっては少しだけ痛くて、でも温かくて嬉しくて。
人生で一番幸せな。
生涯忘れられない一日になったのであった。
それから数週間経ち。
女のお洒落を覚えたシャロンは奇行を止めてめっきり女らしくなり。
あの暴君の変人が美しくなったと近所でも評判になった。
「まさかあんたが真面目に化粧をしてるだなんて。母さん今でも信じられないよ」
「ふふっ。私だって女の子なのよ?少しでも綺麗に見られたいって思うのが普通じゃない」
シャロンは言葉遣いも随分と女らしくなっていた。
白粉を塗って口紅を引く。
過去のシャロンであったならば考えられなかったが、全ては愛しい人の為だ。
そう考えたら少しだって苦じゃないし、寧ろ気持ちが充実した。
幼い頃には暴力ばかり振るっていたシャロンはもう何処にもいない。
ついでにブロック状の大きな黒パンを齧りながら素敵な出会いを求めて毎日市場を何周もしていたシャロンももういない。
シャロンは大好きなあの人の為に新しい自分へと生まれ変わったのだ。
「それじゃあ母さん行ってきます。夕食はいらないから」
いつも着ていた生成り色の貫頭衣ではなく、丈の長い白のワンピースを着たシャロンが笑顔を見せて家から出て行く。
「何だか変わっちまったねぇ。あの子があんな風になるだなんて想像もしていなかったよ」
「それだけ良い男とめぐり合ったって事だろう。その内に紹介されるかもしれないが、暴君だったシャロンを変えてくれた男だ。俺達も感謝しないとな」
「そうだね!親は娘の幸せを祈るだけさね!ん?何故だか誰かを殴りたい気分だから一発殴っても良いかい?」
「駄目」
シャロンの父親はさらっと一発殴られ。
「お待たせ!お化粧するのに時間が掛かっちゃって。ごめんなさい」
「いやいや。僕の為に綺麗になろうとしているシャロンを責めたりなんかしないさ。さあ、頭を上げて。早速ラブホテルに向かうとしよう」
「うん。優しい貴方が大好きよ。スティーブさん」
シャロンとスティーブは手を繋いで馬車乗り場へと歩き出す。
二人の距離は腕がピタリとくっつくぐらいに近い。
今もスティーブは紳士的で大人で優しくて。
シャロンはそんなスティーブに釣り合う女になろうと日々努力をしているのだった。
ラブホテルで互いを熱く求めあった帰り。
すっかり暗くなった夜の街でスティーブの肩にコテンと頭を乗せたシャロンは。
とても優し気な声でスティーブに問い掛ける。
「ねぇ。奥さんとはいつ別れてくれるの?」
「妻とは今離婚に向けて話し合いをしているところさ。近い内にきっと」
「そっか。嬉しいわ。私、待ってるから」
二人の関係は、どこにでもある平凡な不倫関係である。
ダンジョン最上階層マスタールームから何やらカップルのアシストをしている様子のアイト。
そりゃ百合があるんだからBLだってあるだろう。
外の世界の男を男の娘に仕立て上げようとしているのが非常に良い趣味をしていると言わざるを得ないが。
「ふぅ。無事カップル成立してよかったぜ」
「完璧な仕事ぶりでした。流石はマスターです」
ホッとした様子で額の汗を拭うアイトと何時もの調子でヨイショするヒショ。
アイトは客室を覗きながらテレビモニターを起動させたりレイさんに指示を出したりしただけなので、汗を掻く様な事は一つもしていないのだが。
アシストしていた客室でまぐわいが始まったのでフロントの映像を全画面に戻す。
すると丁度入口から親子ほども歳の離れた二人組が入って来た。
アイトは二人組をじっくりと観察して。
「これは特にアシストの必要はなさそうだな」
すぐさま興味を無くして農園の様子を見に行った。
アイトとヒショはここの所、キャベツとキュウリで作る酒の進捗状況が気になって仕方が無いのだ。
何故すぐに出来そうな葡萄から始めさせないのかは本人達にしかわからない。
実は普通にワインも仕込まれていたりはするのだが。
「部屋は何処にしようか?」
「んと、スティーブさんの好きな所でイイよ」
食事の後、数日振りに再会してラブホテルを訪れたシャロンとスティーブ。
シャロンは柄にもなく緊張している様子で、今日はずっと下を向いている。
それでもスティーブと手を繋いで、手を引かれていたので人にぶつかったりはしないのだが。
手を繋いでいるからかとても心臓が煩い。
スティーブが部屋を決めてボタンを押し。
シャロンは嬉しくもあり、ほんの少しだけ恐くも思いながらラブホテルの客室へと転移した。
「緊張しているだろう。少しお酒を飲もうか」
スティーブが選んだのはラブホテルのランクC客室だ。
部屋全体が照度の低い電球色のムーディーで落ち着いたこの部屋は。
黒の大理石を使ったカウンターにワインレッドのハイスツールが6脚並び。
カウンターの中には棚に入った酒瓶が並べられているバー風の客室である。
様々な酒瓶が並ぶ棚は上下から温かな印象の照明で照らされていて非常にお洒落な雰囲気だ。
シャロンはあまりにも洒落ている自分の知らない世界に面食らうと共に。
手慣れた様子でハイスツールまでエスコートしてカウンターの中に入ったスティーブを頼もしく思った。
「僕が今からシャロンにぴったりのお酒を作ろう」
スティーブは棚から酒瓶の一つを取ってカウンターに置かれた銀のシェイカーのボディに氷を入れ。
酒瓶を傾けて酒を注ぐとストレーナーを被せて前後に振る。
シャロンに見せ付ける様に暫くシェイカーを振ってからストレーナーを外してカクテルグラスに酒を注いで。
シャロンの前にグラスを持っていった。
「どうぞ。僕の作ったシャロンというお酒だよ」
とても渋い声でそう告げたスティーブに。
シャロンは蕩けそうになりながらグラスを傾けた。
自分の知らない世界を知っているスティーブが。
あまりにも大人で格好良い。
「美味しい」
いつも飲んでいるワインなんかとは比べ物にならないくらいに美味しい酒。
夏の市場に並ぶ柑橘の様な爽やかな香りと味わい。
スティーブには自分がこんな風に見えているのかと思ってシャロンは満面の笑みを作った。
元からラブホテルで普通に注文出来るカクテルの一つだとも知らずに。
この部屋はあくまでもバー“風”のお洒落な雰囲気を楽しむ部屋であり。
酒瓶の殆んどはダミーだしシェイカーは適当に作ったなんちゃってだ。
本来のシェイカーにはあるトップと言うパーツが欠けているのがその証拠であり。
どうせ遊んで酒をこぼす奴が現れるだろうと思ってボディとストレーナーのみの形にしたのだ。
これなら被せて振るだけだから馬鹿でも理解出来るだろうし、ちょっと格好付けるだけだったら丁度良いだろうと。
実際ちょっとどころじゃなくシャロンの目にはハートが浮かぶくらい愛おし気にスティーブを見ている。
完全に作った奴の狙い通りである。
因みに氷は無料だが、酒は飲んだ分だけ清算時に別料金を支払う必要があるので注意が必要だ。
話は逸れたがシャロンがシャロン(正式名称スクリュードライバー)を飲み終えると二人は見つめ合い。
じれったくなるくらいに少しずつ顔が近付いて。
互いの唇が重なり合った。
シャロンにとっては生まれて初めてのキス。
子供の頃に悪ノリした父親にされたのと、一度やってみたかったからと言って近所の女の子の唇を無理矢理奪ったのはノーカウントとして。
二人が目を瞑って互いの唇の感触と舌を味わったのであった。
そして長い長いキスが終わり。
「一緒にお風呂に入ろうか」
「うん。全部スティーブに任せるから」
シャロンはスティーブに全てを委ねて。
優しいスティーブと体を重ね合わせ。
身も心もスティーブと一つになった。
シャロンにとっては少しだけ痛くて、でも温かくて嬉しくて。
人生で一番幸せな。
生涯忘れられない一日になったのであった。
それから数週間経ち。
女のお洒落を覚えたシャロンは奇行を止めてめっきり女らしくなり。
あの暴君の変人が美しくなったと近所でも評判になった。
「まさかあんたが真面目に化粧をしてるだなんて。母さん今でも信じられないよ」
「ふふっ。私だって女の子なのよ?少しでも綺麗に見られたいって思うのが普通じゃない」
シャロンは言葉遣いも随分と女らしくなっていた。
白粉を塗って口紅を引く。
過去のシャロンであったならば考えられなかったが、全ては愛しい人の為だ。
そう考えたら少しだって苦じゃないし、寧ろ気持ちが充実した。
幼い頃には暴力ばかり振るっていたシャロンはもう何処にもいない。
ついでにブロック状の大きな黒パンを齧りながら素敵な出会いを求めて毎日市場を何周もしていたシャロンももういない。
シャロンは大好きなあの人の為に新しい自分へと生まれ変わったのだ。
「それじゃあ母さん行ってきます。夕食はいらないから」
いつも着ていた生成り色の貫頭衣ではなく、丈の長い白のワンピースを着たシャロンが笑顔を見せて家から出て行く。
「何だか変わっちまったねぇ。あの子があんな風になるだなんて想像もしていなかったよ」
「それだけ良い男とめぐり合ったって事だろう。その内に紹介されるかもしれないが、暴君だったシャロンを変えてくれた男だ。俺達も感謝しないとな」
「そうだね!親は娘の幸せを祈るだけさね!ん?何故だか誰かを殴りたい気分だから一発殴っても良いかい?」
「駄目」
シャロンの父親はさらっと一発殴られ。
「お待たせ!お化粧するのに時間が掛かっちゃって。ごめんなさい」
「いやいや。僕の為に綺麗になろうとしているシャロンを責めたりなんかしないさ。さあ、頭を上げて。早速ラブホテルに向かうとしよう」
「うん。優しい貴方が大好きよ。スティーブさん」
シャロンとスティーブは手を繋いで馬車乗り場へと歩き出す。
二人の距離は腕がピタリとくっつくぐらいに近い。
今もスティーブは紳士的で大人で優しくて。
シャロンはそんなスティーブに釣り合う女になろうと日々努力をしているのだった。
ラブホテルで互いを熱く求めあった帰り。
すっかり暗くなった夜の街でスティーブの肩にコテンと頭を乗せたシャロンは。
とても優し気な声でスティーブに問い掛ける。
「ねぇ。奥さんとはいつ別れてくれるの?」
「妻とは今離婚に向けて話し合いをしているところさ。近い内にきっと」
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