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ラブホテル in エライマン
蒼剣リーダーは男を見せる⑤
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「どうしたの?」
「いや、全て任せろって。アンドレアとアンネを紹介しようと思ったんだけどな。まあ良いか。きっとアイトさんの事だから全てお任せして良いんだろう。取り敢えず移動しよう」
スミスがアンドレアを連れて客室へ転移すると。
そこには自室とは全く違った光景が広がっていた。
「とても神秘的で綺麗な部屋ね」
アンドレアの言う通り。
壁も天井も白磁の様な白塗りで左右には等間隔の柱が並ぶこの客室は。
アイトが教会をイメージして作ったヴァージンロード初夜客室である。
床には赤くて細長いカーペットが敷かれていて。
両端には木目の美しい長椅子が並ぶ。
そしてヴァージンロードを進んだ先に段差があり。
その上には横向きにキングサイズのベッドが置かれている。
ヴァージンロードからのヴァージンロストという悪ノリとしか思えないコンセプトなのだが。
ベッドもシーツが純白なので然程の違和感が無いのが不思議である。
更にベッドの先には神像があり。
背後にある縦長の窓から後光が差す様にして部屋の中を美しく照らしていた。
「あ、ああ。そうだな」
スミスもアンドレアの言葉に共感した。
息を呑む清潔感と美しさでアンドレアに「君の方が綺麗だよ」なんてキラーワードを伝えるのも忘れていた。
ちょっとばかり神像がアイトなのだが。
ヒショがアイトにしろと煩かったのでちょっとばかりアイトなのだが。
ちょっとばかり凛々しい顔をした石膏アイトなのだが。
スミスはアイトを信仰しているのでちょっとばかりアイトな神像は気にならなかった。
信仰しているとは言っても知り合い似の像の前でヴァージンロストするのは如何なものかと思うのだが。
アンドレアは子供もいるのでヴァージンでは無いけれども。
「アンネは寝ちゃってるわね。ベッドで寝かせておいてあげましょうか」
「そうするか」
アンドレアがヴァージンロードを歩き出した所で。
ピンポーン
この神聖な雰囲気の客室には似付かわしくない音が鳴った。
これは部屋に何かが届いた時のチャイムだとスミスは当然知っている。
アンドレアにはアンネをベッドに寝かせてやってくれと言って振り返り。
扉にある引き戸を開けた。
「いや、マジか!」
思わず声を上げてしまったスミス。
ベッドまでの距離はあるのでアンネが起きる事は無いだろうが。
「うっそだろ」
届いた物を中に入れて、今度は小さく呟いた。
ラブホテルにはレイさんと言う名のレイスがいて、客室に料理や飲み物を運んだりするのがレイさんの仕事である事は知っている。
だが基本的にレイさんは客からの注文を運ぶか、そうでなければアイトや他の従業員が注文した物を運んでいる。
つまりレイさんがこれを運んで来たと言う事は誰かがレイさんに頼んで運ばせたという事になる。
今回の場合は十中八九アイトだ。
いや、十アイトと言って良いかもしれない。
だってこれは。
「ペリニョンロゼって。本当に良いのか?」
ペリニョンロゼはラブホテルにある酒で最も高額な金貨3枚もする高級シャンパンである。
アイトからすれば大して気にもせずにダンジョン力を使って生み出せるのだが。
高級品のイメージが強いこの酒はラブホテルを利用する者達にとっての憧れである。
この酒が贈られたという事はガチだ。
アイトはここで決めろと言っている。
そうアイトの心の内を察したスミス。
結婚って言葉は敢えて使って来なかったのに外堀を埋められた!?
スミスは思わず白目を剥いた。
いや、アンドレアの事は好きだよ?
愛しているよ?
アンドレアの事も彼女の娘のアンネの事も守っていきたいと思ってるよ?
だけれど結婚ってもっと慎重に考えて決める事じゃない。
アンドレアは結婚に失敗して傷付いているんだし。
自分が結婚して欲しいって言っても、もう結婚はしたくないって断られる可能性があるじゃない。
それにいきなり妻帯者になるのは中々踏ん切りが付かないじゃない。
アンドレアが言ってたけれど、子供が出来たらね?
子供が出来たのだとしたら責任を取るかって踏ん切りが付くよ?
だけれど今の所は子供が出来てるって話も無いしさ。
いや、アンドレアの事は好きだよ?
そりゃ愛しているさ。
心身共に相性が最高だなってのは再会してからエライマンに来るまでに心底実感したさ。
でも結婚ってなったらちょっと話が違うじゃない。
断られたくないもん!
フラれたくないもん俺は!
急ぎ過ぎてフラれたりしたら俺もう立ち直れないもん!
アンドレアにフラれたらセクシービデオと結婚するもん!
絶対フラれるのは嫌だもん!
スミスは色々言ったが日和っていた。
しかし神にも等しいアイトが言うのだから、ここで決めるのが最高のタイミングなのだろう。
スミスは決心してペリニョンロゼと通常の5倍はある山盛りのフルーツ盛りをアンドレアの元へと運んだ。
そして物凄い繊細な彫刻の入ったサイドテーブルにペリニョンロゼとフルーツ盛りを置いて。
「オーナーのアイトさんから差し入れだ。この酒金貨3枚もするんだよ。中々飲めるものじゃないから味わって飲もう」
「そんなにするの!?後でちゃんとお礼を言わないとね。その果実も美味しそう。アンネは起きるかしら?」
アンドレアは恐縮した様子を見せたが。
肩を叩いてアンネを起こし、アンネが美味しそうにフルーツを食べるのを見たらパッと笑顔が華やいだ。
やはりアンネの事を心から愛しているのだなと感じ。
気の強そうなアンドレアも美しくて素敵だが、幸せそうにアンネの世話をする笑顔のアンドレアも可愛らしくて素敵だと実感したスミス。
漸くスミスは決意して、中々気軽には頼めないペリニョンロゼとフルーツ盛りを楽しんだのであった。
因みにスミスもアンドレアもこんな美味い酒は飲んだ事が無いと感想をお漏らしした。
フルーツが無くなるとアンネはまた眠りに就いた。
食べてすぐ寝ると逆流性食道炎になりますよ!だなんて無粋な事を言う者はいない。
スミスとアンドレアは酒を飲みながら語らい。
いつも飲む水で薄めたワインと違って度数の高い酒にほろ酔いのアンドレア。
頬がほんのりと赤く染まり。
血色が良くなって何だかいつもよりも艶っぽい印象になる。
スミスはアンドレアの瞳を見つめ。
二人が唇を重ね合う。
その寸前で。
ウィィィィィィン
謎の機械音が響いてベッド奥の床から何かがせり上がって来た。
頭が見え。
胴体が見え。
脚が見え。
人型のそれの全貌が明らかになる。
コスプレ用の祭服に身を包んだ機械仕掛けの人型ロボ。
ロボアイト君1号である。
ふざけている。
これは完全にふざけている。
「アナタハカミヲシンジマスカ?」
ちょっとばかり声もアイトだし。
神像アイトに続く神父ロボアイトである。
スミスとアンドレアはロボアイト君1号の登場に呆気に取られて口付けを中断した。
「シンロウ、スミス」
「は、はい」
スミスは名前を呼ばれて返事を返した。
何が何やらわからないが、この下りはちゃんとやっておかないと後でヒショに怒られそうな気がしたのだ。
「アナタハシンプアンドレアヲツマトシ、ヤメルトキモスコヤカナルトキモ、ナニカガシクシクトイタムトキモ、モウコシガゲンカイデヒトツキダッテデキナクナッタトキモ、パートナーガババアニナッテワカイトキトクラベテミルカゲモナクナッタトキモ、オンナノコノヒデリフジンナオシカリヲウケルトキモ、ダンナハカネダケオイテアトハソトニイッテテホシイトカイワレチャッタリナンカスルトキモ、コレヲアイシ、コレヲナグサメ、ソノイノチモエツキルマデココロヲツクスコトヲチカイマスカ?」(貴方は新婦アンドレアを妻とし、病める時も健やかなる時も、ナニかがシクシクと痛む時も、もう腰が限界で一突きだって出来なくなった時も、パートナーがババアになって若い時と比べて見る影も無くなった時も、女の子の日で理不尽なお叱りを受ける時も、旦那は金だけ置いて後は外に行ってて欲しいとか言われちゃったりなんかする時も、これを愛し、これを慰め、その命燃え尽きるまで心を尽くす事を誓いますか?)
「はい、誓います!」
あまりにもアイト風機械音声過ぎて非常に聞き取り辛いのだが。
何とか聞き取ったスミスはアンドレアへの愛を誓った。
「シンプ、アンドレア」
「は、はい?」
「スミスクンハバカダケドイイヤツダカラ、ヨロシクタノムゾ」
「は、はい!」
シンプル過ぎる。
しかし色々と捏ね繰り回していないからこそ気持ちは伝わった。
アイトも自分勝手だし覗きが趣味だし無茶振りするし馬鹿馬鹿しい事ばっかりやっているけれども、根は案外良い奴なのだ。
「ソレデハユビワノコウカンヲ」
ウィィィィィィン
ロボアイト君1号は手を差し出し、差し出した手が開く。
ロボアイト君1号の手にはシンプルなゴールドの指輪が二個握られていた。
大きい方がスミス用で小さい方がアンドレア用だろうと察した二人は一つずつ指輪を手に取り。
「ユビワヲハメルノハヒダリテノクスリユビネ、ツケタジテンデケッコンセイリツダカラ、サア!ハタシテフタリノケッコンハセイリツスルノダロウカ!ツヅキハシーエムノアト!」
特にCMなど用意されてはいないのだが。
スミスもアンドレアもロボアイト君1号の言葉を受けて指輪に目を落とした。
一度男に逃げられているアンドレアは、“結婚”と言われるとまだ尻込みしてしまう。
もしもスミスが自分との結婚を求めてくれたとして。
こんな悪い男に絆されて捨てられた自分で良いのだろうかと。
結婚前から娘が一番だなんて言っている自分で良いのだろうかと。
きっと、もっと素敵な相手を幾らでも選べるだろうにと。
アンドレアは自信が持てない自分が悔しくって。
情けなくって。
指輪が滲んで見えなくなった。
しかし、そんなアンドレアを見てスミスは左手を取り。
「俺と結婚して欲しい。君とアンネをずっと守っていきたいんだ」
アンドレアの薬指に指輪を嵌めた。
「キタァァァァアア!」
何かちょっと煩いロボがいるが。
アンドレアの耳には入らない。
アンドレアは滲んだ瞳で見上げると。
覚悟を決めた愛する男の顔がハッキリと見えた。
「うん、うん!」
アンドレアは大粒の涙を溢しながら。
スミスの薬指に指輪を嵌める。
「ケッコンセイリツ!ゴチソウサマデシタ!」
ロボアイト君1号は謎の音楽を流しながらボッシュートされ。
二人は見つめ合ってから唇を重ねた。
そのままヴァージンロストを迎えたのは、最早言うまでもないだろう。
二人は身も心も一つになれた幸せを噛み締めて。
きっちり8回愛し合った。
二人の間に新しい家族が生まれるのは十月十日後の事である。
「いや、全て任せろって。アンドレアとアンネを紹介しようと思ったんだけどな。まあ良いか。きっとアイトさんの事だから全てお任せして良いんだろう。取り敢えず移動しよう」
スミスがアンドレアを連れて客室へ転移すると。
そこには自室とは全く違った光景が広がっていた。
「とても神秘的で綺麗な部屋ね」
アンドレアの言う通り。
壁も天井も白磁の様な白塗りで左右には等間隔の柱が並ぶこの客室は。
アイトが教会をイメージして作ったヴァージンロード初夜客室である。
床には赤くて細長いカーペットが敷かれていて。
両端には木目の美しい長椅子が並ぶ。
そしてヴァージンロードを進んだ先に段差があり。
その上には横向きにキングサイズのベッドが置かれている。
ヴァージンロードからのヴァージンロストという悪ノリとしか思えないコンセプトなのだが。
ベッドもシーツが純白なので然程の違和感が無いのが不思議である。
更にベッドの先には神像があり。
背後にある縦長の窓から後光が差す様にして部屋の中を美しく照らしていた。
「あ、ああ。そうだな」
スミスもアンドレアの言葉に共感した。
息を呑む清潔感と美しさでアンドレアに「君の方が綺麗だよ」なんてキラーワードを伝えるのも忘れていた。
ちょっとばかり神像がアイトなのだが。
ヒショがアイトにしろと煩かったのでちょっとばかりアイトなのだが。
ちょっとばかり凛々しい顔をした石膏アイトなのだが。
スミスはアイトを信仰しているのでちょっとばかりアイトな神像は気にならなかった。
信仰しているとは言っても知り合い似の像の前でヴァージンロストするのは如何なものかと思うのだが。
アンドレアは子供もいるのでヴァージンでは無いけれども。
「アンネは寝ちゃってるわね。ベッドで寝かせておいてあげましょうか」
「そうするか」
アンドレアがヴァージンロードを歩き出した所で。
ピンポーン
この神聖な雰囲気の客室には似付かわしくない音が鳴った。
これは部屋に何かが届いた時のチャイムだとスミスは当然知っている。
アンドレアにはアンネをベッドに寝かせてやってくれと言って振り返り。
扉にある引き戸を開けた。
「いや、マジか!」
思わず声を上げてしまったスミス。
ベッドまでの距離はあるのでアンネが起きる事は無いだろうが。
「うっそだろ」
届いた物を中に入れて、今度は小さく呟いた。
ラブホテルにはレイさんと言う名のレイスがいて、客室に料理や飲み物を運んだりするのがレイさんの仕事である事は知っている。
だが基本的にレイさんは客からの注文を運ぶか、そうでなければアイトや他の従業員が注文した物を運んでいる。
つまりレイさんがこれを運んで来たと言う事は誰かがレイさんに頼んで運ばせたという事になる。
今回の場合は十中八九アイトだ。
いや、十アイトと言って良いかもしれない。
だってこれは。
「ペリニョンロゼって。本当に良いのか?」
ペリニョンロゼはラブホテルにある酒で最も高額な金貨3枚もする高級シャンパンである。
アイトからすれば大して気にもせずにダンジョン力を使って生み出せるのだが。
高級品のイメージが強いこの酒はラブホテルを利用する者達にとっての憧れである。
この酒が贈られたという事はガチだ。
アイトはここで決めろと言っている。
そうアイトの心の内を察したスミス。
結婚って言葉は敢えて使って来なかったのに外堀を埋められた!?
スミスは思わず白目を剥いた。
いや、アンドレアの事は好きだよ?
愛しているよ?
アンドレアの事も彼女の娘のアンネの事も守っていきたいと思ってるよ?
だけれど結婚ってもっと慎重に考えて決める事じゃない。
アンドレアは結婚に失敗して傷付いているんだし。
自分が結婚して欲しいって言っても、もう結婚はしたくないって断られる可能性があるじゃない。
それにいきなり妻帯者になるのは中々踏ん切りが付かないじゃない。
アンドレアが言ってたけれど、子供が出来たらね?
子供が出来たのだとしたら責任を取るかって踏ん切りが付くよ?
だけれど今の所は子供が出来てるって話も無いしさ。
いや、アンドレアの事は好きだよ?
そりゃ愛しているさ。
心身共に相性が最高だなってのは再会してからエライマンに来るまでに心底実感したさ。
でも結婚ってなったらちょっと話が違うじゃない。
断られたくないもん!
フラれたくないもん俺は!
急ぎ過ぎてフラれたりしたら俺もう立ち直れないもん!
アンドレアにフラれたらセクシービデオと結婚するもん!
絶対フラれるのは嫌だもん!
スミスは色々言ったが日和っていた。
しかし神にも等しいアイトが言うのだから、ここで決めるのが最高のタイミングなのだろう。
スミスは決心してペリニョンロゼと通常の5倍はある山盛りのフルーツ盛りをアンドレアの元へと運んだ。
そして物凄い繊細な彫刻の入ったサイドテーブルにペリニョンロゼとフルーツ盛りを置いて。
「オーナーのアイトさんから差し入れだ。この酒金貨3枚もするんだよ。中々飲めるものじゃないから味わって飲もう」
「そんなにするの!?後でちゃんとお礼を言わないとね。その果実も美味しそう。アンネは起きるかしら?」
アンドレアは恐縮した様子を見せたが。
肩を叩いてアンネを起こし、アンネが美味しそうにフルーツを食べるのを見たらパッと笑顔が華やいだ。
やはりアンネの事を心から愛しているのだなと感じ。
気の強そうなアンドレアも美しくて素敵だが、幸せそうにアンネの世話をする笑顔のアンドレアも可愛らしくて素敵だと実感したスミス。
漸くスミスは決意して、中々気軽には頼めないペリニョンロゼとフルーツ盛りを楽しんだのであった。
因みにスミスもアンドレアもこんな美味い酒は飲んだ事が無いと感想をお漏らしした。
フルーツが無くなるとアンネはまた眠りに就いた。
食べてすぐ寝ると逆流性食道炎になりますよ!だなんて無粋な事を言う者はいない。
スミスとアンドレアは酒を飲みながら語らい。
いつも飲む水で薄めたワインと違って度数の高い酒にほろ酔いのアンドレア。
頬がほんのりと赤く染まり。
血色が良くなって何だかいつもよりも艶っぽい印象になる。
スミスはアンドレアの瞳を見つめ。
二人が唇を重ね合う。
その寸前で。
ウィィィィィィン
謎の機械音が響いてベッド奥の床から何かがせり上がって来た。
頭が見え。
胴体が見え。
脚が見え。
人型のそれの全貌が明らかになる。
コスプレ用の祭服に身を包んだ機械仕掛けの人型ロボ。
ロボアイト君1号である。
ふざけている。
これは完全にふざけている。
「アナタハカミヲシンジマスカ?」
ちょっとばかり声もアイトだし。
神像アイトに続く神父ロボアイトである。
スミスとアンドレアはロボアイト君1号の登場に呆気に取られて口付けを中断した。
「シンロウ、スミス」
「は、はい」
スミスは名前を呼ばれて返事を返した。
何が何やらわからないが、この下りはちゃんとやっておかないと後でヒショに怒られそうな気がしたのだ。
「アナタハシンプアンドレアヲツマトシ、ヤメルトキモスコヤカナルトキモ、ナニカガシクシクトイタムトキモ、モウコシガゲンカイデヒトツキダッテデキナクナッタトキモ、パートナーガババアニナッテワカイトキトクラベテミルカゲモナクナッタトキモ、オンナノコノヒデリフジンナオシカリヲウケルトキモ、ダンナハカネダケオイテアトハソトニイッテテホシイトカイワレチャッタリナンカスルトキモ、コレヲアイシ、コレヲナグサメ、ソノイノチモエツキルマデココロヲツクスコトヲチカイマスカ?」(貴方は新婦アンドレアを妻とし、病める時も健やかなる時も、ナニかがシクシクと痛む時も、もう腰が限界で一突きだって出来なくなった時も、パートナーがババアになって若い時と比べて見る影も無くなった時も、女の子の日で理不尽なお叱りを受ける時も、旦那は金だけ置いて後は外に行ってて欲しいとか言われちゃったりなんかする時も、これを愛し、これを慰め、その命燃え尽きるまで心を尽くす事を誓いますか?)
「はい、誓います!」
あまりにもアイト風機械音声過ぎて非常に聞き取り辛いのだが。
何とか聞き取ったスミスはアンドレアへの愛を誓った。
「シンプ、アンドレア」
「は、はい?」
「スミスクンハバカダケドイイヤツダカラ、ヨロシクタノムゾ」
「は、はい!」
シンプル過ぎる。
しかし色々と捏ね繰り回していないからこそ気持ちは伝わった。
アイトも自分勝手だし覗きが趣味だし無茶振りするし馬鹿馬鹿しい事ばっかりやっているけれども、根は案外良い奴なのだ。
「ソレデハユビワノコウカンヲ」
ウィィィィィィン
ロボアイト君1号は手を差し出し、差し出した手が開く。
ロボアイト君1号の手にはシンプルなゴールドの指輪が二個握られていた。
大きい方がスミス用で小さい方がアンドレア用だろうと察した二人は一つずつ指輪を手に取り。
「ユビワヲハメルノハヒダリテノクスリユビネ、ツケタジテンデケッコンセイリツダカラ、サア!ハタシテフタリノケッコンハセイリツスルノダロウカ!ツヅキハシーエムノアト!」
特にCMなど用意されてはいないのだが。
スミスもアンドレアもロボアイト君1号の言葉を受けて指輪に目を落とした。
一度男に逃げられているアンドレアは、“結婚”と言われるとまだ尻込みしてしまう。
もしもスミスが自分との結婚を求めてくれたとして。
こんな悪い男に絆されて捨てられた自分で良いのだろうかと。
結婚前から娘が一番だなんて言っている自分で良いのだろうかと。
きっと、もっと素敵な相手を幾らでも選べるだろうにと。
アンドレアは自信が持てない自分が悔しくって。
情けなくって。
指輪が滲んで見えなくなった。
しかし、そんなアンドレアを見てスミスは左手を取り。
「俺と結婚して欲しい。君とアンネをずっと守っていきたいんだ」
アンドレアの薬指に指輪を嵌めた。
「キタァァァァアア!」
何かちょっと煩いロボがいるが。
アンドレアの耳には入らない。
アンドレアは滲んだ瞳で見上げると。
覚悟を決めた愛する男の顔がハッキリと見えた。
「うん、うん!」
アンドレアは大粒の涙を溢しながら。
スミスの薬指に指輪を嵌める。
「ケッコンセイリツ!ゴチソウサマデシタ!」
ロボアイト君1号は謎の音楽を流しながらボッシュートされ。
二人は見つめ合ってから唇を重ねた。
そのままヴァージンロストを迎えたのは、最早言うまでもないだろう。
二人は身も心も一つになれた幸せを噛み締めて。
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