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ラブホテル in エライマン
蒼剣リーダーは男を見せる②
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アンドレアがスミスの謝罪を受け入れて。
二人は酒場のテーブル席に着いた。
スミスは休息宿ラブホテルについてエライマンへ行った経緯を説明し。
今は冒険者をしながらラブホテルの用心棒として働いているのだと話した。
冒険者活動は殆んどしていないし、用心棒としても最近一度だけ迷惑客を取り囲んだだけで手を出さずに終わったけれども。
「あの塔の用心棒だなんて出世したのね。良かったじゃない」
アンドレアはそう言って微笑んだ。
金髪碧眼で前髪を掻き上げた長身美人。
アンドレアは一見気が強そうに見えるが、見た目と違って性格は穏やかで優しい。
年齢はスミスの方が上なのだが、同年代か少し年上と話している様な印象を与え。
彼女の前だとスミスはいつもよりも饒舌になってしまう。
見栄を張りたくて少しぐらいの嘘は口から漏れてしまうぐらいに。
「いや、ラブホテルは本当なら俺達なんていなくても問題はないんだよ。だから名ばかりの用心棒さ」
但し、今日は申し訳ない気持ちの方が強いのでスミスも正直な様だが。
「ちょっと待っててくれる?」
アンドレアはそう告げて席を立ち。
酒場の厨房へと向かった。
すると何かを焼く音が聞こえて来て、肉を焼いた良い香りもしてきた。
「お待たせ。早めの昼食の時間だったのよ。貴方もどうぞ」
厨房から戻って来たアンドレアはウルフ肉のステーキが載った皿を二人分席に運んだ。
ステーキと野菜のソテーと黒パンがワンプレートになっていて、ワインの入った木のジョッキも並ぶ。
スミスは有難く頂く事にしてアンドレアとの食事を始めた。
ウルフ肉のステーキはラブホテルで出て来る料理やマシマシオーク亭で食べられる料理と比べたらシンプルで味気無い味わいだったが、この時のスミスにとってはとても美味しく感じられた。
とんでもないやらかしをした自分を責める事もせずに優しく許してくれたアンドレアが作った料理だからだろう。
「旨いよ。アンドレアは良いお嫁さんになるな」
スミスが素直に感想を溢し。
「何言ってるのよ」
アンドレアはスミスの肩を軽く叩いた。
お世辞か冗談として流した風にも感じるが、少しばかり嬉しそうでもある。
二人は丸テーブルに隣り合って座り、会えない間に何があったか。
冗談なんかも交えながら楽し気に笑い合い語り合った。
アンドレアはいつも食べている料理が、何だかいつもよりも美味しいと感じていた。
食事が終わると、そろそろ昼の営業が始まる時間だ。
スミスはまた夜に会おうと告げて店を出ようと考えたのだが。
「着いて来て欲しい所があるの」
アンドレアはスミスの袖を引き。
真剣な表情を向けた。
「ああ、それは構わないが。店の方は大丈夫なのか?」
スミスは心配げに言い。
「店主に聞いてみるから」
そう言って振り返ると、厨房の入口にスキンヘッドの男が立っていた。
どう見ても堅気の人間には見えないが。
彼がアンドレアの働く酒場の店主である。
どう見てもヤーサン男爵に仕えるチンピラにしか見えないが。
「どうせ最近は客も減ったからお前がいなくても問題ない。行ってこい」
ニカッと笑ってアンドレアを快く送り出した店主は。
やっぱり堅気人間には全く見えなかった。
酒場を出て。
スミスはアンドレアの後をついて行く。
二人の間に会話は無い。
何故だかアンドレアは神妙そうな顔をしていて。
先程までの楽し気に話していた時とは醸し出す雰囲気が異なるのだ。
スミスはアイトの影響を受けているので、ちょっとユーモアを挟んでアンドレアを和ませようかとも思ったのだが。
アイトと違って普通に空気は読むので下手にボケるのは止めておいた。
アイトは空気を読めない訳ではなく、読んだ上で無視するのだが。
あの境地にスミスはまだ達していない。
言葉を交わす事なく歩いているので二人の歩みは早い。
アンドレアは焦っているかの様に大股で歩いているし。
スミスもそれに何も言う事なくついて行くからだ。
ヤーサンの街の中心にある大通りから裏通りへと入り。
止まる事無く細い裏路地も抜けていく。
そしてアンドレアはスラム街に程近い薄汚れた通り前で立ち止まった。
アンドレアの視線は一軒の古ぼけた集合住宅の前に立つ老夫婦に向く。
老夫婦の間には二人と手を繋いでいる子供。
2歳か3歳か。
子供のいないスミスには判断が付かない。
アンドレアは振り向いてスミスと向かい合い。
「あの子は私の娘なの。黙っていてごめんなさい。正直に言って、スミスがエライマン領に行ったって噂で聞いて。私は少し安心したのよ。これで私は綺麗なままで貴方の心の中に残れるって。本当の私は貴方にお金目当てで近付いた、心の醜い女なのよ」
アンドレアは指で溢れる涙を拭って。
「ごめんなさい。私は貴方を騙していたの。子供さえ出来ちゃえば責任を取ってくれるかなって。貴方って凄く優しいんだもの。けれども人を騙すのって私には向いてなかったみたい。だってこんなにも貴方を好きになってしまったんだもの。会えない時間がとても寂しくて。何だか心に穴が開いたみたいで」
アンドレアの涙が地面を濡らし。
何度も鼻を啜って嗚咽を漏らし。
それでもアンドレアは言葉を続ける。
「貴方は素敵な人だから。きっと素敵な女性と出会えるわ。今までありがとう。会いに来てくれてありがとう。最後にお別れを言えて良かった。こんな狡い女でごめんなさい。さようなら」
子供が振り向いてアンドレアに手を振った。
老夫婦もにこやかな笑顔を向け。
アンドレアはスミスに背を向けて歩き出した。
これでスミスとはお別れだ。
スミスが自分の事をどう思っていたのかはわからない。
けれど、それが本物の愛だったと自分に言い聞かせる事は出来る。
そうすればスミスとの思い出は、何よりも素敵な思い出になるだろう。
二人は酒場のテーブル席に着いた。
スミスは休息宿ラブホテルについてエライマンへ行った経緯を説明し。
今は冒険者をしながらラブホテルの用心棒として働いているのだと話した。
冒険者活動は殆んどしていないし、用心棒としても最近一度だけ迷惑客を取り囲んだだけで手を出さずに終わったけれども。
「あの塔の用心棒だなんて出世したのね。良かったじゃない」
アンドレアはそう言って微笑んだ。
金髪碧眼で前髪を掻き上げた長身美人。
アンドレアは一見気が強そうに見えるが、見た目と違って性格は穏やかで優しい。
年齢はスミスの方が上なのだが、同年代か少し年上と話している様な印象を与え。
彼女の前だとスミスはいつもよりも饒舌になってしまう。
見栄を張りたくて少しぐらいの嘘は口から漏れてしまうぐらいに。
「いや、ラブホテルは本当なら俺達なんていなくても問題はないんだよ。だから名ばかりの用心棒さ」
但し、今日は申し訳ない気持ちの方が強いのでスミスも正直な様だが。
「ちょっと待っててくれる?」
アンドレアはそう告げて席を立ち。
酒場の厨房へと向かった。
すると何かを焼く音が聞こえて来て、肉を焼いた良い香りもしてきた。
「お待たせ。早めの昼食の時間だったのよ。貴方もどうぞ」
厨房から戻って来たアンドレアはウルフ肉のステーキが載った皿を二人分席に運んだ。
ステーキと野菜のソテーと黒パンがワンプレートになっていて、ワインの入った木のジョッキも並ぶ。
スミスは有難く頂く事にしてアンドレアとの食事を始めた。
ウルフ肉のステーキはラブホテルで出て来る料理やマシマシオーク亭で食べられる料理と比べたらシンプルで味気無い味わいだったが、この時のスミスにとってはとても美味しく感じられた。
とんでもないやらかしをした自分を責める事もせずに優しく許してくれたアンドレアが作った料理だからだろう。
「旨いよ。アンドレアは良いお嫁さんになるな」
スミスが素直に感想を溢し。
「何言ってるのよ」
アンドレアはスミスの肩を軽く叩いた。
お世辞か冗談として流した風にも感じるが、少しばかり嬉しそうでもある。
二人は丸テーブルに隣り合って座り、会えない間に何があったか。
冗談なんかも交えながら楽し気に笑い合い語り合った。
アンドレアはいつも食べている料理が、何だかいつもよりも美味しいと感じていた。
食事が終わると、そろそろ昼の営業が始まる時間だ。
スミスはまた夜に会おうと告げて店を出ようと考えたのだが。
「着いて来て欲しい所があるの」
アンドレアはスミスの袖を引き。
真剣な表情を向けた。
「ああ、それは構わないが。店の方は大丈夫なのか?」
スミスは心配げに言い。
「店主に聞いてみるから」
そう言って振り返ると、厨房の入口にスキンヘッドの男が立っていた。
どう見ても堅気の人間には見えないが。
彼がアンドレアの働く酒場の店主である。
どう見てもヤーサン男爵に仕えるチンピラにしか見えないが。
「どうせ最近は客も減ったからお前がいなくても問題ない。行ってこい」
ニカッと笑ってアンドレアを快く送り出した店主は。
やっぱり堅気人間には全く見えなかった。
酒場を出て。
スミスはアンドレアの後をついて行く。
二人の間に会話は無い。
何故だかアンドレアは神妙そうな顔をしていて。
先程までの楽し気に話していた時とは醸し出す雰囲気が異なるのだ。
スミスはアイトの影響を受けているので、ちょっとユーモアを挟んでアンドレアを和ませようかとも思ったのだが。
アイトと違って普通に空気は読むので下手にボケるのは止めておいた。
アイトは空気を読めない訳ではなく、読んだ上で無視するのだが。
あの境地にスミスはまだ達していない。
言葉を交わす事なく歩いているので二人の歩みは早い。
アンドレアは焦っているかの様に大股で歩いているし。
スミスもそれに何も言う事なくついて行くからだ。
ヤーサンの街の中心にある大通りから裏通りへと入り。
止まる事無く細い裏路地も抜けていく。
そしてアンドレアはスラム街に程近い薄汚れた通り前で立ち止まった。
アンドレアの視線は一軒の古ぼけた集合住宅の前に立つ老夫婦に向く。
老夫婦の間には二人と手を繋いでいる子供。
2歳か3歳か。
子供のいないスミスには判断が付かない。
アンドレアは振り向いてスミスと向かい合い。
「あの子は私の娘なの。黙っていてごめんなさい。正直に言って、スミスがエライマン領に行ったって噂で聞いて。私は少し安心したのよ。これで私は綺麗なままで貴方の心の中に残れるって。本当の私は貴方にお金目当てで近付いた、心の醜い女なのよ」
アンドレアは指で溢れる涙を拭って。
「ごめんなさい。私は貴方を騙していたの。子供さえ出来ちゃえば責任を取ってくれるかなって。貴方って凄く優しいんだもの。けれども人を騙すのって私には向いてなかったみたい。だってこんなにも貴方を好きになってしまったんだもの。会えない時間がとても寂しくて。何だか心に穴が開いたみたいで」
アンドレアの涙が地面を濡らし。
何度も鼻を啜って嗚咽を漏らし。
それでもアンドレアは言葉を続ける。
「貴方は素敵な人だから。きっと素敵な女性と出会えるわ。今までありがとう。会いに来てくれてありがとう。最後にお別れを言えて良かった。こんな狡い女でごめんなさい。さようなら」
子供が振り向いてアンドレアに手を振った。
老夫婦もにこやかな笑顔を向け。
アンドレアはスミスに背を向けて歩き出した。
これでスミスとはお別れだ。
スミスが自分の事をどう思っていたのかはわからない。
けれど、それが本物の愛だったと自分に言い聞かせる事は出来る。
そうすればスミスとの思い出は、何よりも素敵な思い出になるだろう。
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