異世界ダンジョン【ラブホテル】~ダンジョンマスターに転生したので異世界でラブホテル経営してみる。破茶滅茶転生者のちょっとエッチなスローライフ

張形珍宝

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ラブホテル in ヤーサン

閑話 ラブホテル移転後のヤーサンでは

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 ヤーサンの街から程近い森に出来たピンクの塔。
 休息宿ラブホテルが忽然と姿を消し、街は大混乱に陥っていた。
 特にラブホテルで美を磨いていた女性達の動揺は激しく。
 何故ラブホテルが無くなったのか、その噂はすぐさま街中に広がった。

 曰く誰かがダンジョンマスターを倒してダンジョンを消滅させた。
 曰く本来のダンジョンの形である地下へと戻った。
 曰くあれは元々幻想が生み出した儚き夢であった。

 様々な憶測が飛び交う中、冒険者達から齎された情報は驚くべきものだった。

 休息宿ラブホテルはエライマン伯爵領に移転した。

 街の人間からあれほど愛されていたにも関わらず何故移転なんて事に?
 誰もがそんな疑問を口にしたが、その理由を聞いて皆一様に納得した。

 今後ヤーサン男爵家の兵士達による嫌がらせが起きると想定され、宿側客側ともに影響が出る事が考えられるので安全面を考えて移転の決断を下した。

 ヤーサンに住む人間ならば、そんな展開は容易に想像出来る。
 恐らくヤーサン男爵はラブホテルにみかじめ料を払わせようと考えたのだろう。
 ヤーサン領で商売をするならば、殆んど強制的に払わされる謎の税を。
 しかし休息宿ラブホテルの場合、そもそもがダンジョンである事は冒険者以外にも広く知られている。
 態々口にすることは無いが公然の事実だ。

 だってあんなでっかい狼がいるんだもの。
 あんなでっかい狼がダンジョン以外に出現されたら困るもの。

 そんな人の世の埒外にあるダンジョンと言う存在にみかじめ料を払わせようとして。
 払わなければ嫌がらせまで行おうと言うのだから何とも常識外れと言うか、呆れた人間性の持ち主である。

 当然皆の不満は追い出される様な形でエライマン伯爵領へと移転したラブホテルではなく。
 ヤーサン男爵とその下っ端共へと向く事になった。
 そうなる様に強かな商人の妻が仕向けたのもあるのだが。


 ラブホテルが姿を消した日。
 ヤーサン男爵邸ではチンピラABCが兄貴と呼ばれる男に追い掛けられて拳骨を食らっていて。
 そして暫くのお説教の後で。

「親父!」

 ノックもせずに男爵の部屋を全力で開けた。

「ノックぐらい出来んのかと何度言ったら。まあ良い。さっさと用件を話してみろ」

 アルフルーガーは呆れた様子でチンピラAに話を促した。

「へい!例の塔が姿を消しやした!」

「何だと?詳しく話してみろ」

 Aは頭が強い方ではないのでCが代わりに説明をする。
 正直言ってAもBもCも五十歩百歩だがCの方が幾分マシだ。

 アルフルーガーはCの話を聞き終えて。

「逃げたな?探せ!まだ遠くには行ってねぇだろう!見付けたら即座に財産を差し押さえろ!有り金全部毟り取ってやる!抵抗するなら武力で脅せ!そしたら俺があの塔を管理してやる。良い金になるぞ」

 アルフルーガーの指示でチンピラが総動員され。
 チンピラ達はラブホテルがあった周辺を探し回る事になった。
 しかし塔を見つけ出す事は出来ず。

「親父!どうやら例の塔はエライマン領にあるって噂です!」

「チッ!領外まで逃げられちゃあ厳しいな。しかもあそこのジジイは最近現役の時の力を取り戻していると聞く。仕方が無ねぇ。今回は諦めるしかねぇか」

「しかし親父!舐められっぱなしで良いんですかい!」

「うるせぇ黙ってろ!良いか?今はその時じゃねぇってだけだ。時が来たらきっちり落とし前を付けさせてやる」

「流石だぜ親父!」

 手下の手前それらしい事を言ったが、実際にエライマン伯爵領で勝手な事をすれば潰されるのは自分だ。
 表向きは機を窺っている様に見せるものの、アルフルーガーの中でラブホテルは既に過去のものとなったのであった。

 数日後。

「親父!街で活動してた冒険者達がどんどん姿を消してます!」

「ああ?冒険者奴らは自由に街を出入りするんだから一時的なもんだ!それに街の周辺は魔物が少ねぇんだから大した影響は出ねぇだろ!その程度の事で態々報告に来るな!」

「へい!すいやせん!」

 更に数日後。

「親父!街で一番でかいテーラ商店が潰れやした!何でも本拠地を別の領に移すそうです!」

「なにぃ!?あそこはうちから成り上った商会じゃねぇか!恩を仇で返しやがって!絶対に許さねぇ!まあ他にも商会はある。そっちからみかじめ料を多く取れば大した影響はねぇだろう」

「へい!流石は親父です!」

 更に更に数日後。

「親父!冒険者ギルドが潰れやした!何でもギルドマスターが引退して後任が見付からないそうで!」

「何だってぇ!?冒険者ギルドが無いなんて前代未聞じゃねぇか!うちは山奥の辺境じゃねぇんだぞ!」

「あ、それとみかじめ料を上げたら他の商会も続々出てってます」

「何だとぉぉぉおお!?商会が無くなったらお前さん達に甘い物を買って上げる事すら出来ねぇじゃねぇか!」

「いや、俺らは甘い物より酒の方が」

「物の例えだ馬鹿野郎!」

 更に更に更に数日後。

「親父!街の周辺に魔物が増えてきやした!冒険者がいないんで街の外を出歩くのも危険です!」

「はぁぁぁぁぁあああ!?お前らが行ってさっさと数を減らしてこい!」

「いや、俺ら人は殴っても魔物殴った事はねぇんですが」

「うるせぇ!さっさと行って来い!」

 そしてラブホテルが無くなってから凡そ1ヶ月後。

「親父!」

「何だコラァ!もうこれ以上は何も起こらんぞ!今が人生の底だ!後は上がっていくだけだ!そうろうが!」

 激動の一ヶ月に、少々キャラ変してしまったアルフルーガーはチンピラーズを怒鳴りつけた。

「へい!その通りです!」

 こいつらは馬鹿みたいに忠誠心が高いので扱い易くて良い。
 アルフルーガーは少しだけ気分を良くしてチンピラAに部屋を訪ねて来た理由を問う。
 すると。

「へい!実は親父宛ての手紙が届きやしたので、お届けに参りやした!」

 そう言ったAから手紙を受け取り封蝋を確認する。
 するとそこにあった印璽は王家のものであった。
 一体どんな内容だろうか。
 ここのところ思い当たる事があり過ぎて、どれの件なのか思い浮かばない。

 考えていてもわからないので愛用のダガーナイフを使って封筒を開封し。
 手紙を開いて中身を読み。
 アルフルーガーは動きを止めた。

「みかじめ料せしめてた件がバレちゃった、、、」

 ヤーサン男爵家崩落の日は近い。
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