異世界ダンジョン【ラブホテル】~ダンジョンマスターに転生したので異世界でラブホテル経営してみる。破茶滅茶転生者のちょっとエッチなスローライフ

張形珍宝

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ラブホテル in ヤーサン

今後の方針と作戦会議②

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「は、ははは。スタンピードは起こさない方向で。我々で解決策を考えましょう。きっと良い方法が見付かる筈です」

 スタンピードの恐ろしさを想像して冷や汗を流しながらタスケがどうにか話を逸らす。
 スミスとルイスもうんうんと頷いて同意を示した。
 ここは団体芸でどうにか平和裏に解決しなければならない。

 タスケは戦闘能力が皆無なのでヒショやワンポの強さについては理解出来ないが、時折外の世界でも討伐されるオーガの変異種が尋常ではなく強いのは知っている。
 以前紹介された農園では、その変異種が大量にいるのを確認している。
 正確にではないがラブホテルのスタンピードがどれだけ恐ろしいのかは想像出来るのだ。

「良い方法ねぇ」

 アイトは顎に手を置いて考える仕草をする。
 良い方法と言われても直ぐには思い浮かぶものでは、、、あるが。

「あれやっちゃおうか?」

「そうですね。あれが手っ取り早いかと」

 アイトの言葉にヒショが同意する。

「あれとは何ですか?」

 二人の間では通じているみたいだが、三人には理解が出来ないのでタスケが代表して質問をした。
 質問に対してアイトは事も無げに。

「ああ、ダンジョン転移」

 ダンジョン転移なる言葉を口にした。

「そのダンジョン転移とは?」

 アイトは知ってるでしょぐらいの感覚で言うが、タスケにとっては知らない単語である。
 言葉の意味は想像出来るものの、正確な意味を知らなければ良い提案も出来ないので確認はしておきたい。

「なるほど、説明が欲しいのかね!ダンジョン転移って言うのはね!ダンジョンを転移させる事だよ!」

 そのままだった。
 あまりにもそのままだった。
 吃驚するぐらい言葉のままに意味だった。

「問題は何処に転移させるかなんだけどな」

 そう言ってアイトはモニターに世界地図を映した。
 ヤーサンを中心とした地図であり。
 アイトの前世で見られる世界地図を元にして外の世界の国や領地を配置した見た目なのだが。

「こ、、、これは、、、」

 タスケはそれ見て目を剥いた。
 タスケの見る限り、ヤーサン周辺に関しては素晴らしい精度で描かれている事が理解出来た。
 だからこそ。

 海を挟んだ反対側にある、恐らく未踏の地と思われる土地や。
 陸続きでも強大な魔物がいると言われる森の先にある国の名前まで書かれている事が信じられなかったのだ。
 この地図の情報に一体幾らの値が付くのか。
 想像すらも出来ないそれをタスケは。

 全力で見なかった事にした。

 こんなの軍事機密なんてものすら優に超えているのだから、商人風情に扱える代物ではないんだもの。
 スミスとルイスも事の重大さに気付いたのか下を向いて無言だし。

「そ、それでしたら提案なのですが」

 タスケはどうにか声を絞り出して。

「エライマン伯爵領に移られては如何でしょうか?」

 一番丸そうな土地の名前を口にした。

「エライマン?わっはっは!何かすげぇ偉いおじさんがいそう!ウケる!」

 どうやらアイトのツボに入ったらしい。
 一頻り笑ってアイトが満足するまで待ってから、タスケは説明を始める。

「エライマン伯爵家のフォルカー・エライマン様はラブホテルにいらした事があります。フォルカー様からは何かがあれば力になるとアイト様に伝えたと聞いていますが。御存知ではありませんか?赤毛の髪にお髭をたっぷり蓄えた容姿で、、、」

 タスケの説明から一人の人物が思い浮かんだ。
 しかし特に話をした様な記憶は無い。

「あのおじさん何か言ってたっけ?」

「さて、存じ上げません」

 ヒショも知らないと言うので仕方なしに内線でエマと繋ぎ。

「そのお客さんなら手紙を受け取ったからって渡しましたよね?もしかして読んでないんですか?」

 エマにそう指摘されてアイトは当時の様子を思い返し。

「ヒショが読んで内容は聞いてなかった気がする」

「そうでしたか?」

 ヒショは相変わらず首を傾げているが。
 エマが手紙を渡したと言っているなら手元に届いたのは確実だし。
 アイト自身は面倒だから手紙なんて読む筈が無い。
 死ぬほどテキトーな自覚がある自分が手紙なんてものを読む可能性は皆無だ。
 あるとすればヒショに読ませるぐらいだが。

「記憶にございません」

 問い詰められた政治家みたいな事を言い出したので最早真実は藪の中だ。

「読むのが面倒臭かったから手紙を読まずに破棄したぞ!わっはっは!」

 元はと言えば自分が読まなかった事が原因である。
 アイトはヒショに責任はないと判断して自分の過失として報告書を提出した。
 アイトは基本的に身内に甘々なのだ。
 どれぐらい甘いかと言うとかき氷のシロップを直飲みするぐらい甘い。
 要するに滅茶苦茶甘い。

 タスケは理解した。

 この人達は滅茶苦茶いい加減なんだなと。

 貴族の出した手紙を読まない。
 または読んだのに内容を忘れるなど、常識的に考えたら有り得ない事態だが。
 ダンジョンマスターと思われるアイトに常識が通じないのは仕方の無い事だ。

 モンスター相手に貴族の威光は通用するか?
 モンスター相手に王族の権威は通用するか?
 つまりはそう言う事である。

 そもそもダンジョンと言う世界においての王はどう考えてもアイトだ。
 王どころか神に等しい存在と言っても良い。
 決して長い付き合いではないが、それを感じ取って理解しているタスケは。
 世間の常識に当て嵌めて考えるのは無駄だと、心の中にある“アイト達との付き合い方大全”に新たな書き込みを加え。

「承知しました」

 その端的な。
 しかし異様に重みのある言葉に全ての思いを込めた。

「幾つかお伺いしたいのですが、ダンジョン転移と言うものでエライマン伯爵領に転移する事は可能ですか?」

 タスケの質問に。

「イエス」

 アイトは英語で答え。

「はい、と言う意味です」

 ヒショが補足をする。

 その流れに何の意味があるのかはわからない。
 単純に二人の中での決まり事なのかもしれない。
 しかし、アイトがこれを言ったらヒショはこれで続くといったコンビネーションが長年の付き合いで出来上がっているのだ。
 だから面倒でも付き合うしかない。
 止めるとヒショが怒るから。

 タスケは気にせず付き合う事にして一つ頷き。

「では、今すぐにでも転移をする事は可能ですか?」

 “はい”か“いいえ”で答えられる質問を求められていると察したタスケは質問をそれに合わせた。

「イエス」

「はい、と言う意味です」

 それはさっき聞いたので説明は必要ないのだが。

「では、ラブホテルの中にいる人間ごと転移する事は可能ですか?」

 これは重要な質問であるが、恐らく答えは。

「イエス」

「はい、と言う意味です」

 タスケの予想通りであった。
 ラブホテルのフロントに立っているエマと宿泊を利用した時に注文を受ける女性に関しては種族は不明だが人間だろうと考えていた。
 だから最低でも二人以上の人間を置き去りに何処かへ転移するとは考え辛かった。
 人間だけは自力で移動しなければならないのだとしたら準備する時間が必要となる。
 あっさりと転移が出来ると言うのだから、準備無しで連れて行けるのだろうと読んでいたのだ。

「でしたら、提案させて頂きたいのですが」

 他にも聞きたい事はあったが。
 特に無制限で転移が可能なのかと聞いてみたい気持ちはあったが。
 あまり深く追及するのは警戒心を高める可能性があり。
 後々の関係性を考えたら得策ではないと判断して質問を終え、提案に入る。

「もしもエライマン伯爵領にラブホテルを転移させるのでしたら、私を一緒に連れて行って下さい。私はフォルカー様と面識がありますので混乱が起きないように朝一番で話を付けて来ます」

 これはアイトにもラブホテルにとっても魅力的な提案である。
 今回の面倒事の原因はヤーサン自体が特殊であったのは別にしても。
 領主と話し合いの機会があれば避けられた可能性がある。
 いや、異世界でまで暴対法を気にするアイトなのでイベントフラグすら立たずにダンジョン転移が早まっていただけだろうが。 

 それは良いとしてタスケが間に入ってくれれば、すんなりと事が運ぶ可能性は高い。
 なのでアイトはタスケの申し入れを受ける事にした。

 タスケの好感度が69上がった。
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