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ラブホテル in ヤーサン
驚愕する商人が妻の尻に敷かれているのは火を見るよりも明らかである①
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明くる日の事。
「蒼剣の皆さん、こんにちは。お元気ですかな?」
「ああ、タスケさんか。こんにちは。今日は護衛依頼でも出しに来たのかい?」
冒険者ギルドの酒場にて。
ラブホテルに通う資金を如何にして短期依頼で稼ぐかを相談していた蒼剣の誓いに恰幅の良い男が声を掛けた。
タスケと言う名のその男は冒険者ギルドの得意先である商人である。
明らかに良い物を食べてそうなふっくらした体形に人好きするにこやかな笑顔を浮かべるこの中年商人は。
良い人そうに見えても若い頃に商会を立ち上げ中堅商会にまで伸し上げた中々にやり手の商人だ。
そんなタスケは。
まだ駆け出しだった頃の蒼剣の誓いに優先的に護衛依頼を出していた恩人である。
Dランクに上がった辺りからは護衛をする機会も無くなっていたが。
今でもこうして顔を合わせれば気安く話掛けて世間話をする様な間柄である。
「いえ。今日は妻にせっつかれましてね。蒼剣の皆さんは塔に何度も通われているとか?」
ああ、とネイトが頷いた。
これまで休息宿ラブホテルの情報は冒険者ギルド内で回っていたものの。
あまり外で吹聴する様な事はしなかった。
酒好きで話好きで調子乗りの冒険者達は。
酒場で喋らなくても良い他人の秘密や噂話なんかを底の割れた酒樽の様に垂れ流すのがデフォルトなのに、である。
口は禍の元がデフォルトなのに、である。
正直に言って。
ラブホテルの情報が出回って人が押し寄せたら宿が混雑して簡単には入れなくなるかもしれない。
ラブホテルを利用する所を他人に見られるのが恥ずかしいと言う二つの理由に加えて。
お気に入りの女と仲良くなるのにラブホテルを使うと言うアドバンテージを外に漏らしたくないと言う理由も加わったばかりである。
出来れば自分達だけの秘密にしておきたいと考えていた所だったのだが。
冒険者ギルドのギルドマスターであるバルナバスと既に何度かラブホテルを利用しているミキャエラ。
そしてラブホテルでお姫様気分を味わったプニータの口に衝立を立てるのは不可能であった。
タスケの妻はミキャエラと井戸端会議をする仲であり。
最近明らかに美しくなったミキャエラから美しさの理由を聞き出した内の一人である。
「塔の事か。確かに、塔に一番通っているのが俺達4人って事は間違いないかな」
ネイトが代表して肯定るすると。
「そうですか!でしたら幾つか教えて欲しいのですが。その前に」
タスケは詳細の確認をする前に核心部分を質問する事にして。
「あの塔はダンジョンなのですか?」
タスケの目がやや鋭くなった。
妻からの話を聞いた限りでは塔がダンジョンである事は想像出来た。
妻は明らかに行きたそうにしていたのだが。
ダンジョンであるならば軽々しく連れて行くと言う事は出来ない。
ダンジョンにはモンスターがいて罠も仕掛けられている。
それが一般的な認識であり。
従来ダンジョンに入るのは危険に対処が出来る冒険者達である。
時には貴族や騎士などが入る事もあるが。
そう言った場合にも案内役として冒険者を雇うのが基本であり。
一般人が軽々しく立ち入って良い場所では決してないのだ。
だからこそまずは情報を集めに冒険者ギルドへとやって来たのである。
「確かにあそこはダンジョンだ。ダンジョンなんだが。少なくとも俺達も何度も通ってる冒険者も危険を感じた事は無いかな。タスケさんが聞きたいのはそう言う事だろう?」
商人であるタスケがダンジョンかどうかを確認するのは。
要するに自分や妻に危険が及ばないか。
その一点が気になっているのだろうと予想してネイトは言葉を返す。
「ええ、そうなんですよ。ダンジョンと言うのは私の様に守られる側の人間が入る場所では無いですからね。因みに中はどういった感じになっているのでしょうか?参考までに教えて頂きたいのですが」
ネイトの言葉に幾つか頷いて肯定したタスケは。
塔の内部、つまりはダンジョン内部について詳しく説明を求め。
「あそこは言葉だけだと理解するのは難しいと思う。不安なら護衛を雇って休憩してみるのをお勧めするよ。但し同じ部屋に入れるのは二人までで、三人目からは追加料金が掛かる。部屋はランクEからランクSまであってSは滅茶苦茶高いが夢の様な体験が出来たってギルマスが言っていた。ランクが上がる程に高くなるが部屋の広さや特別な設備があったりして、、、」
異様に詳しいネイトがラブホテルの詳細を説明し。
後のメンバーは補足をする形で説明に加わる。
あまりにも内部の人間の様な熱量を感じて若干苦笑しつつも。
タスケは4人の話を参考にして護衛を連れて一度ラブホテルを訪れてみる事に決めた。
「間違いが起こっちゃいけないから護衛は男を雇った方が良い。ラブホテルはな。凄いんだ」
何が凄いのか具体的には提示されなかったのだが。
それでも凄い事だけは伝わって来た。
蒼剣の誓いは熱すぎて洗脳の疑いすら感じたので別で腕の立つ冒険者を雇い。
タスケはラブホテルへと向かうのであった。
時間は少々遡り、今朝のマスタールームにて。
「はい、ちゅうもーく」
少々くぐもらせた声で髪を掻き上げながら従業員に注目を促したアイト。
前世の記憶を反映させたテレビ番組などはヒショもエマも見てはいるのだが。
そう言えばこれの元ネタは誰も見た事が無かったなと気付いて何事もなかったかのように真顔になった。
「今日からダンジョン産フルーツの提供を開始する。あの農園の倉庫でダダ余りになってるやつな。えっと、ヒショさん顔がちょっと恐いけど酒にする分は常にキープしておくからね?」
アイトの発言に珍しくヒショが不服そうな顔をしたので即座に説明を加えて宥める。
ヒショは酒が関わるとちょっぴり人が変わるのだ。
人では無くてダンジョンモンスターなのだが。
「フルーツ盛りを一皿銀貨3枚。フルーツの種類は在庫過多なやつから5種類ぐらい選んで季節のフルーツ5種盛りって事にしよう。昨日の花が好きなでっかい女の子とか絶対フルーツも好きだからな。俺は既に勝利を確信している!」
拳を振り上げ漲る自信を覗かせながら断言したアイトに。
従業員からの拍手が鳴り響く。
農園を管理しているのは色とりどりのオーガ達、通称オーガズなので。
彼らとしても丹精込めて育てた作物がダンジョンに吸収されずに客に提供されるのは楽しみなのだ。
エマと腹を見せて寝ているワンポは拍手をしていないが。
「流石にちょっと高くないですか?カットフルーツ一皿ですよね?」
拍手が終わった後でエマからの指摘が入る。
外の世界の物価について多少なりとも知っているエマからすれば。
定食で6食分くらいは食べられる銀貨3枚と言う値段はあまりにも高額に思えた。
言ってしまえばぼったくりだ。
「ふっ。甘いぞエマ。オーガズの努力と品種改良によりダンジョン産のフルーツがどれだけ甘くなったか。お前は慣れてしまったから気付いていないんだ。甘い!甘いぞフルーツ!フルーツ甘過ぎる!甘過ぎるぞフルーツ!」
後半エマへの指摘ではなくフルーツの甘さを訴えるCMの様になってしまい。
オーガズからの万雷の拍手に手を上げて応えるアイト。
相変わらずエマは首を傾げているが。
多数決による圧倒的な勝利でフルーツ盛りの提供が可決されたのであった。
多数決など関係無くアイトの鶴の一声で全てが決定する事実には気付いてはならないとだけは伝えておこう。
「それでは塔までと往復と客室内での護衛をお願いします」
「任せて下さい。とは言っても何も起きないとは思いますが。部屋の中では俺の事を置物だとでも思って楽しんで下さい」
タスケが護衛に選んだのはDランク冒険者のジュード。
大柄の大剣使いでソロでDランクまで上がった中堅冒険者だ。
人当たりが良く、言葉遣いも丁寧で。
その場にいた中では蒼剣の誓いを除いて、最も上位の冒険者である。
因みにジュードは数回ラブホテルを利用した経験があるが。
蒼剣の誓い程はラブホテルに傾倒していない。
「近くで見ると随分と雰囲気のある塔なのですね」
「そうですね。この色が何と言うか。あまり見ない配色ですよね」
ラブホテルの外観はピンク色である。
ピンクに対していやらしいイメージと言うのは無いのだが。
それにしたって怪しさは十二分に感じさせるデザインなのは間違いない。
ジュードが扉を開けて入店すると。
「いらっしゃいませ!」
いつも受付に立っている女の店員が迎え入れる。
タスケは慎重に中へ入って。
口をあんぐりと開けてその場で放心してしまった。
「な、、、ななな」
数秒後、どうにか意識を取り戻したタスケは今度はあからさまな動揺を見せる。
ヤーサンでは名の通った商人であるタスケがこれ程に動揺する姿を見せる事は滅多に無いが。
ラブホテルの内装を見ただけで一瞬で圧倒され。
まともな思考が巡らなくなってしまった。
「タスケさんから見ても、ここは凄いですか?」
ジュードの問い掛けにタスケはグルンと首を回して。
「凄いなんてもんじゃありませんよ!この床!シャンデリア!それにあの濁ったガラスですよ!何ですかこのピカピカの美しい床は!私この床だったら一日中だって舐められますよ!シャンデリアも!芸術性!ガラスの透明度!どう見たって超一流の職人が作る物すら超えています!あの濁ったガラスは何ですか!加工に失敗して結果的に曇ってしまうガラスがありますが、あの幅!大きさ!全体を満遍なく曇らせる技術なんて新技術ではないですか!しかもガラスなのに輪郭や髪型はぼんやり見えても、あの方の顔は全く認識出来ませんよ!ガラスの利用方法が素晴らしい!あれだったらば街中で彼女を見掛けたとしても私が彼女に気付く事は無いでしょう!何て発想だ。何て発想だ!」
異常なまでに興奮して捲し立てるタスケに。
受付にいる全員が若干。
どころか大幅に引いてしまった。
ラブホテルの場合は冒険者の客が多いので居合わせた客は全員タスケと顔見知りである。
その顔見知りが引く程の興奮っぷりで。
そんなタスケの姿に頬を弛ませているのはラブホテルの中でたったの一人だけだった。
「蒼剣の皆さん、こんにちは。お元気ですかな?」
「ああ、タスケさんか。こんにちは。今日は護衛依頼でも出しに来たのかい?」
冒険者ギルドの酒場にて。
ラブホテルに通う資金を如何にして短期依頼で稼ぐかを相談していた蒼剣の誓いに恰幅の良い男が声を掛けた。
タスケと言う名のその男は冒険者ギルドの得意先である商人である。
明らかに良い物を食べてそうなふっくらした体形に人好きするにこやかな笑顔を浮かべるこの中年商人は。
良い人そうに見えても若い頃に商会を立ち上げ中堅商会にまで伸し上げた中々にやり手の商人だ。
そんなタスケは。
まだ駆け出しだった頃の蒼剣の誓いに優先的に護衛依頼を出していた恩人である。
Dランクに上がった辺りからは護衛をする機会も無くなっていたが。
今でもこうして顔を合わせれば気安く話掛けて世間話をする様な間柄である。
「いえ。今日は妻にせっつかれましてね。蒼剣の皆さんは塔に何度も通われているとか?」
ああ、とネイトが頷いた。
これまで休息宿ラブホテルの情報は冒険者ギルド内で回っていたものの。
あまり外で吹聴する様な事はしなかった。
酒好きで話好きで調子乗りの冒険者達は。
酒場で喋らなくても良い他人の秘密や噂話なんかを底の割れた酒樽の様に垂れ流すのがデフォルトなのに、である。
口は禍の元がデフォルトなのに、である。
正直に言って。
ラブホテルの情報が出回って人が押し寄せたら宿が混雑して簡単には入れなくなるかもしれない。
ラブホテルを利用する所を他人に見られるのが恥ずかしいと言う二つの理由に加えて。
お気に入りの女と仲良くなるのにラブホテルを使うと言うアドバンテージを外に漏らしたくないと言う理由も加わったばかりである。
出来れば自分達だけの秘密にしておきたいと考えていた所だったのだが。
冒険者ギルドのギルドマスターであるバルナバスと既に何度かラブホテルを利用しているミキャエラ。
そしてラブホテルでお姫様気分を味わったプニータの口に衝立を立てるのは不可能であった。
タスケの妻はミキャエラと井戸端会議をする仲であり。
最近明らかに美しくなったミキャエラから美しさの理由を聞き出した内の一人である。
「塔の事か。確かに、塔に一番通っているのが俺達4人って事は間違いないかな」
ネイトが代表して肯定るすると。
「そうですか!でしたら幾つか教えて欲しいのですが。その前に」
タスケは詳細の確認をする前に核心部分を質問する事にして。
「あの塔はダンジョンなのですか?」
タスケの目がやや鋭くなった。
妻からの話を聞いた限りでは塔がダンジョンである事は想像出来た。
妻は明らかに行きたそうにしていたのだが。
ダンジョンであるならば軽々しく連れて行くと言う事は出来ない。
ダンジョンにはモンスターがいて罠も仕掛けられている。
それが一般的な認識であり。
従来ダンジョンに入るのは危険に対処が出来る冒険者達である。
時には貴族や騎士などが入る事もあるが。
そう言った場合にも案内役として冒険者を雇うのが基本であり。
一般人が軽々しく立ち入って良い場所では決してないのだ。
だからこそまずは情報を集めに冒険者ギルドへとやって来たのである。
「確かにあそこはダンジョンだ。ダンジョンなんだが。少なくとも俺達も何度も通ってる冒険者も危険を感じた事は無いかな。タスケさんが聞きたいのはそう言う事だろう?」
商人であるタスケがダンジョンかどうかを確認するのは。
要するに自分や妻に危険が及ばないか。
その一点が気になっているのだろうと予想してネイトは言葉を返す。
「ええ、そうなんですよ。ダンジョンと言うのは私の様に守られる側の人間が入る場所では無いですからね。因みに中はどういった感じになっているのでしょうか?参考までに教えて頂きたいのですが」
ネイトの言葉に幾つか頷いて肯定したタスケは。
塔の内部、つまりはダンジョン内部について詳しく説明を求め。
「あそこは言葉だけだと理解するのは難しいと思う。不安なら護衛を雇って休憩してみるのをお勧めするよ。但し同じ部屋に入れるのは二人までで、三人目からは追加料金が掛かる。部屋はランクEからランクSまであってSは滅茶苦茶高いが夢の様な体験が出来たってギルマスが言っていた。ランクが上がる程に高くなるが部屋の広さや特別な設備があったりして、、、」
異様に詳しいネイトがラブホテルの詳細を説明し。
後のメンバーは補足をする形で説明に加わる。
あまりにも内部の人間の様な熱量を感じて若干苦笑しつつも。
タスケは4人の話を参考にして護衛を連れて一度ラブホテルを訪れてみる事に決めた。
「間違いが起こっちゃいけないから護衛は男を雇った方が良い。ラブホテルはな。凄いんだ」
何が凄いのか具体的には提示されなかったのだが。
それでも凄い事だけは伝わって来た。
蒼剣の誓いは熱すぎて洗脳の疑いすら感じたので別で腕の立つ冒険者を雇い。
タスケはラブホテルへと向かうのであった。
時間は少々遡り、今朝のマスタールームにて。
「はい、ちゅうもーく」
少々くぐもらせた声で髪を掻き上げながら従業員に注目を促したアイト。
前世の記憶を反映させたテレビ番組などはヒショもエマも見てはいるのだが。
そう言えばこれの元ネタは誰も見た事が無かったなと気付いて何事もなかったかのように真顔になった。
「今日からダンジョン産フルーツの提供を開始する。あの農園の倉庫でダダ余りになってるやつな。えっと、ヒショさん顔がちょっと恐いけど酒にする分は常にキープしておくからね?」
アイトの発言に珍しくヒショが不服そうな顔をしたので即座に説明を加えて宥める。
ヒショは酒が関わるとちょっぴり人が変わるのだ。
人では無くてダンジョンモンスターなのだが。
「フルーツ盛りを一皿銀貨3枚。フルーツの種類は在庫過多なやつから5種類ぐらい選んで季節のフルーツ5種盛りって事にしよう。昨日の花が好きなでっかい女の子とか絶対フルーツも好きだからな。俺は既に勝利を確信している!」
拳を振り上げ漲る自信を覗かせながら断言したアイトに。
従業員からの拍手が鳴り響く。
農園を管理しているのは色とりどりのオーガ達、通称オーガズなので。
彼らとしても丹精込めて育てた作物がダンジョンに吸収されずに客に提供されるのは楽しみなのだ。
エマと腹を見せて寝ているワンポは拍手をしていないが。
「流石にちょっと高くないですか?カットフルーツ一皿ですよね?」
拍手が終わった後でエマからの指摘が入る。
外の世界の物価について多少なりとも知っているエマからすれば。
定食で6食分くらいは食べられる銀貨3枚と言う値段はあまりにも高額に思えた。
言ってしまえばぼったくりだ。
「ふっ。甘いぞエマ。オーガズの努力と品種改良によりダンジョン産のフルーツがどれだけ甘くなったか。お前は慣れてしまったから気付いていないんだ。甘い!甘いぞフルーツ!フルーツ甘過ぎる!甘過ぎるぞフルーツ!」
後半エマへの指摘ではなくフルーツの甘さを訴えるCMの様になってしまい。
オーガズからの万雷の拍手に手を上げて応えるアイト。
相変わらずエマは首を傾げているが。
多数決による圧倒的な勝利でフルーツ盛りの提供が可決されたのであった。
多数決など関係無くアイトの鶴の一声で全てが決定する事実には気付いてはならないとだけは伝えておこう。
「それでは塔までと往復と客室内での護衛をお願いします」
「任せて下さい。とは言っても何も起きないとは思いますが。部屋の中では俺の事を置物だとでも思って楽しんで下さい」
タスケが護衛に選んだのはDランク冒険者のジュード。
大柄の大剣使いでソロでDランクまで上がった中堅冒険者だ。
人当たりが良く、言葉遣いも丁寧で。
その場にいた中では蒼剣の誓いを除いて、最も上位の冒険者である。
因みにジュードは数回ラブホテルを利用した経験があるが。
蒼剣の誓い程はラブホテルに傾倒していない。
「近くで見ると随分と雰囲気のある塔なのですね」
「そうですね。この色が何と言うか。あまり見ない配色ですよね」
ラブホテルの外観はピンク色である。
ピンクに対していやらしいイメージと言うのは無いのだが。
それにしたって怪しさは十二分に感じさせるデザインなのは間違いない。
ジュードが扉を開けて入店すると。
「いらっしゃいませ!」
いつも受付に立っている女の店員が迎え入れる。
タスケは慎重に中へ入って。
口をあんぐりと開けてその場で放心してしまった。
「な、、、ななな」
数秒後、どうにか意識を取り戻したタスケは今度はあからさまな動揺を見せる。
ヤーサンでは名の通った商人であるタスケがこれ程に動揺する姿を見せる事は滅多に無いが。
ラブホテルの内装を見ただけで一瞬で圧倒され。
まともな思考が巡らなくなってしまった。
「タスケさんから見ても、ここは凄いですか?」
ジュードの問い掛けにタスケはグルンと首を回して。
「凄いなんてもんじゃありませんよ!この床!シャンデリア!それにあの濁ったガラスですよ!何ですかこのピカピカの美しい床は!私この床だったら一日中だって舐められますよ!シャンデリアも!芸術性!ガラスの透明度!どう見たって超一流の職人が作る物すら超えています!あの濁ったガラスは何ですか!加工に失敗して結果的に曇ってしまうガラスがありますが、あの幅!大きさ!全体を満遍なく曇らせる技術なんて新技術ではないですか!しかもガラスなのに輪郭や髪型はぼんやり見えても、あの方の顔は全く認識出来ませんよ!ガラスの利用方法が素晴らしい!あれだったらば街中で彼女を見掛けたとしても私が彼女に気付く事は無いでしょう!何て発想だ。何て発想だ!」
異常なまでに興奮して捲し立てるタスケに。
受付にいる全員が若干。
どころか大幅に引いてしまった。
ラブホテルの場合は冒険者の客が多いので居合わせた客は全員タスケと顔見知りである。
その顔見知りが引く程の興奮っぷりで。
そんなタスケの姿に頬を弛ませているのはラブホテルの中でたったの一人だけだった。
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