異世界ダンジョン【ラブホテル】~ダンジョンマスターに転生したので異世界でラブホテル経営してみる。破茶滅茶転生者のちょっとエッチなスローライフ

張形珍宝

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ラブホテル in ヤーサン

Cランク冒険者の肉弾恋物語②

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「キャンペーンを打ち出してるのにカップルが来ない」

 ラブホテル内にあるマスタールームにて。
 アイトはヒショの膝枕でソファーに寝転がりながらぼんやりとモニターを見つめていた。

 今日はカップル限定!客室グレードアップキャンペーン(カリ)の最終日である。
 カップルが大量に押し寄せるに違いない!と意気込んで始めたキャンペーンであったが。
 結果は惨敗。

 最終日までに来店したのは前回Sランクの部屋を利用した夫婦と。
 ラブホテルで初めてのカップル成立を果たした百合カップル。
 後はトイレと風呂に分かれて致すシングルプレイヤーが同室を利用しただけであった。

「これでは本業がビデオボックス屋になってしまう」

 そう言って嘆くアイトの側頭部を撫で撫でして慰めるヒショ。
 これで付き合ってもいなければ結婚してもいないのだから。
 全く以てダンジョンマスターとフロアボスとは不思議な関係である。

「せめて期間内に一組ぐらいは来てくれ」

 テレビモニター側からくるりと向きを変え。
 ヒショの股間に顔を埋めながら呟いたアイトは。

「あ、来ましたよ。男女のカップルである」

 ヒショの言葉に飛び起きてテレビモニターに齧り付いた。
 物理的に。

「あれ?これって確か」

 アイトはテレビモニターに映る客の顔を見て何かに気付き。

「最初に来店した4人組の一人ですね」

 ヒショの言葉に頷いた。
 そして連れの女を確認して。

「成程なー。良い趣味してますわ」

 しみじみと感想を漏らしたアイト。

「マスターはこう言うタイプが好みなのですか?」

 ヒショもテレビモニターの前まで来てアイトに問い掛ける。

「いや。俺はヒショみたいな女の子が好みだけれど。まぁイケなくも無いかな。世の中にはこう言う趣向の持ち主がいるんだよ。こう言う顔痩せ巨漢系女子が三度の飯+睡眠をよりも好きなやつが」

 連れの女はそれはそれは大柄な女だった。
 大柄と言うかでかい。
 横にもでかい。
 しかし顔は体程には肉が付いていない。

 アイトの前世で言うならば。
 日本人よりもアメリカ人に多い体系と言えるだろう。
 それよりも縦のでかさがあるが。

「マスターの好みが急激に変わったのかと心配になりました。ああ、ですが大きなビデオも幾つもありましたね」

 アイトの言葉を聞いて。
 ホッとした様子のヒショの指摘に。

「前世の俺は知識欲が半端じゃなかったからな。それが役に立って良かったぜ」

 前世のアイトは。
 FANTHEと言う動画配信サイトで安い動画を片っ端から買い漁る人間だった。
 それこそ毎月の給料の半分が旧作落ちして半額になった動画に消える程に。
 その中には当然マニアックな内容の作品も混ざっていて。

 ラブホテルの客室で見られるアダルチーな映像は。
 全てアイトの記憶の中にあった映像から作り出したものだ。
 但しビデ倫とか無いので一部加筆修正を加えていたりするのだが。

「そう言えば超乳系ばっかり選んでた客がいたな。ほーん」

 アイトはもう一度テレビモニターに映る女の姿をじっくりと見て。

「良い趣味してるわ」

 アイトはしみじみと口にして。
 ヒショの膝枕でじっくりと成り行きを見守る事にしたのであった。


 ヤーサンの街を出て。
 ラブホテルまでの道程はモンスターと遭遇する事なく順調だった。

 塔の外観は今。
 電光掲示板なる文字を映す謎の板に【カップル限定!客室グレードアップキャンペーン実施中!】と文字が流れている。

「カップルとかグレードとかキャンペーンとか。何だか知らない言葉がいっぱいだね」

 そう。
 そうなのだ。

 ラブホテルのお得なキャンペーンをぶち上げたアイトの致命的な失敗は。
 外の世界では一般的では無い言葉を使って宣伝をしてしまった事である。

 それを踏まえて電光掲示板で宣伝をするならば。
 【二人組限定!客室ランクアップ実施中!】
 これで良かったのだ。

 そんな裏話は置いておいて。

「いらっしゃいませ!」

 ニックとプニータは塔の扉を開けてラブホテルの中に入った。

「へえ。何だか凄い所だね」

 プニータは床の大理石と天井のシャンデリアに目を向けて感想を漏らす。
 やはりプニータも女性だけあって美しい物が好きなのは変わらない。

 プニータがエントランスを興味深げに見回している間にニックは受付を済ませる事にした。
 元々ニックがプニータを誘ってみようと思い立ったのはキャンペーンの詳細を知ったからである。

 蒼剣の誓いの4人は毎日ラブホテルに通っているNo.1リピーターなのでキャンペーンについても受付カウンターに貼られた張り紙を何度も目にしている。
 シングルプレイヤーが多いのでキャンペーンの影響は殆んど無かったが。

 そんな中でニックだけは。
 二人組で来ると部屋のランクが上がってお得→男二人で一つの部屋を利用するのは気持ちが悪い→どうせなら憧れのプニータを誘って何時もは利用しないCランクの部屋を調査しよう。
 あくまでも調査に付き合って貰うだけだから下心なんてまるで無いし。
 と自分の中で言い訳をしてプニータをラブホテルに誘う事を決めたのであった。

 誘う時には最早下心しか無くなっていたが。

「プニータ、部屋を取ったから行こうか」

 エントランスに最近設置された【祝御開店 休息宿ラブホテル様 休息宿ラブホテルより】と書かれた看板の掲げられた自演の美しいスタンド花をしげしげと見つめていたプニータに声を掛け。
 ニックとプニータはエントランスから客室へと転移した。

「これはまた。凄い部屋だね」

 二人が入ったのは508号室。
 Cランクの中でも非常にインパクトの強いこの部屋のイメージはお姫様の休息。
 部屋の中には沢山の花々が飾られていて壁や天井は空色になっている。

 受付で確認した写真で見たイメージよりも。
 相当に。
 相当に攻めた部屋だったので。
 プニータの好みでは無かったかもしれないと自らの失策を覚悟したニックだったが。

「何だかお花畑にいるみたいで嬉しいよ。あたしが花が好きって知ってたのかい?」

 プニータが花好きだとは初耳だったが。
 どうやら奇跡的に当たりを引いたらしいニックは胸を撫で下ろした。

 この部屋は正しくダンジョンの成せる業で。
 枯れないし散らない生花が至る所に散りばめられている。

 天蓋ベッドのカーテンは色とりどりの花で彩られ。
 カーテンを閉めて横になると花畑の中にベッドを置いて寝ている様な錯覚を覚える程だ。
 テーブルの上には美しい生け花が飾られ。
 布張りのソファーにも幾つもの花が添えられている。

「何て可愛い部屋なんだろうね!」

 意外にも少女趣味だったのか。
 プニータはその巨体を可愛らしく揺らして花が咲いた様な可愛らしい笑顔を見せた。

 そんなプニータの姿に。
 心臓を高鳴らせて滅茶苦茶興奮しているニック。
 フローラルな花の香り混ざり。
 むわりと立ち上る甘いプニータの体臭が。
 異様なまでにニックを興奮させているのであった。

 憧れの女と。
 好きな女と密室に二人きりである。
 手を伸ばせば触れられる距離にプニータがいる。

 ニックはプニータの背中に手を伸ばして。

「何か料理でも注文しようか?」

 日和ってその手を直ぐに引っ込めた。
 ニックは慎重で。
 肝の小さい男である。

「そう言えば。ここは料理も絶品なんだってね。けれど今日は止めておくよ。昼はもう済ませちまったし。それに」

 プニータは振り向いて残念そうに首を振り。

「あたしはほら。ちょっとだけぽっちゃりしてるだろう?あんまり食べ過ぎると太っちまうからね」

 ちょっと何言ってるか分からない事を言った。
 それを聞いたニックは。

「いやいやいや。プニータがぽっちゃりだなんて冗談だろう」

 思わずプニータの言葉を否定して。

「プニータは標準体型だろう。もう少し太た方が健康的に見えるぐらいだ」

 もっと何言ってるか分からない事を言った。

 この男。
 プニータが好み過ぎてプニータ=標準と感じるまで脳がバグっているのだ。
 つまり一般的な体形の女がガリガリのガリである。

「嬉しい事を言ってくれるじゃないか。後で気が向いたらデザートぐらいは頂こうかね」

 プニータはすっきりとしているがある程度はしっかり付いている頬の肉を上げて微笑んだ。

 ああ、何て可愛いんだろうか。

 ニックは股間の肉を上げてほくそ笑んだ。

「こっちは何があるんだい?」

 プニータはニックの股間肉の変化に気付く事なく。
 ベッドの足下側にある薔薇のリースが掛かっている扉を開け。

「これは風呂かい?美しい光景だね」

 赤、白、黄色の薔薇の花が浮かんだ湯船を見て。
 ほうっと感動の息を漏らす。

 風呂は平民の間でも認知はされているが。
 基本的には貴族や金持ちの家にしか存在していない。
 それが貴族でもまずやらないであろう生花を湯に浮かべる贅沢な風呂は。
 コンセプト通りに正しくお姫様の為に用意された空間である。

 扉を開けて直ぐに浴槽の見える作りになっているが。
 脱衣所と浴室は曇り止めの施されたガラスで仕切られている。
 更に薔薇のリースを外すと脱衣所の外からも覗ける拘りの仕掛けもあったりする。

 誰もそんな事には気付かないであろうが。

「綺麗な花に囲まれて夢のようだね。風呂に入ってみても良いかい?」

 プニータは声を弾ませている。

「ああ。ゆっくり入ると良い」

 ニックは快く了承した。

「ニックも一緒に入るかい?」

 プニータのあまりにも魅力的な誘いに。

「ば、馬鹿!お、俺は。後で。入るよ」

 滅茶苦茶動揺しながらもしっかり日和っているニックである。

「はっはっは!冗談だよ!」

 プニータは豪快に笑って脱衣所の中に入って行き。
 ニックは悶々としてテレビモニターの電源を入れたのであった。
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