上 下
7 / 13

第5話 ボケてたりボケてなかったりしますけど何か?

しおりを挟む
「あ、あいつトメじゃん。あんなとこで何やってんだ?」

 もう名前は忘れちまったが、ネコに目覚めたおっさんから貰ったエナドリをキメてから公園に戻ったら、皺くちゃの婆がジャングルジムの上ででんぐり返しをしていた。
 舞台でマット敷いた上でやっても観客からの拍手を掻っ攫えるぐらいのよぼよぼ婆がジャングルジムでやってるってのがポイント高いよな。
 放っておいたら死ぬだろうから、しばらく婆がおっ死ぬ瞬間を見学してるとするか。

「ちっ、見事に着地しやがったか」

 ジムに嵌ってそのまま死ぬか地面に叩きつけられて死ぬかの二択かと思ってたら奇跡的に両の足で着地しやがった。
 死んでねぇのは残念だが、中々に良いものを見せて貰ったから褒めてしんぜよう。

「トメ、お前公園まで来て何やってんの?」

 一応は何度か話した事もある顔見知りなので声を掛けておく。
 トメは80ぐらいだったが耳は悪くない。
 但し日によって当たり外れがある婆だ。

「爺さんや。飯はまだかのぅ」

 これは駄目な日だ。
 この婆、大体50%の確立でボケてる日とボケてない日があるんだよな。
 今日はボケてる日だから、ここを家と勘違いしてて姿の見えない爺に話掛けてる。

 因みにボケてない日は全力疾走で乗用車と競争してる。
 冷静に考えると、どっちにしてもボケてんのと変わんねぇな。

「家まで連れてってやるから付いて来いよ」

 面倒だが、その辺で死なれても困るからな。
 知らねぇ警察とかにウロウロされると俺としては非常に面倒だ。
 俺は割と酒飲んでる事があるから最悪の場合、飲酒徒歩で捕まる可能性がある。

 あれ?飲酒徒歩はまだ合法か?
 やべぇのは飲酒ダッシュか?

 とにかく警察は面倒だから好きじゃない。
 死ぬんならノー現場検証で死んでくれよ婆。

「租古野公園。租古野公園。ご乗車の方はお足下にご注意下さい」

 電車ごっこに混ぜて貰ってトメの家を目指す。
 不思議なもんで電車ごっこの間に挟まると、トメはヨボヨボ歩かねぇで普通に歩くからな。
 公園来た時も電車ごっこ利用してんじゃねぇかな多分。

「おや、ワンちゃんじゃないか。婆さんを連れて来てくれたのかい?」

「おう。ジャングルジムででんぐり返ししてたぜ。
 それから俺は遂に飼い主を見付けたからネームドになったぜ。
 名前はトロ助な」

「おお、遂にかい。おめでとう。
 お茶請けのガムが残ってるんだけど食べるかい?」

「食う」

 トメの旦那のゴルゴがくれたガムはキシリトールの歯に良いやつだった。
 お前ら夫婦で総入れ歯なのに、何でキシリトールなんて食ってんだよ。
 爺婆は梅ガムとか食ってろよな。

 俺は梅ガム食うと耳から粘っこい汁出るから食わねぇけど。
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

今日の授業は保健体育

にのみや朱乃
恋愛
(性的描写あり) 僕は家庭教師として、高校三年生のユキの家に行った。 その日はちょうどユキ以外には誰もいなかった。 ユキは勉強したくない、科目を変えようと言う。ユキが提案した科目とは。

体育教師に目を付けられ、理不尽な体罰を受ける女の子

恩知らずなわんこ
現代文学
入学したばかりの女の子が体育の先生から理不尽な体罰をされてしまうお話です。

AIアイドル活動日誌

ジャン・幸田
キャラ文芸
 AIアイドル「めかぎゃるず」はレトロフューチャーなデザインの女の子型ロボットで構成されたアイドルグループである。だからメンバーは全てカスタマーされた機械人形である!  そういう設定であったが、実際は「中の人」が存在した。その「中の人」にされたある少女の体験談である。

御伽噺のその先へ

雪華
キャラ文芸
ほんの気まぐれと偶然だった。しかし、あるいは運命だったのかもしれない。 高校1年生の紗良のクラスには、他人に全く興味を示さない男子生徒がいた。 彼は美少年と呼ぶに相応しい容姿なのだが、言い寄る女子を片っ端から冷たく突き放し、「観賞用王子」と陰で囁かれている。 その王子が紗良に告げた。 「ねえ、俺と付き合ってよ」 言葉とは裏腹に彼の表情は険しい。 王子には、誰にも言えない秘密があった。

人形の中の人の憂鬱

ジャン・幸田
キャラ文芸
 等身大人形が動く時、中の人がいるはずだ! でも、いないとされる。いうだけ野暮であるから。そんな中の人に関するオムニバス物語である。 【アルバイト】昭和時代末期、それほど知られていなかった美少女着ぐるみヒロインショーをめぐる物語。 【少女人形店員】父親の思い付きで着ぐるみ美少女マスクを着けて営業させられる少女の運命は?

ハバナイスデイズ!!~きっと完璧には勝てない~

415
キャラ文芸
「ゆりかごから墓場まで。この世にあるものなんでもござれの『岩戸屋』店主、平坂ナギヨシです。冷やかしですか?それとも……ご依頼でしょうか?」 普遍と異変が交差する混沌都市『露希』 。 何でも屋『岩戸屋』を構える三十路の男、平坂ナギヨシは、武市ケンスケ、ニィナと今日も奔走する。 死にたがりの男が織り成すドタバタバトルコメディ。素敵な日々が今始まる……かもしれない。

保健室の秘密...

とんすけ
大衆娯楽
僕のクラスには、保健室に登校している「吉田さん」という女の子がいた。 吉田さんは目が大きくてとても可愛らしく、いつも艶々な髪をなびかせていた。 吉田さんはクラスにあまりなじめておらず、朝のHRが終わると帰りの時間まで保健室で過ごしていた。 僕は吉田さんと話したことはなかったけれど、大人っぽさと綺麗な容姿を持つ吉田さんに密かに惹かれていた。 そんな吉田さんには、ある噂があった。 「授業中に保健室に行けば、性処理をしてくれる子がいる」 それが吉田さんだと、男子の間で噂になっていた。

クラスメイトの美少女と無人島に流された件

桜井正宗
青春
 修学旅行で離島へ向かう最中――悪天候に見舞われ、台風が直撃。船が沈没した。  高校二年の早坂 啓(はやさか てつ)は、気づくと砂浜で寝ていた。周囲を見渡すとクラスメイトで美少女の天音 愛(あまね まな)が隣に倒れていた。  どうやら、漂流して流されていたようだった。  帰ろうにも島は『無人島』。  しばらくは島で生きていくしかなくなった。天音と共に無人島サバイバルをしていくのだが……クラスの女子が次々に見つかり、やがてハーレムに。  男一人と女子十五人で……取り合いに発展!?

処理中です...