人面犬ですけど何か?

張形珍宝

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第5話 ボケてたりボケてなかったりしますけど何か?

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「あ、あいつトメじゃん。あんなとこで何やってんだ?」

 もう名前は忘れちまったが、ネコに目覚めたおっさんから貰ったエナドリをキメてから公園に戻ったら、皺くちゃの婆がジャングルジムの上ででんぐり返しをしていた。
 舞台でマット敷いた上でやっても観客からの拍手を掻っ攫えるぐらいのよぼよぼ婆がジャングルジムでやってるってのがポイント高いよな。
 放っておいたら死ぬだろうから、しばらく婆がおっ死ぬ瞬間を見学してるとするか。

「ちっ、見事に着地しやがったか」

 ジムに嵌ってそのまま死ぬか地面に叩きつけられて死ぬかの二択かと思ってたら奇跡的に両の足で着地しやがった。
 死んでねぇのは残念だが、中々に良いものを見せて貰ったから褒めてしんぜよう。

「トメ、お前公園まで来て何やってんの?」

 一応は何度か話した事もある顔見知りなので声を掛けておく。
 トメは80ぐらいだったが耳は悪くない。
 但し日によって当たり外れがある婆だ。

「爺さんや。飯はまだかのぅ」

 これは駄目な日だ。
 この婆、大体50%の確立でボケてる日とボケてない日があるんだよな。
 今日はボケてる日だから、ここを家と勘違いしてて姿の見えない爺に話掛けてる。

 因みにボケてない日は全力疾走で乗用車と競争してる。
 冷静に考えると、どっちにしてもボケてんのと変わんねぇな。

「家まで連れてってやるから付いて来いよ」

 面倒だが、その辺で死なれても困るからな。
 知らねぇ警察とかにウロウロされると俺としては非常に面倒だ。
 俺は割と酒飲んでる事があるから最悪の場合、飲酒徒歩で捕まる可能性がある。

 あれ?飲酒徒歩はまだ合法か?
 やべぇのは飲酒ダッシュか?

 とにかく警察は面倒だから好きじゃない。
 死ぬんならノー現場検証で死んでくれよ婆。

「租古野公園。租古野公園。ご乗車の方はお足下にご注意下さい」

 電車ごっこに混ぜて貰ってトメの家を目指す。
 不思議なもんで電車ごっこの間に挟まると、トメはヨボヨボ歩かねぇで普通に歩くからな。
 公園来た時も電車ごっこ利用してんじゃねぇかな多分。

「おや、ワンちゃんじゃないか。婆さんを連れて来てくれたのかい?」

「おう。ジャングルジムででんぐり返ししてたぜ。
 それから俺は遂に飼い主を見付けたからネームドになったぜ。
 名前はトロ助な」

「おお、遂にかい。おめでとう。
 お茶請けのガムが残ってるんだけど食べるかい?」

「食う」

 トメの旦那のゴルゴがくれたガムはキシリトールの歯に良いやつだった。
 お前ら夫婦で総入れ歯なのに、何でキシリトールなんて食ってんだよ。
 爺婆は梅ガムとか食ってろよな。

 俺は梅ガム食うと耳から粘っこい汁出るから食わねぇけど。
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