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cannibalism syndrome Ⅳ

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 カニバリズム症候群は感染型の精神疾患とする意見が多く見られるが、原因の究明がされていないので仮説にしかなり得ない。

 日本で生まれたシリアルキラー原瑞希の名前が世界に知れ渡ったのはカニバリズム症候群の症例が初めて確認されてから5年後、2040年の事だった。
 当時はまだ学生だった彼女は世界的な生物学者である山川哲との繋がりがあり、山川の実験を手伝う代わりに用意させた人間を殺害して食事を摂っていた。
 そこまでならカニバリズム症候群の感染者であれば前例のある事件で終わったかもしれない。
 長期間に渡っての大量殺人であれば、それこそニコラス・オルドマンの例があるのだ。
 しかし彼女の名前が世界にまで届いた理由は、彼女の持つ残虐性にあった。

 カニバリズム症候群に感染したシリアルキラーが出す死体は綺麗な物が多い。
 綺麗と言うのは痛みや傷の無い状態の良い死体という意味では無く、骨までしゃぶりつくした様に綺麗に食べられた死体が多いということだ。
 それは生きる為に、食事の為に人殺しを行うからであって、容易には手に入らない人の肉を隅々まで使い切る者が多いからだ。
 感染者にとってどの部位も極上の人肉なのだから、残す意味があまり無い。

 しかし件の原の場合、食事に必要な量を遥かに超える人間を用意させて虐殺した死体を山川の協力者に捨てさせていた。
 それだけ派手に動いていながら警察もなかなか尻尾を掴めなかった原。
 そんな原が容疑者として浮上したのは、彼女が同じ学校に通う友人に手を出し始めたからであった。

 原は山川が用意したマンションに友人を招き、そこで友人を虐殺して楽しんでいた。
 その様子は原自身が撮影した映像として残っている。
 彼女は愛おし気に友人の皮を剥ぎ、肉を削ぎ、骨をしゃぶった。
 爪を剥ぎ、指の肉を削いで、露出した骨を見せ付けるようにしゃぶる様は正しく狂気。
 実に3日間にも渡る映像の中で見られる原の異常な行動は世界を震撼させた。

 原はサディスティックパーソナリティ障害を持った快楽殺人者であると考えられた。
 一時期、原の異常な行動はカニバリズム症候群が原因で引き起こされたのではないかと議論がされていたが、これは後に否定されている。

 カニバリズム症候群はあくまでも味覚と嗅覚の変化と食物に対しての拒否反応。
 それによって食人衝動を引き起こす感染症だ。
 原瑞希以降もカニバリズム症候群の感染者による快楽殺人は度々起こったが、それらはその人間が先天的に持っていた、または後天的に得ていた残虐性が食人行為をきっかけとして表に表れただけである。

 尚、快楽殺人のシリアルキラー原瑞希と協力者の山川哲は、警察に逮捕される事無く現在も行方を眩ませている。
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