カニバリズム症候群~人類を滅亡に向かわせる最悪の感染症

張形珍宝

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cannibalism syndrome Ⅲ

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 初期型カニバリズム症候群に感染していたとされるアメリカ人男性ニコラス・オルドマンによる犠牲者は100名以上にも及ぶと言われている。
 オルドマンはアメリカで最初の殺人を犯した後でフィリピンに逃亡。
 ラオスを経由してタイに入った際に、取材でタイを訪れていたジャーナリストのサイモン・ウェイドと知り合い、カニバリズム症候群の感染者として取材を申し込まれたそうだ。
 オルドマンは足が付くのも恐れずにその申し出を受諾して、ウェイドはエジプトの国境までオルドマンに同行している。

 その後オルドマンは目立たないように殺人を繰り返しながらアフリカ大陸を南下。
 コンゴ民主共和国から先の足取りは未だに解明されていないが、ゲリラ戦に巻き込まれて死亡したというのが大方の見方だ。

 100名以上もの犠牲者を出したオルドマンだが、実は後の世において彼は真っ当なシリアルキラーだったと語られている。
 オルドマンを取材した映像の中でも語られている通り、彼の行動原理は至ってシンプルだった。
 彼が人間を殺すのはあくまでも食事のためであり、それは他の人間が生きる為に動物を殺して肉を食べるのと何ら変わりない。
 頸動脈を切って直接生き血を啜る行為は残虐かもしれないが、相手の尊厳を蹂躙して甚振り尽してから殺すのと比べれば大分マシだろう。

 ニコラス・オルドマンはカニバリズム症候群に感染した1人目のシリアルキラーである。
 しかし人類がカニバリズム症候群を知る上で、彼から齎された情報の価値は計り知れない。

 後の学者がこぞって口を揃えたその言葉。
 特に価値が大きかったのは、カニバリズム症候群の感染者は匂いで他の感染者がわかるという話だった。
 この情報とオルドマンの発言から、カニバリズム症候群の感染者であったサイモン・ウェイドは食料として認識されなかった。
 それ故にオルドマンに殺される事無く、長期に渡って彼に同行する事が可能だったのだ。

 その事実からカニバリズム症候群とは何らかの要因で後天的に遺伝子が組み換えられる奇病ではないかと噂されたが、結局その考えがオカルトの域を出る事はなかった。
 少なくとも人類が認識出来る遺伝子レベルでの変化は無く、感染者は感染していない人間と何ら変わりは無い。

 味覚が変わり、やがて体が人の肉しか受け付けなくなる症状を発症させた普通の人間。
 果たしてそれは排除するべきなのか。
 排除しても良いものなのか。
 そんな人間の倫理観に問い掛ける議論が行われたのも、真っ当なシリアルキラーニコラス・オルドマンがきっかけとなったのかもしれない。

 尤もニコラス・オルドマンが世界に与えた影響で一番大きいのは、サイモン・ウェイドという重要人物を生み出した事なのだが、それについては別の機会に語るとしよう。
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